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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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第143回開催のご案内
日時:4月27日(土)17:00 
会場:オンライン

タイトル:
 沖縄の幽霊譚と魔除け

発表者:鈴木慶一氏

要旨:
 沖縄の民俗が民話などにどのように反映されているのかを幽霊譚をもとに考察する。
 沖縄の幽霊と日本本土のそれとは同一とは言えないが幽霊の出現について柳田国男は「オバケは出現する場所は大抵定まっていた。幽霊は向こうからやってきた。遠くへ逃げても追いかけられる」とし、池田弥三郎は、「どこへでも出てくるのが幽霊の性質のひとつ」などとしている。しかし沖縄での霊魂観に基づいた魔除け意識に注目すると、幽霊の出現について認識に違いが認められるのではないか、この点に注目して検討を進めていく。

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タイトル:
 近世噺本と笑い話
 ―鬼と天狗を中心に―

発表者:
 齊藤竹善氏

要旨:

 本発表では、前半に江戸期の笑い本に登場する異類(鬼・天狗)のイメージを検討し、後半で、そうした江戸期の「噺」が如何に伝播し、地方の笑い話として定着したかを「彦一話」を中心に論じた。


江戸期の噺本における鬼像は、一般に地獄や六道の辻など、死後の世界に閻魔と共に登場する存在として描かれており、また、庶民の生活世界に登場する際には節分の時に登場するなど、登場する時・場所がかなり限られた存在となっていた。また、鬼が登場する噺のオチは、「来年の話をすると鬼が笑う」「鬼も十八番茶も出花」などの鬼にまつわる慣用句や、「鬼殺し」などの酒、鬼の天敵としての「鐘馗」を用いたダジャレなど、鬼にまつわる事項をうまく用いたオチが様々に見られた。


一方、噺本における天狗像は、山や空に出現しやすいといった傾向があるも、鬼に比べて出現場所の制約がなく、庶民と遭遇することが多々ある存在として描かれていた。こうした傾向は、江戸期において天狗が一定のリアリティを持つ存在として、多少なりとも実在を信じられていたが故であると考えている。


また、天狗が登場する噺のオチは、その殆どが「鼻」を揶揄するネタであった。特に、その鼻は男根と重ね合わされる形の下ネタとしてネタにされることが多く、この点は天狗と男根を結び付ける民間信仰との結びつきを思わせる


後半では、柳田も父から聞いたことのあるという、天狗の鼻をとらえる笑い話を軸に、落語家「彦八」の登場する笑い話が民話化・伝播する現象について論じた。そこでは、江戸期から明治期にかけて、旅の噺家が「ヒコハチ」と呼称されていたことや、二代目米沢彦八が旅の興行中に亡くなったことなどから、「ヒコハチ」が演じた噺が民話化した可能性について仮説を提示した。


一方、質疑応答では、そうした民話が伝わる際に「ヒコハチ」がいわばキャラクター化した主人公の記号として流布した可能性を示唆され、語り手=伝播者という図式に疑問が呈された。多くの昔話の伝播論は、口承文芸の性質もあり、史料による充分な裏付けがなされずに、推測が多分に含まれる議論となりがちである。笑い話の伝播に関しては、様々な可能性に留意しながら、今後ともに研究を進めていきたい。


(文・齊藤竹善氏)

*これは3月31日(日)にオンライン(Zoom)で開催された第142回の要旨です。
*上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名を明記してください。

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第142回開催のご案内

日時:3月31日(日)15:00 

会場:オンライン(Zoom)

タイトル:近世噺本と笑い話
     ―鬼と天狗を中心に―


発表者:齊藤 竹善氏
 
要旨:
 「噺本」は、近世において活発に出版された笑い話集である。これらの噺本は民間伝承との関係も深い。特に、「噺本の祖」と位置付けられる『醒酔笑』は、談義僧であった安楽庵策伝が、「小僧の時より、耳にふれておもしろくおかしかりつる事」を書き残したものと述べているように、当時(特に、談義僧の説教話として)流布していた説話・世間話の記録、という側面がある。また、新たに噺が創作されるにせよ、そうした噺が口承の笑い話となり、地方へと持ち込まれることもあった。
 それらの噺の舞台の多くは、庶民の日常生活の場であり、
そこには近世の庶民の生活感覚が根付いている。今回は噺本の中に創作・記録された噺の中からとくに鬼と天狗が登場する噺をいくつか見ていき、そこで示されるイメージから、近世庶民が如何に「異類」を笑いものにしたかを考えていく。また、そうした噺が全国的に広まり、民話化した例を挙げ、近世における噺と笑い話をめぐるネットワークを考察する。


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タイトル(発表者):
予言獣3題―予言獣の誤転写・アマビエの変容・件(クダン)の位置―
 1. 誤転写と予言獣
  ー「アマビエはアマビコの誤記」説の再考からー
 (長野栄俊氏)
 2. 予言をしなくなった予言獣
  誰がいつアマビエを変えたのか
  (峰守ひろかず氏)
 3. 予言獣としての件(クダン)の位置
  (笹方政紀氏)

要旨

誤転写と予言獣-「アマビエはアマビコの誤記」説の再考から-

長野栄俊氏


 『予言獣大図鑑』の資料解説で用いたキーワード「誤転写」について、具体的事例を示しながら検討した。
 前半では、「予言獣の本質はかわら版」であるとの見通しを示し、かわら版の帯びる特質を列挙した。その特質とは、1)事実報道以外の虚報や娯楽・パロディも多く含まれていたこと、2)珍談奇聞は当該地方で記録・伝承されず、都市で捏造されたものであったこと、3)「役人」云々の文言や公文書形式を模した形式は虚報に信憑性を付与するためのものだったこと、4)非合法出版ゆえ模倣版が横行したこと、5)転写されて流通し、地方へも伝播したこと、などである。
 これをふまえると、「アマビコ」から「アマビエ」への「誤記」は、肥後の役人から江戸に報告され、かわら版になる過程で生じたものとは考えにくく、先行する「あま彦(天ひこ)」のかわら版(未発見)が転写されたり、模倣版が作られたりする過程で生じたものと推定できることを指摘した。
 後半では、予言獣資料に見られる「誤転写=誤読+誤写」のメカニズムが、現代人が接する活字やフォントでは生じえない、くずし字に特有の事情によって生じたものであることを7つの事例を挙げて論じた。なかでも、くずし方が類似する字形を誤読して写したパターン(「神社姫」→「神の姫」、「くだん」→「くたべ」→「どだく」)や連綿体の文字の切れ目を読誤して写したパターン(「尼彦」→「左立領」)をくずし字特有の事例として詳しく取り上げた。
 最後に、「かいし人」や「どだく」など非合理な名称であっても、妖怪名称(怪異名称)ゆえに受け入れてしまうバイアスがかかり、誤転写を促進させた可能性があった点についても言及した。


 質疑応答の時間では、予言獣の要件としての「人面」の問題や、予言をしない瑞獣かわら版を予言獣に含めるかどうかという定義の問題、予言獣かわら版の営利ではない無償配布の可能性の有無などについて質問があった。(文・長野栄俊氏)


 


予言をしなくなった予言獣 誰がいつアマビエを変えたのか


峰守ひろかず氏


 2023年12月に刊行された『予言獣大図鑑』の拙稿「予言から疫病退散へ」では、2020年に端を発したコロナ禍を経て、アマビエの通俗的な性格(属性)が、「予言する妖怪『予言獣』の一種」から「伝統的な疫病退散祈願の対象」へと変質したことを指摘した。今回は、この変質の時期と過程について、主に新聞報道を参考に報告を行った。
 変質の第一波は、2020年2月以降にインターネット上でアマビエが流行する中で「疫病を退散させる妖怪」として扱われるようになったこと、それを受けて厚生労働省が4月上旬(この日付については後述する)に「疫病から人々を守るとされる妖怪」として感染拡大防止啓発アイコンに採用したことによって起こったものと考えられる。
 一方、新聞報道では、アマビエに言及した記事は3月から見られるが、この時期から4月頃にかけての記事は、アマビエが疫病退散祈願に使われていることには触れつつも、あくまで予言するもの(予言獣)として紹介していた。もっとも、この時期には、本文ではアマビエを予言獣として扱いつつも、見出しでは疫病退散属性を強調している記事も散見できる。この流れを受けて、4月初旬〜5月上旬頃になると、記事本文においても「アマビエは伝統的な疫病退散祈願のシンボル」という設定が明記され、「江戸時代にはアマビエが疫病が封じる妖怪として広く信じられていた」という「史実」が存在したことになってくる。
 さらに5月中旬以降は「アマビエ=伝統的な疫病退散の妖怪」という図式は周知の事実として通用するようになる。ネット上でのブームを経て既に通俗的妖怪としてのアマビエの性格は「予言獣の一種」から「伝統的な疫病退散のシンボル」へと変わっていたが、それが社会に定着したのが、この時期(5月中旬)と言える。
 2020年のアマビエの変質は、まず「新型コロナ収束」という社会的な需要(願望)に応じて偏った認識が広まり、その上で、報道機関が社会に広がっていたイメージに合わせた表現を多用したことが念押しとなって「伝統的な疫病退散の妖怪」という性格の固定化が生じたものと考えられる。


 なお、発表後の質疑応答では、厚労省がアマビエをアイコンに採用した日付について、発表者が「2020年4月9日」としていることに対し、「8日以前ではなかったか」との指摘を受けた。確認を行ったところ、厚生労働省のWEBサイトにアマビエを採用したロゴが掲載されたのは同年同月7日の深夜で、厚生労働省の公式Twitter(現X)アカウントによる本件の周知が行われたのが9日であった。正確には7日時点で採用されていたことになるため、機会があれば訂正を行いたい。
 また、アマビエの変質や社会への定着過程を見るためには新聞報道だけではなくワイドショーやニュース等の映像媒体にも気を配るべきとの指摘もあった。活字情報以外の分野の掘り下げ不足は自覚しており、今後の課題と受け止めている。
 質疑応答の中では、変質後のアマビエ像を示す資料として取り上げた児童書の監修者から、同資料の編纂中にアマビエの記述が疫病退散妖怪へと傾いていった過程を具体的に聞くこともできた。このあたりの情報も今後生かしていくこととしたい。(文・峰守ひろかず氏)


 



予言獣としての件(クダン)の位置


笹方政紀氏


  現在把握されている件(クダン)(以下「クダン」という。)のかわら版は、『予言獣大図鑑』にも掲載した『大豊作を志ら須件と云獣なり』と『件獸之寫真』の2枚があり、その内予言をするものは後者の1枚だけである。それにも関わらず、クダンは予言獣の代表的な存在のように言われることも多い。本発表では、その経緯を追いつつクダンの予言獣としての位置を確認した。
 少なくとも18世紀において、クダンは正義や正しいものの象徴であり、予言をしていなかった。文政2(1819)年、予言獣の古い事例である神社姫や姫魚の流行した年、予言をするクダンの記録が残っているが、予言獣としてかわら版(読売、摺物とも)に登用された事例は幕末まで下る。
 クダンと他の予言獣との大きな違いの一つとして、クダンは既存の妖怪(ここでは便宜上、妖怪とする。)を採用し予言獣構文を持つかわら版に登用したものであるが、アマビコやクタベなど他の予言獣は予言獣オリジナルのものであり予言獣のかわら版やその転写物などの中でしか存在が認められない半人半漁の人魚もクダンと同様に既存の妖怪を登用したものと言えるが、その事例は限られている。また、神社姫や姫魚は人魚の類と言えるが、独自のオリジナルの名称を有している。
 近代になると、かわら版というメディアはその立場を徐々に新聞にとって代わられていく。それにつれ、かわら版やその転写物の中にだけ存在していた予言獣は徐々に衰退していく。片や、クダンはかわら版等の世界だけでなく、畸形の仔牛の誕生譚を伴い現実に起こったとされる噂話の中で予言をし、生き続けていく。その事例は近世のかわら版と違い多数認められる。飼牛のいる農村部から食料としての牛が飼育される都市部へも広がり、太平洋戦争時などには戦時流言としてクダンは語られた。
 平成になり、湯本豪一氏が「予言獣」というカテゴリを推奨する時には、他の予言獣は衰退し消える一方で、クダンはその事例、資料を増やすことにより、予言獣の代表として捉えられた。このようにクダンは予言獣として特異な位置に存在するものであるといえる。(文・笹方政紀氏)


※これは2月17日(土)にオンラインで開催された第141回異類の会の報告です。
※上記の文章を直接/間接に引用される際は、
必ず発表者名を明記してください。


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第141回開催のご案内

日時:2月17日(土)15:00 
会場:オンライン(Zoom)

タイトル:予言獣3題
 ―予言獣の誤転写・アマビエの変容・件(クダン)の位置

  1. 誤転写と予言獣ー「アマビエはアマビコの誤記」説の再考からー(
長野栄俊氏)
  2. 予言をしなくなった予言獣 誰がいつアマビエを変えたのか(峰守ひろかず氏)
  3. 予言獣としての件(クダン)の位置(笹方政紀氏)

発表者:長野 栄俊氏・峰守 ひろかず氏・笹方 政紀氏
 
要旨:

1. 誤転写と予言獣ー「アマビエはアマビコの誤記」説の再考からー(長野栄俊氏)
 コロナ禍でアマビエが流行した際、「アマビエはアマビコの誤記」説が一般にも流布した。予言獣の世界で「誤」が多くの新種や珍名を生みだすことは報告者も認めるところである。しかしこの説では、出現情報が肥後から江戸に報告される過程で「誤記」が生じたと捉えている節があり、「誤」の生じた段階の想定としては疑問が残る。
 そこでまずは予言獣(資料)生成の過程を再検討し、どの段階で「誤」が生じるのかを見極めたい。また、この「誤」は、くずし字の「誤読」を伴う「誤転写」として生じたものと捉えることができ、現代的な「誤記」として理解するのは十分ではない。本報告では、この誤転写の仕組みをいくつかの事例をもとに紹介し、誤転写と予言獣との関係を取り上げてみたい。

2. 予言をしなくなった予言獣 誰がいつアマビエを変えたのか(峰守ひろかず氏)
 「予言獣大図鑑」の拙稿「予言から疫病退散へ」では、コロナ禍を経て、報道や一般書におけるアマビエの在り方が「予言する妖怪(予言獣)の一種」から「疫病退散祈願のシンボル」へと変質したこと、また、アマビエの疫病退散属性は決してコロナ禍をきっかけに生まれたものではなく、従前から存在していた萌芽がコロナ禍をきっかけに大きく取り上げられた結果として起こった可能性があることを指摘した。
 ここで起こった変質は特定の個人や団体の先導によるものではなく、複数の公共機関、マスコミ、商業施設、SNSユーザー、識者らがお互いに不確かな情報を参照し合うことによって、存在しなかった伝承(史実)がごく短期間のうちに作り上げられ、規定事実化するという現象が起こったものと考えられる。
 だが、変質のタイミングはどこかに存在するはずである。今回は、報道等に見られるアマビエの説明の変遷を通じて、いつアマビエは疫病退散妖怪という個性を確立したのか、アマビエを変質させた主体がどこにあったのかを考えてみたい。

3. 予言獣としての件(クダン)の位置(笹方政紀氏)
 予言獣としての件(クダン)については、概要を「件(クダン)の予言」として『予言獣大図鑑』に纏めた。近世においては、予言をしていない時代から、予言獣として採用され、やがてかわら版にも描かれた。近代になり、同書が再定義した予言獣の枠を超え、人々の間で語られる存在として、現代でも広く知られている。
 今のところ、件(クダン)が予言をするかわら版は一枚しか知られていない。それにも関わらず、予言獣の代表として扱われることも多い。今回は、改めて件(クダン)が予言獣としてどのような存在であるか、人々にどのように認識されているかを再考し、予言獣の中の件(クダン)の位地を確認してみたい。

長野栄俊編・岩間理紀・笹方政紀・峰守ひろかず著『予言獣大図鑑』(文学通信)好評発売中!
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-86766-026-3.html


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プロフィール
HN:
異類の会
年齢:
14
性別:
非公開
誕生日:
2009/09/15
自己紹介:
新宿ミュンヘンで誕生。

連絡先:
gijinka☆way.ocn.ne.jp
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