2024年4月18日木曜日

Hector McDonnell "Orkney: Megalithic Marvel of the Northern Isles" [オークニー:北部諸島の巨石遺跡]

Orkney (Amazon.co.jp)

オークニー諸島は歴史的政治的に色々ややこしいこともあったりするようだが、この本は基本的に新石器時代の墓に注力している。まあまあ有名な観光地らしいが、このシリーズにしては真面目な発掘調査報告書みたいな感じがある。ここに観光に行く時は、相当ヒマというか余裕があるというか、幸せな時だろうというような感じ。変な都会に行くよりいいかもなあ。

Wooden Books (2020/5/1)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263289

2024年4月12日金曜日

Mark Mills "Ancient English Cathedrals" [古代イギリスの大聖堂]

Ancient English Cathedrals (Amazon.co.jp)

イギリスの観光案内シリーズの一つ。アルファベット順に並んでいる。各聖堂の中のイラストと歴史など。一々色んな歴史があるものだ。イギリスの小説なんか読んでいると、教会でなくても古い邸宅に謎の地下室とか謎の歴史伝説が設定されているが、日本ではあったとしてもどうもドラマチックでない。あと、イラストで見る限りすべて広くて異常に天井が高いが、これで「瞑想に適している」は、わたしとしては無理がある。日本で言えばららぽくらいの商業施設の吹き抜けくらいの高さなんだろう。わたしも天井が高いのは好きだが、どう考えても空調が効かない。日本にも有名な建築家が建てた「光の教会」とかいう完全コンクリの教会が絶望的に寒くて有名だが、もしかすると教会というものは本質的にそうなのかもしれない。わたしは子供の頃は教会に通っていたこともあるし、今は週一くらいで寺に通っているが、天井が高いと言っても二階分くらいで、瞑想とかいうことなら、それくらいが妥当な気がする。建物の構造が瞑想の概念に影響しているかもしれない。

Wooden Books (2006/2/15)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263418

2024年4月11日木曜日

Michael Schneider "Proportion: In Art and Architecture" [芸術と建築の中の比率]

Proportion (Amazon.co.jp)

タイトルの通りの比率の図鑑。昔の数学の教科書に載っていたような、なんでもかんでも黄金比を当てはめている図よりは相当マシだが、本質はそういうこと。自然物ではなく設計された人工物の話なんで、説得力はある。にしても神奈川沖浪裏に線を引いているのは初めて見たが。正直わたしはあんまり感心しないが、面白いと思う人もいるんだろう。

Wooden Books (2022/11/1)
言語 : 英語
ISBN-13 :978-1907155482

2024年4月10日水曜日

Howard Crowhurst "Carnac: And Other Megalithic Sites in Southern Brittany" [カルナックと南ブルターニュの他の巨石遺跡]

Carnac(Amazon.co.jp)

Wooden Booksはたいていイギリスの遺跡を扱うが、これはフランス領らしく珍しい。しかし、内容はシリーズの他の本と同じくやはり遺跡の発掘調査報告書と謎の直線群と想像。これだけ読んでくると、だいたい全部同じに見えてくる。差が分かるほど詳しいわけでもない。この本もわたしも。

Wooden Books (2018/10/1)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263968

Philippa Lewis, Miles Thistlethwaite "Portals: Gates, Stiles, Windows, Bridges, & Other Crossings" [ポータル:門・踏み越し段・窓・橋とその他の横断]

Portals (Amazon.co.jp)

あまり見慣れないテーマだが、想定外に面白かった。要するに、二つの領域を往来できるようにする構造の図鑑。これだけ聞いても面白そうに思えないと思うが、馴染みがなさ過ぎて魅力が説明しにくい。もしかしたら建築系の人はこんなことを考えているのかもしれないなあ…というような考察が色々。たとえば15世紀~16世紀の本のタイトル頁にはよく門が描かれていて、読者を新しい未知の世界へといざなう、みたいな話は、なかなか掴まれる。良い本だった。

A fascinating little book.

Wooden Books (2016/8/31)
言語 : 英語
ISBN-13: 978-1904263944

2024年4月9日火曜日

Gerald Ponting "Callanish and Other Megalithic Sites of the Outer Hebrides" [カラニシュとアウターヘブリディーズの巨石遺跡]

Callanish (Amazon.co.jp)

イギリスにありがちな謎のモノリス遺跡の一つ。ストーンヘンジにも劣らない迫力に思えるが、観光地として少し不便なんだろうか。まあ行ったところで風景自体は「ふうん」にしかならないと思われるが…。やはり新石器時代の遺跡でよくわからないことが多い。謎の伝説やどこまで本当かわからない天文学との関係とかleyとかはこのシリーズの定例だ。もちろん観光に行くなら先に読んでおいたほうが良い。

出版社 : Wooden Books (2000/1/1)
言語 :英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1904263081

2024年4月5日金曜日

D.P. Sullivan "Leys: Secret Spirit Paths in Ancient Britain" [レイ:古代イギリスの秘密の霊的道]

Leys (Amazon.co.jp)

色々な謎が解けた一冊。Leyというのは適当な翻訳語がない。面白くない言い方をしてしまうが、疑似科学/pseudoarchaeologyの一種で、各地に散在する古代遺跡に、やたら直線を当てはめる趣味を指す。比較的近距離の単一の遺跡内の直線の場合もあれば、イギリス全土に散らばる遺跡群に直線近似みたいなことをする場合もある。最初の提唱者はそこまででもなかったようだが、幽霊だとかUFOが目撃された的な話が乗っかってきて、かなり楽しい世界が積み上がっているようだ。

というわけで、これまでWooden Booksのイギリス遺跡シリーズで出会ってきた説得力のない謎の直線にはこういう背景があったようだ。わたしもまあまあ疑似科学は好きだが、日本ではあまり聞いたことがない。開発の余地があるように思われる。地形的に直線を引きにくいのだろうか。勉強になった。

Wooden Books (2005/10/25)
言語: 英語
ISBN-13 :978-1904263388

2024年4月4日木曜日

Nick Maggiulli "Just Keep Buying: Proven ways to save money and build your wealth" [ただ買い続けろ:節約して富を築く方法]

Just Keep Buying (Amazon.co.jp)

普通の個人向け資産構築ガイド本で、似たような本は米国にも日本にも山のようにある。数値例がやたら多いのが特徴だが、要はS&P500をひたすら買ってろというようなことで、近頃はそんな話ばかりだし、今更新情報はない。普通に山崎元さんの本でも読んでいれば、実用的にはそっちのほうが上位互換なのではなかろうか。そっちは読んでないから知らんけど。

ただいくつか考えることはある。一つはFIREに対する考え方で、「退職=世界にとって自分がどうでもいい存在であることを認めること=結構な精神的打撃」というクダリだ。そうかもなあと思う。しかし、冷静に考えると、社会に何も貢献していないという意味ではわたしは既に退職しているようなものだ。ではわたしには関係ない気もする。人間の脳というのはある程度ストレスとか嫌なことがある前提で進化してきているので、出勤とかいう概念もなく完全に平和に暮らすのは不健康なのかもしれないとかも考える。

幸福のバスタブ曲線の話。世界のどこのどんな状況のどんな文化でも、幸福度は20代半ばから50代までが最低という有名な話で。本書は情緒的に説明しているし、他にも色々な説を読んだことがあるが、わたしとしては単なる生理現象ではないかと思っている。単に加齢に伴うホルモンの変化のせいでは…。ともかく、理想と現実にギャップを感じて人は不幸になるし、成長もするし、社会を変えようとするんだろう。幸せになったら成長は終わりですよ。

金持ちが自分が金持ちということを感じていないという話。これは著者の体験談にリアリティを感じるというのは、わたしも似たような経験があるからだ。ただわたしの場合は社会性がないので周囲と比較する習慣がないし、その代わりに頻繁に統計データを見ているから、客観的な状況を見誤りにくい。

などと考えることはあったが、そんなに新情報も新考察もなく、上位互換みたいな本もほかにあるだろう。一応読んだから記録まで。

Harriman House Pub (2022/4/12)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-0857199713

2024年4月2日火曜日

Christina Martin "Sacred Springs" [聖なる泉]

Sacred Springs (Amazon.co.jp)

イギリスの各地にある泉の観光ガイドのようなもの。この泉という文化が日本と違い過ぎて、そこが勉強になる。多分日本の泉はほとんど温泉になってしまうし、そもそも水が豊富で井戸なんかどこでもある。イギリスではそんなことではないようだ。実際、西洋のおとぎ話にはやたら泉が出てくるし、インチキ西洋中世物語の類、例えばドラクエとかでも泉はやたら重要スポットみたいに扱われる。日本人にはない発想だ。ここに紹介されているような泉は一々いい感じの伝説などがついている。日本の温泉の弘法大師がどうたらみたいな話より少女趣味で良い。Dressing、つまりRPGのダンジョンの中にある泉みたいな敷石や枠や門などによる整備も日本で見たことがない。

関係ないけど、「ダンジョン」という現実には稀な構造がRPGの世界では普通なのにははっきりとした理由があり、世界初のコンピューターアドベンチャーゲームとされるADVENTに由来する。泉は少なくともダンジョンよりは現実にもよくあるようだ。

Wooden Books (2006/2/15)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263456

2024年3月31日日曜日

Evelyn Francis "Avebury" [エーヴベリー]

Avebury (Amazon.co.jp)

Wooden Booksの英国遺跡シリーズの一つ。世界最大の環状列石という話である。例によって基本的にイラストだが、ネットではいくらでも写真が出てくる。5000年前新石器時代。その頃にも日本にも人はいたし遺跡もあるが、どうも観光資源として弱いというのは、石と木の差なんだろう。やたら直線を引いて天文学を反映しているとか言うのも日本ではない話だ。そしてドルイドとかを無理やり復活させて今でもAveburyで謎の儀式をやっているとかいう…。

The world largest stone circle....

Wooden Books(2000/1/1)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263159

Glennie Kindred "Herbal Healers" [薬草療法]

Herbal Healers (Amazon.co.jp)

色んな薬草の紹介。それぞれの薬草について別名・用法・効能という構成。これは読んでいてかなり楽しかった。わたしはたまたまハーブ類が好きだが、そうじゃない人でも知っているハーブが大半だと思う。カモミールとかレモンバームは茶としてよく飲むし、タイムとかセージは料理で使うし、ホップとかラベンダーは入浴剤…という感じ。

で、それぞれの薬草の効能は常識的というか医学的なところもあるが、本当に面白いのは「血を浄化する」とか「意識を高めてアストラル界へ」とかオカルトというか呪術的な説明で、どこまでが医学的に証明されている話かどこまでが錬金術か区別がつかない。類書を調べると、どうも英語圏ではwitchcraftだとかhealerだとか称してハーブを煎じたり調合したりする遊びというか趣味がまあまあポピュラーらしい。

どのみち良く知られているハーブしか紹介されていないから、特別な危険もないと思うが(妊娠中禁忌とかそんな警告はある)、実際にこの本だけで処方したり調合したりするのは無理。入口にはなるかもしれない。

A lovely introductory small book.

Wooden Books (2002/4/25)
言語 :英語
ISBN-13 : 978-1904263012

2024年3月29日金曜日

Hector McDonnell "St Patrick: His Life and Legend" [聖パトリキウス:その生涯と伝説]

St Patrick (Amazon.co.jp)

タイトル通りの内容。St Patrickはアイルランドにキリスト教を広めた聖人で、わたしとしてはSt Patrick's Dayとか言ってなんでも緑にする件でしか馴染みはない。それも実体験するのはせいぜいアイリッシュ・パブみたいな所に行った時くらい。知られていることが少ないので、多分、この本でもほぼ万全の知識なんだろう。しかしこういう本を読むと、ヨーロッパではキリスト教化=ローマ(ラテン語)化=文明化という定式が徹底的に染みついているのを実感する。それで元々のケルトだのドルイドだのへの郷愁が逆生成されているような。St Patrickの時代自体は、ローマが退却してアングロサクソンが繫栄し始める頃らしいが、イギリスでもキリスト教と文明は体感的にほぼ同義なんだろう。

出版社 : Wooden Books (2007/2/14)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263494

Gordon Strong "Stanton Drew: and Its Ancient Stone Circles" [スタントン・ドリュー:古代の環状列石]

Stanton Drew (Amazon.co.jp)

Stanton Drewというのは新石器時代の遺跡でまあまあの観光地らしく、ネットでいくらでも写真が出てくる。この本も基本的にガイドブックとして読まれるだろう。イギリスの遺跡はやたら巨石構造物が多く、だいたい天文現象との関係がどうこうと言われるが、どの程度信用していいのか不明。伝説や復元想像図も色々ある。

あまり関係ない話だが、日本でも毎年一万件近くの遺跡発掘があり、その数だけ○○教育委員会発行××遺跡発掘報告書(△△年)みたいなのが出る。大半は縄文遺跡だった。というのはわたしは昔仕事で無意味にそんなのばかり見ていた時期があった。たいては柱の跡とか排水溝の跡とか囲炉裏の跡とかそんなのばっかりで、測量データばかりで、どうも盛り上がらない。その点イギリスは巨石そのものでも石の跡でも適当に線を引いて石の配置と暦がどうとか、環状列石は輪になって踊っていた人たちが石化したものだとか、消費者用コンテンツが多い。

Wooden Books (2008/3/20)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1904263739

2024年3月28日木曜日

Gerald Ponting "British Wild Flowers: Their Naming and Folklore" [イギリスの野生の花:名前と伝説]

British Wild Flowers (Amazon.co.jp)

わたしは野草というか道端に生えている草がかなり好きで、特にこれから春の季節は歩いているのが楽しい。ということで雑草に関する図鑑の類は結構持っているが、洋書はほとんど読んでいない。というのも、日本と外国では植生が違うから…。この本でも、だいたい日本でも同じような草があるとは思うが、実際にはイギリスで散歩してみないと分からない。別の話として、ヨーロッパの古書マニアの世界には植物図鑑の伝統があり、この本にはそういう図版も収録されている。マニアならコレクションの端に持っておくべきものだろう。写真ではなくイラストだが、日本でもよくある「身近な雑草図鑑」の類。この本がどうかはさておき、雑草ファンは世界中にいるようだ。

A beautiful book on lovely weeds.

Wooden Books (2022/11/1)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1907155420

2024年3月27日水曜日

Steven Saunders, Matt Tweed "Mind Tricks: Ancient and Modern" [心理術:古代と現代]

Mind Tricks (Amazon.co.jp)

何の本なのか説明が難しいが、今風に言えば「マインド・ハック」みたいなタイトルをつけるべきなんだろう。例えば記憶術とかクレーマー対処法とか人と仲良くなる方法とかリラックスする方法とか、結局、自己啓発本の棚にあるような話は何でもかんでもという感じ。技術自体は古今東西の文明からフロイトがどうとかもあるし、タロットがどうとか単なるおまじないみたいなのもある。この類の本の通例で"In Japan..."とかいう文章に、なかなかの出鱈目が書いてある。中学生向けのお遊びと言ってしまえばそれまでだが、結局、ビジネス書の棚にある自己啓発本も本質は変わらないような気はする。名言カレンダーみたいなもので、誰でも何かしら引っかかるところがあるかもしれない。

A lovely little book.

Walker & Co (2008/10/28)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0802716804