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JOURNEY TO THE STARS - A Sci Fi Fantasy Adventure
JOURNEY TO THE STARS - A Sci Fi Fantasy Adventure_c0039487_20095698.jpg











John Mauceri/
Hollywood Bowl Orchestra
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前回の、マウチェリとハリウッド・ボウル管弦楽団とのアルバムをもう1枚聴いてみました。こちらは、サブスクでのレーベルはDECCAになっていますが、オリジナルはもちろんPHILIPSのCDです。1994年の9月に録音され、翌年リリースされています。
「ジャーニー・トゥー・ザ・スターズ」という、まるでゴダイゴの歌みたいなタイトルですが、こちらは宇宙ものの、主に映画に使われた音楽が演奏されています。ただ、サブタイトルに「A Sci Fi Fantasy Adventure」ともあるように、「Sci Fi」、つまり「SF」がらみの音楽も取り上げられています。念のため、ですが、この「Sci Fi(サイファイ」」というのは、「ワイファイ」とは何の関係もなく、「Science Fiction」、つまり「空想科学小説」のことですからね。
おそらく、ここでの選曲にあたったのは、マウチェリ自身なのではないのでしょうか。とりあえず「スター・トレック」とか「スター・ウォーズ」といった誰でも知っている映画のサントラはありますが、ほとんどは何ともマニアックな選曲に終始していますからね。何しろ、最初に聴こえてくるのが、「カール=ビリエル・ブロムダール」が作った「アニアーラ」というオペラからの「ヴィンテガータン」という曲、という、どこをとってもこれまでに一度もお目にかかったことのない名前ばかりの曲でしたからね。しかも、これはハリウッド・ボウル管弦楽団が演奏しているのではなく、完全な「電子音楽」なのでした。
この作曲家はスウェーデンの方で、このオペラは1958年に作られた、コンピューターによって運航されている宇宙船で、地球から火星へ目指した人類のお話なのだそうです。その音楽は多岐にわたり、ジャズや12音、さらには電子音楽も使われています。この曲のタイトルは「天の川」という意味のようですね。こんな音源、いったいどこから持ってきたのでしょう。
マニアックな映画音楽として欠かせない「2001年宇宙の旅」も取り上げられていますが、これはまずノーマルなリヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラ」のファンファーレがごく普通に演奏されています。ただ、演奏自体はあまりインパクトは感じられません。オルガンは電子オルガンのようですし。しかし、その後には、なんとリゲティの「アトモスフェール」が演奏されていたではありませんか。もちろん、これは映画の中では既存の録音が使われていますが、ここではマウチェリがしっかりオーケストラを指揮しています。それが、これまで聴いてきたこの曲の演奏とは全く違う、とても新鮮なアプローチだったのですよ。つまり、この演奏を聴いて難解だと感じることが全くなく、とてもフレンドリーな音楽として伝わってきたのですね。
サプライズはもう一つありました。先ほどのファンファーレを含め、監督のキューブリックは、この映画のサントラを最初はハリウッドの大作曲家、アレックス・ノースに依頼します。その時に、イメージを伝えるために既存の音源を「テンプ・トラック」として彼に渡したのですね。ところが、監督は出来た音楽には満足せずに、そのテンプ・トラックをそのままサントラとして使ったのです。ですから、ノースの音楽は完全にお蔵入りになってしまいました。
それを再現しようと、ジェリー・ゴールドスミスが1993年に、そのスコアを元にVARÈSE SARABANDEに録音したのが、このアルバムです。
ですから、マウチェリはこれを聴いて、翌年にこの自分のアルバムでもこのファンファーレを録音したのです。ノースの音楽はこれまではゴールドスミスの録音しか存在していないと思っていましたから、こんなところで聴けたなんてほとんど奇跡です。まあ、音楽自体はいかにもな映画音楽で、今となってはあの映像にはシュトラウスしかなかったのだな、と思えますけどね。
あとは、イギリスの大作曲家アーサー・ブリスが1936年のH.G.ウェルズ原作のSF映画「来たるべき世界」のために作った音楽が組曲形式で聴けるのが、面白かったですね。それこそ、ジョン・ウィリアムズのオーケストレーターにも影響を与えたのではないかと思えるほどのオーケストレーションが、見事です。

CD Artwork © Philips Classics Productions

# by jurassic_oyaji | 2024-03-28 20:11 | オーケストラ | Comments(0)
今は、CMで目にします
 昨日の雪には驚きましたね。お彼岸も過ぎれば、普通はあり得ないのですが、もう日中から降り始まっていて、見る見るうちに積もってくるのですから、いったい今はいつなのか、と思ってしまいましたよ。このままだと、夕方には職場から帰る坂道も、車が登ってこれなくなるぐらいに積もってくるかもしれません。そこで、早めに融雪剤を撒きに行きました。
 雪が降っている最中ですから、カッパを着て長靴を履いて一輪車に融雪剤の袋を積んで、坂道に向かいます。そこで、車が通った後の轍にそって、ひたすら融雪剤を撒いていきます。これで、帰り道は大丈夫でしょう。
 帰るころには、雪はかなり積もっていて、車も久しぶりに雪降ろしです。それよりも、足元の雪がシャーベット状になってもうぐじゃぐじゃですから、買ったばかりのスニーカーが水満たし、靴下まで濡れている感じが分かります。
 このスニーカーを買ったのは、土曜日でした。まだ2、3日しか履いていないというのに、こんな目に遭ってしまうとは。というか、私にしては珍しく、前に買ってからまだ3ヶ月ぐらいしか経っていないのに、新しいのを買っていたのですね。それは、「スケッチャーズ」という、その頃は聞いたことのなかったブランドだったのですが、お店で履いてみた時に、そのソフトな履き心地にすっかり気に入ってしまって、即座に買ってしまっていたものでした。それは、履き続けるうちに本当に足にフィットして、もう、歩くのが楽しくなってくるような柔らかな履き心地だったのですね。大体、私が気に入ったものは、それをまた買おうと思っている頃にはもうなくなってしまっている、というパターンが多かったので、これも、まだあるうちに買っておこうと、新しく買ってみたのですね。
 もちろん、それも同じように足に馴染んでくれました。それが、こんな目に遭ってしまうなんて、かわいそうですね。
今は、CMで目にします_c0039487_21220731.jpg

 買ったのと同じものが、ネットにありました。本当は、これとはちょっと違って、赤い色のものが欲しかったのですが、お店にはサイズがなかったんですよね。でも、これでもロゴは赤いので、大丈夫です。
 昨日はニューフィルは分奏、木管は宮城野文化センターが会場だったので、途中のフォレオの丸亀製麺に久しぶりに行ってみました。そうしたら、野菜のかき揚げが、こんなに小さくなってました。
 以前は、このお皿からはみ出すぐらいのボリュームで、食べるのに苦労したというのに、このチマチマとしたいでたちは、どうでしょう。もしかしたら、大きすぎるという意見があったので、変えたのかもしれませんが、これは単なる値上げですよね。幸い、きつねうどんの油揚げは前と同じ大きさだったので、許しましょう。
 練習会場の駐車場でも一苦労です。雪で白線が見えなくなっているのと、暗いのとで、駐車には自信のある私でも、ちゃんと入れるのにずいぶん苦労してしまいましたよ。そして、外に出たらものすごいシャーベット。もう、泣きたくなりました。
 練習は、やはり雪のせいで遅れてくる人がいたので時間通りには始まらず、予定の曲をやってみたら、まだまだ時間があったのですが、この雪なのでそれで終わりにすることになりました。その頃にはもう雪はやんでいて、雨に変わっていましたね。車も少なくなっていたので、渋滞もなく、すぐに帰れました。
 帰ったら、すぐにスニーカーをストーブの前に置いて乾かしました。今朝になったら、まだ少し雪は残っていたので、長靴を履いて、スニーカーは持って行きました。職場で、まず雪かきをしましたが、帰るころには何もしないところもすっかり乾いていましたね。逆に、雪かきをして集めたところだけ雪が残っているのですから、これだったら最初から何もしない方が良かったな、と思ってしまいます。今ごろはそんな雪なんですね。
 一度濡れたスニーカーは、さらに柔らかくなって足に馴染むようになっていました。
# by jurassic_oyaji | 2024-03-27 21:23 | 禁断 | Comments(0)
American Classics
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John Mauceri/
Hollywood Bowl Orchestra
PHILIPS/438 663-2




ジョン・マウチェリがハリウッド・ボウル管弦楽団を指揮してPHILIPSレーベルに録音したアルバムが、サブスクにもアップされていました。もちろん、このレーベルは現在はDECCAに吸収されているので、サブスクでもDECCAを統括しているUNIVERSALレーベルとしてリリースされているのですが、なぜか、WARNERレーベルで出ているものもあるようです。今回の「American Classics」というアルバムも、そのWARNERでした。
なお、サブスクのジャケットではロゴが消えていますが、ここではオリジナルのPHILIPSのロゴが入っている画像を使っています。
ハリウッド・ボウル管弦楽団というのは、LAの郊外の森の中に1922年に建設された野外コンサートホールです。収容人員は17,500人、毎年夏になると、ここでは様々なジャンルのアーティストによるコンサートが開かれます。
そして、1927年に、ユージン・グーセンスを指揮者に迎えて、ハリウッドの映画会社のスタジオ・ミュージシャンなどが集まってここで演奏するために結成されたのが、「ハリウッド・ボウル管弦楽団」でした。RCAレーベルへの録音も行っています。
さらに、1945年になると、レオポルド・ストコフスキーが指揮者として登場、今度はCAPITOLレーベルの専属オーケストラとして、「ハリウッド・ボウル交響楽団」と名前を変えて、活動を始めます。その時期には、フェリックス・スラトキンやカーメン・ドラゴン、そして映画音楽の作曲家としても有名なミクローシュ・ローズやアルフレッド・ニューマンも指揮者に加わります。
その時期のアルバム、1957年にリリースされたスラトキン指揮のLPが、手元にありました。
1990年になると、このオーケストラはジョン・マウチェリを指揮者に迎え、再度「ハリウッド・ボウル管弦楽団」と名前を変え、その体制も一新されてLAフィルの事務局の管理下に置かれることになりました。このオーケストラとLAフィルとは、例えば「ボストン・ポップス」と「ボストン交響楽団」のような、メンバーがほぼ同じでレパートリーだけが違う団体ではなく、もともと全く異なるメンバーによって結成されていました。それが、LAフィルのセカンド・オーケストラとして活動することになったのです。したがって、ハリウッド・ボウルでは、LAフィルによる演奏がない時に、主に「ポップス」のレパートリーを演奏することになりました。そして、今度はPHILIPSレーベルとの録音契約を結びます。
最終的には、マウチェリは2006年まで指揮者を務め、その間にPHILIPSに13枚のアルバムを残すことになりました。
そのうちの1枚、1992年に録音され、翌年にリリースされたのが、今回のアルバムです。ここでは、生まれた順に、ジョージ・ガーシュウィン、デューク・エリントン、レナード・バーンスタイン、そしてジョン・アダムズの作品が演奏されています。
ガーシュウィンの「パリのアメリカ人」を聴き始めると、録音がとても鮮明なことに気づきます。先ほどのスラトキンのLPも、モノラルながらかなり良い音だったという記憶がありますから、その伝統はずっと続いていたのかもしれません。演奏そのものは、とても穏やかで、滑らかに歌っている心地よさがあり、普段よく聴くちょっとそわそわしたようなテンポ感は全くありません。途中のトランペット・ソロのブルースも、汗臭さのないスマートさです。
次のエリントンの「ハーレム」は、ほぼジャズのビッグ・バンドのようなサウンドで、シンフォニックなストリングスはあまり聴こえてきません。素直にジャズをコピーした、という感じでしょうか。
バーンスタインの「シンフォニック・ダンス」も、荒々しさの全くないスマートな演奏でした。フルートの人がとても上手。「ランブル」の最後に、こんなソロが入っているなんて、初めて気づかされました。
そして、最後のアダムズの「ザ・チェアマンダンス」は、1985年に作られたオペラ「ニクソン・イン・チャイナ」からのナンバーです。おいしそうですね(それは「ニクマン・イン・チャイナ」と「アンマンダンス」)。出だしは、もろミニマルで、完全なライヒのコピーでしたが、その中から中国風のモードが聴こえてくるのがユニーク。その後は、何度かテンポが変わり、独特のリリシズムを見せている、聴きやすい音楽でした。

CD Artwork © Philips Classics Productions

# by jurassic_oyaji | 2024-03-26 22:19 | オーケストラ | Comments(0)
大腸内視鏡検査
 今日は、3年ぶりとなる大腸内視鏡検査に行ってきました。これが5回目となります。最初に、検便で引っかかったのでこの検査を受けたのが2016年、その後翌2017年、2年後の2019年、やはり2年後の2021年と受けてきて、その次も2年後に受けるつもりだったのですが、この間にコロナがあったせいですっかり年代の感覚がなくなってしまっていて、3年後の今年になってしまいました。確か、「1~2年後にまた受診してください」と言われていたはずだったのに。
 いつも、やってもらう病院は決まっているので、あわてて予約を取りに行ったら、先生は、「そのぐらい間を空けても大丈夫ですよ」と言ってくれましたから、ホッとして予約を取って、その日が今日でした。
 1回目に受けた時には、安定剤を使ったので、検査している間はもう完全に寝ていて、起きたら全てが終わっていた、という状態でしたね。ですから、あとで写真を見せられて、ポリープを切除したことが分かった時には、それをリアルタイムで見れなかったことがすごく残念でした。自分の体の中の手術の様子なんて、普通は見えませんからね。
 ですから、それ以降は、安定剤を使わないで、しっかり目を開いて検査の様子を見ることにしてありました。でも、その後は切除するほど大きなポリープも出来てはいなかったので、それを見る機会はありませんでした。
 ですから、もう、最初に切除してから8年も経っているので、そろそろポリープも育っていて、今回こそは、それを切ったり、その後をクリップで止めたりというような作業を実際に見れるのを楽しみにしていました。
 いつものように、午前中いっぱいは自宅で大腸の中を洗浄する薬をひたすら飲んで、それをひたすら出す、ということを繰り返していました。その洗浄剤が、以前はもう気持ち悪くなって飲みたくなくなるような味だったのですが、慣れてきたのか、あるいは改良されたのか、今回はそれほど抵抗なく飲めてしまいましたね。「出す」方も、しっかり自分でコントロールして出来るようになっていて、時間通りにすっかりきれいになった「液体」が出てくるようになりましたし。
 検査の予約は1時からだったのですが、30分前には来てほしいということで、ほぼその時間に病院に着いたら、いつものように着替えをさせられました。要は、後にスリットが入った紙パンツに履き替えるんですよね。そのために個室に案内されて、そのパンツと、「検査着」に着替えさせられます。もちろん、それは、鍵をかけて一人でやるのですが、なんせ3年ぶりなので、「検査着」というのは、どういうのだろう、と思ってしまいました。確かガウンのように裾が長いような記憶があったのですが、それを着てみるとそんなに長くはなく、紙パンツが見えるぐらいの短さでした。モデルチェンジをしたのかな、と思いましたね。
 それで、着替えが済んだので、外に出ると、看護師さんがあわてて走ってきて、「ズボンを穿いてください」なんて言ってますよ。確かに、そこには上着の他にズボンもありましたね。なんか変だとは思っていたのですが、さっきは「着替えてください」とは言っていたけど「ズボンを穿け」とは言っていなかったので、そんな勘違いをやってしまいました。看護師さんは「誰も見ていなかったので、良かったです」なんて言ってましたが、わたしはもろ変態者になっていたのですね。恥ずかしい。
 結局、検査の間中、モニターを見ていたのですが、今回もポリープは小さいのしかなかったので切除の対象にはならなかったのだそうです。次は「2~3年後」だそうです。
 終わった時に看護師さんが、「ポリープは取っていないけど、おなかが空いているからと言って、急にガッツリ食べたりしたらダメですよ」と言っていました。私は、きのうは1日中準備のためのレトルトパックでしたし、今日は朝から何も食べていないので、終わったらガストあたりでこんなのを食べてみようと思っていたのですが、
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 それはあきらめて、こっちにしました。
 今年のは、おかかも入っていて、さらにおいしくなってましたね。
# by jurassic_oyaji | 2024-03-25 21:39 | 禁断 | Comments(0)
DURUFLÉ/Requiem
DURUFLÉ/Requiem_c0039487_08262203.jpg









Katherine Gregory(MS)
Florian Störtz(Bar)
Harrison Cole(Org)
Stephen Layton/ The Choir of Trinity College Cambridge
HYPERION/CDA68436




ついに、スティーヴン・レイトンとトリニティ・カレッジ合唱団がデュリュフレの「レクイエム」を録音してくれました。彼らは、その録音のために、イギリスでなく、わざわざ(多分)パリまで赴いて、そこのサン・トゥスターシュ教会でのレコーディングを敢行していました。ただの観光旅行ではなかったはずです。
そこでは、まずこの間ご紹介したデイヴィッド・ブリッグスの作品の録音を2022年の7月11日から13日まで行い、そのあと、このデュリュフレのセッションが7月15日から20日まで行われていたようですね。その時には同時に映像も収録されていました。
その映像では、お客さんは全く入っていない教会で、メンバーが黒づくめのドレスやシャツを着て、オルガニスト以外の全員が暗譜で演奏していました。そこでは、例えば、ソロだけが歌うところでは、合唱団が静かにフレームから消えていった後、ソリストだけで歌っている、といったような演出も施されていましたね。
ここで演奏されているのは合唱にオルガンとチェロだけが加わる第2稿ですから、録音もこの教会の祭壇の向かいにある大オルガンの下に合唱団が集まって行われていました。オルガン奏者は、本体のコンソールではなく、リモートのコンソールで合唱団のすぐ後ろで演奏していますので、緊密なアンサンブルも確保出来ていたようです。マイクが合唱団の上に何個かぶら下がっているのも見えましたから、おそらくそこで歌われていたものをメインのテイクにして、CDなどが作られていたのでしょうね。
そのCDはだいぶ前にリリースされていたのですが、それがやっとサブスクでも聴けるようになりました。このレーベルのアルバムは、定期的にまとまってサブスクに登場するのですが、この「レクイエム」はなかなか出てきません。もしかしたら、サブスクでは出ないのかと思って、CDを購入しようか、と思った頃に、ひょっこり出てきたので、喜びもひとしおです。
待った甲斐があって、これは期待通りの素晴らしさでした。確かに、この曲にはグレゴリオ聖歌がモティーフとして使われていて、なんとなくスタティックなイメージで受け止められていることが多いようですが、実際には、ある意味「国威発揚」のために作られていたという側面が最近は明らかになっていますから、本当はかなり攻撃的な作品のはずなのです。おそらく、レイトンはそれを踏まえたうえで、この曲にとことん「攻め」の姿勢で挑んでいたのではないか、という気がしてなりません。
ですから、合唱には、きっちりとハーモニーや音色をまとめたうえで、メンバー一人一人のそれぞれの個性を引き出す、といった、かなり高度な歌わせ方をさせているように思えます。小さくまとまるのではなく、それぞれのエネルギーを損なうことなく、一つの方向を示して、高い次元のアンサンブルを実現させる、みたいな感じでしょうか。
たとえば、「Sanctus」などでは、細かい音符のオルガンのイントロに続いて、女声合唱が「Sanctus, sanctus, sanctus Dominus Deus Sabaoth」というフレーズを歌いだすのですが、そこには普通の演奏ではよく見られる、なんともふわふわしたハッピーな雰囲気は全く見られません。そこにあるのは、なにかに追いかけられているような切羽詰まった心情でした。
そして、テキストが「Osanna in excelsis」に変わると、そこに加わった男声合唱によって場面が一変されます。それをさらに盛り上げるのがオルガンのフルスロットル。そこでは、あたかもオーケストラ版(第1稿)でのティンパニの強打にも匹敵するほどのインパクトがもたらされていることが感じられるはずです。
この演奏では、普通は合唱団以外のソリストが歌うことになっているソロのパートを、全て合唱団のメンバーが歌っています。そのバリトンとメゾ・ソプラノの人たちは、完全に並みのソリストのレベルを超えたとても存在感のあるソロを聴かせてくれていました。こんな人たちが集まった合唱団なのですから、素晴らしいのは当たり前だと納得させられます。

CD Artwork © Hyperion Records Ltd

# by jurassic_oyaji | 2024-03-24 08:27 | 合唱 | Comments(0)