2023年10月31日 (火)

囲み取材

感想戦終了後、優勝した上野四段が囲み取材に応じました。

囲み取材

── 改めて新人王になられた感想を。

上野 こうして優勝という結果を出せてうれしく思います。

── 新人王戦は「一流棋士への登竜門」と言われていますが、今度の抱負を。

上野 これからいろんな棋戦に出場していくので、ほかの棋戦でも活躍できるように頑張っていきたいと思っています。

── デビューから丸1ヵ月で優勝でした。

上野 プロデビューをいい形で始められたので、よかったなと思います。

── 師匠の井上慶太九段と、その師匠の若松政和八段、兄弟子の菅井竜也八段と師弟3世代で新人王になられていますが。

上野 若手の登竜門と言われる新人王戦なので、優勝したいという気持ちは強かったです。

── 先日のインタビューで「逆転のドラマがあるのが将棋の楽しさ」とおっしゃっていましたが、今日の将棋は。

上野 今日の将棋はずっと苦しかったので、最後は本当に運がよかったという感じなのですが、やっぱり将棋の魅力は終盤で逆転が起きるというところが面白いと思います。

── 師匠の井上九段から何かお言葉はありましたか。

上野 「おめでとう」の言葉があって、最後▲8四金(101手目)がよかったと。

── 新人王になると記念対局があります。もし、藤井聡太竜王・名人が相手になったら。

上野 いま藤井先生と戦うことは難しいので、教えていただける機会があればすごく光栄ですし、その時間を有意義なものにするためにも、しっかり準備をして力を出しきりたいと思います。

── 藤井竜王・名人とは1歳違いですが、どういう存在ですか。

上野 (藤井竜王・名人が)1つ年上なのですが、遠い存在に思っています。

── 藤本四段とは切磋琢磨してきた間柄。自分と違う点は。

上野 藤本さんはAI研究というよりは、力戦の将棋を指される感じで、特に終盤が強いイメージがあります。研究会とかで指して吸収する場合もありますし、同門ということで意識する部分はあります。お互いに手のうちは分かっているので、やりにくさではなく、やり甲斐のほうがありました。

── 第3局の開始前の心境は。

上野 振り駒まで終わるまで先後が分からなかったので、先手に決まってからは「矢倉でいこう」と考えていました。

── 途中まで第1局と同じ進行でしたが。

上野 そうですね、第1局と同じ形の可能性もあるかなと思っていました。今回は自分から変化したのですが、別でやってみたい形があったので、それを目指してみました。

── 「負けを覚悟した」というのは自分の玉に詰みあると分かっていた、ということですか。

上野 いえ、そこまでは分かっていなくて、終盤ずっと苦しかったので「ダメかな」と思っていました。

── そのあと、自分に勝ちの手番がきたときの心境は。

上野 最後、相手の玉が詰むか際どいと思っていて、詰みを発見したときはびっくりしました。

── 今回の優勝をお伝えしたい人はいますか。

上野 両親には伝えたいと思っています。

── ご自身の将棋のどういった部分を見てほしいか。

上野 序盤、中盤、終盤でどこが得意というのはないのですが、筋のいい将棋をお見せできればと思っています。

上野裕寿新人王

上野裕寿新人王

上野裕寿新人王

以上で第54期新人王戦決勝三番勝負の中継を終了いたします。第55期の新人王は誰になるのかお楽しみに。本日はご観戦ありがとうございました。

(夏芽)

感想戦

感想戦
(感想戦)

上野四段

藤本四段

上野四段

藤本四段

感想戦

(夏芽)

終局直後

終局直後
(終局直後)

上野裕寿新人王

■新人王に輝いた上野裕寿四段の談話

── 新人王になられた感想を。

上野 負けを覚悟した局面もあったので、最後は運がよかったと思います。

── 「負けを覚悟した」というのは、どの辺りで。

上野 最後の終盤までずっと苦しいと思っていました。

── プロになって3局で新人王という結果になりました。

上野 デビューしてからひとつの結果を出せたので、ほかの棋戦でも活躍できるように頑張りたいと思っています。

── 同門対決で注目を集めた三番勝負でした。

上野 藤本さんの活躍が自分の刺激になって、こうしてプロになれた部分もあると思っているので、決勝という舞台で戦えるのはうれしいことだと思っていました。

藤本渚四段

■敗れた藤本渚四段の談話

── 対局を終えての感想を。

藤本 途中はよく分からなかったのですが、勝ちになった思ったところで心が乱れて読みがまとまらなかったというか、最後、自分の玉の危険さに気づけませんでした。それを含めて実力と受け入れるしかないです。

── 最終盤は勝ちがあったと。

藤本 そうですね。1通りではなく、いくつか勝ちがあったと思います。最後に一番やってはいけない順を選んでしまいました。

── 同門対決についての意識はありましたか。

藤本 小さい頃から将棋を指してもらったり、色々と勉強させてもらった兄弟子なので、こういう大舞台で返すことができればと思っていたので、そこは残念です。

井上九段
(両対局者の師匠の井上慶太九段は、ふすまの影でインタビューを聞いていた)

(夏芽)

上野四段が第54期新人王に輝く

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三番勝負第3局は、113手で上野四段が勝ちました。終局時刻は17時2分。消費時間は▲上野3時間0分、△藤本3時間0分(チェスクロック使用)。勝った上野四段は三番勝負を2勝1敗で制し、第54期新人王に輝きました。

(武蔵)

激戦

▲8一飛

時刻は16時30分を過ぎました。先手の上野四段は持ち時間の3時間を使いきっており、藤本四段も残り時間が少なくなってきました。いまだ形勢に関しては「難解」との回答。決着局にふさわしい、力のこもった攻防が繰り広げられています。

夕方
(一日晴天だった福島周辺も夕暮れ時になってきた)

(夏芽)

歩の2連打

▲9八銀

図の▲9八銀の局面で時間を使った藤本四段は、△2七歩▲同飛△4六歩と持ち駒の2歩を続けて盤上に打ちました。△2七歩も△4六歩も先手陣の形を乱す手筋ですが、歩切れになるため怖い一面もあります。

△4六歩の局面で残り時間は▲上野四段12分、△藤本四段14分です。

△4六歩

藤本四段

糸谷哲郎八段
(控室に来訪した糸谷哲郎八段。森信七段と師弟そろって新人王になっている)

(夏芽)

桂の王手

△5七桂

時刻は15時30分を回り、図の△5七桂の局面で上野四段が時間を使っています。▲7九玉、▲5九玉、▲5七同金、▲5七同角の4択ですが、先手はどれを選んでも怖く見えます。

そして、この局面で上野四段は残り30分を切りました。

上野四段

(夏芽)