撮影罪は何を禁止している

昨年「撮影罪」というものができたという話で、定義が気になって調べた。

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律

長い名前の法律だが、この法律で規定されている犯罪の1つで、

性的姿態等撮影罪など言うのがよさそうだが、撮影罪でも通じるのだろう。


刑法とは別の法律で規定されているのだが、条文を見てみると、刑法の不同意わいせつ罪・不同意性交等罪を参照している部分がある。

撮影するという行為だけでは不同意わいせつ罪が成立することは難しい。

この点に着目した法律なんですね。

また、撮影後により得られたデータの提供・保管・送信にも罪が規定されている。

この点は児童ポルノに適用されている規定と似ている。

一方、押収物の消去についての規定は他の法律より強い規定になっているのも特徴だという。


で、ここで禁止しているのは主に下着や通常下着で覆われている性的な部位を撮影することである。

ただ、そのようなものを撮影することを一律に禁止しているわけでもなく、

  1. ひそかに当該容姿を撮影する行為(自ら露出しているケースを除く)
  2. 不同意わいせつ罪で列挙されている事項で「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ」当該容姿の撮影すること
  3. 性的なものではないとか特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信させて当該容姿の撮影すること
  4. 16歳未満の当該容姿を撮影すること

2~4は不同意わいせつ罪の条件と同じなんですね。

撮影の特徴として盗撮というのも考えられるので、これを規定しているのが1.というわけ。

盗撮の場合、自ら露出している場合を除いては同意していない扱いである。

なお、自ら露出している場合が除外されるのは17歳以上に限られる。

(16歳未満の場合は条件によらず4.の規定が適用されるため)


元々ここに書かれているような行為は都道府県の条例などで規制されていることが多かった。

ただ、全国一律の規制が必要ということで、こうなったようだ。

撮影罪は盗撮以外の撮影方法もカバーでき、撮影場所も問わない点ではカバー範囲が広い。

盗撮に限らない一方、盗撮の中でも通常露出しない下着や性的な部位に限られる。

性的な意図があっても着衣の上から盗撮する行為は対象になり得ないし、

水着であったり、露出の多い衣装の盗撮は対象とはならない。

都道府県レベルの規制ではこのあたりも対象になりうる場合もあるようだが、

厳密な定義が難しいのか現状は積み残しという形になっている。


強姦罪→強制性交等罪→不同意性交等罪と目まぐるしく罪名が変わったのもそうだが、

法規制の穴をふさぐような変更がいろいろなされている状況である。

撮影というところにも着目した規制が設けられたのも、そういうことなんだろう。

もともと都道府県レベルの規制が存在したという背景はあるんだけどね。

従来カバーできなかった部分もカバーできるようになる一方、

性的な意図から行われる行為と通常考えられる行為の差が狭まっていき、

その範囲であれこれやられると手が付けられないということも出ているようだ。

“匂いを嗅ぐ”は法律等で規制しきれず…急増する新たな手口『触らない痴漢』苦心する鉄道警察隊の捜査 (東海テレビ)

警察も注意はするが、こういうのを取り締まる根拠を作るのは難しい。


そんな事情を考えれば撮影罪はけっこうよくできてるなと思った。

不同意わいせつ罪の類型をうまく活用していることや、

通常撮影することは考えられない部位をうまく定義できている点である。

3年以下の懲役(拘禁)または300万円以下の罰金というそれなりに重い刑罰、

厳密に定義できなければこういう刑罰は適用できないでしょう。

最前管理はなにをしている

「最前管理」というワードが話題になっていて、

これはアイドルのライブを最前で見たい人たちがやることなのだが、

なかなか難しい問題があるようだ。


元々イメージしていた最前管理というのは、フェスでお目当ての出演者のため、

必ずしもお目当てではない出演者でも最前列に居座り続けることを指すと考えていた。

確かにそういう最前管理も存在するそうだが、現在は必ずしも一般的ではないようだ。

どちらかというと出演者に応じて最前に立つ人をグループ内で計画的に入れ換えていく。

こういう最前管理が現在は一般的なのだという。


入場順の決め方もいろいろだが、例えばチケット購入時に抽選で決まるとして、

グループを組んで、その中で一番若い番号のチケットで真っ先に入場する。

若い番号のチケットを持つ人をお金でグループに引き込むことも考えられる。

そして、その最前をグループ内で入れ替わりながら使って行く。

グループを組むことでこういう作戦をとれるのだが、一般的には問題である。

チケットの交換、立ち位置の交代というのは一般的な禁止事項である。

目的の達成のためには少人数で最前を広く押さえる形になりがちで、

このような観覧方法は他の観覧者にとって大変迷惑なことである。


売り方の工夫でこの問題を打開している例はあとで紹介するが、

単純に最前管理を禁止するデメリットが、黙認する場合のデメリットを上回る可能性はある。

立ち位置の交代を禁止する場合、お目当てではない出演者でも最前を陣取り続ける。

こうすると盛り上がらんわけで、出演者のモチベーションにも関わる。

多数の出演者が交代でステージに立つということがそもそもの問題ではあるのだが、

地下アイドルなんていうのが単独でのイベントを多くやるのは現実的ではない中、

このようなステージで出演機会を確保し、新規ファンの開拓につなげたい。

そのようなステージである以上は立ち位置の交代も黙認せざるを得ないと。

また、地下アイドルのライブというのは入場順の早いチケットは比較的高額で、

入場順が遅いチケットはタダ同然ということもある。

最前管理を意図して高額のチケットを実需以上に買う人たちがいることは主催者にとってもありがたいかもしれない。


とはいえ、最前管理でやっていることは大変不公平なことである。

そこでより公平な方法で打開しようという考えはある。

1つは柵などで前方を区切って優先エリアを用意するという方法である。

オールスタンディングの会場だと入場順で立ち位置が決まるが、

優先エリアを柵で区切る場合、優先エリアのチケットを持っていれば直前に来てもそこそこ前方で見られる。

その中で最前を得るために最前管理という考えはあり得るが、

優先エリアで十分と考える人が多くなれば最前管理は成立しなくなるだろう。


最前列を入れ替え制にするという方法も考えられる。

公式が最前管理しているようなものだなと書かれていたが。

興味がない出演者でも最前列を押さえ続けるという問題は、

出演者によって最前列を入れ換えるという方法で打開できるわけだ。

付加料金を取ることで新たな収入源にもなりうる。

ただし、スムーズに入れ替えを行うには人手が必要だろう。


最前管理についてはファンのモラルの問題というのはあるけど、

イベントの形態やチケットの売り方など、主催者側の課題もあるだろう。

そこをうまく打開できているケースもあることは確からしいが、

最前管理を黙認した方が楽でメリットがあるというのが実態なのかもしれない。

結局はファンが少ないのが苦しいんですよね。

だから最前管理が成立してしまうし、この方法が効果的だとなってしまう。


前方で見ることにこだわりは持っていないのでなんとも言えないんだけど。

そりゃまぁ前方で観覧できるに越したことはないですけどね。

でも、そこにこだわると大変なのは目に見えてるからね。

前方というのにどこまでこだわるかという程度の問題はあるが、

最前管理が成り立つのはファンの規模が小規模であるからこそで、

なおかつファン数が少ない中でこのような熱心なファンが目立つのは致し方なく、

地下アイドルにとって最前管理するファンというのは存在感があることには違いない。

そこから脱却できるかが地下アイドルと言われるか否かなんでしょうけど。

国際SMSを送らせるのは弱い

とあるチケットを買おうとして、初めて使うプラットフォームで登録がいろいろあり、

その中で電話番号認証が必要と言われ、こんなのにわざわざ電話番号認証を要求するか、

と思いつつ進むと、SMSを送信させるか電話をかけさせるかという。

通話料がかかるというので、じゃあSMSの方がいいかと思ったのだが、

なんと国際SMS、警告は出たが、スルーしてしまい100円もかかった。

高々100円だしとは思ったのだけど、電話を選んだ方が多分安かったよねと。

さすがに国際電話ではないはず。


なんで国際SMSなのかというのは謎である。

国内通話という前提で言えば電話をかけさせる方法を呈示すればいいはず。

通話料がかかるのもどうかと思うが、それならあり得ないとも言えない仕組みだ。

Tポイントでは電話を掛けさせる方法の電話番号認証をつかっていて、

かつては通話料がかかっていたが、現在は電話を取らずに切る方法になり、

通話料無しで電話番号認証が完結するようになっている。

これもこれでどうかと思うところはあるが、わからなくもない仕組みである。


ただ、全般的な問題として、認証される側から送信・発話するという仕組みは認証方式として弱いというのがある。

というのも送信元・発信元の番号は偽装できなくもないからである。

特に国際SMSというのは偽装しやすい仕組みである。

送信元を偽装するSMS――注意すべき点とキャリアの対策は? (ケータイWatch)

こういう話は発信者番号の偽装でもありうる話ではある。

もちろん、国際電話なのに国内の番号に偽装するとか、明らかにおかしいものは対策できる。

でも、SMSの送信元、電話の発信者番号が真の送信元・発信元かは疑わしい部分は残る


なので、こういう認証は認証される側にSMSを送信したり、電話をかける方がよっぽどよい。

その電話番号が使えることと、受信・受話できることが確認できるからである。

その方法が国際SMSでも国際電話でも問題ないだろう。

というわけで、そもそもダメなアプローチだねという話だった。


ちなみにこれはLivePocketというプラットフォームの話である。

エイベックスグループが開発・運営している。まさかの大企業である。

この事業をKDDIが今年取得するそうである。

エイベックス・グループの電子チケット販売プラットフォーム事業「LivePocket」を承継 (KDDI)

KDDIがこの事業をどのように活用していくのかはよくわからないのだが、

他のエンタメサービスともつながるようau IDに統合するのはあるかも。

そうなればわざわざこのシステムのために電話番号認証することはなくなるのでは?

あと、KDDIが株式の50%を取得するローソンの傘下にローチケもあるよね。

LivePocketは比較的小規模なイベントなどで活用されているので、

ローチケとは用途が違うところはあるが、共用できる部分はあるかもしれない。

まぁ何も変わらず放置という可能性もありますがね。

野球・フットボール兼用スタジアム?

東京都中央卸売市場の築地市場の機能が豊洲市場に移り、

その跡地利用ということで、読売ジャイアンツの本拠地球場ができるらしい、

と言われていたが、ある程度明らかになってきたらしい。

野球・サッカー・コンサート、変幻自在のスタジアム…築地新拠点で誰もが感動共有 (読売新聞)

この事業は三井不動産・読売新聞社などのグループによるもので、

三井不動産は東京ドームの親会社、読売新聞社は読売ジャイアンツの親会社と、

主な用途として読売ジャイアンツの本拠地を考えているのはほぼ確かだろう。


ただ、野球以外の用途も想定されていて、コンサートはそうなんだが、

フットボールという用途も考えられてるんですね。

表題にはサッカーとは書いてあるのだが、おそらく人工芝であろうから、

日本ではプロレベルのサッカーでは人工芝を使用しないことを考えれば、

それ以外のフットボール、アメリカンフットボールやラグビーではないか。

実際、東京ドームはアメリカンフットボールに使われることもあり、

それは野球場の形状のまま使っているが、より適した形状にできるということだろう。


とはいえ、可変式のスタジアムだからといってその機能がどのぐらい活用されるのか。

というのが、さいたまスーパーアリーナである。

ここはアリーナモードとスタジアムモードを切り替えて利用できる。

アリーナモードはバスケットボールなどの一般的な体育館で行う競技、

スタジアムモードはフットボールでの利用を想定している。

それ以外のコンサート・展示会などはどちらのモードで利用してもよいが……

ただ、ほぼアリーナモードで固定して使われているのが実情である。

動く巨大体育館

スタジアムモードは展示会とごく一部のコンサート(Animero Summer Liveなど)で使われている程度。


そもそもスタジアムモードで当初想定していたフットボールの用途は皆無である。

巻き取り式の人工芝を使わざるを得ないという事情もあるのだろう。

2000年当時は東京ドームでもまだ巻き取り式の人工芝を使っていた時代である。

2002年に東京ドームには固定式の人工芝が導入されている。

人工芝は巻き取るものではない

現在、NPB本拠地球場では巻き取り式の人工芝を使っているところはない。

アメリカンフットボールは昔から人工芝が使われていたのでよいとして、

人工芝で試合を行うためのルールが規定されたのは、サッカーでは2003年、ラグビーでは2005年からだという。

巻き取り式の人工芝でこれらの要件を満たすことは出来ないと考えられる。


おそらくは野球・フットボール兼用の人工芝を備える形になるのだろう。

アメリカにはそういうスタジアムは存在するので特に問題ないだろう。

さいたまスーパーアリーナの時代に比べればラグビー、サッカーでの人工芝利用のルールは明確化し、

特にラグビーであればプロレベルの試合でも利用可能である。

もっともラグビーについては秩父宮ラグビー場の屋内化が進められている。

人工芝なら屋内でもいいよね

あえて築地のスタジアムを使うニーズがどれぐらいあるか。

サッカーについては日本国内ではプロレベルでの利用は想定されていない。

(世界的にはプロの試合でも使われるし、ワールドカップでも使用されている)

地域の大会で活用されるのはなきにしもあらずという感じか。

でも切替に時間や費用がかかりすぎるならあえて選ばれないだろう。


あとはコンサートで、これについてはフットボール用の客席展開にすると、

アリーナ部分が四角になるのでコンサートでは使いやすいかもしれない。

ただ、あまり効果的でなければ野球モードのまま使われるかも知れないし、

結局のところはよくわからないところである。

大規模な屋内会場を求めれば今後もニーズはあることに疑いはない。


東京ドームは大規模な屋内球場ということで国際大会の舞台になることが多かった。

プロ選手を集めての国際大会はシーズンオフにやらざるを得ないわけで、

そうすると甲子園球場のような屋外球場は使うことが難しい。

読売ジャイアンツの本拠地とともに、この役目も新スタジアムに移ると考えられる。

野球に限らないけどスポーツを通じた国際交流にも寄与する施設になるんじゃないか。

割り込みされずに1命令でやりたかっただけ

割り込み処理で立てたフラグを読んで消すという処理をするのに、

アトミック処理のスワップ命令を使って書いたら便利そうだなと思ったが、

いや、素直に割り込みマスクしてフラグ操作するべきか? となった。


普通にフラグ変数を読んで、消すという操作は複数の命令で構成される。

ロード・分岐・ストアみたいに命令が並ぶんじゃないかな。

で、この処理をしている間に割り込み処理が入る可能性は否定できなくて、

そうすると意図したフラグ操作にならないという懸念がある。

それを回避するためには読んで消すという操作を1命令でできればよい。

これを実現する方法としてアトミック操作があって、

アトミック操作では読んで書き換えるという操作の途中状態を見せずに一息で処理できる。

フラグを読んで消すのにはスワップ命令が適していて、

読んで消すというのは、メモリの値を読んで0に入れ換えるということだからである。


シングルコアのシステムならば読んで書くが1命令というだけだけど、

マルチコアのシステムだと他のコアのアクセスに割り込まれないようにするという意味もある。

予約してメモリを書き換える

Load-Link/Store-Conditional(LL/SC)方式の話を以前紹介している。

この方式は読み出して予約(Load-Link)して、予約後に書換がない場合のみ書き込む(Store-Conditional)というもので、

これにより他のコアに割り込まれていないことが確認出来るわけである。

ARMのAArch32では複数コアで操作する変数を読んで書き換える方法はこれしかないはず。

一方でAArch64では、SWPAL命令を使えばこれが1命令で書ける。

AArch64といってもv8.1以降に限られる新しい命令らしいが。


今回の場合、心配しているのは同じコアの割り込み処理だけで、

その場合にわざわざアトミック命令を使うと他のコアにも影響してしまう?

それでパフォーマンス低下が発生してしまうのは好ましくない気がする。

実際の影響度はよくわからなくて、影響がない可能性もある。

割り込みマスク→ロード→分岐→ストア→割り込み許可というのは、

なかなかまどろっこしい気がするが、他のコアの処理には影響しない。


よくよく考えてみれば、割り込みマスク自体は避けられない気がして、

wfi命令で割り込みを待つ意味

ここで書いたのだけどWFI命令でスリープ状態で割り込みを待つ場合、

割り込みマスク→フラグ確認→フラグがない場合はWFI命令→割り込み許可

という順番でやらないとフラグ確認→WFI命令の間に割り込みが入ってしまう可能性がある。

それなら、この割り込みマスクしている間にフラグのクリアもやってしまえば、

わざわざアトミック処理を使わなくても済みますねと。

アトミック処理を使うためにインラインアセンブラを使う必要もないし。


フラグを読んで書き換えるという操作を複数のコアで行う場合はけっこう重要で、

こういう処理はスピンロックで使われることがあるという。

フラグ変数に0が入っている状態で、複数コアで同時にフラグ変数の値と1をスワップするアトミック処理を行う。

するとその中で一番乗りのコアは 0を読んで1に書き換えることができ、

2番目以降のコアは1を読んで1に書き換えるという結果になる。

このとき0が読めたコアがリソースを獲得できるという仕組みである。


マルチコアになる以前は単純に1命令で書ければいいという話だったが、

マルチコアになってからはそれでは不十分ということで、

他のコアにも途中状態を見せないアトミック処理に発展したという経緯があるようだ。

日本製鉄がUSスチールを買うわけ

日本製鉄がUSスチールを買収すると報じられた話。

米鉄鋼労組会長「日鉄は不誠実きわまりない」 雇用めぐり見解対立 (朝日新聞デジタル)

むしろ買収されず独立してやっていく方が危ないと思うんだけどなぁ。


その昔は世界最大の製鉄会社だったというUSスチール、

今ではすっかり落ちぶれて世界27位、日本製鉄の1/3ほどである。

首位は断トツ「世界鉄鋼メーカー」ランキング (東洋経済ONLINE)

このニュースを聞いたとき、日本製鉄はそんな落ちぶれた会社を買うのかと思ったが、

お金はあっても日本国内での投資にも限りがあるわけですよね。

落ちぶれたと書いたUSスチールだが、それは高付加価値化のための投資の余地があるということ。

そこにチャンスを見いだしたということではないかと思う。


日本製鉄傘下に入ることでUSスチールとしては販路が広がり、

鋼材の高付加価値化によりアメリカ、そして世界の製造業に貢献できる。

ということで歓迎されると思ったのだが、そうはならなかったわけである。

日本製鉄としては上記のような投資を行うことや、雇用の維持を図ると宣言しているが、

労働組合は「不誠実きわまりない」など言うような状況が続いている。

選挙を控える中で民主党・共和党の両党がこれに同調する形である。


USスチールは輸入関税引き上げなどでなんとか黒字になった状況らしく、

このまま存続する方が雇用という点では疑わしいように思える。

単に鉄を作っても稼げないんですよね。

日本製鉄は高付加価値化で稼ぐという点で実績のある会社ですからね。

USスチールは稼ぐ会社にならないと雇用も先細りでようと。

労働組合としてもこれに乗った方がお得という判断はありそうなのだが、

日本だと会社別の労働組合である一方、アメリカでは業種別の労働組合ということで、

USスチールで働く人だけが腹落ちすればいいわけではないという事情もあるのかね。


日本だと半導体産業が巨額の投資に耐えられずというのがあったが。

もちろんその中でもうまくやっている会社はありますけどね。

そんな中、台湾のTSMCが出資するJASMが熊本県菊陽町に工場を作った。

デジタル半導体の安定供給のため、業界ガリバーの外国企業に頼ったわけである。

日本政府の補助金が大盤振る舞い過ぎる感はあるが、

これほど熱意を持って投資する会社は日本国内にはないわけですからね。


現在の日本は、製造業が外国に工場を作り、そこから日本を含めた世界に売ることが多くなり、

元々エネルギーの輸入が多いこともあって、貿易収支では輸入超過である。

しかし、外国子会社が稼いだ分は配当金として日本の親会社にもたらされる。

また後で書く事情もあり、日本から外国への投資が積極的に行われているため、所得収支としては大黒字になっている。

サービス収支は外国へのデジタルサービスの支払いが多く赤字になりがちだが、

最近は外国人旅行客により赤字幅は縮小してるんだった。

でも、所得収支があまりに大きいから、経常収支では安定した黒字が続いている。

経常収支の黒字と金融収支の赤字はほぼ同じぐらいになるということで、

経常収支の黒字は回り回って外国への投資に向かっている。


一方のアメリカは世界からの投資が集まる国である。

アメリカというのは投資上手な国で、外国からの投資に多額の配当金・利子を支払うのに、

外国に投資して受け取る方が大きくて、所得収支は黒字なんですよね。

あとサービス収支も黒字、金融サービスやデジタルサービスで稼ぐ国である。

世界中から投資が集まるということは金融収支の黒字があるわけだけど、

経常収支全体としては金融収支を打ち消す赤字があるはずで、それが巨額の貿易赤字である。

アメリカの貿易赤字ってのは構造的にそうならざるを得ないんですよね。

アメリカは巨額の貿易赤字を出すことで世界経済の盟主でいられると。


日本製鉄がUSスチールを買収するというのはこういう構造なんですよね。

日本製鉄の立場としては日本国内でだぶついた金は外国への投資に向かわざるを得ない。

アメリカでは外国から買えるものは外国から買うのが経済的に合理的である。

それがゆえに落ちぶれてしまったのがUSスチールではあるのだけど、

自動車などの消費が盛んな国でもあり、高付加価値な鋼材の需要はある。

そこの考えがマッチしたということなんだろう。


しかしアメリカというのはけっこう閉鎖的な国ですからね。

果たしてこの買収が認められるかは政治的な事情もあり明らかではない。

上記のような事情からアメリカ経済にとってよい面が多いと思うし、

アメリカ国内での雇用確保や鋼材の安定供給の面でもよい話だと言えるが、

外国企業がこういう形で入ってくることをよしとしない向きもあるか。

労働組合さえ腹落ちすれば政治的な問題は解決しそうだが、なかなかその兆しが見えない。

USスチールの置かれた状況を冷静に考えれば納得できそうなもんですが。

年度初めで4月は忙しい

世間で年度末が忙しいという話はよく聞くけど、

どうもそれ以上に4月の忙しさの方が気になる。


4月に忙しい理由というのは期初に当たっての会議がいろいろあることと、

目標設定の都合で、この目標設定は特に管理職が大変である。

ただ、それ以外の人にとってもそれなりに時間を取られてしまうし、

管理職の予定を抑えられずに、作業に無理が生じるということもありうる。

仕事量が増えるというよりは、仕事を妨害する要素が4月は大量発生するというのが実情か。


で、この目標設定ってのは4月いっぱいかかるのが常なんですよね。

1年の目標設定が完了するのが期初から1ヶ月経過してからというのが実情で、

そしたら、目標設定しないまま1/12が経過してしまうということになる。

どちらかというと前期から続きの仕事が多いので、前期の延長で4月は考えることも多いが、

4月頭に始まって一段落してしまうような仕事もあって、

その場合は目標設定するときにはあらかた終わっているということもある。


この時間がかかる要因というのは、社長から本部長……部長から課長と、

役員・管理職の間での目標設定に時間がかかるからということがあるよう。

これは昔からそうなのだが、つい2年前からだったか、

システム上でこの目標の対応関係が確認出来る仕組みができた。

さすがに社長の目標設定と自分の職務目標の対応関係となると無理があるが、

その次の本部長レベルか、その次ぐらいで見えてくるかなという気がする。


ただ、どう考えても課長からメンバーへの目標設定が一番大変なわけで、

そこを余裕をもってできるようにスケジュールを立てて欲しいのだけどね。

いくら遅くても4月中にはというのは誰もが思っていることだと思うが、

その締め切りに追われるのは各課長というのが実情である。


そんなわけで4月が忙しいってのは考え物ではある。

本当はその忙しさを3月に前倒しして処理してほしいのだが……

でも、本当に年度末が忙しい人にはそれどころではないだろし。

このあたりは職場にもよるんだろうけどね。

Deflateの固定ハフマンに限る

昨日、SPIフラッシュからのプログラムロードが遅いかも。

という話で圧縮というのも考えるのかもしれないと書いたが、

簡単な圧縮方法はないものかと調べたら、Deflateに条件を付ければ簡単そう。

その条件とは固定ハフマンである。


Deflateと言えばZIPやらGZIPやらの圧縮アルゴリズムとして使われている。

圧縮性能はそれなりによいので、面倒そうだなと思う。

実際、けっこう面倒そうなのだが、意外とそうでもない部分もある。

7shi/Deflate (Slideshare)

Deflateはハフマン符号化とLZの2つのアルゴリズムを組み合わせている。

LZというのは繰り返しを表現するもので、

1~32768byte前に3~258byteの一致があることを0x101~0x11Dの符号で表す。

そういう都合のよい一致がない場合は0x00~0xFFで1byteのデータ、

そして最後は0x100の符号で終わるという仕組みである。

で、これ見てもわかるのだけど、0x00~0x11Dの285種類の符号を使う。

中途半端な気がするが、それで問題ないのはその後にハフマン符号化があるからで、

発生頻度の高い物は短い符号長、低いものは長い符号長を割りあてる。

これにより効果的な圧縮ができるわけである。


ただ、短いデータの圧縮だと、符号の定義でサイズが大きくなってしまう。

そこで固定ハフマン符号ということで既定の符号が存在している。

0x00~0x11Dを7~9bitの可変長の符号で表すというもの。

ある程度発生頻度は考慮されているらしい。

これを使う前提ならばハフマン符号の解析はある程度決め打ちでできる。

固定ハフマンを使って圧縮するというのはPythonでこんな風にかける。

import zlib
zc=zlib.compressobj(strategy=zlib.Z_FIXED)
ifile=open('c:/work/input.bin','rb')
idata=ifile.read()
ifile.close()
ofile=open('c:/work/deflated.bin','wb')
ofile.write(zc.compress(idata))
ofile.write(zc.flush())
ofile.close()

コンソールで殴り書きしたのをコピペしただけなのでご勘弁を。

ポイントはstrategy=zlib.Z_FIXEDってところで、これで固定ハフマンを使うことを表している。

1079kBのCSVを圧縮して254kB、本気で圧縮して206kBだから、

確かに劣るけど、これはこれで悪くない数字ではないかと思う。


固定ハフマンに限れば解析は容易になりそうだが、

ちょっと面倒なのは可変長符号の都合、下位ビットがMSBになっていること。

愚直に1bitずつコピーしてシフトして処理しては展開に時間がかかりそうだし

あらかじめ固定ハフマンを解析する用のテーブルでも作っておくのがよいのだろうか?

ただ、あらかじめ用意したテーブルを使えるのは固定ハフマンのメリットではないか。


圧縮に既存のツールが使えるなら少し助かった気がする。

展開側は書かないといけないのかもしれないけど、

まぁ実現性はありそうだなと思った。

やりたくはないけど、結構厳しそう。

クロックを速くしてQSPIにすれば

新しいシステムでプログラムを格納するのにSPIフラッシュを使う想定で話が進んでいて、

もしかすると思っているより遅いかもという話になって、

適当に書いたテストプログラムだと、従来のシステムより1桁ぐらい遅そうと。


SPIフラッシュの読み出しを早くするにはクロックを早くすればよい。

ただ、評価ボードから線でビローンと伸ばしたりしては、どうも難しいようだ。

実際にプリント板を作るときにはこのあたり打開されていると見てよいものか。

ただ、最速設定で回せれば2倍速とか4倍速にはなる計算である。


さらに高速化する手法としてはQSPIを使う方法がある。

QSPIってQuad SPIの略で、信号線4本をパラレルに使うSPIって、それはシリアルではないような?

ただ、それでも純然たるパラレルバスに比べれば信号線の数は少なく抑えられる。

ちなみに信号線2本パラレルにして使うDual SPIというのもあって、

この場合はもともとSPIは送受信1本ずつの信号線を使うところ、双方向に2本束ねて使うということで、

必要な信号線の数は変わらないというメリットがある。導入はしやすいか。


QSPIの使い方もいろいろあるのだが、今回は都合によりQPIモードを使った。

起動時は通常のSPIのコマンドを受け付けるが、QPIモードに入るコマンドを送ると、

以後はQSPIのコマンドを受け付けるようになり、単純には4倍速でやりとりできると。

リセット信号を入れるか、QPIモードを出るコマンドをQSPIで送れば、

通常のSPIのコマンドを受け付けるようになるが、その必要があるかはなんとも。


実際にはいろいろオーバーヘッドがあるので4倍速とは行かないところはあるが、

それでも3倍速ぐらいにはなったような気がする。

最初1桁ぐらい所要時間が増えそうだという話をしていたが、

クロックを最速にして4倍速、QSPIにして3倍速だと、12倍速という計算、

実際にはこの通りにはいかないかもしれないが、従来のシステムと同程度にはできるかもしれない。


あとは当初使っていたサンプルプログラムの出来がよくなくて、

1バイト送受信するごとに少し休んでという波形が見えていたので、

それはおかしいなということでプログラムを刷新したら、隙間はなくなった。

わりと無駄な処理がいろいろ挟まっていてたようだ。

ただ、クロック周波数を上げていくとこの隙間が復活するかもしれない。


結局のところ、最後の切り札は圧縮なんじゃないかなという気がする。

データサイズ自体が小さくなれば、転送に要する時間は短縮できる。

短縮命令とかあるけど、そうはいっても機械語は圧縮の余地がかなりある。

その代わりデータの展開にかかる時間は増えるけど、

ある程度ハイパワーなマイコンだし、総じて見れば短縮できるのでは?

そこまでするのかはよくわかりませんけど。

どれぐらい起動時間が伸びても許容できるのかってところかなぁ。

アイドルから転身して蓮ノ空女学院

昨日、Twitterのトレンドに「来栖りん」とあって、

何かと思ったらラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの新メンバーに抜擢されたという話だった。

蓮ノ空は現実の時間の流れと同期して進級すれば、新入生もやってくる。

3つのユニットに1人ずつ、計3人の新入生が入り、その1人を演じるのが来栖りんさんだったと。


僕が来栖りんという名前を見たのは、BOOK☆WALKERで本を漁っていたとき、

集英社のデジタル写真集が並んでいる中で購入したときのことである。

当時は「26時のマスカレイド」というアイドルグループのセンターだったが、

その中で集英社の週刊ヤングジャンプの「制コレ’18」で抜擢されて、

それをきっかけにして写真集が出ていた。どうもそういうことらしい。

そんな出会いだったので、美人だな、かわいいなぐらいの印象である。


その26時のマスカレイドは2022年10月をもって解散となった。

その後、まもなく事務所を退所していたという。

元ニジマス・来栖りん 所属事務所を円満退社 直筆で発表「声優という夢を叶えるため新しい場所で」 (スポニチAnnex)

タイトルにもあるのだけど、実はこの当時から声優への転身を意図していたという。

その後、まもなくLantisからの歌手デビューが発表されていた。

そのデビュー曲はTVアニメ「神無き世界のカミサマ活動」のオープニングテーマだった。

この作品のキャラクタを演じることで声優デビューと相成った。


そこから声優としての活躍の幅を広げるべくいろいろやってきたのだろうが、

そこで手にした大役が蓮ノ空女学院の新入生、安養寺姫芽だった。

ラブライブ!シリーズには元アイドルはけっこういて、それこそ蓮ノ空には2人いる。

ただ、どちらかというとここに至るまでの経緯はラブライブ!スーパースターの唐可可 役に抜擢されたLiyuuさんに似ている気がする。


Liyuuさんは中国・上海出身のコスプレイヤーだった。

たびたび日本に来て注目を集めていたそうで、2018年にホリプロインターナショナルの所属に。

同社はアニメ・ゲームで活躍する声優・歌手とともに、外国人タレントを抱えており、

当初は外国人タレントという枠組みで採用されたのかなと想像する。

2020年にLantisから歌手デビュー、同年エンディングテーマを担当した「100万の命の上に俺は立っている」のキャラクタを演じ声優デビュー。

その後まもなく、ラブライブ!スーパースター、Liellaのメンバーとして発表された。

唐可可はスクールアイドルに憧れてやってきた中国人ということで、あまりにハマりすぎな気がするが……

歌手デビュー後はコスプレイヤーとしての側面はほぼなくなったと思うが、

グラビアはやっていて、2022年に集英社から写真集が出ている。


なんとなくLantisから歌手デビューしているなとは気づいてたんだけど、

ユニットの解散があって、その時点で声優への転身を意図していたことや、

事務所を移っていたということは把握していなかった。

この逸材、どうやって生かしたものかと考えた結果がラブライブ!シリーズでの抜擢だったか。

ラブライブ!シリーズにはLantisも関わってますからね。

Liyuuさんもそうだが、そのツテでキャスティングされた面は大いにあるのでは?


ちなみに声優転身を意図して事務所を退所したというが、

その後の所属はバンダイナムコミュージックライブ、Lantisの会社である。

確か昔からタレントマネージメント部門は細々と存在していたのだと思うが、

今年から「StarRise」というブランドでやっていくことになったという。

昨年4月よりバンダイナムコミュージックライブ所属としてラブライブ!シリーズのグループマネジメントを中心にマネジメント事業をスタートしてまいりましたが、新たに数組のアーティストを仲間に迎え、屋号「StarRise」として新たにスタートします。

StarRiseは、IPグループ・アクター・アーティストのマネジメント事業を中心に、マネジメント所属タレント一人一人の可能性を最大限に引き出せる事業展開を企画・実施してまいります。

来栖りんさんがStarRise所属というのは一般的な芸能事務所の所属と捉えてよい。

ただ、StarRiseにはラブライブ!シリーズのAqours・Liella!・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブという「IPグループ」がいる。

声優ユニットとしてのAqours他をマネージメントするということだが、

メンバーはそれぞれに事務所に所属しており、これらをとりまとめる役目を担っているということか。

また、アーティストという枠でAya EmoriとLustQueenの名前が。

これはそれぞれ絵森彩さん、結那さんのアーティストプロジェクトである。

それぞれ声優の活動などは元々の所属事務所でマネージメントしているはずだが、それとは別にあるらしい。

StarRiseの「IPグループ・アクター・アーティスト」のほとんどはラブライブ!シリーズに関係がある。

来栖りんさんの蓮ノ空への抜擢は元々意図されていたのかもしれない。

それこそStarRiseブランドの立ち上げ以前から。