片山 京子 氏
東京海上日動システムズ
システムエンジニアリング本部
契約システム開発部 ソリューションデザイナ
片山 京子 氏

 「企業内でエンジニアを務める良さは,その企業が作っているものにずっとかかわれることです。好きなものに深く打ち込める」。東京海上日動システムズで社内SEを務める片山氏はこう語る。

 社内SEは企業の情報システム部門に所属し,自社のビジネスを支える情報システムの企画や開発を担当する。東京海上日動システムズは損害保険大手の東京海上日動火災保険の情報システム子会社で,片山氏は親会社である東京海上日動の社内SEとして活動している。

 片山氏が入社したのは1999年。「いろんな職種があって悩みましたが,当時はITが伸び盛りでしたし,モノ作りができる点に興味を持ちました」(片山氏)。その中でシステムを作る側のベンダーではなく,システムを使う側のユーザー企業を選んだのは「まず会社の規模が大きかったため,ここなら大きなことができる気がしました。加えて,保険という職業に魅力を感じました」(同)。

 配属になったのは,損保商品を販売する代理店向けのシステムを開発する部門。1年目は主にプログラミングを担当。2年目からは本社の業務部門とのシステムの要件に関する打ち合わせを担当するようになった。「相手と知識レベルが全く違うので,最初は大変でした」と片山氏は振り返る。

 片山氏は保険の規程や約款,ガイドブックを読むことを繰り返し,業務の習得に努めた。「上司や先輩にもずいぶん支えてもらいました」(同)。片山氏が作った提案をチーム内でレビューし,アドバイスを得た。こうして3年目には「自分ひとりでも回していけると思えるようになりました」(同)という。

「一歩ずつ進めばいつか頂上にたどり着く」

 2006年,片山氏に大きな転機が訪れた。それまでの代理店部門から,東京海上日動が全社的に進めている「抜本改革」の担当部門に移ったのだ。抜本改革は「顧客の目線で,システムだけでなく業務から見直す」という総勢3000人が進める大プロジェクト。現在も継続中だ。

 片山氏は,ここでシステムのアーキテクチャ(構造)設計を担当。プロジェクトの規模が以前の部署と比べてケタ外れに大きく,戸惑いは隠せなかった。

 そんな片山氏をある時,先輩が登山に誘った。その最中に「一歩ずつ進んでいけばいいと言われました」(片山氏)。頂上が見えなくても,いずれたどり着く。この経験で気が楽になったという。

 このプロジェクトでは「自分がステップアップしてから参加したので,自分の声の響き方が以前と違うことを実感しました」(片山氏)。保険料計算部分の開発では,2~3年目の若手を率いる役割も果たした。「先輩から学んできた経験を若手に伝えたい」。こう言い切る片山氏の目標は「次世代の手本となる成長し続ける社員になること」という。

 片山氏が大切だと思うのは学ぶ姿勢だ。「商品もITも絶えず新しいものが出てきます」(同)。もう一つは,扱う商品を好きになること。「街の看板に当社の保険が載っているのを見るだけでも楽しい。自分が開発にかかわった代理店システムは今でも好きです。もっと業務を熟知して代理店に貢献したいですね」と片山氏は意欲を燃やす。

お仕事解説:社内SE

社内ユーザーのニーズをくみ取る

 社内SEは企業の情報システム部門に所属し,主にその企業が社内で使うシステムの企画・開発を担当する。実際の開発はベンダーに依頼し,その前のシステム企画や基本設計,開発後のテストを中心に担当するケースが多い。

 社内SEはコンピュータを利用する業務部門などのユーザーのニーズを的確に把握し,そのニーズに合ったシステムを考える必要がある。このため業務とITの双方に精通している必要がある。ベンダーの管理も重要な業務の一つだ。

必要なスキル

  • 業務知識とコミュニケーションスキル
    ユーザーが何を望んでいるか,課題はどこにあるかを知るために業務知識と,ユーザーから課題を聞き出すコミュニケーションスキルが必要。
  • ITに関する知識
    実際の開発はベンダーが担当する場合でも,ITで何ができるか,どのようなシステムが必要かが分かるだけの知識は必要だ。