# 一首評006「湯屋いでし少年のほそきうつしみは夜の白き靄ひらきつつ来る」(高野公彦)

湯屋いでし少年のほそきうつしみは夜の白き靄ひらきつつ来る

 高野公彦『汽水の光』(初版1976;引用2013、現代短歌社〈第一歌集文庫〉p.41)*1

ここまで書いた一首評(001~005)は、歌会で無記名の短歌一首に向き合う場面を想定して、書かれていることのみからその意味を解釈する、ことを基本方針としていました。
今後もしばらくはこのような方針で一首評を書いていきたいとおもいます。

*1:連作「虹の脚」より

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# 一首評004「秋の夜はねむるものにも冴えているものにも掛かる手品師の布」(山階基)

秋の夜はねむるものにも冴えているものにも掛かる手品師の布

 山階基『風にあたる拾遺 2010-2019』(私家版、2019)p.44*1

*1:引用は2019/11/24発行の初版より。章題「2015-2016」

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# 一首評003「遠眼鏡さかさにのぞくとつくにの象の挿頭も見し夕月夜」(山尾悠子)

遠眼鏡さかさにのぞくとつくにの象の挿頭かざしも見し夕月夜

 山尾悠子『角砂糖の日』(LIBRAIRIE6、2016)p.67*1

*1:引用は新装版より。初版は(深夜叢書社、1982)

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# 一首評002「知らない場所に痣がいくつもできてゐる夢より覚めて目覚めてもなほ」(睦月都)

知らない場所に痣がいくつもできてゐる夢より覚めて目覚めてもなほ

 睦月都『Dance with the invisibles』(KADOKAWA、2023)p.79

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# 一首評001「夏のよるの長い家路のなかにあるほそい銅線みたいな覚悟」(川村有史)

夏のよるの長い家路のなかにあるほそい銅線みたいな覚悟

 川村有史『ブンバップ』(書肆侃侃房、2024)p.73

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# 歌033

「ねえ、パパ、みんな生きていないといけないのかしら。そうでないと、あんなにメチャメチャにはならないわよね。」(「精神の生態学へ」(上))*1

生きていないと生きていけないわたしたちはひかりの夜の部屋の断片

*1:グレゴリー・ベイトソン著、佐藤良明訳、岩波文庫、2023、p.95