マイクロストラテジー・ジャパンの印藤 公洋プレジデント
マイクロストラテジー・ジャパンの印藤 公洋プレジデント

 ビジネスインテリジェンス(BI)ツール専業ベンダーの米マイクロストラテジーが、日本市場でのビジネス強化に乗り出している。「出遅れていた日本市場での売上高を3年後に3倍にする」という目標を掲げ、2009年6月には初期ライセンスを無料とする施策を発表した。この3月に日本法人のプレジデントに就任した印藤公洋氏に日本市場での戦略を聞いた。(聞き手は吉田 洋平=日経コンピュータ)

6月に初期費用を100ライセンスまで無料にする「Starter Kit」を発表した(関連記事)。狙いはどこにあるのか。

 当社製品は、他社とアーキテクチャが異なり、機能に明らかな差がある。基本的に「使ってもらえれば乗り換えが進む」と考えている。そのきっかけとして様々な手を打っており、Starter Kitもその一つだ。「必ず実機でテストをし、気に入ったら買ってほしい」というメッセ―ジを出している。

 Starter Kitでは、100ユーザーまでは初期費用を無料にし、保守料金だけをもらう。Starter Kitの保守料金は「ライセンス定価の9%」もしくは「1年目が無料で、2年目以降にライセンス定価の12%」のいずれかを選べる。

 100ユーザーまでの制限があるが、例えば、A部門の人事用に100ユーザー分を導入し、その後に財務部門で100ユーザー導入したい、といった場合でも構わない。それによって企業としては1000ユーザー分を導入することになったとしても、当社は保守料金しかもらわない。

 ただし、財務部門が100ユーザー分を導入し、その後に財務部門の全員に展開して1000ユーザーで使うといった場合は、初期費用を請求することになる。導入拡大を考える際は、他社製品と再度比較してもらっても構わない。そのときには、100ユーザーが利用した体験を通じて、当社の製品がいかにパフォーマンスや使い勝手が良いかに気付いてくれているはずだ。

 他社は、製品をできるだけ利用企業に見せないようにして提案している。きれいな画面のデモだけを見せ、「さあ、早く契約してください。当社は企業規模も大きいし安全ですよ」と迫るわけだ。我々が営業を仕掛けると、「マイクロストラテジー?サポート体制とか全然できていませんよ。あんな会社の製品を使ったら御社が潰れます」などと話し、競争そのものを避けようとしている。「できるだけ時間をかけて評価してほしい」という我々の戦略とは全く逆だ。

以前は日本ビジネスオブジェクツ(BO)の社長だった。当時は、今言ったように製品を利用企業に見せずに売っていたのか。

 BOにも優れた点はある。10~20ユーザーという規模での利用には適しているなどだ。ある部門が最初に5~10ユーザー分導入し、次に別の部門が5~10ユーザー導入するなど、小規模なシステムが企業内の色々なところで使われている。それらを100部門集めれば1社に1000ユーザーが存在するというケースが多かった。

 これに対し、当社製品は一つのデータベースを1000ユーザーが使用するというケースが多い。多人数による同時使用時にもパフォーマンスが落ちないことが我々強みだ。消費者相手にビジネスをしている金融や、通信、消費財、流通、運輸、旅行などの分野で力を発揮する。つまり重工業以外のすべてだ。