前回のPHPウォッチでPHP 5.2.0の正式リリースを取り上げたが,このバグ修正版であるPHP 5.2.1のリリースが目前に迫っている。修正点について紹介するとともに,PEAR基底パッケージの最新バージョン1.5.0の詳細,PEARパッケージを簡単に作成,管理するPEAR_PackageProjectorを紹介する。

PHPリリース関連情報

PHP 5.2.1リリース予定:バグ修正が中心,Windows版では性能向上も

 執筆時点において,PHP 5.2のリリースマネージャーであるIlia Alshanetsky氏により,PHP 5.2.1 RC3のリリースが行われている。PHP 5.2.1では主にバグの修正が中心だが,Windows版においては多くのパフォーマンス向上に関する改良も行われている。

 主な変更点,改良点を紹介する。

  • 200を超えるバグ報告への修正対応
  • --enable-memory-limitオプションの廃止,メモリーリミット機能を常時有効に(デフォルトで128MB)
  • Windows版のパフォーマンス最適化

     正式リリース日は未決定だが,近日中の公開が予想される。脆弱性の対応も含まれているため,早期のバージョンアップが推奨される。

    PEARリリース関連情報

    PEAR 1.5.0リリース:多くの新機能を搭載

     PEARの新バージョンである1.5.0が,1月24日に公開された。PEAR(PHP Application and Application Repository)とはPHPのライブラリレポジトリである。PEARを使うことで,PHP言語のライブラリを,システム上に簡単にインストールできる。

     PEARは,すべてのPEARパッケージの基底システムとなっている。他のPEARパッケージの基底クラスやエラー機構の提供がされるほか,パッケージの追加・削除や依存性の確認,ユーザー設定の登録・保持などのためのコマンドラインユーティリティが含まれる。

     PEAR 1.5.0では,40を超えるバグ報告の修正が行われたほか,主に以下の機能が改良された。

  • 動作環境の変更:PHP 4.3.0以降のバージョンに対応

     PEAR 1.4.11までは,PHP 4.2以上のバージョンのPHPにおいて対応が行われていたが,今回のバージョンよりPHP 4.3以降からの対応となった。

  • PECLモジュールのインストール時に,php.iniを自動的に編集する機能が追加

     PECL(The PHP Extension Community Library)は,PHPエクステンションのライブラリであり,PEARの一部として提供されている。PHP言語のライブラリとして提供されるPEARとは異なり,すべてのPECLはPHPのエクステンションとして機能する。そのため,インストール時にはコンパイルが必要になると共に,インストール後にphp.iniを編集し,手動で項目を追加する必要があった。

     PEAR 1.5.0からは,PECLのインストール時にphp.iniを自動的に編集し,エクステンションを有効にするように改良された。ただし,php.iniの自動編集を行うためには,あらかじめphp.iniファイルへのパスを,php_ini設定項目に指定しておく必要がある。

     php_ini設定項目の値を取得するためには,pear config-getコマンドを用いる。

    # pear config-get php_ini
    /usr/local/lib/php.ini

     また,新しい設定値に変更する場合は,pear config-setコマンドを使用する。

    # pear config-set php_ini /usr/local/lib/php.ini

  • Zendエクステンションの定義項目の追加

     PEARのパッケージ定義ファイルであるpackage.xmlのバージョンが2.0から2.1にアップグレードされ,新たに2つの定義が追加された。これらはZendエクステンションとして機能するPECLパッケージに対して,php.iniの自動的に有効・無効を切り替えるために必要な項目である。package.xmlのバージョンが上がったことに伴い,PEAR 1.4以前のバージョンとの後方互換性はなくなることになる。

  • 推奨されないパッケージのインストール時に警告が表示

     PEARライブラリの数が増えるにつれ,一部の古いライブラリのメンテナンスが施されなくなり,推奨されなくなっている。PEAR 1.5.0からは,そのようなライブラリをインストールしようとした際に,警告が表示されるようになった。

     PEAR 1.5.0へのアップグレードには,以下のコマンドを使用する。

    # pear install pear

     今回のリリースはメジャーバージョンアップであるものの,大きな非互換性は特に見受けられない。以前のバージョンのPEARをお使いの方は,アップグレードを検討した方が良いだろう。