定年で給料大幅減額されたらどうすればいいの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
以前も書いたように、日本ではいまだに年齢を基準にした一律の処遇見直しが一般的です。

特に定年のタイミングで再雇用されると、同じ仕事を続けていてもいきなり賃金が半分以下に減額されるケースもあり「やってられるか」と怒る人は多いですね。

で実際、裁判にまで発展するケースもあります。



【参考リンク】給料4~6割減が過半、定年後再雇用の厳しい現実



【参考リンク】定年後の再雇用、賃金減額はどこまで認められるのか


確かに、仕事内容が変わらないにもかかわらず年齢を理由に一律で処遇を下げるのは、政府が推進する同一労働同一賃金の理念に真っ向から逆らっているようにも見えます。

ただ「後輩と同じ水準の賃金に戻せ」といっても、後輩の誰と揃えればいいんでしょうか。

そもそも、そうした会社側による一方的な賃金水準の見直しに対し、個人はどう立ち向かえばいいんでしょうか。

いい機会なのでまとめておきましょう。キャリア後半戦に臨むベテランビジネスパーソンにとってけして他人事ではないはずです。


「元の給料に戻せ」は通用しない、だってあれは年功給だったから


日本の賃金制度は非常に特殊で、業務内容を限定せずに採用、なんでもやらせつつ勤続年数に応じて処遇を決めるというものです。

一応職能給という名前はついていますが実質的に年功給ですね。

これに対して世界では業務内容で賃金を決める職務給(ジョブ型賃金)が一般的です。日本でも非正規雇用のほとんどはこっちですね。

さて、その年功給ですが、新人から若手~中堅くらいまでは割に合わず、中高年になってから積みあがった年功給によりリターンを得られるようになっています。

だいたい30代のどこかで「割に合わない」から「割りに合う」に転換する企業が多いです。
そういう観点にたてば、50代の給料はボーナスステージ真っただ中だということは明らかでしょう。

だから「定年前の給料水準に戻してくれ」というのはまずありえない話です。ボーナスステージだけ延長してくれよと言っているようなもんですから。

じゃあ同じ仕事をしている後輩に合わせるのか。でも同じ仕事をしている後輩の中には20代も30代も40代もいて、皆それぞれ給料は違うわけですよ年功給だから。

そもそも年功給の組織の中で仕事を基準に給料水準をそろえるということが不可能なわけです。

ではどうするか。60歳までは年功賃金で、その後の再雇用は会社が判断した水準で払うという、まあどちらかというとジョブ型に近い扱いにする会社がほとんどですね。

会社が「君の仕事に出せるのは月〇〇万円だ」と判断したんだから、それに納得できないなら賃上げを交渉し、それでもダメなら転職するしかないです。

そしてそれが出来ない、他にいくあてなんてないというのならチェックメイト、あなたの負けです。そういう交渉力のないキャリアを身に着けてしまった自己責任ですね。

あ、たぶん労働弁護士なんかは(自分らの飯の種だから)「悪いのは会社です、一緒に闘いましょう!」とかなんとか煽ってくるでしょうが、個人的にはオススメしませんね。

たとえ勝ったとしても会社にいる間は針のむしろ状態でしょうし、人件費のしわ寄せを背負わされる後輩からは憎悪の目で見られることは確実です。

現在、健康で自立した生活をすることのできる健康寿命は男性で72.6歳とされています。そのリミットまでの貴重な貴重な数年間を、周囲から孤立した状態でお荷物扱いのママ浪費するなんて、人生に対する冒とく以外のなにものでもないと筆者は思いますね。





以降、
60代をジョブ化する企業で起こること
60歳を迎える前にやっておくべきこと






※詳細はメルマガにて(夜間飛行)







Q:「落語の育成制度を人事制度として評価すると?」
→A:「落語に限らず、徒弟制度のようなものはあっていいと思います」



Q:「副業でyoutuberはまずいでしょうか?」
→A:「迷惑系じゃなければそこまで気にしなくてもいいと思いますが」





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Fラン大って「遊びやサークル活動をエンジョイしてるリア充たちの楽園」じゃないの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
先日、筆者のなんということもないつぶやきがなぜかバズったので紹介。



ブランドも偏差値もない大学(以下Fラン大)は遊びやサークル活動でハジけてるような人たちはむしろ例外的で、どっちかというと真面目でおとなしめな人が多いという、知ってる人は知っている話ですね。

インプレッション数が2月29日時点で1,000万回超えているので、同じ意見の人が多かったんでしょう。

Fランの謎の大人しさはどこから発しているんでしょうか。そもそもFラン大って何のために存在してるんでしょうか。

いい機会なので考察してみたいと思います。実はそれはキャリアとも無関係ではありませんから。


誰がFランを必要としているのか


まず最初にフォローしておくと、筆者は別にFラン大をバカにするつもりはないです。なぜならそもそも9割の人はバカなので勉強できないくらいで何ら恥じることはないです。

胸張って生きてください。むしろ早慶とか東大卒業しててバカやってる人の方が恥ずかしいです。

「Fラン大」って言う呼称が失礼だというんなら脳内で“底辺大”とか“境界大”とか勝手に置き換えて読んでください。そんなのよりはよっぽどFラン大の方が響きがかっこいいと思いますけどね。

さて、世の中にある一見無駄に見えるものでも、必ずそれらを必要とする人たちはいるものです。Fラン大もそうですね。

昔から有名な話ですが、私大というのは官僚の有力な天下り先です。

終身雇用=年功序列制度を維持するためには、勤続年数に応じて配分するポストが不可欠だからです。

それも「年功に対するご褒美」としてプレゼントするわけですからそれなりに偉いポストじゃないと意味がありません。

教授ポストに加え、事務方なら事務局長や理事長ポストあたりでしょう。

「元官僚なんて潰しが利かなそうなのに、偉いポストまで用意して迎え入れるメリットなんてあるの?」

と疑問に思う人も多そうですが、そこはほら、補助金とセットならいくらでも手を上げる組織はあるわけですよ。社会の秩序とか経済効率性は無茶苦茶になりますけど。





メリットは補助金だけではありません。天下りには、会社が何かやらかした時に管轄する省庁からの処分を軽く済ませられる“厄除け”の効果もあるとされています。





余談ですけど、twitterのリベラル界隈で活躍中の前川さんも天下り斡旋で辞めさせられた人ですね。







なんか偉そうなこと言ってても「補助金とバーターで天下り斡旋やって、虚偽説明繰り返してた小悪党」という眼鏡で見るとなかなかコミカルに見えてくるのでおすすめです。

要は、Fラン大を含む私大という組織は、官僚機構の終身雇用制度を維持機能させるための一種の経済植民地なわけです。

最近、一部の政治家の中から「大学教育の無償化」を求める声が上がるようになりました。

いくら補助金でFラン大を延命したところで学生が来ないと意味ないですからね。学生を増やすにはどうするか。無償化が最強の特効薬だというのは明らかでしょう。

筆者は上記のようなことを言い出している政治家のバックには間違いなく文科省が手を伸ばしている気がしています。


終身雇用制度の生んだあだ花、それがFラン大


では、そんなFラン大に入学する人たちはどういう人達なんでしょうか。

「単純にバカなだけだ」という人もいますが、先述のようにバカなんてありふれた存在なのでFラン大に集う理由にはなっていません(Fラン大に集まるバカと集まらないバカは何が違うの?と聞かれると答えられない)。

冒頭のつぶやきに対するレスで非常に多かった意見として
「成功体験が少なく、意欲が低いから」
というものがありました。これは一理あると筆者も思いますけど、後述するように“原因”ではなく“結果”だと考えます。

むしろ筆者がFラン大から強く感じるのは「一種の懐かしさすら感じられる古さ」なんですよ。あ、昔はこんな人達いっぱいいたよな、みたいな。

90年代バブルの頃、第一経済大学というFラン大の走りみたいな大学が「定員の10倍以上の人間を入学させ、体育館に机並べて授業を受けさせる」という荒稼ぎをやって問題となったことがありました。

今振り返ると完全にやってる側も入学する側も狂ってるとしか思えないんですが、当時はそれは割と普通だったんですね。

だって訴えるでもなく、学生はちゃんと学費納めて淡々と通っていたわけで。

筆者には、21世紀現在、Fラン大と呼ばれる大学でボーっと座っている人たちと、90年代に体育館に並べられた机で黙って授業受けてた人たちって、時代こそ違え同じ種類の人間に見えるんです。





以降、
終身雇用制度の生んだあだ花、それがFラン大(後編)
Fラン大を笑う人達が気づいていないリスク







※詳細はメルマガにて(夜間飛行)







Q:「減税が支持されないのはなぜ?」
→A:「政府を30年以上飢えさせた結果が莫大な債務残高とアホみたいな天引きだからです」



Q:「なぜ立憲民主党はサラリーマンを無視するんでしょうか?」
→A:「政権交代して決定的に何かが変わってしまいましたね」





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定年制度って廃止しないとダメなの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
先日、OECDが日本に対して定年制度の廃止を提言し話題となりました。



【参考リンク】OECD、日本に定年制廃止提言 働き手確保へ女性活躍を


まあ普通に考えれば日本の最重要課題は働き手不足であり、改善点として「年齢を理由に一律で引退させている仕組み」に目が行くのは当然でしょうね。

とはいえ、どんな不合理な制度であってもそれが存在してきたのはそれなりの理由があるわけで、「やめろ」「はいわかりました」というわけにはいきません。

定年制度の抱える課題とはなにか。そして個人はそれとどう向き合うべきなのか。いい機会なのでまとめておきましょう。


定年制度は多くの矛盾をはらむ問題制度


定年制度には以下のような課題が昔から指摘されています。

・年齢を理由に一律に処遇を決めるのは世界に逆行

年齢や性を理由に処遇を決めるのは世界的にはタブーで、採用選考時の履歴書にもそうした情報を記入させない企業が多いです。

そんな中で年齢を理由に退職させる仕組みの存在は、明らかに世界に逆行していると言われても仕方のないものですね。

特に、今後はグローバルに軸足を移そうとしている企業にとっては「日本法人における男女間の賃金格差」問題と同様、後々問題化するリスクがあるでしょう。

・年齢を基準にすると多くの人はやる気が無くなる

定年退職する日が事前にわかる以上、その日が近づけば誰しもやる気なんてなくなるものです。ルーチンワークくらいはやっても、新しいことへ挑戦したり学びなおしたりはしないでしょう。

そして多分その傾向は定年5年前くらいから徐々に出てくるはず。

さらに言えば、定年制度とセットで導入された役職定年制度も同様ですね。管理職ポスト確保のために50代半ばで管理職ポストを外し、定年まで第一線に戻っていただく仕組みのことです。

あれで管理職ポスト外れてから、第一線に戻ってバリバリ働いているという人を筆者はほとんど知りません。だいたい職場の隅っこでボーっとしてたり、会議の時だけちょろっとなんか言うだけの人に見えます。

ああいう人たちも含めれば「定年制度のおかげでやる気なくなった人たち」というのは想像以上の数になると思われますね。

気になる人は自分の会社の従業員平均年齢を調べてみてください。平均年齢が30歳前後だと問題ないですが、40歳超えてるような組織なら少なくとも3割くらいは定年絡みでやる気なくなった人たちがいるはず。

「40代半ば以降に出世競争が終わり消化試合モードになっている人たち」と合わせれば、過半数の人間が「最低限のことしかやろうとしない」状態になっている可能性は高いです。

そういえばつい先日、「日本企業では72%の人間が組織に貢献する気が無い」という衝撃の調査結果が出て話題になってましたけど、筆者の予想割合と当たらずとも遠からずといった感じですね(苦笑)



【参考リンク】会社に貢献意欲、日本5% 世界平均23%、格差拡大


その人たちの給料ですか?当然ですが現役世代みんなの人件費から出てます。やる気ない人が増えれば増えるほど、下の世代の皆さんの給料は上がりにくくなります。

今は春闘真っ最中ですけど、千円2千円でしこしこやりあうより、こっち先に何とかすべきだろうとは確かに筆者も思いますね。


【参考リンク】春闘 電機大手各社の労働組合 月額1万3000円の賃上げ要求


ただし、定年制度というのは終身雇用制度の副産物です。終身雇用で原則辞めさせられないから、人為的に作られた卒業タイミング、それが定年制度というわけです。

だから定年を辞めるということは終身雇用も見直すということになります。なので単純に定年制度だけ廃止すれば済むという話ではないんですね。

ではどうするか。提言通り定年制度を廃止し、年齢ではなく「いらなくなった人」から順次辞めさせられる仕組みを作るか。

やはりそれが一番抜本的な処方箋でしょう。上記のような定年問題にくわえ「日本人の給料が全然上がらない問題」「人手不足の問題」に対しても極めて有効な処方箋です。

問題は誰もそんなこと議論してないってことですが。

ただ、少なくとも定年問題に対しては有効なプランBというものがあります。それは「年功賃金から、働きに応じて処遇を柔軟に見直す制度へのシフト」ですね。

そう、それは言ってしまえばジョブ化ということになります。





以降、
政治も企業も、定年制度を弄ることでめんどくさいことをすべて先送りしてきた
定年という概念を捨てたほうがいい理由







※詳細はメルマガにて(夜間飛行)









Q:「40代ラストチャンスで地方管理職ポストは受けるべき?」
→A:「とりあえず受けておいて損はないでしょう」



Q:「副業で水商売はアリ?」
→A:「副業で修業はアリですが夜の飲食は微妙かも」







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会社でソリティアしてる人って楽しいの?と思ったときに読む話

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先日、こんなほのぼのニュースがありました。


【参考リンク】係長がゲーム三昧で職場は回っていたのか? 業務用パソコンで「ソリティア」 横浜市職員を懲戒 ゲームのための休日出勤も


筆者も本件に対してtwitterでコメントしたんですが意外に反響が大きかったですね。


反応を見るに、「自分の職場にも同様の人がいる。なんとかしてほしい」から「邪魔にならないなら別にいい」までさまざまでしたが、総じて「日本企業ではよく見る光景」といった評価のように感じました。

なぜ、いい年のオッサンがソリティアにはまるんでしょうか。

なぜ組織はそうした中高年を見て見ぬふりをしているんでしょうか。いい機会なのでまとめておきましょう。


社内失業者が最後に行き着く先、それがソリティア


まず、いい年したおっさんがソリティアやりこむ理由ですが、要は暇つぶしですね。
なんで暇なのかというと、人事制度的にはもう上がり目がないですから。新しいことに挑戦したり成長するメリットなんてなにもないからです。

また、年功賃金はそれなりにもらっていてそれは原則下がらないので、暇さえ何とかすれば定年まで食えるわけです。

年功序列の人事制度では、主任や係長、部課長くらいまでは一応競争はあるんですが、だいたい40代前半までには出世競争は白黒つくものです。

役員以上を目指すようなエリートを別にすれば、40代半ばには過半数の人が消化試合モードになるのが日本企業では普通ですね。

「ゲームで時間をつぶす」というのは極端なケースとしても、「周囲にバレないように暇をつぶしている」「最低限言われたこと以外はやらずに省エネモードで働いている」という寝そべり族みたいな人は多いでしょう。

余談ですが、昔からゲームで時間潰す人ってなぜかソリティアなんですよね。マインスイーパとかは聞いたことないですね。たぶんソリティアって、そういう孤独な中高年を引き付ける何かがあるんでしょうね。

では、なぜ組織はそういう人間を放置しているのでしょうか。実は管理部門にはそういう人間を「なんとかしてほしい」といったタレコミは結構あるものなんですが、人事部が強権発動して何とかしたという話はとんと聞いたことが無いですね。

というのも、会社側はそういうオジサンの存在は必要悪だと割り切っているからです。

仕事に値札が付いているジョブ型(職務給)と違い、日本の年功賃金は個人の能力に値札が付く属人給です。

実際はともかく、勤続年数と共に経験や能力が蓄積されるから年々上がっていくのだ、というロジックです。

だから、能力はあったとしても実際にそれだけの仕事をしているかは別ものなんですね。

むしろ「会社側が配属から異動まですべて権限を握っている以上、仮に能力があるのに仕事が無い状態の人間がいても、それは適材適所が出来てない会社側の責任だろう」という考えの人は、今でも労組はもちろん、人事部門の中にも割といますね。

というわけで、普通の日本企業では、よほど目に余る行為をしていない限りは、仕事の無い人は放置される傾向が強かったです。今までは。

最後に一点だけフォロー。

今回の一件で「だから役所はダメなのだ」みたいなことを言ってる人が結構いたんですが、個人的にはむしろ役所の方がまだ状況はマシだなという印象ですね。

確かに、競合相手があるわけでもなく、業績が賞与に反映されるでもない役所の方が“ぬるい”のは事実でしょう。

だから、ソリティアやってる人間が発生する余地も民よりは大きいのかもしれません。

一方、これが民間だと「暇だから時間をつぶしている」なんて雰囲気的に許されません(というとみんな経営目線を持っていると勘違いする人もいそうですけど、どっちかというとムラ社会のノリに近いです)。

結果、そうした状況になってしまった人達は一生懸命仕事を作ることになります。

意味のない会議や、誰が必要としているのかわからない資料などは、たいてい誰かが「やってるふり」をするためにオーダーされてるものですね。

もちろん、そういう仕事は“やってる感”を出すために周囲を巻き込んでなんぼなわけです。多くの人を巻き込めば巻き込むほどに「お、あいつ頑張ってるな」と偉い人からは見えるからですね。

どっちみち仕事しないんなら、一人でソリティアやっててくれた方が100倍マシと思うのは筆者だけでしょうか。






以降、
“消化試合”を生むのは人ではなく制度
時間とは潰すものではなく有効に活用すべきものである







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Q:「中国人って本当にみんな猛烈社員なんでしょうか?」
→A:「日本人もかつてはそう呼ばれてましたね」



Q:「なんで連合って天引きに声を上げないんでしょうか」
→A:「一応、その役割を担うのが民主党だったんですけどね……」






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どうして若くて組合の無い会社の方が給料が高いの?と思った時に読む話

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先日、こんな記事が話題となりました。


【参考リンク】スタートアップ、平均年収700万円超え 上場企業上回る

日本では長らく「大企業に就職するのが正解」といった考えが主流でしたから、隔世の感がありますね。

でも冷静にひも解いていくと、実はスタートアップの方が高賃金になって当然なんですね。

大手にはおいそれとお給料払えないしがらみが色々と存在する一方、スタートアップにはそういうしがらみがありませんから。

大手が賃金を上げられないしがらみとは何でしょうか。そしてこのトレンドは続くんでしょうか。良い機会なのでまとめておきましょう。

これから社会に出る人はもちろん、キャリア後半戦に臨む人たちにもキャリアと賃金を考える良いきっかけになるはずです。


歴史が長く組合のある会社ほど賃金が上がらないワケ


大手とスタートアップで給料に差が出やすい構造的な事情は、主に以下の2点です。

・そもそも採用対象が違うから

前回述べたように、大手企業はポテンシャル採用で採用した人材をゼロから自社で育成するのが今でも主流です。

当然ながら、社内には育成に大成した高度人材もいる一方、育成に失敗したダメ人材、採ったばかりの若手もいるわけです。当然ながら平均給与はとびぬけたものにはなりません。

一方、スタートアップはそもそも人を育てる余裕がないため、採用は即戦力重視の傾向が強く、中途採用がメインです。

新卒採用を手掛けているところも、多くは理工系の修士以上の専門職ですね。

そういう人材を採ろうとするなら最初からある程度の金額は出さないといけないわけです。

同じプロ野球チームでも、3軍まで抱えるチームと1軍だけのチームの年俸を比較するようなものですね。


・労組の有無

「どっちも同じ終身雇用のもとで回しているのに、なぜ大手の方が賃金が上がりにくいのか」という質問もたまにされますが、筆者は労組の存在が大きいと感じています。

スタートアップでは業績を理由とした賃下げは普通にありますし、会社によっては事実上の解雇に近い扱いをするところもあります。

そういう柔軟性があればこそ、入り口で高い報酬を提示できるわけですね。

日本の労働法制のもとで経営されていても、従業員を定年まで雇用することを前提に経営しているスタートアップを、筆者は一社も知りませんね。

一方、社内に従業員を代表するような労組がある会社ではそんなことはまず不可能です。

彼らは賃下げや解雇が行われないような水準を意識しつつ、その中で最大限の賃上げを(多くは今でも横並び一律で)要求します。

それも70歳まで雇ってもらうという条件つきで。

人材育成に失敗したダメ人材、仕事が無くなってぼーっとしてるだけの人たちも含めて、労組は交渉するわけです。


【ぼーっとしてる人の参考リンク】横浜市職員が業務用PCで「ソリティア」など64時間もゲーム 停職2カ月



「だったら労組のある会社の方が人に優しいじゃない」

と思った人もいるかもですが、それはちょっと違います。

要するに労組は、人材育成に失敗した人も、仕事無くなったオジサンも、70歳まで雇い続けられるよう、みんなの賃金を抑える努力をしているわけです。

これが、日本企業が過去最高益を続々と更新する一方で、実質賃金が19か月連続で下がり続けている理由ですね。

ストなんてぜんぜん起きてないでしょ。そもそも労組は賃上げなんて求めてないんです。彼らが要求しているのはとにかく細く長く雇用を維持することなんです。

フォローしておくと、筆者はだから労組が悪だと言っているわけではありません。彼らのほとんどは悪気なく良かれと思って「横並びで賃下げも解雇も無し、で年金支給開始まで雇用」を要求しているんでしょう。

でもそれが結果として組織を硬直化させ、優秀な人ほど組織から飛び出す一方、そうでない人ほど滞留するという結果を生み出している現実は直視すべきでしょう。

さて、実は上記のような話は、筆者はいろんな場所で10年以上前からしてきた内容です。要するに優秀層ならスタートアップに行った方がいいよということですね。

でも10年前だとやはり大手の方が採用では圧倒的に強かったですね。理由は後述するように、大手の年功序列のセクセスストーリーがまだ健在で、そっちの方が夢があると感じる人が多かったからです。

初任給が多少高いくらいでは響かなかったんですね。

でも平均賃金でもスタートアップが上回るようになったというのは、大手の年功序列のサクセスストーリーを完全に超えてきたということですからね。

年功序列の停滞が隠し切れないところまできたか。それともリスクを取りさえすればリターンが得られるという当たり前のことが雇用においても実現するようになったのか。

多分その両方なんでしょう。






以降、
企業のストーリーを見極めるべき3つのポイント
どちらのストリーにかけるかではなく、どう働くかの問題







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Q:「新卒採用の手間とコストが上がり続けています」
→A:「各社とも消耗戦やってますが、あえていうなら……」


Q:「人事異動で仕事が無くなったんですが」
→A:「皆が見て見ないふりをしている課題に取り組むチャンスです」




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コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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