マイクロブログ「Twitter」の人気が過熱している。ビデオリサーチインタラクティブによると、TwitterのWebサイトの推定接触者数は7月から8月にかけて2.2倍に増加し、193万人となった。この話は既にニュースとして取り上げた。記事のグラフにある通り、推定接触者数の推移は典型的な右肩上がり。これほど見事な上昇曲線は、最近ではあまり目にすることが無いものだ。

 こうした利用者増と連動するように、広報や宣伝、販促活動のためにTwitterを利用する企業が少しずつ増え始めている。製品情報やセールス情報などをTwitterで“つぶやく”(書き込む)ことで、自社のWebサイトへ誘導するといった手法だ。既にデルの日本法人やYahoo!ショッピングなどのEC(電子商取引)サイトのほか、IT関連では日本IBMや日本オラクルなどもTwitterを利用している。

 ただ、現状では日本のTwitterユーザー数はまだ数十万人の規模とみられる。利用者数が増えているとはいえ、“情報伝達媒体”として考えると、さらなるユーザー数の増加が不可欠だ。こうした中で、現在Twitterを活用する企業は、今後の利用者増をにらみながらTwitterならではのコミュニケーションを始めている状態といえるだろう。

 「Twitter人気はいつまで続くのだろうか」と不安に感じる企業担当者も少なくないようだが、今Twitterを利用していない企業の担当者に求められるのは、Twitterの機能や可能性を考えた上で、活用の是非を冷静に見極めること。そこで、「日経ネットマーケティング」では10月25日発行の11月号特集で「Twitterの可能性」を取り上げた。Twitterを既に活用している企業の取り組みや、Twitterの基礎知識などをまとめた。ここでは、企業がTwitter活用を考える上での2つのポイントについて紹介する。

Twitterの特徴をまずは理解する

 まず、Twitterの特徴を企業が生かせるかどうかが問題だ。Twitterは従来のメディアやツールとは異なる特徴を備えており、成果を生むツールになる素地は十分。その特徴を理解することが、活用を考える上での第一歩となる。

 Twitterの特徴としてまず挙げられるのは、その速報性だ。Twitterのつぶやきは、ほぼリアルタイムで反応が帰ってくる。そのため、例えばECサイトでのタイムセールの告知などにTwitterは適していると言える。

 また、サイトの担当者がつぶやくことで、親しみやすさを打ち出すこともできる。パーソナルな視点で「本日のお薦め情報」などを提供することで、従来引き付けることのできなかったユーザー層にも関心を持ってもらうことが可能になる。こうしたTwitterの特性を生かすことで、売り上げの獲得やファン意識の醸成につなげることは可能だ。また、Twitterではほかの人のつぶやきを引用する「RT」という利用法があり、クチコミで企業のつぶやきが広がる可能性もある。
 

Twitterの運営体制について考える

 今回の特集記事で取材した企業の運用体制はさまざまだ。担当者が自ら1人でつぶやく企業もあれば、複数のメンバーが交代でつぶやく企業もあった。多くの企業で共通していたのは、社内で内容の細かいチェックはしていなかった点。これらの企業はいずれも、あらかじめ「悪口は言わない」などのルールを決めたり、対応できそうなスタッフを選んだりすることで、問題が発生するリスクを抑えていた。

 一方、こうした“属人的”な対応を難しいと考える企業担当者もいるのではないだろうか。そうした企業に対しては、TwitterでもCMS(コンテンツ管理システム)のように、事前に内容を確認した上でつぶやきを公開することもできる運用ツールの提供が始まっている。そうしたツールを使い、組織的に運用するのも1つの手だ。

 ただし、社内のチェックを通す結果、Twitterならではの「くだけた」コミュニケーションができなくなり、ユーザーから評価されなくなるようでは問題だ。親しみやすさを打ち出したり、スピーディーな情報発信ができたりするのがTwitterの醍醐味(だいごみ)。チェック体制に気を配るあまり、それが実現できないのであれば、Twitterでつぶやくメリットを生かせない可能性は高い。

 今回の特集で取材した企業の中では、カブドットコム証券が自社開発したツールを使い、Twitterのつぶやきを社内でチェックした上で公開していた。もともと会員向けサイトで掲載するコンテンツなどをチェックするツールをTwitterにも対応できるようにして、社内のコンプライアンス担当者などが目を通しているものだ。それでも、Twitterでは日経平均など市況情報を速報するほか、他愛の無い内容も含めると1日に10件以上つぶやくことも珍しくはないという。

 「株式相場の操縦につながるような内容は問題だが、Twitterを担当しているスタッフは、ほかに雑誌や書籍での執筆なども手掛ける情報発信のプロ。何の心配もしていないが、運用体制も整えた」(同社)という。内部でチェックをする場合、同社のようなスピーディーな対応ができるかどうかが問われることになる。

まずは個人で使ってみる

 もし、あなたが自社でのTwitter活用の是非を気にかけているのであれば、まずは個人ベースでTwitterを利用することを薦めたい。独特の用語や使い方があり、初心者にはとっつきにくい面もあるため、使ってみないと真価が分かりにくいように思えるからだ。Twitterの登録・利用は無料である。

 Twitterが「世の中でブームだから使う」というのも変な話だが、「よく分からないから使わない」と拒絶するのも考えものだ。日本では本格的な利用が始まったばかりで今後は未知数だが、本当に企業が「使える」ツールに変貌する可能性はある。今「つぶやき」の流れを体感することで、より的確な判断が可能になるはずだ。