ポン・ブルックス彗星は見納め2024/04/20

20240419木星、天王星、ポン・ブルックス彗星
昨夕は黄砂の影響が酷くて低空が霞んでいました。でも雲が全く無かったので、つい西空に目を向けてしまいます。木星を頼りに画角からポン・ブルックス彗星(12P)を見つけ出しました。

左画像の撮影は日没から約50分後。どこに何が写っているかは右下のマーカー付き画像をご覧ください。このときの彗星高度は約7.3°。下部のベルト状の影は電線。低過ぎますね…。黄砂がなかったらもう少しはっきり写ったかも知れません。でもこんなしょぼくれ画像でも緑のコマや極く淡い尾が見て取れます。

20240419木星、天王星、ポン・ブルックス彗星
明日以降、およそ一週間近く晴天が望めません。一週間後に晴れたとしても同じ時刻なら木星も彗星も5°以下になっていますから、西が海岸でも無い限り写真も眼視も無理でしょう。ということで、文字通り昨夕は見納めでした。

この後いったん日本から見えなくなりますが、来年夏以降はさそり座やへびつかい座をうろうろしつつ遠ざかりますから、大きめの望遠鏡で見ようと思えば見えます。4年くらい経つと23等、二十数年後は30等、36、7年後に最遠から折り返してまた太陽へ向かってきます。次の接近は2095年ごろでしょうか。見たい方はがんばって長生きしてくださいね。

なお木星と天王星は4月21日12:20ごろに0.508°まで接近します(日本経緯度原点での測心計算)。低空なので迫力ありませんが、離角は満月直径と同程度ですから大接近ですね。

【追記】
夜になって月が南中を過ぎたころようやく風が収まってきたので望遠鏡を向けてみました。黄砂でくすんでいたのは大目に見るとしても、シーイングの酷いこと、酷いこと…。撮影を躊躇うほどです。上空の一等星が瞬いていましたから推して知るべし。無理に撮った中から二枚を下記に掲載。

明暗境界はコペルニクス辺りかと思ってたら、もっと進んでいました。悪天候で何日も月を観ていないと感覚狂いますね。虹の入江が美しく輝き、ガッサンディの東壁が夜明けを迎えていました。大きな地形は分離するものの、細かな谷など細部は解像しません。ヘルメットのアヒルの親子が良い塩梅で照らされていました。

  • 20240419虹の入江、雨の海

    A.虹の入江から雨の海
  • 20240419湿りの海、ブリアルドゥス、ハインツェル

    B.湿りの海からハインツェル


今日の太陽2024/04/19

20240419太陽
昨夜から今朝は曇り時々小雨。二十四節気の「穀雨」を迎えた今日朝からは急回復し、黄砂っぽいくすんだ青空が広がりました。若干涼しかった昨日の気温に比べ、今日は数度高めに推移。また7m/s超えの強風が窓を鳴らしています。

20240419太陽リム
左は10時ごろの太陽。中央近くの領域が一気に複雑化しました。全体では16ヶ所もの活動領域があります。もっと増えそうですね。左下リムの超巨大プロミネンスが実に素晴らしい。

20240419黄砂によるオーレオール
【夕方追記】

一日中見えていましたが、日が傾くと太陽周囲の光のにじみがいっそう酷くなりました。黄砂によるオーレオールと思われます。普段の撮影では小さな丸にしか写りませんから、太陽が何倍にもなった印象を受けるでしょうか(→2017年4月23日記事参照)。この光芒は円形ですがスペクトル分離をしてないので、いわゆる虹色の光環には見えません。

今日の太陽2024/04/17

20240417太陽
昨夜は曇り時々晴れ、夜半前からは皆曇時々小雨になりました。今日朝からは少し回復したものの、雲量5割を超すような状態です。日差しはあっても太陽観察できたのは午後になってからでした。どうにも安定しませんね…。

20240417太陽リム
左は14:10ごろの太陽。左上リムに登場した黒点群周囲は活動領域13644と採番されました。左半球のプラージュが活発ですね。大きなプロミネンスも見えてきましたよ。

今週後半から来週にかけても天気予報が毎日変わるくらい不安定。夕空のポン・ブルックス彗星(12P)も見納めです。

20240417地球観測衛星Terra
右画像は地球観測衛星Terraによる本日の日本付近。日本海を茶色に染めているのは黄砂です。昨夜の月も雲が無いときでもかなり霞んで見え、黄砂が来ていたことを感じさせる空模様でした。

ネッシーを見た!2024/04/17

20240416プトレマイオスのネッシー
ネス湖に住むネッシーは私が小学校の頃からしばしば話題になりました。“それっぽい写真”が撮られているものの、実際に首長竜がいた証拠は現在までありません。でも身近に隠された謎ってロマンがありますね。湖があるところでは、クッシーだのイッシーだのトッシーだのヒッシーだの、類似の目撃談も登場します。フェイクニュースと一蹴するより、楽しむこともひとつの方向かと。

月面のプトレマイオス・クレーターにネッシーのような影が見えるという話がLPODに載っています。以前から見てみたいと思っていましたが、主に天候や視界的理由でなかなかチャンスがありませんでした。今年2月になって「月世界への招待」サイトの東田さんが見事なネッシー画像を撮影日記に掲載されておりました。

計算上は昨夜(16日夜)にも見える予想でしたが、今回も天気が下り坂。更には昼から吹いていた強風が夜も止まず、薄雲越しに月が見えるものの観察を躊躇する天気でした。でもダメ元で思い切って望遠鏡を向けてみることに。結果、雲越しながらも辛うじてそれらしい様子を捉えることができました(左画像/16日22:15ごろ撮影)。

左画像の黄色丸のところを時計回りに90°回転させると、かま首のような雰囲気の影が見えます。本来はプトレマイオス東側にある山の影が細長い楕円状にのびているのですが、影のところにアンモニウス(アンモニオス)という小さなクレーターがあり、一部に光が当たり始めているのです。これを遠目に見ると、影の一部がくびれて恐竜の上半身に見える、というわけです。

LPODに掲載された“ネッシー画像”はシャープネスの低いぼけた画像でした。ネッシーのように見立てるには、左画像のように大きな望遠鏡で高解像度写真を撮ってはダメなようです。敢えて小さな望遠鏡、ピクセル数の少ないカメラで撮ることこそ本物(?)らしく見えるコツ。この理屈はネス湖のネッシーでも言えることで、「首長竜かどうか分からない」写真が「本物かも知れない」という想像をかき立てます。面白い人間心理ですね。

天文学風に言えばアンダーサンプリングです。そこで、今回撮影した画像をいったん超低解像度にして、再度表示解像度に戻して比べてみました。(※これは結果的にぼけていますが、いわゆるガウスぼかしなどのフィルター操作とは根本的に考え方が異なります。)下画像の上の段はダイレクトなリサイズ、下の段は超低解像度経由のリサイズ。この画像は90°回転済みです。左から右へいくほど時間が経過して、月面における太陽高度が高くなります。(画像に書いてあるのはアンモニウスにおける太陽高度。)左を向いた怪獣のシルエットらしいのは2.3°前後でしょうか。2.4°を過ぎるとアゴの食い込みが深くなり、首が細くなって頭も小さくなります。日本版の古い時代のゴジラなら通じるかな?どちらかと言うとタツノオトシゴっぽい?

とにかく風で像がブレ過ぎ、また雲も多過ぎて満足とは程遠い観察でしたが、恐竜or怪獣のような姿を楽しむことができました。次回は6月14日22時前、8月12日20時前、10月10日19時半前…と続きます。

20240416プトレマイオスのネッシー