さあ連休だ。セラミュも順調そうで何よりです。今年のゴールデンウィークは、5月4日に上京するぐらいで、私はあまりぱっとしないんですけどね。みなさんいかがですか。それにしても『名探偵コナン』って凄すぎるよな。
今週は、DAIGOさん北川さんがらみで、小ネタみたいなニュースもあったと思うがまあいいや。さっそく『松本清張 眼の壁』第3話レビューです(2022年7月3日放送、原作:松本清張/脚本:深沢正樹/照明:宮脇正樹/撮影:金澤賢昌/監督:内片輝/チーフプロデューサー:青木泰憲・的場政行/制作:WOWOW・ファインエンターティメント)。
まずはアバン・タイトルだ。そこからやるのかよ。
萩 崎「関野部長を無事に見つけ出す」
萩 崎「それだけでいい」
村 木「お前が探っている連中は、おれたちがどうこうできるような相手じゃない。わかるか?」
田 丸「やっと分かったんだよ。関野部長をはめたヤツの正体が」
萩 崎「おい!」
田 丸「ほ……り……ぐ……ち」
萩 崎「堀口? 堀口に刺されたのか?」
萩 崎(『月世界』のマネージャーが堀口なのか)
目撃者「あいつだよ、あいつ」
堀 口「萩崎が田丸を殺した」
堀 口「萩崎が殺したんだ」
絵津子「どうしてそんなこと知っているの?」
以上がアバン。盛り上がってまいりました。って思っているのは私だけかも知れないが。
まじめな会社員から素人探偵に転身、と思ったら今度は一転、警察に追われる容疑者の身になった萩崎(小泉孝太郎)。
あちこち逃げ惑いつつ、親友の新聞記者、村木(上地雄輔)に電話するが、当然ながら村木からは逃げ回らず、自分から警察に行くよう勧められる。実際きちんと調べれば萩崎に田丸(加藤雅也)を殺す理由がないことはすぐに分かるし、もう会社は辞める覚悟で事の顛末を打ち明ければ、警察の捜査も正しい軌道に乗るはずである。
それでも萩崎は逃げ続ける。警察には通報しない。だって絵津子(泉里香)と約束してしまったのである。
村 木「とにかく、おとなしく警察に行け。事情を話したほうが良い」
萩 崎「警察……」
絵津子「(囁き)警察には言わないで」
萩 崎「警察には行けない」
村 木「何言ってんだよ。お前も巻き込まれるかも知れないんだぞ。いやもう巻き込まれてるんだよ」
一方クラブ『月世界』では、絵津子が萩崎の身を案じていた。堀口は絵津子に「萩崎が田丸を殺した」と言うが、絵津子は疑っている。しかし、では田丸を殺したのは誰だ。絵津子はこのとき、関野が自分のいる同じ建物に拉致されているとは気づいていない。
そしてニュースでは田丸の死が伝えられる。
絵津子「続いてのニュースです」
絵津子「昨日午後1時半頃、品川区豊金町で、男性が刃物で刺され死亡しました」
絵津子「亡くなったのは世田谷区上小原に住む田丸利一さん55歳。付近の住民によりますと……」
みゆき「ねえ、この人ってこの前来ていたお客さんよね。変な帽子かぶっていた人」
絵津子「そう?……憶えてないけど」
でも、客の名前を憶えるのって接客業の基本スキルだよね。だから絵津子の「憶えていないけど」というそっけない返事に不可解を感じながらも黙るみゆき(小向なる)。
みゆきはドレスを着ていてこれから仕事始まりっぽいけど、絵津子は上がりって感じかな。ポーカーフェイスのまま立ち上がり、クラブの入口受け付けに向かう。
絵津子「ねえ、マネージャーは?」
ボーイ「さっき上がりましたよ」
同じ建物のどこか「上がった」ところにあるらしい隠し部屋には、関野が拉致されている。第1話、執念で関口を見つけた関野は尾行して、このクラブ『月世界』までたどり着いていたのだった。だが中の様子を窺うほうに気を取られて、用心棒みたいな謎の男に拉致されてしまったのである。
まあ素人だから仕方ない。この時の拉致犯は水嶋(忍成修吾 )という。堀口のように感情を面に出さないぶん、不気味である。それはともかくとして、関野は『月世界』の建物のなかにいた。どうしてもこの店が気になって仕方がない萩崎の勘は正しかったのだ。泉里香が妖艶な魅力を振りまいて、心乱していなければ、換金されている関野の場所までもっと速くたどり着いていたかも知れない。
堀 口「奥さんに『もう探さなくていい、さようなら』それだけ言ってくれればいいんですよ」
堀 口「もう終わりなんだよ。終わりにしようよ」
堀 口「誰も助けに来ないよ。萩崎竜雄、人殺しになって追われているよ」関 野「……なんで……」
堀 口「瀬沼弁護士事務所の田丸って調査員、殺しちまったんだよ」
関 野「ウソだ」
堀 口「あんたのせいだよ」
堀 口「あんたのせいでこんなことになってしまったんだよ」
堀口も苦しそうだ。それを離れて冷たく見守る水嶋。
ちなみにこのあたりの話は原作にはない。原作の関野は、手形をパクられたあと、社長から「責任をとれ!」と怒鳴りつけられ、顔面蒼白で奥湯河原温泉に直行、宿に書き置きを残して裏山で首をくくる。馬鹿な社長はそうなってから「そこまで思い詰めていたなんて」と狼狽する。社長への詫び状とは別に、萩崎に宛てて詳しい経過を説明した遺書もあって、それを読んだ萩崎が、義憤にかられて仇をとる決意を固める、という流れになっている。松本清張といえば、乱歩や正史を代表とする絵空事の「探偵小説」を、リアリズムの社会派「推理小説」へ塗り替えた人、という評価をされるが、素人探偵が徒手空拳で社会の巨悪に立ち向かい、そこに謎の女が絡んで来るなんて、もう立派な大人のファンタジーである。
ドラマに戻ろう。このあといろいろあるのだが、ちょっと話を端折ります。結局、萩崎が殺人犯の汚名を着てまで自分のために奔走していることを知った関野は、ついに心折れて堀口の提案を受け入れ、妻の千代子(中島ひろ子 )が独り待つ自宅に電話をかける。
千代子「はい、関野です」関 野「……千代子か……」千代子「あなた!どこにいるんですか?」関 野「済まなかった。心配かけて」
千代子「元気なんですか?無事なんですね?」関 野「とんでもないことをしてしまった」千代子「会社のことですか?それは」関 野「償う方法はひとつしかない」
千代子「あなた! 何をする気なの?」関 野「私のことはもう忘れて生きてくれ」
千代子「あなた!」
関 野「竜雄くんにも伝えてくれ、済まなかったと」
千代子「あなた、あなた!」
水嶋「出かけましょう」
関 野「竜雄くんには手を出すな!」
とうとう堀口のシナリオ通りに話してしまった関野。この後、千代子が萩崎の留守電にメッセージを入れて、関野が千代子のもとに駆けつけて、それで警察に捕まりそうになったり、いろいろあるのだが、すべて省略。とにかくここまできたらどうしようもない。堀口と水嶋に連れられて死出の旅。翌朝、奥多摩の渓谷で関野の遺体が発見される。
関野を救うことはできなかった。それどころか、関野も田丸も死なせてしまった。萩崎は無力感に打ちひしがれる。
一方、クラブ『月世界』の夜は相変わらずきらびやかに更けてゆく。岩尾代議士(金田明夫)も上機嫌である。絵津子は青いドレス。
岩 尾「その色もすてきだ」
絵津子「ありがとうございます」
水 嶋「関野徳一郎、登山中に滑落して死んだようです。一応伝えておきます」
絵津子「マネージャーは?」
水 嶋「知らないと言ったはずです」
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岩 尾「どうした、絵津子」
絵津子「あ、いえ、何でもありませんよ。どうぞ」
萩崎が警察に行かなかったのは、絵津子にお願いされていたからではあるが、下手に警察にすべてを話すと、関野の命が危ないかもしれない、ということがあったからだ。それに手形詐欺の話からしなければならなくなるし、そうなればもう会社にはいられなくなる。
でも、どうしても助けたかった関野が死んでしまった今、萩崎できるのは、警察に行って全てを話し、真実を明らかにしてもらうことぐらいだった。
雨の中タクシーで警察署にのりつけた萩崎は、傘も差さずに出頭しようとする。
まだ早い。まだ警察には行かないで。絵津子の瞳はそう語っているのでありました。ということで次回へ続く。