2016年8月21日日曜日

新ブログ開設しました

長らく更新が止まっていた当ブログですが、このたび新ブログを開設いたしました。

亀田総合病院 疼痛・緩和ケア科 「緩和ケア革命宣言」
http://www.kameda.com/pr/palliativecare/

フェイスブックと連動しつつ更新していきたいと思っています。宜しくお願いします。

2014年10月6日月曜日

2014年度 第2回マインドフルネス勉強会

2014年度 第2回マインドフルネス勉強会 

昨日、院内でマインドフルネス勉強会があり、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、放射線技師、事務、保健師、心理士ら、かなりバラエティーに富んだ多職種の方にご参加頂きました。講師はこの勉強会シリーズを一昨年からご担当下さっている井上ウィマラ先生(高野山大学文学部教授)です。

今回のテーマは、『今ここを意識的に生きる~誕生から看取りまで~』でした。

まず最初にマインドフルネス全般の講義で始まりました。今マインドフルネスは医療界で様々な領域で認知され活用される動きが出てきています。マインドフルネスは不安を鎮め、リラックス感や幸福感を高めることが分かってきたようですし、脳科学では右脳の島という部分の体積が大きい人ほどマインドフルネス傾向が強いことが分かったようで、マインドフルネスの効用が科学でも客観的に解明されつつあるようです。

講義の後に自分の呼吸を見つめる瞑想(臥位と座位)を行い、次いで自分と他人の呼吸を共に見つめるセッション(今回は、背中合わせで自分と相手の呼吸を感じるワーク、掌で相手の腹式呼吸を感じるワーク)を行いました。それぞれが、各ワークを行って感じたことを言語化して共有しました。

マインドフルネスで最も大切なものは呼吸ですが、自分のみでなく他人の呼吸を見つめる作業というのはあまり実践する機会がないと思います。援助職のわたし達にとって、患者という他者への気づきを高め、かつ自分自身への気づきも高める作業は必須です。今回も多くの気づきが得られました。

そして私にとって最も有意義だと感じたのは、このワークを通じて、他者の体に触れることと日頃の医療職の仕事について多職種の皆さんと意見を交換する機会が得られたことです。どの職種であっても、医療に携わる者は他者に触れることが必要です。触れるという小さな行為にもっと焦点をあて、このことを一人ひとりの医療者がそれぞれの現場でマインドフルに行えたら、もしかしたら、医療の営みはもっと優しいものとなり、医療者も患者も笑顔が増えたりしないだろうか、と勝手に想像していました。


午後は、自分の誕生の時を考えるグループワークに取り組みました。今回、先生が用意して下さったのは、“自分が受精したときのこと”を考え、様々なことに気づきを得るという課題です。考える内容は以下の3つでした。
1.受精したときのことでわかるとしたらどのようなことを知りたいと思うか?
2.それを知っていたとすると、今の人生がどのように変わると思うか?
3.それを知らずに生きているということに、どのような意味があると思うか?

あまり考えたことがない課題に、参加者は自由に様々な意見を出し合いました。誕生の瞬間に関する疑問、生命の神秘さ、不思議さ、両親や兄弟と自分との関係性など、一人ひとりの脳裏には様々な思いや考えが浮かんだようです。また、一方ではこの課題のどこがマインドフルネスなの?という疑念がふっと沸き上がりました。
確かに私自身も瞑想などとは異なり、マインドフルネスの実習をしているという実感はその時にはあまり感じられませんでした。

しかしながら、井上ウィマラ先生の解説はこうです。
上記の3つの質問から自由に考えをめぐらせてみて話し合いながら、その最中に自分の中に湧き上がってくる感情やぬくもりや温かさ、あるいは胸が閉じたり痛く感じたりすること、そうした身心の反応を丁寧に感じ取ってゆくことがマインドネスのトレーニングになるということです。なるほど!、、と腑に落ちた次第です。
“汝自身を知る”作業は難しいと古来から言われていますが、それを実感しました。

さて、最後に参加者からの感想をご紹介して本文を終わりにしたいと思います。

“日常的に考えないことをテーマに皆で考え色々な意見を知ることができました。患者さまのケアについても職種ごとの考えや思いや実施していることがわかったのでとても参考になりました”

“日常業務の中でつまずいた事の原因がわかり、明るい未来を感じとる事ができました”

“自分に何が出来るのか?どうしたら良いのか?などと仕事で困難に直面し、‘心に寄り添う難しさ’を感じている中、自分の心が少し軽くなりました”

今回も講師の井上ウィマラ先生、ありがとうございました。

また、参加者の皆様、お疲れさまでした。院内で、マインドフルネス勉強会をこれから広げていきたいと思っています。具体的に何をどうやるのか、難しいところですが、まずは興味のある人の輪を広げていくことが第一歩だと思っております。今後とも、よろしくお願い致します。                              (文責:関根)




2014年8月21日木曜日

館山病院 緩和ケアチーム勉強会

今年の2月から、館山病院緩和ケアチームと当院疼痛・緩和ケア科/緩和ケアチーム合同で、月に一回勉強会を行ってきました。
館山病院は、自然あふれる南房総のリゾート地・館山市に位置する、15診療科・208床を擁する中規模病院です。
   館山病院 http://hakudoukai.com/hp/
   館山病院 看護部webサイト http://hakudoukai.com/nurse/index.htm

緩和ケアチームは、山口春海師長(緩和ケア認定看護師)を中心に立ち上がった新しいチームで、ご近所のよしみで、当チームとしても積極的に応援する意味で、以下の日程で合同勉強会をさせていただきました。
(1)   2/6 緩和ケアとコミュニケーション 関根龍一医師(当科部長)
(2)   3/6 緩和ケアと医の倫理 関根龍一医師
(3)   4/3 Advance Care Planning 蔵本浩一医師
(4)   5/1 スピリチュアルケア① スピリチュアリティ理解を中心に 瀬良信勝チャプレン
(5)   6/5 スピリチュアルケア② スピリチュアルケア理解を中心に 瀬良信勝チャプレン
(6)   7/3 家族看護 終末期における家族ケア 千葉恵子看護師
(7)   8/7 緩和ケアにおけるチームアプローチ 江川健一郎医師


今回は、8/7に行われた「緩和ケアにおけるチームアプローチ」について、ご紹介したいと思います。館山病院緩和ケアチームの皆さんからの要望を取り入れ、スライド1のように、座学とワールドカフェ方式を取り入れたグループワークを組み合わせた90分でした。

スライド1


(1)   亀田総合病院緩和ケアチームの歴史


館山病院の皆さんに、当院緩和ケアチームのこれまでの歴史について簡単にご紹介しました。当院における緩和ケアの取り組みは1994年在宅診療部発足から始まりました。2004年からは専従医師が赴任し、緩和ケア室を設置。その後フェロー募集(教育活動の開始)、C棟(化学療法棟)設置に伴うサポート外来の開設やオピオイド・サーベイランスの開始を経て、現在に至ります。当院には緩和ケア病棟がないため、緩和ケアチームの業務はコンサルテーションのみとなっており、そのことで生じる様々な問題点についてもご紹介することができました。

(2)   チームアプローチについての理論

褥瘡ケアチームの在り方について記された文献(WOUND CARE whitepaper (http://www.woundsource.com/whitepaper/understanding-your-wound-care-team))を参考に、医療における4つのチームモデルをご紹介しました。(スライド2)。

スライド2

単職種チームモデル

医師・患者間のみで治療方針を決定する。
多職種チームモデル
医師を中心として、患者・コメディカルの意見を集約して治療方針を決定する。
医師と各職種間での情報交換は盛んだが、議論は少ない。
相互関係チームモデル
職種間で定期的な意志疎通が行われるが、職種毎の役割は決まっている。
患者の状態に合わせて、対応する職種が決まる。
相互乗り入れチームモデル
患者の必要性を重視して方針を決定する(目標指向性)。
その必要性に対し、医療者が分担し役割を変動させて対応する。
この4タイプを踏まえて、緩和ケアチームに適したチームとは何か、皆さんの意見もいただきながら議論を進めました。会場からは、「いまのチームは多職種チームだが、緩相互関係チームを目指していきたい」、「相互乗り入れチームの実現は、職種間の専門性を尊重するとなかなか難しいのではないか」といった活発な意見をいただきました。

(3)   みんなで考える(グループワーク)

ワールドカフェ方式(参考:ワールドカフェとは?http://world-cafe.net/about-wc.html)を用い、3つのテーマについてグループワークを行い、最後に代表者にまとめていただきました(スライド3
スライド3
註:PCT=Palliative Care Team:緩和ケアチーム

  ワークでは、館山病院で実際に日々の診療に携わっている多職種の皆さんならではの意見が多数飛び出し、地元の特徴を反映した大変有意義な議論となっていました。Table Aでは、「患者さんや家族の意見をもっと聞く」「既存の館山病院の設備を有効活用する」などの意見が、Table Bでは、ちょうど時期ということもあり、「館山の花火大会を患者さんに見ていただく」、「今の環境・人材を生かせば館山の自然を生かしたケアができる」などの積極的な意見が、そしてTable Cでは「病院を建て替える」、「自然に囲まれた環境で、地元密着型のケアを推進していく」などの意見が出ました。最後に皆さんで発表会を行い、館山を愛する館山在住の職員による館山病院ならではの緩和ケアチームを創っていこう、という気持ちを皆さんで共有することができました。

  この勉強会を通じ、当院緩和ケアチームにとっても様々な学びがありました。貴重な機会をくださった館山病院の皆様に感謝いたします。(担当:江川)