パラレル神田とマロニエ読本

(NHK朝ドラは昼の再放送で見るから私には昼ドラ) 今春から始まった『虎に翼』は三淵嘉子さんをモデルに日本初の女性弁護士誕生物語を描いたドラマで、ヒロインが法律を学ぶのは「明大」だけど明治ではなく明律という名のパラレル大学だ。
舞台の御茶ノ水周辺はCGで合成され、昭和初期の神田(っぽい)風景の中に、ニコライ堂のドーム屋根と大きなアーチ橋が頻繁に登場する。橋は位置的には聖橋だがデザインの違うこれまたパラレル大橋で、この上を往来する市井の人々(エキストラ)を使って、戦前の格差社会の情景が表現されているのがとても面白い。

良い演出だなぁと感心しつつ大好きな歌『夢淡き東京』の2番3番の歌詞を思い出す。私は2番の「懐かしい岸に聞こえくるあの音は、むかしの三味の音か 遠くに踊る影ひとつ…」のところを歌うと自然と涙が出て声が詰まってしまう。おそらく三味線弾きだった前世の記憶が私を泣かせるのだろう(たぶんネ)。

(建物ばっかり想い出アルバムより) 懐古趣味音楽ユニット〈ゲルニカ〉の曲『マロニエ読本』を脳内再生しながら御茶ノ水を巡った19歳の冬。↓その時の写真
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あの日通いしニコライ堂 礼拝すれば熱き涙を神ぞ知れ…(♪脳内再生)

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小雪散れ散れ聖橋 流れに捨てた金のボタンに小雪散れ (♪脳内再生)

100年前の昔絵葉書(集めすぎ絵葉書アルバムより)
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もちろん聖橋の向こうに電気街は無い。ニコライ堂の尖塔は関東大震災で焼失し、再建のときに現在の丸い形に変更されたそうです。

紙屑狂時代

長らく放置してた未整理絵葉書をファイリングしようと漸く重い腰を上げた。「狂ったように集めまくった絵葉書は無尽蔵の域に達したのか?」私はそれを確認することすら恐ろしく憂鬱だったのだ。

【集計結果】鑑賞用古絵葉書は1300枚以上で、ついでに新ファイルに引越しさせたノートゲルト(ヴァイマル時代の緊急紙幣)は174枚だった!!(資料用絵葉書は別に大量枚数)。恐れていた無尽蔵ではなく、一応枚数が把握できたのは大きな進歩だといえる。
《これ以上CD/古本/絵葉書/ノートゲルトを絶対に増やさない!》この誓いの証人は窓黒愛読者の諸君、あなた様に委ねよう。もし増えてしまったら厳重注意してね。

 

IMG_8980卓上を丸2日間占拠した絵葉書。ファイルに入れても入れても部屋の片隅から続々と湧き出る恐怖の古絵葉書…
 IMG_8988通販で購入した〈椅子になる箱〉に収まった絵葉書アルバム12冊(1冊100葉入)と2軍及び3軍絵葉書ビニール袋。(その他ノートゲルトアルバムと和書を収納)

給水塔(みよしの)

何十回何百回みても心がザワザワする双子の給水塔と桜を見に行った。高いフェンス越しの桜は花札の図柄のように全貌は見えないが、それもまた一興。

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門扉の隙間から…

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お気に入りの散歩道

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塀越しの水の城

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日が暮れた帰り道…

不気味に発光する塔
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通行人にも給水塔がよく見えるように庭木をいつも整えてくれてる家。そこの住人が個人的にライトアップして宴会をしてた。(すごくうらやましい!)

花見(幼鳥同伴)

昨日「東京の桜満開」のニュースをみて近所の吞川に花見へ行ってきた。ここは私が(サボタージュして)三分の一程しか出席しなかった区立中学校の側を流れる細長い川で、その中学校は大河ドラマで紫式部を熱演中の吉高由里子さんの母校でもあるので、たぶん少女時代の吉高さんも呑川沿いを歩き、お花見したことだろう。

久しぶりに行った呑川の桜は、安全を気にしすぎた区政により激しく剪定されスカスカの寂しい姿になってた。枝など歩行者や車が注意して通れば問題なく、もし落枝に当たったら運の尽きと諦めたらよい。桜伐るなんとか管理者を恨めしく思う。

トリちゃんを連れてお花見
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枝にとまってる(ように見える?)

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欄干の上に座るトリちゃん

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「鴨さんいな〜い…」
ピラミッド噴水周辺はカルガモ&マガモのお食事処
この日はノー鴨デーだった。残念!

ホワイトエレファントの語源も解説

現在開催中のシドニー・ビエンナーレは、ニュー.サウス.ウェールズ州(NSW)立美術館の他にNSW大学、ギャラリー、旧火力発電所などシドニー市内の数カ所に展覧会場があります。私が展示してるのはNSW美術館で、滞在中に作品解説のトーク会をやりました。通訳さんを介し約20分内で手短かに解説できたかな?

〈ザ.2ndサン.アイランド〉については「仏教宇宙を現した須弥山がモデルです」「頂上には神仏ではなく電球が輝いてます」「島を支配してる電力産業は、この一個の電球を灯すために捧げられています」などなど…

パビリオンシリーズ〈地球のおなら館〉については「N産アートアワードに出品した作品で、会場は新発売のエコカー(電気自動車)発表の為に作られたパビリオンだった」「たった1年で取り壊される予定で、真夏の館内を冷やすために会場の裏では大量の室外機がフル稼働し凄く熱くて全然エコじゃなかった!」「作品は狙いどおりピッタリだった」

それから〈白い巨象(もんじゅ)館〉解説「これは新しい原子力発電(高速増殖炉)のために作られた研究施設で、次々とエラーが発生して直ぐに廃止された無用の長物、即ちホワイトエレファントです」「このような原子力の施設は半島の端っこなど分かりづらい場所にある」「都市を支えるエネルギー施設は、国内の植民地とも言えます」と説明。

そして「2ndサン.アイランドも同じくコロニーでありコロニアルなのです。」と結論を述べて私のお喋りは終了しました。世界の聴衆の皆様、ご清聴ありがとうございました。

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「ここはオーストラリアのレンジャー.ウラン鉱山で、先住のヤモリが毒とは知らずにペロペロと水を舐めてるところです」など、ご当地ネタを交え図柄解説中!

五字名号

今日から4月、新年度のスタートです。フレッシュな春に私は何をしようかな?
長年愛用のスチール机に掲げた〈啓示板〉にスローガンを追加し、これからも100%自分を消費し続けることをドイツの哲人に誓おうか…。

五輪塔略図拓本のコピーに書いた5文字は【創造的虚無】
マックス.シュティルナー先生のかっこいい標語に「私は私以外の事柄を無に置いちゃうぞー!」と奮い立つが、この五字名号の実践は容易くない。まずは「無に置く」という言葉の真意を知ることからスタートだ!

(スチール机掲示板の多すぎるスローガン)
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「近代的な諸徳やその他の南風のもとに生きるより、むしろ氷の上に生きるにしかず!」byニーチェ
「一勢に爆撃して一流の名刀をふるいます!!」日本ニヒリスト協会N.N.K
「高等遊民」(生来のディレッタント/永遠の好事家万歳)
「原始林神秘境」(地球上のどこかに存在する魂の故郷)

そして「創造的虚無」は言わずと知れた『唯一者とその所有』からの出典。

南国シドニーを後にして

シドニーから戻って早20日。緑蔭と古建築が美しい植民地の思い出に浸る間もなく、新聞挿絵を制作せねばならなかったが、何だか急に風刺画を描く気が失せてしまい大幅に遅延!編集者さんに詫びを入れ〆切延長してもらい、月曜日夜入稿しました。
そんな訳でこの電子版日記の執筆もぐずぐずと怠け、掲載頻度が下がってしまった!シドニーでの出来事や新聞挿絵など記事のネタはいっぱいあるので、4月から頑張って書こうとおもいます。

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シドニーのスーパーマーケットで購入した美味しいチーズは、昨日の夕食で全部たべきっちゃった(もう無い)。
向こうでは郊外の美しい住宅街の一戸建てに滞在し、その家の近所のゴミ捨て場でこの薔薇柄ティーカップを拾った。(土産に持ち帰る)

カンタくん誕生

シドニー空港売店で購入した〈ハリモグラの缶詰〉を開封すると、缶に明記された【エクスポートクオリティ】のお墨付き及び博物学的な造形にまったく準じないヘンテコで可愛いやつが誕生しました!

カンタス航空で運ばれたおもちゃの缶詰なので、この子を「カンタくん」と命名。可愛いトリちゃんに紹介すると、トリちゃんはスンと無視して遠い目をしている。茶系の配色は似てるけど仲良くなる日は遠そう…

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12オーストラリア$(約1200円)

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缶切りで慎重にキコキコ…

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みっちり充填!

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ぷはーっ

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がんばれ〜

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カンタくん誕生!(君はハリモグラ…なのか?)

死出のCD

先日の葬儀で、棺に眠るご遺体を花で埋めるセレモニーの際、故人の好きだった音楽を流していた。79歳で旅立つこの老婦人への選曲は美空ひばりで〈東京ブギウギ〉も流れたが「やっぱり笠置シヅ子の方がうまい」と思った。

一緒に参列する兄に「私のときはワーグナーの〈ワルキューレ〉がいいな」と言ったのは、私という自己完結な闘争に明け暮れた者の退場に相応しいと思ったからだ。しかし家に帰ってよくよく考えてみると、現世で死んだ戦士が戦乙女(ワルキューレ)の選別でヴァルハラ護衛の兵士に再雇用される無限の帰属関係はまっぴら御免なので、この選曲は却下した。

(死出虫ではなくカメムシ)
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花粉が入らないよう閉め切った部屋に何処からか侵入した虫は「これは出棺にぴったりだろう」と聴いていたCD『ロシア未来派音楽』の上でお散歩。この中で特に葬式向きだと思うのはグネーシン〈彷徨える兵士の歌〉だ。死後もさまよえる自由を我等に!

荼毘とデカビタ

つい3日前は気温30度の地域にいたのに、冷たい雨の降る八王子で革靴を濡らしている不思議。ここに来たのは親類の葬儀に参列するためである。
大きな雨粒で喪服の肩をビタビタと光らせた参列者たちが斎場に集まり着座すると、紫色の鮮やかな袈裟を着た巨漢僧侶が入場し読経を始めた。リズミカルなパーカッション入り声明は、ワールドミュージックのような祝祭のノリもあり、後半の南妙法蓮華経ルフランはミニマル音楽みたいだった。とにかく巨体から発せられるテノールの響きがとても美しい。

仏様を荼毘に付してる(骨を焼いてる)間の控室で、私は巨漢僧侶に「素晴らしい読経でした。芸術ですね!」と話しかけ、それをきっかけに色々な話し(私と同じく僧侶は夜学卒業で、仏門入りを逃れ宅配便の配達員をしてる兄がいる等)をお喋りした。通夜/告別式/初七日を1日に凝縮した式が終わり、僧侶は去り際に「じゃあ、また!」と笑顔で私に挨拶をしたのだった。

「また」とはいつか?
私の葬式の時だったら私は南無阿弥陀仏グループなので呼べない。

(忌中払い)
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デカビタを愛飲してた故人を偲び、献杯のグラスにデカビタが注がれた。(食前に口中を支配するデカビタ味)