Independence

Website開設についての端書

 ASIAN KUNG-FU GENERATIONというバンドをはじめて、今年で20年になる。数字の上では、これまでの人生の半分をバンドと共に過ごしてきたということだ。そう考えると、なんとも言えない気分だ。

  音楽だけをやり続けられる環境というのは、もちろんとても幸せなことだ。だけど、10代の時に出会った友人たちと20年もスタジオに入り続けて、日本や世界を旅し続けているということが、誇らしさや愛おしさといった感情以外に、何となしの気恥ずかしさを立ち上げるのも事実だ。ある意味では人生を謳歌し、ある意味では人生を棒にふり続けているような気もする。

  けれども、こうして手放しで絶賛したり、素直に感涙したりできないところが、自分のバンドに対する愛情なのだと思う。俺は世界中の誰よりも自分のバンドを嫌悪し、軽蔑し、それを裏返すように世界中の誰よりもASIAN KUNG-FU GENERATIONを愛している。「バンドの一番のファンは誰か」と問われたら、俺以外の誰か、例えば、いまこの文章を読んでくれている君なのかもしれないけれど。

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  長い目で見積もって、俺が書いたり歌ったりできるのも、あと40年くらいだろう。血圧も上がらず、進行癌のような大病を患うこともなく、自動車でどこかに突っ込むでもなく、元気に暮らして行ければという話だけれども、これまでの自堕落な生活を考えれば、もっと早くに精算させられてしまうかもしれない。それはそれで、受け入れる以外にないのだけれど、できるなら、書けるうちは書きたいし、歌えるうちは歌いたいと思う。でも、いつかマイクもペンも置いて、どこかへ去らなくてはならない。もちろん、たったひとりで。

  というわけで、自費で個人用のウェブサイトを開設することにした。

  寄りかかったり、寄りかかられたり、時には背中に乗せてもらったり、あるいは尻を蹴り上げたり、自分の一部と呼ぶにはバンドとの境目が曖昧になっていたところもあると思う。一方で、自分の手から離れて行く感覚が続いていた。メジャーレーベルと契約してから、関わる人が増えた。そうした人たちの愛情もバンドを形作ったエネルギーの一部だと俺は思う。そして、そうした色々な人たちのエネルギーでバンドはまだ転がり続けている。

  ここ数年、俺は「independence=自立」という言葉を意識するようになった。誰にも寄りかかることなく、執着することなく、たったひとりの場所から書き、鳴らすこと。表現において、そんなことは自明なのだけれど、アウトプット装置としてのバンドや、そこに集う人たちのエネルギーに背中を押されすぎてしまうこともある。残りの40年は、たったひとりの場所に腰を据えて、いろいろな作品(もちろんASIAN KUNG-FU GENERATIONの楽曲も)を作りたいと思う。

Gotch