病院への出前授業ノート

CoSTEP関係者,北海道大学の学生等が中心となって北海道大学病院へ出前授業をしています。その活動ノートです。

2008年9月17日水曜日

アラスカからSkype

2008年9月19日(金),13時より,米国アラスカ州フェアバンクス市からskypeを使って院内学級と話をします。


今回のホンモノは,
「本当にアラスカから話してしまうこと」です。



昨夜撮ったばかりのオーロラの写真。
白夜の季節が終わり,夜は十分暗くなるのでオーロラをみることが出来ます。

北海道より一か月は早く来た黄葉の様子や道端で出会ったムース(ヘラジカ)等,撮りたての写真を紹介しながら,時差,気候,動植物等について子供たちと話す予定でいます。

2008年7月24日木曜日

気候変動の話

2008年7月22日、11:20-12:00の40分間、
Kanamoriさんのご紹介で、初めて院内授業をしました。
テーマは「気候変動の話」です。

今回は、テレビ会議システムをもちいて2つの教室を結んで授業を行う、初めての試みだったようです。
一つは北大病院 院内学級で私が直接授業をして、Kanamoriさんと近所の研究室のYさんには市立札幌病院 ひまわり分校で私の遠隔授業の補佐をしていただくことになりました。

目の前にいる生徒と、カメラの向こうにいる生徒に向かって話をするためには、ある程度「慣れ」が必要だな、と感じました。不足だらけの授業の補佐をしていただいたKanamoriさんとYさんには感謝です。
わたしは出前授業に慣れていないことからも、「慣れ」の必要性は切実です。徐々に慣れていこうと思っておりますが、その際は周りの方々にご迷惑をおかけするかと思いますが、暖かく見守って頂ければ幸いかと思っております。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

さて、内容に関してお知らせしたいと思います。
参加者、授業のねらい、授業の流れ、体験してもらったこと、についてご報告します。

■参加者
講師:sakurai
サポート:院内学級・ひまわり分校の先生方、情報基盤センターの先生方、Kanamoriさん、院内学級に興味のある近所の研究室のYさん。

情報基盤センターの技術には驚かされました。今後はいろいろな可能性がありそうで、楽しみです。

■授業の狙いは、
「氷コアから復元した昔の地球と、人間活動により温暖化に向かっている今の地球」
について知ってもらうことです。

■授業の流れ
1.「ご紹介していただく」
2.「クイズ」
①雪ってなに?
②一年中融けない雪はどこにある?
③融けない雪を押しつぶすと、どうなると思う?
④融けずに積み重なっていくと、どうなる?
(クイズ④と3.1の南極のポスターの順序が当日逆になりましたが、流れは良かったと思います。)

3.「スライド」
3.1「南極」
Kanamoriさんが作成したポスターを見て、大きさを実感してもらう
(前回の院内授業に写真掲載)。
とてもインパクトのあるポスターです。

3.2「氷コアから温度がわかる」
酸素同位体(δ18O)のグラフを見せる。氷から昔の温度が解る。
タイムスケールを理解してもらうために、
Kanamoriさん流のトイレットペーパーで数十万年という途方もないスケールを表現
(前回の授業に写真掲載)。
トイレットペーパー全長50mを10万年として考え、自分たちが生きてきた10年前後が何センチになるかを知ってもらう。(10年は0.5cmでした。)
子供たちの歓声が嬉しかったのもKanamoriさんのおかげでした。
自分もたかが1.4cmの人生なんだなぁ、とビックリでした。

[氷期]グラフを見ながら現在よりも寒い時期の氷期があったことを知ってもらう。
院内学級の先生にご助言をいただいたように、いつも生徒が見ている世界地図に昔の氷床があった場所を塗りつぶす方法は、とても解りやすいと思いました。
(マンモスの話題はウケがいいですね。)

[間氷期]今と同じような暖かい時期があったことを知ってもらう(現在の衛星写真)。
反応、いまいちでした・・・。工夫が必要です。

[氷期・間氷期変動]氷期・間氷期に変動があることを知ってもらう。
わたし:グラフを指さしながら「寒い、暖かい、寒い、暖かい、寒い、暖かい・・・じゃあ次は?」
生徒:「さむーい!!」
とても元気な良い反応、ありがたかったです。

近年、温度が上昇しているグラフを見せる(IPCCレポートの図)。
現在は、人間が活動することによって温度が上昇していることを知ってもらう。
(授業の狙い)

3.2「氷コア中の空気」
スライドで、氷の中に含まれる気泡や微粒子を見せる。
実際に空気が入っている様子と、水に浸けて圧力緩和によって音が発生する「音」を聴いてもらう。
Kanamoriさんの持っている1万年前の氷コアを拝借。
ありがとうございました。

実際の氷を手にしたときの生徒の顔が生き生きしていたのがとても印象的でした。
(授業おわり)

昔の気候変動から、現在の地球温暖化が今ままでとは違うことを理解してもらえたら、今回の授業は成功といえますが、たぶん、そこまで達さなかった、と思います。
まだまだ修行が足らないことを痛感しました。

以上、7月22日の院内授業の報告でした。
sakurai

2008年6月20日金曜日

雪や氷から昔のことを調べる

6月19日,11:15-12:00の45分間,授業をしてきました。

#11:20-12:00の40分間時間を頂いていましたが,
生徒,児童が5分前に揃ったのではじめてしまいました。

内容は2007年5月の授業の焼き直しです。
キーワードは南極,氷コア,氷河。
氷河での野外調査で撮った写真のスライドショーと,
南極氷と防寒服の体験が主たる構成要素です。

子供たちが興味を示してくれて,非常に盛り上がりました。
みんなよく話をきき,機敏に反応してくれたので話もスムーズにすすみました。
授業のねらいに対してどこまで理解してくれたかはわかりませんが,
雪や氷の研究をリアリティのあるものとして感じ取ってもらえたと思います。
また,子供たちにとって,病院生活の中で忘れ難い楽しい思い出になったと自負しています。

院内学級の先生方には前回までと同様,非常に好意的に対応していただきました。

以下内容を箇条書きにまとめました。

■参加者
講師:kanamori
サポート(手を動かす部分や体験の時間の準備と子供たちへの対応)
院内学級の先生方,
院内学級での授業に興味のある大学院生(YHさん,TSさん,RSさん,MMさん)
対象:院内学級の小学生と中学生,計10名程度

■授業のねらい

-地球には雪と氷に囲まれた,日常からは想像もつかない世界があることを実感し
てもらう

-雪氷コア研究の紹介を通して,地球のことを調べるには色んな手段があり得るこ
とを知ってもらう

■実際の流れ
1.導入部
先生からの紹介とクイズ
「地球には1年中雪が融けない場所があるか?○or×」

2.雪氷圏の紹介
スライドを交えてどんな場所に氷河があるか紹介。
また,地球上の雪氷圏の分布を紹介。

NASA,Visible Earthの画像を印刷したポスターと小さな地球儀を使用。
ちなみに画像の取得元はこちら。
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北極と南極
http://svs.gsfc.nasa.gov/vis/a000000/a003400/a003402/
南極大陸
http://commons.wikimedia.org/wiki/Image:Antarctica_6400px_from_Blue_Marble.jpg
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北極は中央の海氷と周囲の陸氷,南極は中央の陸氷と周囲の海氷からなることを紹介。
世界の90%の氷が集中する南極大陸の大きさを,同スケールの日本と重ね合わせることで実感してもらった。

3.氷コア研究の紹介
低温室でコア解析作業をする写真を交えて氷コアから古気候,古環境が復元できることを紹介。
三択クイズで今まで掘られた一番古い氷コアの年代を紹介。
また,トイレットペーパーを使って氷コアでみている歴史は地球史の中でどの位の長さに相当するか説明。

地球の歴史46億年を,トイレットペーパーひとまき,60mとすると,
恐竜が現れたのは2.2億年前:遡ること3m
恐竜絶滅6500万年前:90cm
人類の誕生500万年前:7cm
南極で掘られた一番古い氷コア70万年前:1cm
みんなの生きてきた長さ:髪の毛よりももっともっと細い

実際にトイレットペーパーを目の前で切り分けたのが効果的で子供の興味をひいた。
すごく長いと感じる氷コアの記録や人類の歴史も地球史の中では一瞬,
ということを伝えたかったが,どう伝わったかは不明。

#子供たちにとって年代感覚をつかむのが難しいという指摘を事前に院内学級の先生から頂いていた。トイレットペーパーはその指摘を受けての工夫。

4.氷コア掘削作業の紹介
自分が参加したアラスカでの氷コア掘削作業を飛行場から飛び立つところから低温室まで氷コアサンプルを持ち帰るところまでスライドショーで紹介。
氷河の流れる様子も説明。

5.南極氷と防寒服の体験
南極氷はコップに入れて配り,各自観察後,水をいれて気泡がはじける音をきいてもらった。
防寒服は順番に着てもらった。
その間に個別に中学生の事前学習シートの確認と質問への返答。

■事前学習
中学生には院内学級の先生が南極,氷河,氷コアについての事前学習シートを用意してくださった。
キーワードについて調べてくる形式。
また小学生にも前日に地球史についてのビデオをみせて頂いていた。
おかげで話がスムーズに受け止められた。

■工夫した点
-目の前での作業から臨場感を演出
印刷された南極画像に対して,同スケールで日本列島を印刷して比較してもらった。
また,トイレットペーパーを目の前で切って地球史の時間スケールを説明した。

-字はひらがなで,クイズはみんなで読み上げてもらった。
小学生と中学生,双方を対象としたので小学生にあわせた。
読み上げを入れると理解の早い子もそうでない子も,皆の歩調が合う効果がある。

-スライドは極力自分が映っているものを選んだ。
目の前にいるオジサンが実際にやったこと,というリアリティを演出。

2007年10月15日月曜日

誰でもどこでも天文学は学べます(仮)の事前宿題

kanamoriさんに書いていただいた第1報から進展しました。
院内学級の先生と相談し、子どもたちに事前の宿題を出すことにしました。

宿題の内容は、
・広辞苑に載っている「天文学」の意味を調べたうえで、


1天文学者はどんな人だと思いますか
2天文学者はどんな生活をしていると思いますか
3天文学者はどんな道具を使うと思いますか
4天文学は生活のどこに活用されていますか

を考えて書いてきましょう、というもの。
それをもとに、授業を展開します。

当日は、近くの中学校のクラスにも同時中継されるのですが、
回線の都合上、2つのクラスの子どもたち同士は音声だけですが、
交流しながら授業をおこなう予定です。

たのしみです。

次回のお話;「誰でもどこでも天文学は学べます」

次回の北大病院,院内学級での出前授業は天文学のお話です。
講師は天文学を学ぶ,ys-11kさん。
10月24日の予定です。
また,院内学級から北辰中学校への中継も予定されています。

今回のホンモノはmitakaというソフトと,トイレットペーパーだそうです。
どうしてトイレットペーパー?
乞うご期待。

以下,ys-11kさんからのお話の素案です。
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まず、授業コンセプトは「誰でもどこでも天文学は学べます」

この授業の目標は、

・宇宙・天文の世界の認識・天文学者という人の認識(宇宙、天文に対する意識の変化)
・宇宙は自分の身近にあって、望めばどこでも誰でも学ぶことが可能であること

この授業の結果、天文って面白そう、自分でもアクセスできる世界なんだ、
ということが実感できたら成功です。

持ってくる物は、mitakaというソフト、天文トイレットペーパーです。

授業の前段階の仕掛け案としては、
「宇宙」ってなんだか知ってる?
「天文学」と聞いたら、何を思い浮かべる?
「天文学者」って、何をしている人だと思う?
と聞いてみるのがいいのかも知れません。

予想される返答は、

宇宙→行けない、見えない、わからない
天文学→むずかしそう、星座、夜でしかできない
天文学者→毎日望遠鏡にむかっている、夜の仕事、体力勝負

となりそうな気がしています。

#実は、全部違います。
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実際にどんな話をするか,ただいま鋭意準備中。
お楽しみに!

2007年7月23日月曜日

出前授業「ミジンコ」に行ってきました

本日7月23日、北大院内学級に出前授業に行ってまいりました。
11:15~12:00の45分間で授業を行いました。

参加してくれたのは、
小学生5名(みんな低学年?)
中学生2名
院内学級の先生方
金森さん
です。

今日の「ホンモノ」は
生きた動物です。
ミジンコ(ダフニア・ピュレックス)
オオミジンコ(ダフニア・マグナ)
フサカの幼虫(ミジンコの天敵)
を持っていきました。











動物は、写真のように、ボトルに入れて、
フィルムで封をして持っていきました。
感染の可能性を少しでも軽減しようということで、
水は市販のミネラルウォーターを用い、
容器は70%エタノールで拭きました。
また、ライト付きルーペも5つ持っていきました。

授業は「へんしんの名人 ミジンコのはなし」というタイトルで行いました。
・パワーポイントを使った説明(15分)
 →自己紹介とミジンコ採集の様子、ミジンコの体のつくりや生活史について

・「ホンモノ」のミジンコの観察(10分)

・パワーポイントを使った説明(15分)
 →ミジンコの変身について(捕食者の存在下での形態変化、環境悪化による休眠卵の形成、低酸素条件化でのヘモグロビン生成)

・ワークシートと質問タイム(10分)
 →小学生にはワークシート(添付しました)を使って「ミジンコの変身」を自由に考えてもらいました。
  中学生からは、質問を受け付けました。「ミジンコの食べ物は?」「ミジンコにも性格はあるの?」など。
という流れで行いました。

やはりホンモノの威力は絶大で、
ミジンコが登場した瞬間に教室の空気が変わったと感じました。
キモチワルイといいながらもみんな真剣に観察してくれたのがうれしかったです。
今回は、2種のミジンコを持って行きましたが、特にオオミジンコが大きくてインパクトがあり、人気でした。
途中で観察タイムを儲け、その後も手元にミジンコを置いた状態で授業を続けたので、
私の話に飽きてしまってもミジンコを見ていることができて良かったのではないかと思います。

中学生のみなさんは、ミジンコについて予習してくれていました。
先生方、ありがとうございました。
彼らがどんなことを調べていたのか、どんなことに興味を持っていたのか、もっと良く話しをしてみたかったです。
小学生のみなさんには、ワークシートでミジンコの変身を考えてもらいました。

トゲがたくさん生えていたり、うんちやおならで攻撃など、いろいろな絵を描いてくれました。
あれはあれで楽しかったですが、ワークシートの内容はもうちょっと改善の余地があると感じました。

今日は、私が1人で話すというスタイルで授業を行いました。
質問を挟んだりはしましたが、やはり一方的な感じになってしまったと思います。
話している内容がうまく伝わっているか確認できないまま、次、次と進んでしまったような感覚でした。
今度は、聞き手役をお願いしたり、別のスタイルでも授業をやってみたいです。

皆さんに事前の連絡がほとんどできないまま、授業に行くような形になってしまったこと、申し訳なく思っています。
その結果、上に書いたような反省点が出てきたのだと思います。
次回以降は今回のようなことにならないよう、気をつけていきます。
これに懲りずに応援いただけると幸いです。

また、院内学級の先生方にはいつもどおり暖かく迎えていただき、本当に感謝しています。
先生に、ミジンコ飼育にリベンジしたいと言っていただいたので、何匹か差し上げてきました。
他にも、小学生の男の子で、ミジンコ飼ってみたいという子がいて、私としてはうれしかったです。
今日の授業で、普段目に留めていないような小さな生き物の世界も、なかなか面白いものだ、ということがこども達のなかに残ってく
れたらと思います。

2007年7月19日木曜日

次の授業;ミジンコのはなし

来週,7月23日にミジンコを研究する大学院生,narakiさんが院内学級でミジンコの話をしてくれます。
昨年の様子はこちら。
http://inumimi2.exblog.jp/3903330/

ご本人は先週,採集旅行に行ってきたばかり。
http://inumimi2.exblog.jp/5883265/

わたしたちのコンセプトは“ホンモノ”をもっていくこと。
今回もホンモノのミジンコが授業に登場するのでしょうか。
私(kanamori)は昨年のミジンコの授業にはほとんど関わることが出来なかったのですが,
授業後,院内学級の先生方が大興奮されていたことが印象に残っています。
大人もとりこにする,ミジンコ。
楽しみです。

院内学級のwebsiteもリニューアルされました。
http://genki.iic.hokudai.ac.jp/gakkyu/
積極的にblogを活用して交流できれば,と思っています。

kanamori