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カチリ。
電気を点けると、狭い台所とその先にある部屋が全部見える。朝出たままなので、テーブルの周りが少し散らかっていた。 女友達しか入れたことが無い部屋が、彼の目にせのびーるなどんな風に映っているのか気になった。 「本多いね、さすが大学生本出してもいい?」 竹元君は感心したように本棚を眺めている。 「うん。あの飲み物切らしちゃってたみたいだから、すぐそこのコンビニにまで行って来るね」 「一緒に行こうか?」 「ううん、大丈夫」 慌てて言い、サンダルを履いた。 いつも行くコンビニに、夜中に男の子と行くのは、店員がさやかの顔を覚えている訳では無くても、気恥ずかしかった。 外に出て夜の空気を吸い込むと、鍵をかけずに外出するのも初めてだなと気づいた。顔が火照る。 缶ジュースとインスタントコーヒー、スナックを買って戻ると、竹下君は起きて待っていた。 「横になってても良かったのに」 「だいぶ醒めてきたから」 その後、少し離れて壁に寄りかかったまま、ずっといろいろな話をした。 サコには聞いてみたい事があった。でも、自分からはどうしても言えなかった。 はっきり言ってくれたら答えを出せるのに、もどかしく時間だけが過ぎていく。 空がうっすらと白み始めた頃に、竹下君は帰っていった。 さやかは窓から手を振った。 竹元君が笑って手を振り返してくれて、車が見えなくなるまで手を振っていた。 「……何も無かったな」 カーテンを閉めながら、ポツリと呟いた。 ホッとしながら、気落ちしている自分が窓ガラスの向こうにいた。 ***明日に PR |