シドニー空港売店で購入した〈ハリモグラの缶詰〉を開封すると、缶に明記された【エクスポートクオリティ】のお墨付き及び博物学的な造形にまったく準じないヘンテコで可愛いやつが誕生しました!
カンタス航空で運ばれたおもちゃの缶詰なので、この子を「カンタくん」と命名。可愛いトリちゃんに紹介すると、トリちゃんはスンと無視して遠い目をしている。茶系の配色は似てるけど仲良くなる日は遠そう…
みっちり充填!
先日の葬儀で、棺に眠るご遺体を花で埋めるセレモニーの際、故人の好きだった音楽を流していた。79歳で旅立つこの老婦人への選曲は美空ひばりで〈東京ブギウギ〉も流れたが「やっぱり笠置シヅ子の方がうまい」と思った。
一緒に参列する兄に「私のときはワーグナーの〈ワルキューレ〉がいいな」と言ったのは、私という自己完結な闘争に明け暮れた者の退場に相応しいと思ったからだ。しかし家に帰ってよくよく考えてみると、現世で死んだ戦士が戦乙女(ワルキューレ)の選別でヴァルハラ護衛の兵士に再雇用される無限の帰属関係はまっぴら御免なので、この選曲は却下した。
(死出虫ではなくカメムシ)
花粉が入らないよう閉め切った部屋に何処からか侵入した虫は「これは出棺にぴったりだろう」と聴いていたCD『ロシア未来派音楽』の上でお散歩。この中で特に葬式向きだと思うのはグネーシン〈彷徨える兵士の歌〉だ。死後もさまよえる自由を我等に!
つい3日前は気温30度の地域にいたのに、冷たい雨の降る八王子で革靴を濡らしている不思議。ここに来たのは親類の葬儀に参列するためである。
大きな雨粒で喪服の肩をビタビタと光らせた参列者たちが斎場に集まり着座すると、紫色の鮮やかな袈裟を着た巨漢僧侶が入場し読経を始めた。リズミカルなパーカッション入り声明は、ワールドミュージックのような祝祭のノリもあり、後半の南妙法蓮華経ルフランはミニマル音楽みたいだった。とにかく巨体から発せられるテノールの響きがとても美しい。
仏様を荼毘に付してる(骨を焼いてる)間の控室で、私は巨漢僧侶に「素晴らしい読経でした。芸術ですね!」と話しかけ、それをきっかけに色々な話し(私と同じく僧侶は夜学卒業で、仏門入りを逃れ宅配便の配達員をしてる兄がいる等)をお喋りした。通夜/告別式/初七日を1日に凝縮した式が終わり、僧侶は去り際に「じゃあ、また!」と笑顔で私に挨拶をしたのだった。
「また」とはいつか?
私の葬式の時だったら私は南無阿弥陀仏グループなので呼べない。
私達を乗せた旅客機は赤道を越え3月4日の朝に南半球に到着。着いたその日から毎夜の祝賀会と社交、そしてビエンナーレ開幕行事の一つであるトーク会など6日間に及ぶミッションを完遂し、我々は日曜夜、羽田空港に帰還し即解散した。
夜の熱烈おもてなしパーティー会場では、給仕係がわんこ蕎麦のように隙あらばグラスにシャンパンを注いでくれるので、私は大層酔っ払ってしまい石のベンチで転けて負傷。昼は広大な街を散策し、足の親指にキドニービーンズそっくりの巨大血豆ができた。大英帝国の栄華が凝縮されたような都市シドニーに刻まれた歴史の陰影は濃く、足の傷とともに強い印象を私に残したのだった。
私の作品はここニューサウスウェールズ州立美術館に展示されてます
入って右側は18~19世紀の風景画/肖像画/彫刻がびっしりの展示室。左側はモダンアート。地上2階に現代美術、そして地階1に伝統工芸、地階2にビエンナーレ展示室 (ゲップが出そうなほど充実の展示がなんと見物無料!)
私が着用してた魚柄セーターをきっかけに釣り好きの美容師(店長)とパーマ中の会話が弾む。セーターの魚類は何か?私はカマツカだと思っているけど、顔が丸いので正確な図ではない。店長曰くこの美容室でカマツカが話題になったことは無く珍しいという(たぶん最初で最後のカマツカトーク)。
店長は幼少期に多摩川の堰でウォータースライダーごっこをして遊び、青年期にはジェームズ.ディーンに憧れて髪型とファッションを模倣。ジーパンはリーバイス511を履いていたとパーマ中も思い出を喋り続ける。
「そうなんですね。私が20代のときは501が流行ってましたよ」
ボタンフライから放射状に色落ちした〈ヒゲ落ち〉が珍重され、私は福祉バザーで安く入手したヒゲ501を得意気に履いていた。
…と、このように私がジーパンを履いてた過去を話すのも珍しいことだ。(喋りすぎる店長施術のハリウッド風パーマは大失敗!)
昨日19日で52歳になった私の1年の目標は特に無く(今までどおり)、展覧会の予定は来月からシドニー.ビエンナーレ、その後スウェーデン、フランスに作品貸出参加のみで国内展の予定はまだ無い。
〈ゆとりあるこの1年は遠出のチャンス!〉高速バスに乗って山梨県富士吉田市にあるうどん屋のキャベツうどん(並¥450)を食べに行きたい。
(竹生島にも行きたい)
上: 竹生島案内の鳥瞰図 下:〈観音霊場記圖會巻五〉
たまたま入手した2つの竹生島の図においでおいでと手招きされてる気がする。案内によると琵琶湖に浮かぶ小島に神社仏閣の古刹が密集してる特異な場所らしいが、この絵のように整合性が崩壊した姿で建立されているのか?早く見たい。(特にシャッと高速移動しそうな島の右端にある蝋燭みたいな島)
バッハは死んだ
歩く女は夜空に輝く南十字星を見たいと思っている。
彼らはその傍らで靴下とネクタイを結ぶ作業をしている。
左様、彼らの頭の中で谺するのは物悲しいメロディ。
「バッハは死んだ」その確信がビートを刻み、彼らの行進は続くのだ。
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以上の素晴らしい現代詩〈バッハは死んだ〉はThe Residentsのアルバム『DUCK STAB』に収録されている歌で、ダックスタブCDは30年来の愛聴盤です。今年の誕プレはそのレコジャケTシャツに決定!
《1アルバム1コンセプト主義》を教えてくれた眼球先生への信奉は来週月曜日に52歳になっても変わらず続く。
Happy Birthday to me!!
学生時代に路上で拾った額縁に吉祥寺の中古レコード店で買った『DUCK STAB』を入れてから30年。地下教室→ボロアパート→旧ランド→現ランドと常に私のそばにある神盤。今は寝台の頭上に飾ってるから、地震→落下→直撃→死もありうる(それはやだな)
レジデンツ様からの天啓〈1アルバム1コンセプト主義〉を〈1個展1テーマ主義〉に置換え、個展ごとに新テーマを決めて新作を揃えるようにしてます。そのせいでいつも死にそう…