破壊屋ブログ

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魔法遣いが何故かYOSAKOIソーランを踊る映画

実写化における原作破壊が話題になり、YOSAKOIソーランを流行らせようとしている政治家の長谷川岳の横暴さも話題になっている2024年。この2つが合わさったような映画があったのでご紹介。2008年の『魔法遣いに大切なこと』です。



この映画は、魔法が現実に存在するため魔法遣いたちが公務員として働いている世界を描いています。主人公とヒロインが恋するきっかけが

  • 原作だと下北沢のストリートミュージシャンを見る
  • アニメだと江の島に行く

なのですが、実写映画ではこれが何故かYOSAKOIソーランに変更。世界観が完全にぶっ壊れる破壊的なシーンです。しかも伏線とか一切貼ってない。


↑デートの場所が何故かYOSAKOIソーラン



↑いきなりYOSAKOIソーランを踊りだすヒロイン



↑みんなでYOSAKOIソーランを踊る

最近、スターウォーズの放送中にビールのCMが流れる動画が話題になっていたけど、あんな感じですよ。

映画レビューサイトで『魔法遣いに大切なこと』を調べると「このシーン必要なのか?」という指摘が多数です。実際このシーンは観るのも辛いレベルです。残念ながらどのようなスポンサーの力でこうなったのかは分かりませんが、ご存知の関係者の方がいたらもう暴露しちゃっても良いんじゃないでしょうか?


映画の中でCMを流すのは「プロダクト・プレイスメント」と呼ばれていてどの国もやっています。中国企業がハリウッドに進出したときは、その雑なプロダクト・プレイスメントが話題になりました。トランスフォーマーとか映画の上映時間を浪費するプロダクト・プレイスメントが多くてうんざりしたものです。
ゼロ年代の日本映画は、スポンサーの意向(特に地方自治体)が思う存分に反映された作品が多かったです*1

*1:地方自治体側から見れば変な映画に投資させられた

ドラゴンボールを引用した洋楽ロック



↓この記事がとても面白かったです。
amass.jp

でも上記の記事はラップ限定なんですね。『ドラゴンボール』を引用するロックといえば、フランスのライズ・オブ・ザ・ノーススター(Rise Of The Northstar)がいます。ライズ・オブ・ザ・ノーススターは

  • バンド名は『北斗の拳』
  • バンドのファッションは『ろくでなしBLUES』
  • 歌詞の引用元は週刊少年ジャンプの漫画全般(たまにマガジンも)

という、全日本人が聴くべきロックです。その音楽性ですが彼らの言葉を借りれば「少年レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン」です。この「少年」は日本語とは意味が違っていて「悪と戦う者」みたいな意味が込められています。


今回は『ドラゴンボール』に限定して取り上げますが、実際は色んな漫画がネタになっているので是非聞いてみてください。英語とフランス語と日本語のチャンポン歌詞ですが。


↑レコード会社の悪口を言いまくる曲。



↑これは超親日曲『Phoenix』。東日本大震災からの復興を願う曲で売上は日本に寄付されました。炎から蘇る不死鳥のように復興して欲しいという願いから「ファイア サイヤ・スタイル」という単語になっています。



↑彼らは自分たちをサイヤ人に例えているので「サイヤ」という単語は何度も出てきます。


PVが無い曲だと、ラオウとバーダック(悟空の父)の敗北が次世代に繋がる様子を歌った『The New Path』などがあります。

ロックとベジータ

最初に取り上げた引用記事では、ラッパーのRZAの「悟空=アメリカ黒人の物語」という解釈が紹介されています。
それに対してライズ・オブ・ザ・ノーススターはベジータのほうに強いシンパシーを感じています。フランス版のベジータの声優が声を入れている『ベジータの復讐』という曲もあります。



プライドが高い王子ベジータは敗北を経験するとさらに強くなる。という点がロック的に人気なのでしょう。

最後に

今回引用したPVは↓で見れます。全部日本語訳がついていて最高です。
www.youtube.com


ライズ・オブ・ザ・ノーススターは2024年11月に日本ツアーをします!
note.com

https://assets.st-note.com/img/1707413175548-o8cgHreYH9.jpg?width=2000&height=2000&fit=bounds&quality=85

アカデミー賞の視覚効果賞の悲劇

『ゴジラ -1.0』が受賞したアカデミー賞の視覚効果賞だけど、過去に悲劇的なエピソードがあるので解説します。

ライフ・オブ・パイの悲劇

『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』が視覚効果賞を受賞したんだけど、視覚効果(以降はVFXと表記)を担当した名門会社リズム&ヒューズ・スタジオは映画の公開後の2013年2月に倒産。アカデミー賞を受賞する11日前に会社が倒産してしまったのだ。とんでもない悲劇である。そして大きな社会問題となった。
ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 (字幕版)

撮影のやり直し

倒産の原因として、ライフ・オブ・パイのVFXのリテイクが延々と続いたということがある。CINEMOREがこの問題を詳しく取り上げているので画像で引用する。
cinemore.jp



「R&H」は倒産したリズム&ヒューズのこと。

ハリウッドは撮影の大掛かりなリテイクがたくさんある。昔だと主演をクビにして撮り直した『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や、ここ数年だと監督をクビにして7割を撮り直した『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』なんか有名だろう。予算とスケジュールがカツカツの日本映画では俳優が不祥事起こさない限りリテイクはほぼ無い。リテイクするくらいならお蔵入りさせる。でも日本は顧客絶対主義が強いので仕様変更の皺寄せ話は他人事ではない。

社会問題化(ただし10年前)

ハリウッドで視覚効果のリテイクは気軽に行われるという悪習がある。リテイクの皺寄せは現場スタッフに来てしまう。しかも受注が入札方式で仕様変更時の追加予算が請求できない。そのため現場が疲弊し、VFXの会社が次々に倒産することが社会問題になったのが10年前だ*1。その頃に潰れた会社には『タイタニック』を作り上げてアカデミー視覚効果賞を受賞したデジタル・ドメイン社もある*2

この社会問題は改善されずに今は益々悪化している。アメコミ映画ブームのせいだ。アメコミ映画が大流行しているので、VFXの負担が激増。さらにアメコミ映画は撮り直しが多いのもこの問題に拍車をかけた。記事多数なので興味ある方は調べてほしい。正義を体現するアメコミ映画が全然正義じゃない現状が分かって面白い。アメコミ映画は良くも悪くも資本主義の象徴なので問題点もたくさんあるのだ。

監督=VFXの素人

ハリウッドの素晴らしい慣習として「才能あるなら新人だろうが外国人だろうが監督として起用する」というのがある。アメコミ映画だと『エターナルズ』のクロエ・ジャオなんかが有名だろう。でもVFX問題についてはこれは悪しき要因となる。

  1. VFXのことを全然知らない人が監督になる
  2. 監督はVFXの苦労を知らずにリテイクさせ続ける

これが起きやすい。『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』の場合はアン・リー監督がリテイクを連発したらしい。私はアン・リー好きなので、これ知った時はショックだった。

この問題を取り上げたドキュメンタリー映画をギズモードが翻訳解説してくれているので画像で引用する。
www.gizmodo.jp


アカデミー賞の受賞式の悲劇

『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』がアカデミー賞を受賞した時の話だ。

  • 受賞者が資金繰りの苦境を訴えたら、ジョーズのテーマが流れて邪魔された
  • 監督のアン・リーは映画の大半を作った視覚効果に何の謝辞も述べなかった

ということが問題になった。CINEMOREもギズモードもこの点を取り上げているので、画像引用する。


資金繰りの訴え中にジョーズのテーマが流れるシーン↓。
youtu.be

ゴジラ -1.0の希望

映画マニアたちが『ゴジラ -1.0』の視覚効果賞の受賞をベタ褒めしているけど、すごく良くわかる。映画マニアたちはアメコミ映画とVFXの不健全な関係に心を痛めていた。監督の山崎貴がVFX会社「白組」の所属でさらに元々はVFXの監督なので、「監督=VFXの素人」という図式が崩れてくれれば今後のハリウッドで良いことになるかもしれない?という希望があるのだ*3

*1:倒産が相次いだ最大の要因はグローバル化による受注金額の低下

*2:破産申請中に売却したので正確には倒産ではない

*3:以前から何度も書いているけど日本映画は低予算なので日本映画には皺寄せトラブルはたくさんあります

TARAKOと多美子


機動警察パトレイバーの熱心なアニメファンなら、進士多美子の声優がTARAKOというのは有名な話だろう。残念ながら途中交代しており劇パト2などでは進士多美子は安達忍が演じている。劇パト2(機動警察パトレイバー 2 the Movie)で進士多美子が夫を引き留めるシーンは最高の名シーンなので、このツイート↓へのレスポンスには劇パト2ネタが多いけど、アレは安達忍の名演である。



進士多美子はマニアックな存在で登場回数も少なすぎるキャラだが、1つだけTARAKO版の進士多美子の出番が多いエピソードがある。それがテレビアニメ版の第25話『春の嵐』だ。

パトレイバーの知識は一切不要のエピソードなので、配信がある人はとりあえず見て欲しい。TARAKOのセリフ回しが最高だ。

なんで知識が一切不要なのかというと、進士幹泰というサブキャラが転職に悩むだけの話なのだ。放送当時がバブル景気でヘッドハンティングが流行っていたため、ヘッドハンティングを題材にしている*1。SFアニメとは思えないほど地味な展開だが、TARAKO演じる進士多美子の演技が超楽しいので是非観て欲しい。


以下ネタバレ



劇中では進士幹泰は超高待遇の転職を蹴って警察官を続ける。放送当時はすごく勿体ないような気がしたが、現実ではその後バブル崩壊。劇パト2では進士幹泰は本庁の課長という大出世を果たすので彼の選択は正しかったのだ。ただノンキャリアで三十代が本庁の課長(警視正クラス)になるのは、ちょっとありえないです。

*1:テレビアニメ版パトレイバーは他にもヘッドハンティングを題材にしたエピソードがある

邦アニベストテン2023の結果

hakaiya.com

邦アニベストテン2023の結果を発表しました。ブログのコメント欄に投票して頂いた皆様、ありがとうございました!

楽なところと大変だったところ

皆さんの投票マナーが良すぎて集計が楽な企画ですが、今年は人気作品のタイトルがシンプルなので例年よりもさらに楽でした。
2023年は有名監督たちの新作が無いので穏やかなランキングになる。と思っていたのですが、冬になって邦画アニメの怒涛の公開ラッシュがあって劇場通いが大変でした。

結局2023年で一番面白い邦画アニメは?

2023年で一番面白い邦画アニメは?という問題ですが実は難問です。各映画ベストで全くのバラバラだからです。そもそも私が集計した企画ですら

邦アニベストテン2023

  1. 窓ぎわのトットちゃん
  2. 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎
  3. BLUE GIANT

2023年の映画ベスト100

  1. BLUE GIANT
  2. 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎
  3. 窓ぎわのトットちゃん

と順番が逆になっています(4位以下はもっとバラバラ)。

2023年で一番評価が極端なのは『君たちはどう生きるか』です。私が信頼しているキネマ旬報では映画評論家と映画ファン投票も両方とも『君たちはどう生きるか』が邦画アニメの一位です。しかし有効投票数が7万5千票の東京アニメアワードフェスティバル2024のアニメファン賞では、『君たちはどう生きるか』は何と100票未満で30位にすら入っていません。

邦アニベストテンの目的の一つに、アニメ映画は世間の評価の良し悪しが分かりにくいので可視化する。というのがあります。映画評論家が選ぶと作家性が極端に評価されるし。東京アニメアワードフェスティバルのアニメファン賞みたいに万単位で組織票が発生している賞も私は大好きですが「評価」とはちょっと違うと思います。今年の邦アニベストテンは比較的、皆さんの納得感を反映したのではないかと思ってます。

映画『Gメン』のキネ旬読者ベスト1位は組織票なのか?

https://64.media.tumblr.com/98580f9d27c079d87a90dde82aa8eff3/357e49d704ba36b0-46/s1280x1920/d8c427f66496466e3084d8afc6f8dce0869e3ee1.jpg

今年もまた組織票ネタです。
まず大前提として、私はファンたちの自発的な組織票を好意的に捉えている人間です。これは組織票を批判するエントリではありません。


映画『Gメン』の快進撃

「キネ旬読者ベスト」で1位が映画『Gメン』になりました。ついでに言うと読者選出の監督賞も受賞、さらに日刊スポーツ映画大賞の「ファンが選ぶ最高作品賞」も『Gメン』が受賞しました。『Gメン』は元キンプリ(Number_i)の岸優太が主演する映画です。

キネ旬読者ベストとは

映画雑誌の老舗である「キネマ旬報」が実施している映画賞があって、これは世界最古の映画賞です。キネマ旬報ベストでは読者からも投票を募って「キネ旬読者ベスト」として発表しています。日刊スポーツ映画大賞の「ファンが選ぶ最高作品賞」も同じく一般投票です。

不審点

キネ旬の読者は相当な映画ファンなので「キネ旬読者ベスト」は大衆性と芸術性をちょうど良いバランスで持っている素晴らしい映画賞です(本家のキネ旬ベストだと大衆性が無い)。ただ人気男性タレントが出る映画が不自然に得票を集める現象は以前から指摘され続けていました。これは「キネ旬読者ベスト」に限らず、一般投票を導入しているあらゆる映画賞で発生しています。

この件については、映画ジャーナリストの斉藤博昭氏が詳しく解説しています。
この記事を要約すると「映画評論家が一票も入れていない映画が、一般投票の映画賞では一位になっている」ということを指摘しています。
news.yahoo.co.jp

この分析記事は完璧だと思いますが、もし
「映画評論家と映画ファンが選ぶ映画は違う」
と反論されたら再反論は難しい。

比較

ということで今回は映画ファンが選んだランキングと『Gメン』を比較してみます。比較対象に使うのはX(Twitter)上の投票を集計した有効投票数4457人の映画ベスト100(以降は「Web投票」と表記)のデータです。また表示されている順位は全て邦画限定です。

↓これが比較結果です。

映画のタイトル 怪物 ゴジラ-1.0 福田村事件 Gメン
Web投票の順位 1位 2位 12位 101位
Web投票の投票人数 1173人 826人 359人 18人
キネ旬読者ベストの順位 4位 3位 2位 1位

Web投票だと18人しか投票していない『Gメン』が、1000人以上が投票した『ゴジラ-1.0』に逆転勝ちしています。そもそもWeb投票で『Gメン』より順位が高い邦画が100本もあるのに、それらを全てゴボウ抜きして「キネ旬読者ベスト」を受賞したことになります。

検証データ

Web投票の日本映画TOP75を載せます。

  • 1位:ゴジラ-1.0
  • 2位:怪物
  • 3位:BLUE GIANT
  • 4位:鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎
  • 5位:グリッドマン ユニバース
  • 6位:PERFECT DAYS
  • 7位:窓ぎわのトットちゃん
  • 8位:君たちはどう生きるか
  • 9位:シン・仮面ライダー
  • 10位:首
  • 11位:ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー
  • 12位:福田村事件
  • 13位:リバー、流れないでよ
  • 14位:市子
  • 15位:正欲
  • 16位:名探偵コナン 黒鉄の魚影
  • 17位:少女は卒業しない
  • 18位:エゴイスト
  • 19位:愛にイナズマ
  • 20位:キリエのうた
  • 21位:THE FIRST SLAM DUNK
  • 22位:映画 プリキュアオールスターズF
  • 23位:アリスとテレスのまぼろし工場
  • 24位:SAND LAND
  • 25位:ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい
  • 26位:Winny
  • 27位:最後まで行く
  • 28位:月
  • 29位:アンダーカレント
  • 30位:北極百貨店のコンシェルジュさん
  • 31位:ほつれる
  • 32位:戦慄怪奇ワールド コワすぎ!
  • 33位:ガールズ & パンツァー 最終章 第4話
  • 34位:BAD LANDS バッド・ランズ
  • 35位:岸辺露伴ルーヴルへ行く
  • 36位:世界の終わりから
  • 37位:ミンナのウタ
  • 38位:金の国 水の国
  • 39位:ケイコ 目を澄ませて
  • 40位:劇場版 Psycho-Pass サイコパス Providence
  • 41位:ロストケア
  • 42位:ちひろさん
  • 43位:仕掛人・藤枝梅安
  • 44位:駒田蒸留所へようこそ
  • 45位:翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~
  • 46位:ミステリと言う勿れ
  • 47位:春に散る
  • 48位:キングダム 運命の炎
  • 49位:銀平町シネマブルース
  • 50位:劇場版ポールプリンセス!!
  • 51位:屋根裏のラジャー
  • 52位:君は放課後インソムニア
  • 53位:波紋
  • 54位:ほかげ
  • 55位:かがみの孤城
  • 56位:わたしの見ている世界が全て
  • 57位:658km、陽子の旅
  • 58位:わたしの幸せな結婚
  • 59位:アイカツ! 10th Story ~未来へのStarway~
  • 60位:劇場版TOKYO MER ~走る緊急救命室~
  • 61位:映画すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ
  • 62位:そばかす
  • 63位:まなみ100%
  • 64位:リゾートバイト
  • 65位:映画ドラえもん のび太と空の理想郷
  • 66位:劇場版 SPY×FAMILY CODE: White
  • 67位:せかいのおきく
  • 68位:遠いところ
  • 69位:1秒先の彼
  • 70位:春画先生
  • 71位:白鍵と黒鍵の間に
  • 72位:先生!口裂け女です!
  • 73位:Single8
  • 74位:スクロール
  • 75位:推しが武道館いってくれたら死ぬ
75位以下の順位は検算をちゃんとやってないので載せませんが『#マンホール』『東リベ』『アバレンジャー』『レジェンド&バタフライ』などの話題作があります。『Gメン』はそれらよりも低い順位で2023年の日本映画ベスト100にすら入っていません

ここでハッキリ言いますが、『Gメン』が各映画賞で一位を取ったのは明らかに異変です。正当な映画の評価とは大きくかけ離れています。

「組織票」という言葉

今まで何度もあったけど「組織票」を使って映画賞を狙っている人たちは「組織票」という言葉への拒否感が強いです。今年だと『Gメン』ファンたちが「これは組織票ではない」と訴えています。実際、投票を広く呼びかけたわけでも無いので組織票扱いするのは酷かもしれない(本来の組織票はコッソリやるものだけど)。便宜上、私は今後も「組織票」という言葉を使うけど、これはもう組織票というよりも推し活の一環だと思ってます。
今まで何度も書いてきたけど、このような組織票には意味があると思います。『Gメン』で言えば、日本映画で絶大な力を発揮していたジャニーズが関わった映画としては最終作と言っても良い作品です(他にもあるけど)。嵐の後継者と呼ばれながらも空中分解してしまったキンプリメンバー岸の最初の主演作でもあります(『Gメン』は岸のジャニーズ退所一ヶ月前に公開)。この作品が1位を取るのはファン投票としては正しい形だと思っています。
映画の内容の評価とは違う形で映画賞の受賞作が決まることについては、これはもう主催者側の判断に任せるべきです。

映画『Gメン』について

日本映画界に大量に現れる(アメコミ映画並に多い)ことになったイケメン俳優たちの不良ケンカ映画です。私は小沢としおの原作漫画『Gメン』が大好きですが、主演の岸は小沢としお漫画の主人公たち(うるさい、ケンカ強い、頭悪い、友情を大切にするけど軽い、女好きだけどモテない、スケベだけど純情)に驚くほど似ています。
ギャグとアクションの連発な上に他の不良映画よりも「軽さ」を重視していて楽しいです。日本映画はギャグが少ないので『Gメン』のギャグの多さは嬉しいです。原作再現率も高いですが女性観客が感情移入しやすいように、女性視点を多めにしたのは良い原作改変です。
その一方で日本映画の悪習と言っても良い、ただひたすら感情を剥き出しにして大声で叫ぶシーンが何度も繰り返されます。これを「勢いがある」と思うか「ウザい」と思うかは人によりますが、俳優ファン以外にはちょっと厳しいかもしれません。

『Gメン』よりも凄い組織票

追伸。2023年最大級の組織票は『Gメン』ではありません。『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』です。東京アニメアワードフェスティバルのアニメファン賞で30902票も集めて一位になりました(注:TAAFは今年から多重投票を禁止しています)。Web投票だと有効投票数4457人中たった3人しか投票してません。つまり三万人差です。『Gメン』の千人差が可愛く見えます。