2013.08.16 Friday
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レッド・マスカラの秋 (ミステリーYA!) 永井 するみ 理論社 2008-12 |
街路樹が色づき、空気がこうばしくなる。なにか素敵なことが起きそうな予感に満ちた、秋。ティーン向けのファッションショー、東京ガールズフェスティバルは、トレンドに敏感な女の子たちで大盛況。私は、三浦凪、17歳。ファッションに興味がないわけじゃないけど、今日ここに来たのは、モデルの友人、ミリの晴れ姿を見るため。ランウエイを颯爽と歩くミリはレッド・マスカラを塗ったアイメイクも印象的で、文句なくカッコよかった。でもその舞台裏は、彼女が勧めたマスカラのせいで、まぶたが腫れたモデルがいるという噂で持ちきり。あんなに仕事に情熱とプライドを持っていたミリが、モデルを辞めようとまで思いつめている。マスカラに問題があるのか、モデル仲間の嫉妬なのか?ミリには胸を張ってランウエイに立ってほしい。私は調査に乗り出す決心をした。『カカオ80%の夏』につづく、大好評のハードボイルド・ミステリー、シリーズ第2作。やっぱり出ましたね、続き。そして、さらに続きが出そうで嬉しいです。
人くい鬼モーリス (ミステリーYA!) 松尾 由美 理論社 2008-06 |
高校2年の夏休み、わたしこと村尾信乃は、家庭教師のアルバイトのため、優雅な避暑地にやってきた。手ごわいと聞いていた生徒は、芽理沙という名の超美少女。小生意気だけど、どこか寂しさを漂わせた芽理沙に、わたしは興味をひかれる。だが、すてきな夏になるかも、という期待は、あっさり打ちくだかれた。芽理沙に引き合わされた「人くい鬼」を見た瞬間に。この世のものとも思えない異様な姿をした、この世に存在するなんて信じたくもない、生き物だった。彼女いわく、大人には見えないし、生きている人間に害はあたえないそうだが、はたして、その言葉をうのみにしていいものだろうか?やがて、静かな別荘地を震撼させる、恐ろしい事件がたてつづけに起きる―。人くい鬼の存在を知らない大人たちの推理と、その存在を前提に繰り広げる少女たちの推理。少女たちと人くい鬼の不思議な絆を描く、さわやかでマジカルなミステリー。(「BOOK」データベースより)あとがきによると、モーリス・センダックの「かいじゅうたちのいるところ」へのオマージュだそうです。軽井沢の山奥に、子供にしか見えない伝説の怪獣、モーリスが住んでいて、死体の気を食べて生きている。その設定だけで、なんだかわくわくします。そして、陸の孤島となった別荘地で、次々に死体消失事件が起こる…ああ、わくわく。このわくわく感は、ジュブナイルに無くてはならないものだと思います。この小説はまっとうにジュブナイルでした。
パパママムスメの10日間 五十嵐 貴久 朝日新聞出版 2009-02-06 |
ロードムービー 辻村 深月 講談社 2008-10-24 by G-Tools |
誰もが不安を抱えて歩き続ける、未来への“道”。子どもが感じる無力感、青春の生きにくさ、幼さゆえの不器用…。それぞれの物語を、優しく包み込んで真正面から描いた珠玉の三編を収録。涙がこぼれ落ちる感動の欠片が、私たちの背中をそっと押してくれます。はじめましての方にも、ずっと応援してくれた方にも。大好きな“彼ら”にも、きっとまた会えるはず。《出版社より》「冷たい校舎の時は止まる」をすっかり忘れてしまってから読んだので、ああ、確かにこの人はどっかに出てきたような名前だが全然思い出せない…というような事の連続で(^_^;)。もう一度、「冷たい〜」を再読してから、この本を読み返そうと思います。でも、この本単独でも、わりと好きだったなあ。
夜の光 坂木 司 新潮社 2008-10 by G-Tools |
慰めはいらない。癒されなくていい。本当の仲間が、ほんの少しだけいればいい。坂木さんの作品の中では、初期のひきこもり探偵シリーズが好きで、だから、最近の健全路線からたまにはちょっと外れて、昔みたいにちょっと病んだ感じの小説も書いてくれないかな、なんて思ってました。だから、この作品が病んだ感じの小説だったので、それだけでちょっと嬉しかったです。天文部のメンバーの、一風変わった友情の描き方も好きでした。特につるむわけでもなく、協力し合って何かを目指すわけでもなく、打ち明け話や悩み相談で絆を深めるわけでもない。つかず離れずの微妙な距離感で付き合っているんだけど、深い所で、心を許し合っている。王道ではない友情や仲間を描いていて、新鮮だったし、いいなあと思いました。
本当の自分はここにはいない。高校での私たちは、常に仮面を被って過ごしている。家族、恋愛、将来……。問題はそれぞれ違うが、みな強敵を相手に苦戦を余儀なくされている。そんな私たちが唯一寛げる場所がこの天文部。ここには、暖かくはないが、確かに共振し合える仲間がいる。そしてそれは、本当に得難いことなのだ。
寒椿ゆれる 近藤史恵 光文社 2008-11-21 |
文盲 アゴタ・クリストフ自伝 堀 茂樹 白水社 2006-02-15 |
今後も永遠にはかり知ることのできないのは、あの(スターリンの)独裁政治が東欧の国々の哲学・芸術・文学に対してどれほど忌まわしい役割を演じたかという事である。東欧の国々に自らのイデオロギーを押しつけることで、ソビエト連邦は東欧の国々の経済発展を妨げただけではない。それらの国々の文化とナショナル・アイデンティティーを窒息させようとしたのだ。(中略)自分の国が他国を不当に支配したことを、彼らは一度でも恥じたことがあるのだろうか。今後、恥じることがあるのだろうか。
流星の絆 東野 圭吾 講談社 2008-03-05 |
特効薬 疑惑の抗癌剤(二見文庫 キ 6-1 ) (ザ・ミステリ・コレクション) 霧村 悠康 二見書房 2008-06-25 |
認可間近の経口抗癌剤MP98の第三相試験中、末期肺癌患者が喀血死した。彼の死は当然のものと思われたが、主治医の倉石祥子だけが首を傾げた。同薬の「副作用がない」という触れ込みに疑問を抱いた彼女たちは、認可差し止めに動きだす。その一方で、関係者が次々と殺されていき…。製薬会社、大学病院、新薬認可を巡る思惑と深い闇を描き出した、人気作家による書き下ろし医療ミステリー。現役医師による小説ということで、一般人には知りえない医療業界の裏側や、知られざる問題点を垣間見ることができるのが、霧村小説の読みどころだと思います。現代日本で、病院や薬の世話にならずに一生を終える事が出来る人はいない。だから社会は常に業界を監視しているべきだし、もちろん私たち一人一人も、たとえ今自分が健康だとしても、関心を持っていなければならない情報なのだと思います。だから、霧村小説には、価値があります。