「Wikipediaの情報はブリタニカと同じくらい正確」--Nature誌が調査結果を公表

Daniel Terdiman(CNET News.com)2005年12月16日 12時37分

 Nature誌の行った調査から、WikipediaとBritannicaが正確な情報源として同レベルにあることが明らかになった。Britannicaは、世の中の事実について記述した情報源の基準と見なされている百科事典だ。

 Wikipediaは自由にだれでも利用できるオンラインの百科事典だが、ここ2週間は、寄稿者の信頼性や全体的な説明責任に関する問題で、マスコミから集中砲火を浴びていた。

 Wikipediaは、特に元ジャーナリストのJohn SeigenthalerがRobert KennedyおよびJohn F. Kennedyの暗殺に関与していたとする記述が匿名の寄稿者によって公開された件で、それを4カ月も放置していたとして批判を浴びていた。また、同サイトにあるポッドキャストの項目に関して、この分野の草分け的存在であるAdam Curryが他人の独創的な業績に触れた部分を匿名で削除したとして、これを非難する声がブロガーの間から上がっていた。

 このような状況と、これまでのさまざまな問題に対し、Wikipediaを立ち上げたJimmy Walesは、このサービスとコミュニティの基盤となっているのは、情報の正確さを保証する自己検閲と自浄の特性だとの主張を通してきている。

 それでも、多くの批判者が正しい情報源としてのWikipediaの役割を認めようとせず、正確な参考文献の例としてEncyclopedia Britannicaの名前を挙げることも多かった。

 Natureは、今回の調査にあたって、WikipediaとBritannicaの双方からさまざまなトピックを選び出し、各分野の「しかるべき」専門家に意見を求めることにした。依頼を受けた専門家は、それぞれから同じ話題の項目を抜き出し、比較を行った。ただし、専門家には各情報がどちらのサイトから抽出されたかは知らされなかった。その結果、各分野の専門家から合わせて42件の有効回答が集まった。

 最終的に、極めて重要な概念に関する一般的な誤解など、深刻な誤りが見つかったものはわずか8件で、それぞれ4件ずつという結果になった。ただし、事実に関する誤記、脱落、あるいは誤解を招く文章はいくつも発見された。Wikipediaにはこのような問題が162件あったのに対し、Britannicaのほうは123件だった。

 この数を1項目あたりに換算すると、Britannicaは2.92件、そしてWikipediaは3.86件となる。

 「Natureが実施した専門家主導による調査は、専門意見を聞いてWikipediaとBritannicaの科学分野の内容を比較した初めての調査だが、その結果は注目を集めている例(SeigenthalerやCurryの問題)が例外的なものであることを示唆している」(Nature誌)

 BritannicaのほうがWikipediaより多少正確であるような結果が出たことに対し、Walesは、Natureの調査が自分のサービスの基本構造の正しさを証明するものだとコメントした。

 「この調査で比較的有利な結果が出たことを嬉しく思う。1つの項目でなく、全体の品質を重視しているため、これで最近のマスコミの報道に強く反論できると思う」とWalesは CNET News.comに対してコメントしている。

 同氏はまた、双方とも誤記の割合が小さくなかったことも認め、この数字は百科事典の項目を全体的に審査する必要があることを物語っていると付け加えた。

 同氏はさらに、この結果はBritannicaには弱点がないとの通念を覆すものだとした。

 「Britannicaには相当な敬意を抱いている。だが、Britannicaに誤記が全くないと考えている人があまりにも多すぎる。『Britannicaで調べたのだから正しいはずだ』という。どこにでも多数の誤記があることが分かってよかった」(Wales)

 これに対して、Britannicaの関係者は、Natureの調査結果についてWikipediaに大きな改善の余地があることが示すものだと述べている。

 Encyclopedia Britannica社長のJorge Cauzは、「(Natureの記事には)Britannicaに比べて、Wikipediaの誤りは3割も多いとある」と述べた。

 さらに、Cauzや編集長のDale Hoibergは、NatureがBritannicaで見つけた問題を明記しなかったことを遺憾に思うと述べた。

 「この調査のプロセスについて多数の質問をしたが、(記事のなかでは)誤りには誤記、脱落、あるいは誤解を招く文章を含むとの説明があるだけで、それぞれの具体的な数については言及がない。われわれは、この問題を深刻に捉えており、何とかしてこれを調査し、究明したいと考えている」(Hoiberg)

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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