2015年2月24日火曜日

コレステロール「過剰摂取心配ない」


コレステロール「過剰摂取心配ない」…米報告書

■摂り過ぎると健康によくないとされてきた食品のコレステロールについて、米政府の諮問委員会は「過剰摂取を心配する必要はない」とする報告書をまとめた。
 
■米政府は今年中に食生活指針を改定するが、1日300ミリ・グラム以下という摂取量の目安が撤廃される可能性がある。
 
■これまで、卵やエビなどコレステロールが多いものを食べ過ぎると、血中のコレステロールが増えて動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中などの病気につながるとされてきたが、米保健福祉省と農務省の食生活指針諮問委員会が、コレステロール摂取量と血中コレステロールの関係を調べたところ、両者の関連性を示す証拠はなかったという。

私的コメント;
食事性のコレステロールに関して、厚労省は「日本人の食事摂取基準」2015年版で、「コレステロールの摂取量は低めに抑えることが好ましいものと考えられるものの、目標量を算定するのに十分な科学的根拠が得られなかったため、目標量の算定は控えた。ただし、コレステロールは動物性たんぱく質が多く含まれる食品に含まれるため、コレステロール摂取量を制限するとたんぱく質不足を生じ、特に高齢者において低栄養を生じる可能性があるので注意が必要である」 としている。
(日本動脈硬化学会のGLでは、食事性コレステロール摂取制限のため、卵黄の摂取制限を記載)
2013年11月に出された、ACC/AHAの「心血管疾患リスク低減のための生活習慣マネジメントのガイドライン」には、「LDL-Cを低下させるために飽和脂肪酸エネルギー比を5~6%となるような食事パターンをめざす」と記載されている。 
このように、これからはコレステロールではなく飽和脂肪酸(および不飽和脂肪酸)の摂取量で食事ガイドラインが論じられるようです。


2014年7月7日月曜日

ラクナ梗塞


ラクナ梗塞の病態解説と診療の最新事情

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/stroke08/evidence/200806/506779.html
■ラクナ梗塞は日本人に多いタイプで(厚生労働省の2000年度調査では、全脳梗塞の36%を占める)、大脳深部(脳の深い部分)に血液を供給している直径1mm以下(0.2〜0.3mm程度)の細い動脈である穿通枝の異常によって起こる。

■1本の穿通枝が詰まった閉塞した場合、壊死に陥る範囲は最大でも1.5cmを超えないことから、脳の深い部分にできた直径1.5cm以下の梗塞をラクナ梗塞と呼んでいる。
「ラクナ」はラテン語で、“小さなくぼみ”を指す。
高血圧のために極端に血管壁が厚くなった動脈や、血管壊死が修復されて閉塞した動脈がラクナ梗塞の原因となる。

■ラクナ梗塞では侵される範囲が狭いため、症状も大部分は半身不随などの片麻痺、感覚の低下やしびれ感などの感覚障害のみで、比較的軽症のケースが多く、意識障害を起こすことは極めて少ない。
1回だけの発作では大きな後遺症を残すことは少ないが、繰り返し再発すると血管性痴呆パーキンソン症候群などを来しやすいといわれる。

■ラクナ梗塞の診断のためには、主幹動脈に閉塞がないことを確認する必要があり、そのためにMR血管造影が重要な役割を担っているとされている。
また、最近では、脳MRI画像(2強調横断像)からラクナ梗塞領域を自動的に検出する手法の開発が試みられている。

急性期と慢性期の治療
■ラクナ梗塞の急性期治療は輸液が基本だが、主幹脳動脈に有意な動脈硬化性病変を有する場合には、積極的にアスピリンチクロピジンなどの抗血小板薬を投与する。

■超急性期の治療については、アテローム性脳梗塞と同様、発症後3時間以内に遺伝子組換え組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)製剤のアルテプラーゼ静脈内投与が適応となるが、使用に当たっては厳しい適応条件が定められている。

■2次予防(再発予防)には抗血小板薬の使用が奨励されるが、抗血小板薬の中で有意な再発予防効果が認められているのはシロスタゾールのみである(CSPS試験)。
血圧の十分なコントロールが必要とされている。

アスピリン、チクロピジンに関しては、厚生省の研究班でラクナ梗塞に対する再発予防効果を約3年間にわたって追跡調査をした結果、両剤ともに再発を低減しないことが示された。また服用群では脳出血の発症率の高いことが明らかになった。

ラクナ梗塞に対する臨床試験は少ない。最近の話題としては、ラクナ梗塞患者を対象とした、スタチン(アトルバスタチン)の脳血管反応性(CVR)効果を検討した臨床試験「LA BICHAT」( Vasomotor Reactivity In Cerebral Small Vessel Disease And New Approach To Treat Lacunar Stroke)がフランスで実施され、2006年2月に終了した。

無症候性脳梗塞と一過性脳虚血発作(TIA)
アテローム性脳梗塞やラクナ梗塞など虚血性脳卒中に分類されない疾患で注意を要するものに、無症候性脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)がある。
いずれも将来的に脳梗塞を引き起こすリスクが高い前兆的な症状とされており、臨床的にも重要視されている。

■無症候性脳梗塞は、明確な自覚症状はなく、脳ドックのMRI検査などで発見される直径2-15mm程度の小さな梗塞を指す。
朝起床時の手のしびれ、重度の記憶力低下などの症状を認めるが、頭痛は伴わないことが多い。
将来脳卒中に進展する率が高く、注意が必要とされる。
無症候性脳梗塞の発症率は40歳代で30%、50歳代で50%、60歳代で70-80%というデータもある。
無症候性脳梗塞が発見されれば、チクロビジンやアスピリンなどの抗血小板薬の服用や運動療法で本格的な発症を予防することが必要とされる。

■TIAは、脳への血液供給が一時的に遮断されるために起こる脳機能障害である。
血流が再開すれば、症状は数分から20分程度で消失する。しかし、TIAは脳梗塞の前触れ症状の可能性もあるので、放置せずに確実な診断をつけることが肝要である。
TIAを放置した場合、脳梗塞への移行率は、数年以内に20-30%と言われているが、初回発作後1カ月以内21%、1年以内50%という統計もあることから、専門医の受診が必要となる。
TIAの直後1週間は脳梗塞が起こりやすいので特に注意が必要となる。

TIAに関する最近の話題では、TIAおよび小梗塞患者に対し、発症後24時間以内に、アスピリン単独、アスピリン+クロピドグレル併用、アスピリン+シンバスタチン併用、アスピリン+クロピドグレル+シンバスタチン併用の4群に割り付け、脳卒中の発症予防効果を検討する「FASTER」(Fast assessment of stroke and transient ischaemic attack to prevent early recurrence)のパイロットスタディがカナダで進められている。


2014年2月20日木曜日

テネイシンC

突然死防ぐタンパク質発見 大動脈解離、解明に一歩 

久留米大循環器病研究所(福岡県久留米市)を中心とする研究チームが18日、突然死の一因となる「大動脈解離」を防ぐタンパク質を発見したと発表した。

研究チームの青木浩樹教授らは人間の体内で生成されるタンパク質「テネイシンC」の働きを調べるためマウスで実験。
テネイシンCを生成するマウスは大動脈解離を発症しないが、生成できないようにしたマウスは半数が発症したため、テネイシンCが解離を防いでいると結論づけた。


出典 日経新聞・朝刊  2014.2.19
版権 日経新聞社





2013年11月24日日曜日

季節の変化に伴う血圧変動

季節の変化に伴う血圧変動とミカムロの有用性
http://nbi.m3.com/ck9a5a674f26b12a8d2df417f461a8ca98729/contents/hypertensionfrontier/07/index.html?cid=201311AFM8&from=pc
■血圧には季節による変動があり、 気温の低下する秋から冬にかけて上昇が認められる。

■冬季と夏季の収縮期血圧の差は、 降圧治療中の症例であっても、 11.0mmHgと大きな差があった。(China Kadoorie Biobank Study  およそ50万人を対象に調査をした季節と収縮期血圧値の関連をみたデータ)

■ 気温の変化は 血圧の日内変動にも影響を及ぼす。
気温が低くなるほど、 起床時の収縮期血圧は 高値になる。
秋・冬においては 早朝覚醒前と起床時の収縮期血圧の差が大きくなる.
(Winter Morning Surge)

■心疾患および脳血管疾患による死亡数は 冬期において増加する。
(秋から冬にかけては、 より厳格に降圧治療を行うことが求められる)

■RA系)は 早朝覚醒前に活性化され、 早朝にピークとなることが知られている。
(この時間帯に活性化するRA系を抑制することが、 早朝の血圧上昇と 心血管系イベントの抑制に重要)

■冬期における血圧上昇に対する薬物療法としては、 RA系阻害薬の投与を基本とし、 降圧不十分な場合は 長時間作用型Ca拮抗薬の併用などで対処することが有用。




2013年10月29日火曜日

CKD患者の降圧と心血管イベント


CKD患者、血圧5mmHg下げれば、心血管イベント17%減る/BMJ

降圧治療の心血管系への効果について、慢性腎臓病(CKD)の有無別で検証したメタ解析(BPLTTCによる解析報告)。
結論
腎機能レベルを問わず、収縮期血圧(SBP)5mmHg低下につき主要心血管イベントが6分の1抑制される。

■わずかでも推定糸球体濾過量(eGFR)が低下した人への降圧治療は心血管イベントを予防する有効な戦略である。
■降圧薬のクラスエフェクトの解析も行われたが、エビデンスが示されず、「CKD患者の心血管イベント予防について、特定クラスの薬を優先的に選択することを支持するエビデンスは少しもない」という結論になった。

原文抄録
Blood pressure lowering and major cardiovascular events in people with and without chronic kidney disease: meta-analysis of randomised controlled trials.
BMJ (Clinical research ed.). 2013;347;f5680. doi: 10.1136/bmj.f5680.

2013年10月27日日曜日

2013年10月6日日曜日

アブレーションと抗凝固剤

■アブレーション時にワルファリンは中断しないほうがよい
文献
Periprocedural Stroke and Management of Major Bleeding Complications in Patient Undergoing Catheter Ablation of Atrial Fibrillation      The Impact  of Periprocedural Therapeutic International Normalized Ratio
         Di Biase L,  Natale A   Circulation 2010;121:2550-2556


■心のう液貯留はワルファリン使用の有無に関わらず同等の頻度で発生するが、ワルファリンを使用している場合の方がより濃厚な対応が必要となることがある。
文献   同上