破壊屋ブログ

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メタリカの真実の瞬間ベスト5

メタリカ 真実の瞬間 [レンタル落ち]

「メタリカ何?それ、ヘビメタ?興味ないわ」
という人向けのエントリなので、ヘヴィメタ好きはツッコミ入れないでください。


メタリカの『セイント・アンガー』というアルバムがあります。最近、雑誌『ヘドバン』が『セイント・アンガー』の特集号を出したくらい特異なアルバムです。「特異」であって「傑作」というわけではありません(私は超好きなアルバムで、何度も聴き返していますが)。

セイント・アンガー

このアルバムは何が凄いって↓これです。

  1. レコーディングに3年もかかった
  2. 3年間もかかった理由は、メンバーがずっと揉めていたらから
  3. その揉め事が映像として残っている

この揉め事をまとめたドキュメンタリー映画が『メタリカ 真実の瞬間』でNetflixで配信中です。世界的バンドの苦悩が見られる傑作ドキュメンタリーですが、最初に書いた通り
「メタリカ何?それ、ヘビメタ?興味ないわ」
という人向けにオススメのシーンのベスト5とその再生時間を書いておきます。Netflix見れる人はYOUTUBE感覚で見てください。

1位:そんなメタリカ見たくない

再生時間:1:18:50。
メタリカが収入になる仕事をしないのでメタリカのマネジメント会社がメタリカにちょっと怪しげな懸賞金のCMをあてがう。
「懸賞金が欲しいかー!」
といったセリフを収録するメタリカのメンバー達。それを見たメタリカのプロデューサーが
「そんなお前らを見たくなかった。U2のメンバーのボノやエッジなら、こんな仕事は引き受けない」
と説教する。
アメリカのミュージシャンってファンが見たくないような企業CMをやってファンが悲鳴を上げる。というのが他の国より多い気がします。

2位:遅刻した人が早退する

再生時間:1:07:20。
メタリカのボーカルは誰よりも遅くスタジオに入り誰よりも早くスタジオを早退する*1。残ったメンバーが頑張って作業するのだが、早退するボーカルは
「俺がいない間にアルバム製作を進めちゃダメだろー」
とメンバーやプロデューサーに説教。この理不尽さにドラマーがマジギレする。この映画で最大のブチ切れシーンです。
当時の芸能ニュースは
「メタリカからドラマー脱退?」
で盛り上がってたのですが、これが真相です。ボーカルが悪いよ。

3位:若者のメタリカ離れ

再生時間:1:28:35。
懐かしのナップスター訴訟です。知らない人に説明すると音楽ファイル共有ソフトの「ナップスター」というのがゼロ年代前半に大流行したのですが、メタリカがナップスター社を訴えて大騒ぎになりました。この映画ではメタリカファンが失望してメタリカのCDを叩き割ってます。


4位:ギャラはダチョウ倶楽部方式

再生時間:1:57:10
ベースをクビにしたため迷走していたメタリカだけど、新ベーシストにロバート・トゥルージロ(日本では鶴次郎のあだ名で親しまれている)が決定。鶴次郎にとりあえず100万ドルを支払う。いきなり大金持ちになった鶴次郎はビックリして「うぁがふぅー」と意味不明のため息漏らす。

再生時間:2:02:50。
メタリカの権利を鶴次郎にどれほど持たせるかの話し合い。既存メンバーの3人が32%、新メンバーの鶴次郎が残りの5%という妥当な契約で決まりかけるが既存メンバーの3人が
「やっぱり割り勘にしようよ」
ということで25%づつになる。俺はこのシーンを観た時「お前らダチョウ倶楽部か」と思った*2

この映画はクビになった前ベーシストの悲劇と、新ベーシストのラッキーすぎるサクセスストーリーの対比がエグいです。

5位:仲直りしてもケンカ

再生時間:2:04:40。
あらゆる苦難を乗り越えて完成したアルバム。メンバーも仲直りした。しかし最後の最後にアルバムのタイトルを

  • ドラマーが提案した「フランティック(半狂乱)」
  • ボーカルが提案した「セイント・アンガー(聖なる怒り)」

にするかで揉める。レコード会社やマネージャーが
「製作トラブルがあったアルバムで半狂乱はマズいだろー」
と「フランティック」案をボコボコにけなす。ドラマー可哀想だけど、この映画本編はドラマーの金持ちセレブ生活も描いています。
ちなみにこのシーンが終わったあとにサン・クエンティン州立刑務所ライブになります。サン・クエンティン州立刑務所はジョニー・キャッシュやB・Bキングもライブ演奏して伝説となった刑務所です。



公開当時はヘヴィメタファンの間ではヘヴィメタルのバンドがセラピストに頼る情けなさや、デイヴ・ムステイン(メタリカがクビにしたギタリスト)との対話シーン、大物ベーシストが集まるオーディションシーンなどが話題になりました。通しで観る人はこちらも注目してください。

*1:アル中のリハビリのため

*2:注:ダチョウ倶楽部のギャラが割り勘だったのは昔の話です

魔法遣いが何故かYOSAKOIソーランを踊る映画

実写化における原作破壊が話題になり、YOSAKOIソーランを流行らせようとしている政治家の長谷川岳の横暴さも話題になっている2024年。この2つが合わさったような映画があったのでご紹介。2008年の『魔法遣いに大切なこと』です。



この映画は、魔法が現実に存在するため魔法遣いたちが公務員として働いている世界を描いています。主人公とヒロインが恋するきっかけが

  • 原作だと下北沢のストリートミュージシャンを見る
  • アニメだと江の島に行く

なのですが、実写映画ではこれが何故かYOSAKOIソーランに変更。世界観が完全にぶっ壊れる破壊的なシーンです。しかも伏線とか一切貼ってない。


↑デートの場所が何故かYOSAKOIソーラン



↑いきなりYOSAKOIソーランを踊りだすヒロイン



↑みんなでYOSAKOIソーランを踊る

最近、スターウォーズの放送中にビールのCMが流れる動画が話題になっていたけど、あんな感じですよ。

映画レビューサイトで『魔法遣いに大切なこと』を調べると「このシーン必要なのか?」という指摘が多数です。実際このシーンは観るのも辛いレベルです。残念ながらどのようなスポンサーの力でこうなったのかは分かりませんが、ご存知の関係者の方がいたらもう暴露しちゃっても良いんじゃないでしょうか?


映画の中でCMを流すのは「プロダクト・プレイスメント」と呼ばれていてどの国もやっています。中国企業がハリウッドに進出したときは、その雑なプロダクト・プレイスメントが話題になりました。トランスフォーマーとか映画の上映時間を浪費するプロダクト・プレイスメントが多くてうんざりしたものです。
ゼロ年代の日本映画は、スポンサーの意向(特に地方自治体)が思う存分に反映された作品が多かったです*1

*1:地方自治体側から見れば変な映画に投資させられた

ドラゴンボールを引用した洋楽ロック



↓この記事がとても面白かったです。
amass.jp

でも上記の記事はラップ限定なんですね。『ドラゴンボール』を引用するロックといえば、フランスのライズ・オブ・ザ・ノーススター(Rise Of The Northstar)がいます。ライズ・オブ・ザ・ノーススターは

  • バンド名は『北斗の拳』
  • バンドのファッションは『ろくでなしBLUES』
  • 歌詞の引用元は週刊少年ジャンプの漫画全般(たまにマガジンも)

という、全日本人が聴くべきロックです。その音楽性ですが彼らの言葉を借りれば「少年レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン」です。この「少年」は日本語とは意味が違っていて「悪と戦う者」みたいな意味が込められています。


今回は『ドラゴンボール』に限定して取り上げますが、実際は色んな漫画がネタになっているので是非聞いてみてください。英語とフランス語と日本語のチャンポン歌詞ですが。


↑レコード会社の悪口を言いまくる曲。



↑これは超親日曲『Phoenix』。東日本大震災からの復興を願う曲で売上は日本に寄付されました。炎から蘇る不死鳥のように復興して欲しいという願いから「ファイア サイヤ・スタイル」という単語になっています。



↑彼らは自分たちをサイヤ人に例えているので「サイヤ」という単語は何度も出てきます。


PVが無い曲だと、ラオウとバーダック(悟空の父)の敗北が次世代に繋がる様子を歌った『The New Path』などがあります。

ロックとベジータ

最初に取り上げた引用記事では、ラッパーのRZAの「悟空=アメリカ黒人の物語」という解釈が紹介されています。
それに対してライズ・オブ・ザ・ノーススターはベジータのほうに強いシンパシーを感じています。フランス版のベジータの声優が声を入れている『ベジータの復讐』という曲もあります。



プライドが高い王子ベジータは敗北を経験するとさらに強くなる。という点がロック的に人気なのでしょう。

最後に

今回引用したPVは↓で見れます。全部日本語訳がついていて最高です。
www.youtube.com


ライズ・オブ・ザ・ノーススターは2024年11月に日本ツアーをします!
note.com

https://assets.st-note.com/img/1707413175548-o8cgHreYH9.jpg?width=2000&height=2000&fit=bounds&quality=85

アカデミー賞の視覚効果賞の悲劇

『ゴジラ -1.0』が受賞したアカデミー賞の視覚効果賞だけど、過去に悲劇的なエピソードがあるので解説します。

ライフ・オブ・パイの悲劇

『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』が視覚効果賞を受賞したんだけど、視覚効果(以降はVFXと表記)を担当した名門会社リズム&ヒューズ・スタジオは映画の公開後の2013年2月に倒産。アカデミー賞を受賞する11日前に会社が倒産してしまったのだ。とんでもない悲劇である。そして大きな社会問題となった。
ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 (字幕版)

撮影のやり直し

倒産の原因として、ライフ・オブ・パイのVFXのリテイクが延々と続いたということがある。CINEMOREがこの問題を詳しく取り上げているので画像で引用する。
cinemore.jp



「R&H」は倒産したリズム&ヒューズのこと。

ハリウッドは撮影の大掛かりなリテイクがたくさんある。昔だと主演をクビにして撮り直した『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や、ここ数年だと監督をクビにして7割を撮り直した『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』なんか有名だろう。予算とスケジュールがカツカツの日本映画では俳優が不祥事起こさない限りリテイクはほぼ無い。リテイクするくらいならお蔵入りさせる。でも日本は顧客絶対主義が強いので仕様変更の皺寄せ話は他人事ではない。

社会問題化(ただし10年前)

ハリウッドで視覚効果のリテイクは気軽に行われるという悪習がある。リテイクの皺寄せは現場スタッフに来てしまう。しかも受注が入札方式で仕様変更時の追加予算が請求できない。そのため現場が疲弊し、VFXの会社が次々に倒産することが社会問題になったのが10年前だ*1。その頃に潰れた会社には『タイタニック』を作り上げてアカデミー視覚効果賞を受賞したデジタル・ドメイン社もある*2

この社会問題は改善されずに今は益々悪化している。アメコミ映画ブームのせいだ。アメコミ映画が大流行しているので、VFXの負担が激増。さらにアメコミ映画は撮り直しが多いのもこの問題に拍車をかけた。記事多数なので興味ある方は調べてほしい。正義を体現するアメコミ映画が全然正義じゃない現状が分かって面白い。アメコミ映画は良くも悪くも資本主義の象徴なので問題点もたくさんあるのだ。

監督=VFXの素人

ハリウッドの素晴らしい慣習として「才能あるなら新人だろうが外国人だろうが監督として起用する」というのがある。アメコミ映画だと『エターナルズ』のクロエ・ジャオなんかが有名だろう。でもVFX問題についてはこれは悪しき要因となる。

  1. VFXのことを全然知らない人が監督になる
  2. 監督はVFXの苦労を知らずにリテイクさせ続ける

これが起きやすい。『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』の場合はアン・リー監督がリテイクを連発したらしい。私はアン・リー好きなので、これ知った時はショックだった。

この問題を取り上げたドキュメンタリー映画をギズモードが翻訳解説してくれているので画像で引用する。
www.gizmodo.jp


アカデミー賞の受賞式の悲劇

『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』がアカデミー賞を受賞した時の話だ。

  • 受賞者が資金繰りの苦境を訴えたら、ジョーズのテーマが流れて邪魔された
  • 監督のアン・リーは映画の大半を作った視覚効果に何の謝辞も述べなかった

ということが問題になった。CINEMOREもギズモードもこの点を取り上げているので、画像引用する。


資金繰りの訴え中にジョーズのテーマが流れるシーン↓。
youtu.be

ゴジラ -1.0の希望

映画マニアたちが『ゴジラ -1.0』の視覚効果賞の受賞をベタ褒めしているけど、すごく良くわかる。映画マニアたちはアメコミ映画とVFXの不健全な関係に心を痛めていた。監督の山崎貴がVFX会社「白組」の所属でさらに元々はVFXの監督なので、「監督=VFXの素人」という図式が崩れてくれれば今後のハリウッドで良いことになるかもしれない?という希望があるのだ*3

*1:倒産が相次いだ最大の要因はグローバル化による受注金額の低下

*2:破産申請中に売却したので正確には倒産ではない

*3:以前から何度も書いているけど日本映画は低予算なので日本映画には皺寄せトラブルはたくさんあります

TARAKOと多美子


機動警察パトレイバーの熱心なアニメファンなら、進士多美子の声優がTARAKOというのは有名な話だろう。残念ながら途中交代しており劇パト2などでは進士多美子は安達忍が演じている。劇パト2(機動警察パトレイバー 2 the Movie)で進士多美子が夫を引き留めるシーンは最高の名シーンなので、このツイート↓へのレスポンスには劇パト2ネタが多いけど、アレは安達忍の名演である。



進士多美子はマニアックな存在で登場回数も少なすぎるキャラだが、1つだけTARAKO版の進士多美子の出番が多いエピソードがある。それがテレビアニメ版の第25話『春の嵐』だ。

パトレイバーの知識は一切不要のエピソードなので、配信がある人はとりあえず見て欲しい。TARAKOのセリフ回しが最高だ。

なんで知識が一切不要なのかというと、進士幹泰というサブキャラが転職に悩むだけの話なのだ。放送当時がバブル景気でヘッドハンティングが流行っていたため、ヘッドハンティングを題材にしている*1。SFアニメとは思えないほど地味な展開だが、TARAKO演じる進士多美子の演技が超楽しいので是非観て欲しい。


以下ネタバレ



劇中では進士幹泰は超高待遇の転職を蹴って警察官を続ける。放送当時はすごく勿体ないような気がしたが、現実ではその後バブル崩壊。劇パト2では進士幹泰は本庁の課長という大出世を果たすので彼の選択は正しかったのだ。ただノンキャリアで三十代が本庁の課長(警視正クラス)になるのは、ちょっとありえないです。

*1:テレビアニメ版パトレイバーは他にもヘッドハンティングを題材にしたエピソードがある

邦アニベストテン2023の結果

hakaiya.com

邦アニベストテン2023の結果を発表しました。ブログのコメント欄に投票して頂いた皆様、ありがとうございました!

楽なところと大変だったところ

皆さんの投票マナーが良すぎて集計が楽な企画ですが、今年は人気作品のタイトルがシンプルなので例年よりもさらに楽でした。
2023年は有名監督たちの新作が無いので穏やかなランキングになる。と思っていたのですが、冬になって邦画アニメの怒涛の公開ラッシュがあって劇場通いが大変でした。

結局2023年で一番面白い邦画アニメは?

2023年で一番面白い邦画アニメは?という問題ですが実は難問です。各映画ベストで全くのバラバラだからです。そもそも私が集計した企画ですら

邦アニベストテン2023

  1. 窓ぎわのトットちゃん
  2. 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎
  3. BLUE GIANT

2023年の映画ベスト100

  1. BLUE GIANT
  2. 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎
  3. 窓ぎわのトットちゃん

と順番が逆になっています(4位以下はもっとバラバラ)。

2023年で一番評価が極端なのは『君たちはどう生きるか』です。私が信頼しているキネマ旬報では映画評論家と映画ファン投票も両方とも『君たちはどう生きるか』が邦画アニメの一位です。しかし有効投票数が7万5千票の東京アニメアワードフェスティバル2024のアニメファン賞では、『君たちはどう生きるか』は何と100票未満で30位にすら入っていません。

邦アニベストテンの目的の一つに、アニメ映画は世間の評価の良し悪しが分かりにくいので可視化する。というのがあります。映画評論家が選ぶと作家性が極端に評価されるし。東京アニメアワードフェスティバルのアニメファン賞みたいに万単位で組織票が発生している賞も私は大好きですが「評価」とはちょっと違うと思います。今年の邦アニベストテンは比較的、皆さんの納得感を反映したのではないかと思ってます。