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【2024/03/29 08:21 】 |
無題
カチリ。
電気を点けると、狭い台所とその先にある部屋が全部見える。朝出たままなので、テーブルの周りが少し散らかっていた。
女友達しか入れたことが無い部屋が、彼の目にせのびーるなどんな風に映っているのか気になった。
「本多いね、さすが大学生本出してもいい?」
竹元君は感心したように本棚を眺めている。
「うん。あの飲み物切らしちゃってたみたいだから、すぐそこのコンビニにまで行って来るね」
「一緒に行こうか?」
「ううん、大丈夫」
慌てて言い、サンダルを履いた。
いつも行くコンビニに、夜中に男の子と行くのは、店員がさやかの顔を覚えている訳では無くても、気恥ずかしかった。
外に出て夜の空気を吸い込むと、鍵をかけずに外出するのも初めてだなと気づいた。顔が火照る。

缶ジュースとインスタントコーヒー、スナックを買って戻ると、竹下君は起きて待っていた。
「横になってても良かったのに」
「だいぶ醒めてきたから」
その後、少し離れて壁に寄りかかったまま、ずっといろいろな話をした。
サコには聞いてみたい事があった。でも、自分からはどうしても言えなかった。
はっきり言ってくれたら答えを出せるのに、もどかしく時間だけが過ぎていく。
空がうっすらと白み始めた頃に、竹下君は帰っていった。
さやかは窓から手を振った。
竹元君が笑って手を振り返してくれて、車が見えなくなるまで手を振っていた。

「……何も無かったな」

カーテンを閉めながら、ポツリと呟いた。
ホッとしながら、気落ちしている自分が窓ガラスの向こうにいた。

                                       ***明日に





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