バブル期以来の賃上げとか言いつつなんで氷河期世代の賃金は下がってるの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
春闘で33年ぶりの高水準の賃上げが実現というニュースが話題となっています。


【参考リンク】春闘の賃上げ率5%台続く 連合が第3回集計を公表 「中小が健闘」


日経平均も最高値更新しましたから、まさにバブルよ再び!って感じですね。

とはいえ、少なくとも賃上げについては人によって相当の温度差があるように感じられます。

今年の賃上げはバブル期と何が違うんでしょうか。そして、賃上げのトレンドはこれからどこに向かうことになるんでしょうか。

いい機会なのでまとめておきましょう。


「みんなで昇給」から「上がる人は上がる」へ


以前も書いたように、従来の日本は「会社にしがみつく」だけで実質的な賃上げを獲得することのできる「労働者にとってのボーナスステージ」でした。

デフレにもかかわらず解雇や賃下げが実質的に不可能だからですね。

でもインフレが起きてしまった現在、会社は「賃上げしないですえおく」という強力な武器を手にしました。

こうなると、今度は何もしないでほっておくだけで勝手に実質賃金が減っていく「企業にとってのボーナスステージ」になります。

今までの積年の恨み、というわけではないですが、これまで賃下げできなかった分も含め、企業は大喜びで「賃上げしないで放置」という形で、トータルでの人件費を下げようとするでしょう。

とはいえ、以下のような人材には積極的に賃上げしていかないといけないのも事実です。

・逃げ足の速い人
・組織にとって欠くべからざる優秀な人材


新人はただでさえ数が少ないうえに逃げ足も速いです(90年代と比較して4割少ない、第二新卒市場という便利な転職市場がある、年功序列がまったく信用されていない、SNSで瞬時にネガティブな情報は共有されるetc…)。

彼らを囲い込むには待遇の底上げ以外ありえません。

また、30代以上の中堅、ベテラン層の中でも組織にとって不可欠な人材は、やはりこの機に思い切った待遇改善を行わないと流出されるリスクが高いです。

というわけで、賃下げの絶好の好機とは言いつつ、そうしたグループの賃上げはしっかり行われるでしょう。

この層に対しては確かに「インフレで賃金は上がりやすくなる」というのはあると筆者も思います。インフレ傾向が続くなら多少無理して賃上げしてもリスクは少ないですから。

一方で、以下のような人たちは放置されるはずです。

・会社になにをされようが逃げられない人
・別に辞められても困らないような人


会社はとっくに白黒つけているとは思いますが、自分ではどっちかわからないよという人に。

「もう昇給も出世も頭打ちだけど、別にクビになるわけじゃないからこのままでいいや」と今まで年功賃金に胡坐をかいてきた人は間違いなくこっち側です。覚悟しましょう。

評価面談が毎回5分くらいで淡々と終わって成績もBばっかりついてたような人も90%の確率でこっちでしょう。

「自分はなんていうことのない平均的人材だ!何も悪いことはしてないぞ!」と怒る人もいるでしょうけど、何も悪いことしてない平均的な人材がだんだん苦しくなるのがインフレ=企業のボーナスステージだと思ってください。

まとめると、現在の賃上げはバブル期のそれとは異なり、上がる人とそうでない人がきっちり線引きされているということです。

というようなトレンドは特定の業種に関わらずほぼすべての業種で発生している印象があります。
早速こんなデータも出ていますね。


【参考リンク】変わる働き方、賃金配分に変化 大企業の中堅社員が減少


まあ中高年は横ばいかちょい上げくらいだろうとは思ってましたが、大手の中堅が減ってるのはちょっと予想外でしたね(苦笑)

要するに年功給の見直しが各社で粛々と進められているんでしょう。ジョブ化の波は、我々の予想以上のスピードで押し寄せているのかもしれません。






以降、
「今の新人は恵まれすぎ!」という勘違い
今後10年で起きること







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Q:「1on1面接の効果とは?」
→A:「いわゆる中間管理職が流れでやっても効果は……」



Q:「高校生の娘の文理選択についてアドバイスください」
→A:「興味のある分野があるというのは幸先がよいと思います」




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定年で給料大幅減額されたらどうすればいいの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
以前も書いたように、日本ではいまだに年齢を基準にした一律の処遇見直しが一般的です。

特に定年のタイミングで再雇用されると、同じ仕事を続けていてもいきなり賃金が半分以下に減額されるケースもあり「やってられるか」と怒る人は多いですね。

で実際、裁判にまで発展するケースもあります。



【参考リンク】給料4~6割減が過半、定年後再雇用の厳しい現実



【参考リンク】定年後の再雇用、賃金減額はどこまで認められるのか


確かに、仕事内容が変わらないにもかかわらず年齢を理由に一律で処遇を下げるのは、政府が推進する同一労働同一賃金の理念に真っ向から逆らっているようにも見えます。

ただ「後輩と同じ水準の賃金に戻せ」といっても、後輩の誰と揃えればいいんでしょうか。

そもそも、そうした会社側による一方的な賃金水準の見直しに対し、個人はどう立ち向かえばいいんでしょうか。

いい機会なのでまとめておきましょう。キャリア後半戦に臨むベテランビジネスパーソンにとってけして他人事ではないはずです。


「元の給料に戻せ」は通用しない、だってあれは年功給だったから


日本の賃金制度は非常に特殊で、業務内容を限定せずに採用、なんでもやらせつつ勤続年数に応じて処遇を決めるというものです。

一応職能給という名前はついていますが実質的に年功給ですね。

これに対して世界では業務内容で賃金を決める職務給(ジョブ型賃金)が一般的です。日本でも非正規雇用のほとんどはこっちですね。

さて、その年功給ですが、新人から若手~中堅くらいまでは割に合わず、中高年になってから積みあがった年功給によりリターンを得られるようになっています。

だいたい30代のどこかで「割に合わない」から「割りに合う」に転換する企業が多いです。
そういう観点にたてば、50代の給料はボーナスステージ真っただ中だということは明らかでしょう。

だから「定年前の給料水準に戻してくれ」というのはまずありえない話です。ボーナスステージだけ延長してくれよと言っているようなもんですから。

じゃあ同じ仕事をしている後輩に合わせるのか。でも同じ仕事をしている後輩の中には20代も30代も40代もいて、皆それぞれ給料は違うわけですよ年功給だから。

そもそも年功給の組織の中で仕事を基準に給料水準をそろえるということが不可能なわけです。

ではどうするか。60歳までは年功賃金で、その後の再雇用は会社が判断した水準で払うという、まあどちらかというとジョブ型に近い扱いにする会社がほとんどですね。

会社が「君の仕事に出せるのは月〇〇万円だ」と判断したんだから、それに納得できないなら賃上げを交渉し、それでもダメなら転職するしかないです。

そしてそれが出来ない、他にいくあてなんてないというのならチェックメイト、あなたの負けです。そういう交渉力のないキャリアを身に着けてしまった自己責任ですね。

あ、たぶん労働弁護士なんかは(自分らの飯の種だから)「悪いのは会社です、一緒に闘いましょう!」とかなんとか煽ってくるでしょうが、個人的にはオススメしませんね。

たとえ勝ったとしても会社にいる間は針のむしろ状態でしょうし、人件費のしわ寄せを背負わされる後輩からは憎悪の目で見られることは確実です。

現在、健康で自立した生活をすることのできる健康寿命は男性で72.6歳とされています。そのリミットまでの貴重な貴重な数年間を、周囲から孤立した状態でお荷物扱いのママ浪費するなんて、人生に対する冒とく以外のなにものでもないと筆者は思いますね。





以降、
60代をジョブ化する企業で起こること
60歳を迎える前にやっておくべきこと






※詳細はメルマガにて(夜間飛行)







Q:「落語の育成制度を人事制度として評価すると?」
→A:「落語に限らず、徒弟制度のようなものはあっていいと思います」



Q:「副業でyoutuberはまずいでしょうか?」
→A:「迷惑系じゃなければそこまで気にしなくてもいいと思いますが」





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Fラン大って「遊びやサークル活動をエンジョイしてるリア充たちの楽園」じゃないの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
先日、筆者のなんということもないつぶやきがなぜかバズったので紹介。



ブランドも偏差値もない大学(以下Fラン大)は遊びやサークル活動でハジけてるような人たちはむしろ例外的で、どっちかというと真面目でおとなしめな人が多いという、知ってる人は知っている話ですね。

インプレッション数が2月29日時点で1,000万回超えているので、同じ意見の人が多かったんでしょう。

Fランの謎の大人しさはどこから発しているんでしょうか。そもそもFラン大って何のために存在してるんでしょうか。

いい機会なので考察してみたいと思います。実はそれはキャリアとも無関係ではありませんから。


誰がFランを必要としているのか


まず最初にフォローしておくと、筆者は別にFラン大をバカにするつもりはないです。なぜならそもそも9割の人はバカなので勉強できないくらいで何ら恥じることはないです。

胸張って生きてください。むしろ早慶とか東大卒業しててバカやってる人の方が恥ずかしいです。

「Fラン大」って言う呼称が失礼だというんなら脳内で“底辺大”とか“境界大”とか勝手に置き換えて読んでください。そんなのよりはよっぽどFラン大の方が響きがかっこいいと思いますけどね。

さて、世の中にある一見無駄に見えるものでも、必ずそれらを必要とする人たちはいるものです。Fラン大もそうですね。

昔から有名な話ですが、私大というのは官僚の有力な天下り先です。

終身雇用=年功序列制度を維持するためには、勤続年数に応じて配分するポストが不可欠だからです。

それも「年功に対するご褒美」としてプレゼントするわけですからそれなりに偉いポストじゃないと意味がありません。

教授ポストに加え、事務方なら事務局長や理事長ポストあたりでしょう。

「元官僚なんて潰しが利かなそうなのに、偉いポストまで用意して迎え入れるメリットなんてあるの?」

と疑問に思う人も多そうですが、そこはほら、補助金とセットならいくらでも手を上げる組織はあるわけですよ。社会の秩序とか経済効率性は無茶苦茶になりますけど。





メリットは補助金だけではありません。天下りには、会社が何かやらかした時に管轄する省庁からの処分を軽く済ませられる“厄除け”の効果もあるとされています。





余談ですけど、twitterのリベラル界隈で活躍中の前川さんも天下り斡旋で辞めさせられた人ですね。







なんか偉そうなこと言ってても「補助金とバーターで天下り斡旋やって、虚偽説明繰り返してた小悪党」という眼鏡で見るとなかなかコミカルに見えてくるのでおすすめです。

要は、Fラン大を含む私大という組織は、官僚機構の終身雇用制度を維持機能させるための一種の経済植民地なわけです。

最近、一部の政治家の中から「大学教育の無償化」を求める声が上がるようになりました。

いくら補助金でFラン大を延命したところで学生が来ないと意味ないですからね。学生を増やすにはどうするか。無償化が最強の特効薬だというのは明らかでしょう。

筆者は上記のようなことを言い出している政治家のバックには間違いなく文科省が手を伸ばしている気がしています。


終身雇用制度の生んだあだ花、それがFラン大


では、そんなFラン大に入学する人たちはどういう人達なんでしょうか。

「単純にバカなだけだ」という人もいますが、先述のようにバカなんてありふれた存在なのでFラン大に集う理由にはなっていません(Fラン大に集まるバカと集まらないバカは何が違うの?と聞かれると答えられない)。

冒頭のつぶやきに対するレスで非常に多かった意見として
「成功体験が少なく、意欲が低いから」
というものがありました。これは一理あると筆者も思いますけど、後述するように“原因”ではなく“結果”だと考えます。

むしろ筆者がFラン大から強く感じるのは「一種の懐かしさすら感じられる古さ」なんですよ。あ、昔はこんな人達いっぱいいたよな、みたいな。

90年代バブルの頃、第一経済大学というFラン大の走りみたいな大学が「定員の10倍以上の人間を入学させ、体育館に机並べて授業を受けさせる」という荒稼ぎをやって問題となったことがありました。

今振り返ると完全にやってる側も入学する側も狂ってるとしか思えないんですが、当時はそれは割と普通だったんですね。

だって訴えるでもなく、学生はちゃんと学費納めて淡々と通っていたわけで。

筆者には、21世紀現在、Fラン大と呼ばれる大学でボーっと座っている人たちと、90年代に体育館に並べられた机で黙って授業受けてた人たちって、時代こそ違え同じ種類の人間に見えるんです。





以降、
終身雇用制度の生んだあだ花、それがFラン大(後編)
Fラン大を笑う人達が気づいていないリスク







※詳細はメルマガにて(夜間飛行)







Q:「減税が支持されないのはなぜ?」
→A:「政府を30年以上飢えさせた結果が莫大な債務残高とアホみたいな天引きだからです」



Q:「なぜ立憲民主党はサラリーマンを無視するんでしょうか?」
→A:「政権交代して決定的に何かが変わってしまいましたね」





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定年制度って廃止しないとダメなの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
先日、OECDが日本に対して定年制度の廃止を提言し話題となりました。



【参考リンク】OECD、日本に定年制廃止提言 働き手確保へ女性活躍を


まあ普通に考えれば日本の最重要課題は働き手不足であり、改善点として「年齢を理由に一律で引退させている仕組み」に目が行くのは当然でしょうね。

とはいえ、どんな不合理な制度であってもそれが存在してきたのはそれなりの理由があるわけで、「やめろ」「はいわかりました」というわけにはいきません。

定年制度の抱える課題とはなにか。そして個人はそれとどう向き合うべきなのか。いい機会なのでまとめておきましょう。


定年制度は多くの矛盾をはらむ問題制度


定年制度には以下のような課題が昔から指摘されています。

・年齢を理由に一律に処遇を決めるのは世界に逆行

年齢や性を理由に処遇を決めるのは世界的にはタブーで、採用選考時の履歴書にもそうした情報を記入させない企業が多いです。

そんな中で年齢を理由に退職させる仕組みの存在は、明らかに世界に逆行していると言われても仕方のないものですね。

特に、今後はグローバルに軸足を移そうとしている企業にとっては「日本法人における男女間の賃金格差」問題と同様、後々問題化するリスクがあるでしょう。

・年齢を基準にすると多くの人はやる気が無くなる

定年退職する日が事前にわかる以上、その日が近づけば誰しもやる気なんてなくなるものです。ルーチンワークくらいはやっても、新しいことへ挑戦したり学びなおしたりはしないでしょう。

そして多分その傾向は定年5年前くらいから徐々に出てくるはず。

さらに言えば、定年制度とセットで導入された役職定年制度も同様ですね。管理職ポスト確保のために50代半ばで管理職ポストを外し、定年まで第一線に戻っていただく仕組みのことです。

あれで管理職ポスト外れてから、第一線に戻ってバリバリ働いているという人を筆者はほとんど知りません。だいたい職場の隅っこでボーっとしてたり、会議の時だけちょろっとなんか言うだけの人に見えます。

ああいう人たちも含めれば「定年制度のおかげでやる気なくなった人たち」というのは想像以上の数になると思われますね。

気になる人は自分の会社の従業員平均年齢を調べてみてください。平均年齢が30歳前後だと問題ないですが、40歳超えてるような組織なら少なくとも3割くらいは定年絡みでやる気なくなった人たちがいるはず。

「40代半ば以降に出世競争が終わり消化試合モードになっている人たち」と合わせれば、過半数の人間が「最低限のことしかやろうとしない」状態になっている可能性は高いです。

そういえばつい先日、「日本企業では72%の人間が組織に貢献する気が無い」という衝撃の調査結果が出て話題になってましたけど、筆者の予想割合と当たらずとも遠からずといった感じですね(苦笑)



【参考リンク】会社に貢献意欲、日本5% 世界平均23%、格差拡大


その人たちの給料ですか?当然ですが現役世代みんなの人件費から出てます。やる気ない人が増えれば増えるほど、下の世代の皆さんの給料は上がりにくくなります。

今は春闘真っ最中ですけど、千円2千円でしこしこやりあうより、こっち先に何とかすべきだろうとは確かに筆者も思いますね。


【参考リンク】春闘 電機大手各社の労働組合 月額1万3000円の賃上げ要求


ただし、定年制度というのは終身雇用制度の副産物です。終身雇用で原則辞めさせられないから、人為的に作られた卒業タイミング、それが定年制度というわけです。

だから定年を辞めるということは終身雇用も見直すということになります。なので単純に定年制度だけ廃止すれば済むという話ではないんですね。

ではどうするか。提言通り定年制度を廃止し、年齢ではなく「いらなくなった人」から順次辞めさせられる仕組みを作るか。

やはりそれが一番抜本的な処方箋でしょう。上記のような定年問題にくわえ「日本人の給料が全然上がらない問題」「人手不足の問題」に対しても極めて有効な処方箋です。

問題は誰もそんなこと議論してないってことですが。

ただ、少なくとも定年問題に対しては有効なプランBというものがあります。それは「年功賃金から、働きに応じて処遇を柔軟に見直す制度へのシフト」ですね。

そう、それは言ってしまえばジョブ化ということになります。





以降、
政治も企業も、定年制度を弄ることでめんどくさいことをすべて先送りしてきた
定年という概念を捨てたほうがいい理由







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Q:「40代ラストチャンスで地方管理職ポストは受けるべき?」
→A:「とりあえず受けておいて損はないでしょう」



Q:「副業で水商売はアリ?」
→A:「副業で修業はアリですが夜の飲食は微妙かも」







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会社でソリティアしてる人って楽しいの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。
先日、こんなほのぼのニュースがありました。


【参考リンク】係長がゲーム三昧で職場は回っていたのか? 業務用パソコンで「ソリティア」 横浜市職員を懲戒 ゲームのための休日出勤も


筆者も本件に対してtwitterでコメントしたんですが意外に反響が大きかったですね。


反応を見るに、「自分の職場にも同様の人がいる。なんとかしてほしい」から「邪魔にならないなら別にいい」までさまざまでしたが、総じて「日本企業ではよく見る光景」といった評価のように感じました。

なぜ、いい年のオッサンがソリティアにはまるんでしょうか。

なぜ組織はそうした中高年を見て見ぬふりをしているんでしょうか。いい機会なのでまとめておきましょう。


社内失業者が最後に行き着く先、それがソリティア


まず、いい年したおっさんがソリティアやりこむ理由ですが、要は暇つぶしですね。
なんで暇なのかというと、人事制度的にはもう上がり目がないですから。新しいことに挑戦したり成長するメリットなんてなにもないからです。

また、年功賃金はそれなりにもらっていてそれは原則下がらないので、暇さえ何とかすれば定年まで食えるわけです。

年功序列の人事制度では、主任や係長、部課長くらいまでは一応競争はあるんですが、だいたい40代前半までには出世競争は白黒つくものです。

役員以上を目指すようなエリートを別にすれば、40代半ばには過半数の人が消化試合モードになるのが日本企業では普通ですね。

「ゲームで時間をつぶす」というのは極端なケースとしても、「周囲にバレないように暇をつぶしている」「最低限言われたこと以外はやらずに省エネモードで働いている」という寝そべり族みたいな人は多いでしょう。

余談ですが、昔からゲームで時間潰す人ってなぜかソリティアなんですよね。マインスイーパとかは聞いたことないですね。たぶんソリティアって、そういう孤独な中高年を引き付ける何かがあるんでしょうね。

では、なぜ組織はそういう人間を放置しているのでしょうか。実は管理部門にはそういう人間を「なんとかしてほしい」といったタレコミは結構あるものなんですが、人事部が強権発動して何とかしたという話はとんと聞いたことが無いですね。

というのも、会社側はそういうオジサンの存在は必要悪だと割り切っているからです。

仕事に値札が付いているジョブ型(職務給)と違い、日本の年功賃金は個人の能力に値札が付く属人給です。

実際はともかく、勤続年数と共に経験や能力が蓄積されるから年々上がっていくのだ、というロジックです。

だから、能力はあったとしても実際にそれだけの仕事をしているかは別ものなんですね。

むしろ「会社側が配属から異動まですべて権限を握っている以上、仮に能力があるのに仕事が無い状態の人間がいても、それは適材適所が出来てない会社側の責任だろう」という考えの人は、今でも労組はもちろん、人事部門の中にも割といますね。

というわけで、普通の日本企業では、よほど目に余る行為をしていない限りは、仕事の無い人は放置される傾向が強かったです。今までは。

最後に一点だけフォロー。

今回の一件で「だから役所はダメなのだ」みたいなことを言ってる人が結構いたんですが、個人的にはむしろ役所の方がまだ状況はマシだなという印象ですね。

確かに、競合相手があるわけでもなく、業績が賞与に反映されるでもない役所の方が“ぬるい”のは事実でしょう。

だから、ソリティアやってる人間が発生する余地も民よりは大きいのかもしれません。

一方、これが民間だと「暇だから時間をつぶしている」なんて雰囲気的に許されません(というとみんな経営目線を持っていると勘違いする人もいそうですけど、どっちかというとムラ社会のノリに近いです)。

結果、そうした状況になってしまった人達は一生懸命仕事を作ることになります。

意味のない会議や、誰が必要としているのかわからない資料などは、たいてい誰かが「やってるふり」をするためにオーダーされてるものですね。

もちろん、そういう仕事は“やってる感”を出すために周囲を巻き込んでなんぼなわけです。多くの人を巻き込めば巻き込むほどに「お、あいつ頑張ってるな」と偉い人からは見えるからですね。

どっちみち仕事しないんなら、一人でソリティアやっててくれた方が100倍マシと思うのは筆者だけでしょうか。






以降、
“消化試合”を生むのは人ではなく制度
時間とは潰すものではなく有効に活用すべきものである







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Q:「中国人って本当にみんな猛烈社員なんでしょうか?」
→A:「日本人もかつてはそう呼ばれてましたね」



Q:「なんで連合って天引きに声を上げないんでしょうか」
→A:「一応、その役割を担うのが民主党だったんですけどね……」






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城繁幸
コンサルタント及び執筆。 仕事紹介と日々の雑感。 個別の連絡は以下まで。
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