ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

カヴァレリアとパリアッチ@ティアラ江東

240421

ローラ役の田仲由佳さんからご案内をいただき、行ってきました。期待に違わず、というか期待以上に素晴らしい舞台でした。愚亭も結構あちこちのアマチュア合唱団のこうしたオペラ公演に足を運びますが、荒川、杉並、立川といった市民レベルの公演としては、江東区もすこぶるレベルが高いと思いました。

長年、このシリーズは土師雅人さんが指導してらして、今回もそうした努力が見事に結実していました。オケも優秀ですが、合唱もよく頑張られていました。男声も充実しているし、バランスよく響いていて、小気味よかったです。混声合唱をやっている身からすれば、実に羨ましく思いました。

2日公演でしたが、土師さんはトゥリッドゥもカニオも日は違いますが、両方の主役を演じられて、失礼ながらもうそれほどお若くはないので、さぞ心身ともに消耗されたこととお察ししています。

さて、ローラの田仲さん、コロナもあったりで、久しぶりに聞かせてもらいましたが、相変わらず歌もですが、長身を生かした演技もお上手で、引き込まれました。アルフィオの井上雅人さん、以前は結構何度もお聞きしていましたがこのところ、聴く機会がなく、大変懐かしく拝見していました。安定感抜群のバリトンです。

それと、舞台が限られた予算の中で大変スタイリッシュに作られていて、驚きました。上手には花々をまとった住居が、下手には小ぶりながら教会が描かれています。その前にはこれも小さな洗礼用の噴水、中央にはマリア蔵がすこし高い位置に置かれていて、デザインされた方々のセンスが感じられました。

ついでに、2階のバルコニー席でのトランペット演奏や、合唱小グループの演唱など、工夫されていました。低予算でも衣装には随分気を使われていたようでした。やはり、どちらの部隊も雰囲気を出すにはそれなりの衣装は欠かせません。

1時間ずつかと勘違いしていましたが、正味2時間半でした。終演後、出演者がロビーに出てくださり、ファンたちと交換ができたのはうれしいことでした。

カヴァレリアのカーテンコール

こちらは道化師 センターはMo.諸遊耕史

 

「TOKYO MER~走る緊急救命室~」@ AmazonPrime

240420テレビで散々話題になったドラマの劇場版です。

超話題作につき、下手な解説不要かと。それの劇場版を次の作品と提示され、そのままずるずると見ることに。なかなかよくできています。医療現場のことをかなり丁寧に研究してドラマに仕立てています。小気味の良い演技で、好感しました。ま、実際にはこうしたドラマのように上首尾には行かないはずと思いつつ、どんどんハマりますね。

横浜のランドマークタワーの上層階で発生した火災とそれに巻き込まれた人々の救出に決死の覚悟で乗り出すチームの悪戦苦闘ぶりを見事に描き切っています。高層ビルでの上階での火災となると、我々世代では、「タワーリング・インフェルノ」(米 1974年)をついイメージしてしまいます。これはサンフランシスコの地上550mという途方もない超高層ビルのてっぺんで、落成式での出火を扱ってました。

「ロンドン警視庁 コリン・サットンの事件簿」@AmazonPrime

240420 Manhunt  英 2019 シーズン1、全3話 各45m

手頃な長さで見やすい作品です。ただ、出演者全員がかなり地味で、感情移入しにくいタイプばかりというところが少々残念です。主役の↑の方も身なりも風采もぱっとしません。ま、でも男性の場合はよくあることで、その分、味わいがあればむしろその方が。刑事コロンボがそうでしたね。

ところが女優陣も一向にぱっとしないので、どうしても画面が地味過ぎてしまいます。そこはイマイチ気持ちが乗り切れませんでした。ま、でもストーリー展開はかなりわかりやすく仕上がっていたと思います。いわゆるシリアルキラー若い女性を狙い、ハンマーで頭部を一撃するという残忍な殺人を犯す犯人を追い詰め、ついに解決に導くという、実際に起きた事件を扱っています。

ついでながら、ロンドン警視庁は別名スコットランドヤードと昔から称しています。その昔建物があった場所の裏手の通りがその名前だったことから来ています。パリ市警がケー・ドルセイと呼ばれたり、東京警視庁が桜田門と呼ばれたりするのとやや共通します。ちなみに、現在はNew Scotland Yardと称されます。

「マタイ受難曲」@みなとみらい大ホール

240419

ちょうど1年前、愚亭も第一生命ホールの舞台に立っていたのですが、今回は客席で鑑賞しました。やはり最後列で合唱で歌うのと客席で聴くのとは、かくも違うものと改めてその感を深くした次第です。

声は前にしか飛ばないという普遍の理屈からすれば、これは自明なのですが、もう一つ、この1年でオケも合唱も(団員は入れ替わってはいますが)それなりの進化を遂げているという事実も否めません。

更にもう一つ、今回はサプライズでMo.Heilmannの幼少期からダチ(?)である天下のバス歌手、ルネ・パーペが急遽出演を決めたことです。そのせいで、本来ソロを歌う予定で懸命に練習に励んでいた一部男性団員はほんとに気の毒ではありましたが、聴衆としては本当に嬉しいサプライズ出演でした。

それと1年前には歌っていたのに、ほとんどバスの旋律も歌詞も忘れていることに我ながら驚き、かつ呆れました。全体に、男女比が8:2ぐらいで、男声がほとんど聞こえないこともその一因かもです。いいわけです。

ルネ・パーペは別にして、ソリスト陣も一部入れ替わっていました。プロのソリストとしてはなんと言ってもアルト代表、我らが星 由佳子さん、そしてバスの”ビッグ”こと杉浦隆大さん!!星 由佳子さんは下手側、杉浦隆大さんは上手側の袖近くの椅子でスタンバイ。杉浦さんは隣に天下のパーぺが座っていますから、やはり気になるのか落ち着きがないように見えました。

そのパーペですが、上手の定位置からほとんど動かず、かろうじて、ハイルマンとの二重唱(これも驚きでした。マエストロ自らが二重唱!)や、その後の5重唱(?)の時だけ、中央まで少し移動したぐらいで、目立たないように配慮していたみたいです。

そして、終演ですが、ハイルマン、なかなか動きません。どうやら感涙に咽んでいた様子でした。しばらくしてやっとゆっくりこちらに向き直り、大喝采、スタンディング・オヴェーション!

 

「ラ・ボエーム」@杉並勤労福祉会館

240418

日頃応援しているテノール青栁素晴さんが出演するとあって、初めて杉並の勤労福祉会館へ。

この超有名オペラは数えられないほど見に行っていますが、今回のは、Tokyo Ope'lataさん主催の、まあ、いわゆる手作り感たっぷりオペラです。この主催者ではファストオペラという括りのようです。

男声陣は概ねベテラン、女声陣は若手という組み合わせ。ミミもムゼッタも、これからの精進が待たれる若手で、そこを男性の、特にロドルフォ、マルチェッロがうまくフォロー、補完しての上演でした。技術的にはもちろん女声陣に物足りなさは感じるのですが、こういう組み合わせで、すこしでもオペラの裾野を広げようという主催者の心意気は感じました。

舞台はもちろん簡素そのもの、そこは一向に気にしないというか、想定内。ただ、もう少し金はかけずとも工夫があってもいいかな、と思いました。例えば中央に置かれたストーブと思しき小道具、下部に黒い布が巻いてあるのですが、これが途中で上手方向から風の流れがあるのか、ひらひらとゆれてかなり目につきました。

加えて、背景は静止画像を投影して1幕、4幕は屋根裏の雰囲気を出していて、悪くないです。ところが、2幕、クリスマスのカフェ・モミュスの場面で、パリらしき街角カフェの景色が背景に映されるのはいいとして、来店客が真夏の格好なんですね。ここら辺はもう少し気を使ってもよかったし、もったいないです。

ピアノ伴奏の服部容子さんが事実上、演出もされていたように感じました。有名アリアの後では、さりげなく聴衆に拍手を促したり、歌手にはハケるキューを手早く出したりと、ピアノだけでなく、そうした所作を含め見事な手腕でした。

原語上演ですが、字幕を出す余裕がないので、事前にナレーター須永尚子さんの解説が入ります。1幕で主宰者の大久保 眞さん演じる大家が入ってきた場面だけは日本語でのやりとりで、笑わせてもらいました。

客の入りは6割程度でしたかね、平日の昼ですから、無理もないですが。夜公演はもう少し多かったと聞きました。