赤と黒
Amazonへのリンクが直った。画像が無くて簡素になってしまっていたので、直って一安心。
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『栄光の岩壁』(上下巻)

 『栄光の岩壁』(新田次郎)

―あらすじ―
 戦後間もなくの日本。18歳の時に冬山の八ヶ岳で遭難し、凍傷により両足指を失った竹井岳彦。しかし彼は山を諦めることなく、指のない足で数々の冬山へと挑戦していく。



 足の指を失っても山への情熱を燃やし続けた主人公。たとえ指を失っても、友人を失ってでも冬山に登ることを諦められない。その情熱が読み手にも伝わるような作品です。山の魅力を伝えてくれることもありますが、「自分の好きなことに一途になるの大切さ」、そのようなことを教えてくれる作品でもあります。
 ただ1点、本作に出てくる悪役(小悪党)が余りにも苛つく人物なので不快になります。こういった悪人を出すことで主人公との対比を狙っているのかもしれませんが、それにしても幾度となく登場しては主人公たちに不幸を招く様がくどい。主人公の人の好さに呆れてしまいます。

『旅屋おかえり』

 『旅屋おかえり』(原田マハ)

―あらすじ―
 スポンサーの名前を言い間違えた(と思われた)ことから、主人公は唯一のレギュラー番組を失ってしまった。途方に暮れる主人公だったが、旅が好きなことを活かし、旅行代理人を始めることにする。



 『キネマの神様』に続けて、同著者の作品を読みました。やはり読みやすく、『キネマの神様』以上に爽やかな読後感です。何と読みやすい文章であろうか。また、私自身も旅行が好きということもあり、より楽しんで読めました。

『キネマの神様』

 『キネマの神様』(原田マハ)

―あらすじ―
 39歳独身の歩は、社内であらぬ噂を流され会社を辞める。時を同じくして父が倒れ、父に多額の借金があることが発覚した。家を整理する中で、歩は父が映画の評論をまとめていることを知る。そこから映画雑誌「映友」と繋がりができ…



 読みやすく、読後感も爽やかな作品です。あれよあれよという間に憧れの雑誌社と関りを持つようになったり、終盤での一波乱と感動とハッピーエンドという、フィクションのお手本のような作品です。主人公たちが映画好きということで、映画に関する説明が端々に出てきますが、それらは飛ばしてしまっても本筋には関係ありません(好きなことに対して真っ直ぐなんだとういうことが分かっていれば問題なし)。

 と書くと褒めているように思いますが、個人的な感想としては、「本書はあくまでフィクション(作り物)」という印象を拭えません。本書中盤から大まかな展開が読めてしまい、結果としては予想の通り、「一波乱と感動とハッピーエンド」で物語が集結しました。流し読みで30分ほどで読めてしまいました。

『華岡青洲の妻』

 『華岡青洲の妻』(有吉佐和子)

―あらすじ―
 江戸時代中期の和歌山。武家の娘である加恵は、医師の華岡雲平に嫁ぐこととなった。雲平は遊学中ではあったが、義母との仲も良く、加恵は華岡家を守っていた。3年後、雲平が家に戻ってきたことにより、義母と加恵との間には不穏な空気が流れるようになる。



 本書の存在は10年以上前から知ってはいたのですが、読む機会がないままに年月が経ってしまいました。約250ページという短さながら、嫁姑間で行われる水面下での骨肉の争い。直接的な対立ではなく、あくまで水面下であることが、より争いの恐ろしさを表しているように思えます。また、時代背景こそ江戸時代ではありますが、現代日本に通ずる部分でもあり、それが何度も映像化されている理由なのでしょう。

『宇宙からの帰還』(再読)

 『宇宙からの帰還』(立花隆)

―あらすじ―
 宇宙飛行士として、宇宙から地球を見た人々がいた。彼らの中にはのちに宗教家となった人物もいる。「外側から地球を眺める」ことは人類に何をもたらすのか。



 約14年振りの再読となりました。本書に興味を持ったきっかけは、第1章に出てくるフラーの詩に興味を持ったことでした。以下がその詩です。

  Environment to each must be
  "All that is except me."
  Universe in turn must be
  "All that is including me."
  The only difference between environment and universe is me......
  The observer, doer, lover, enjoyer

  それぞれの人にとって環境とは、
  「私を除いて存在する全て」
  であるにちがいない。
  それに対して宇宙は
  「私を含んで存在する全て」
  であるにちがいない。
  環境と宇宙の間のたった一つのちがいは、私…
  見る人、為す人、考える人、愛する人、受ける人である私。
                       (本書より抜粋)


 14年経った今でも、この詩の意味がはっきりとは分かっていません。この14年間、ふとしたときにこの詩が頭に浮かんでは、意味を解せないままに消えていきました。「環境は自分以外の全て」も「宇宙は自分を含む全て」も何となくは分かるのですが、両者の違いを明確に言葉で表すことが出来ないのです。いつか分かる日が来るのでしょうか。宇宙に行かないと分からないのかもしれないな。

謹賀新年(2024年)

明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。

2023年のまとめ

 2023年についてですが、前半の記憶があまりありません。9月以降であれば思い出せるのですが、1~8月は断片的な記憶しか…これは9月以降が忙しくなったため、そちらに記憶力のほとんどを使っているためです。

 昨年に引き続き、本をあまり読まない一年でした。昨年は10冊未満だったので、36冊の今年は復調傾向と言えますが、それでもまだまだ…

 2011年以来、約12年ぶりに尾道を再訪しました。変化した風景もあれば、あの時のままの風景もあり、初めて一人旅をしたときのことがしみじみと思い出されました。やはり旅行はいいものです。来年は関東への旅を予定しています。

Best of books 2023

 本年度のベスト5は以下の通り。

1―『破船』(吉村昭)
2―『銀嶺の人』(上下巻)(新田次郎)
3―『天使の囀り』(貴志祐介)
4―『OUT』(上下巻)(桐野夏生)
5―『ニコライ遭難』(吉村昭)
 

 今年読んだ冊数は36冊(新規26冊+再読10冊)。ベスト10を選ぶほどの冊数でもないため、ベスト5としました。とは言え、この5冊は今まで読んできた作品に負けずとも劣らない作品であることは確かです。
 毎年のことながら、来年は頑張りましょう。

『ストロベリーナイト』

 『ストロベリーナイト』(誉田哲也)

―あらすじ―
 溜め池近くの植え込みから発見された死体。警視庁捜査一課の警部補・姫川玲子は、比較的人目に付きやすい場所に死体が放置されていたことに違和感を持つ。事件を追う姫川たちがたどり着いた真相とは。



 著者の作品は『武士道シックスティーン』のシリーズしか読んだことがなかったのですが、本作はスピード感があり、非常に面白く読むことが出来ました。シリーズも多数出版され、ドラマも多数放映されているとのことですが、それも納得の面白さです。Amazonの書評では「エンターテインメント」という言葉が何度か出てきていますが、まさにその通りの作品だと思います。

『破船』

 『破船』(吉村昭)

―あらすじ―
 江戸時代のとある漁村。その村では、嵐の日に近くを通る船をわざと座礁させ、積荷を奪うという習慣があった。船が来れば村は潤うが、船が来ない年は赤貧にあえぐこととなる。大量の積荷を載せた船が座礁した翌年、またしても船がやって来た。2年連続での船の到来に村は歓喜するが…



 裏面のあらすじがネタバレ気味ではありますが、読んだときのおぞましさは言葉では表せないおぞましさです。因果応報ともとれる凄惨な結末。約250ページという短さに秘められた、この圧倒的な読後感。同著者の『羆嵐』、『高熱隧道』にも引けを取りません。

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