いずむうびい謹製2016年下半期映画ベスト
いずむうびい謹製2016年上半期映画ベスト - いずむうびい
下半期ベストテンは年間ベストテンとほとんど変わらんので割愛.下半期に映画館で見た映画61本(洋画26本邦画26本アニメ9本)の中からいいなーと思った監督さん・役者さんをピックアップ.ピックアップペンパイナッポーアッポーペン.上から順に印象深かった人です.
監督賞
- 山戸結希『溺れるナイフ』
- 片渕須直『この世界の片隅に』
- 三木孝浩『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』
- 大森立嗣『セトウツミ』
『溺れるナイフ』の空間づくりが見事だった山戸結希監督が「これからの注目度」でナンバーワンだった.片渕須直監督は片隅須直に略してもいいんじゃないか?ってくらいインタビュー記事を見かけてそれが面白かった.三木孝浩監督と大森立嗣監督は今まで名前は知ってたけれどキャリアハイ出してきたなあと.
助演男優賞
歌は知ってたけど演技をはじめて見た竹原ピストルのいつキレてくんのかわかんない感じと本木雅弘との水と油感に本当に惑わされた.羽生善治を演じた東出昌大はお見事.試合後にいやあそこ危なかったですねえと批評する危なっかしさが素晴らしかった.『溺れるナイフ』の重岡大毅はあそこまでやられてしまったら降参.亡くなってしまったアントン・イェルチェン.『今日、キミに会えたら』(2011)が思い出の作品だがワイルドスピードとスタートレックの最新作が両方とも本編中に喪に服していて胸を掻き乱される.
助演女優賞
カヨコ・アン・パタースン役はもちろん水10ドラマ『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』でも石原さとみには本当に下半期を楽しませてもらえた.『湯を沸かすほど〜』の杉咲花には2016年の新人賞もあわせてあげたい.『映画 聲の形』で硝子の妹・結弦役を演じた悠木碧.まどマギのまどか役から打って変わったようなキャラクターだったがやはりその声の裏に感情を潜ませるのが上手い.将也と硝子の橋渡しをする重要なキャラクターを演じきった.『永い言い訳』の黒木華はすんませんエロかったからです.
主演女優賞
- 早見沙織『映画 聲の形』
- 小松菜奈『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』
- 宮崎あおい『怒り』
- マーゴット・ロビー『スーサイド・スクワッド』
西宮硝子役の早見沙織は素晴らしいの一言.西宮硝子の声ってのは漫画ではどうにも表現できないものだから映画はぶっちゃけそれが肝だった.だからあの「ちゅき!」を聞けただけで早見沙織が一等賞なのであった.『ぼくは明日〜』の小松菜奈は可愛さで殺しにかかってくる.宮崎あおい先生は『怒り』で今年覚醒しつつあった広瀬すずをねじ伏せた.ハーレイ・クインをパーフェクトな状態で見せてくれたマーゴット・ロビーにも感謝.プリンちゃん.
主演男優賞
『聖の青春』は村山聖を演じた松山ケンイチと羽生善治を演じた東出昌大の演技だけで持っている映画だった.帰り道に羽生に声を掛けようと待ち伏せする村山の体躯が忘れられない.菅田将暉にはTwitterアイコンにするほど今年もっともハマった役者さん賞を授与.誰かと不倫しているイメージしかなかった池松壮亮が『セトウツミ』で見せる神妙な面持ちは最高だった.評判の芳しくないジェイソン・ボーン最新作だったがボクは好きだった.これほど物語の展開に内面描写を求められるキャラクターは稀有な存在なのではないか.マット・デイモンにずっとジェイソン・ボーン役を演じていてほしい.
以上.次は年内に1年間の通しで選んでみよう.最後は下半期鑑賞映画の星取表を見た順に.ハッピークリスマスペーン!
- 二重生活 ★★★★
- 日本で一番悪い奴ら ★★★
- 10 クローバーフィールド・レーン ★★★
- 帰ってきたヒトラー ★★
- セトウツミ ★★★★★
- 疑惑のチャンピオン ★★★★
- インデペンデンス・デイ:リサージェンス ★★★★
- ホーンテッド・キャンパス ★★★
- KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV ★★★
- ペレ 伝説の誕生 ★★★★
- アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅 ★★★★
- ファインディング・ドリー ★★★★
- 植物図鑑 運命の恋、ひろいました ★
- HiGH&LOW THE MOVIE ★
- ロスト・バケーション ★★★
- シン・ゴジラ ★★★★★
- ルドルフとイッパイアッテナ ★★
- X-MEN:アポカリプス ★★★
- ペット ★★★★
- ゴーストバスターズ ★★
- 青空エール ★★★
- 君の名は。 ★
- 後妻業の女 ★★
- セルフレス/覚醒した記憶 ★★
- 映画 聲の形 ★★★★★
- スーサイド・スクワッド ★★★★
- 四月は君の嘘 ★
- 怒り ★★★★
- 闇金ウシジマくん Part3 ★★★
- ハドソン川の奇跡 ★★★
- レッドタートル ある島の物語 ★★★
- BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント ★★
- SCOOP! ★★
- 高慢と偏見とゾンビ ★★
- 少女 ★
- GANTZ:O ★★
- 何者 ★★
- 永い言い訳 ★★★★
- ジェイソン・ボーン ★★★★
- スター・トレック BEYOND ★★★
- バースデーカード ★★
- 闇金ウシジマくん ザ・ファイナル ★★
- デスノート Light up the NEW world ★★★
- 手紙は憶えている ★★★
- 湯を沸かすほどの熱い愛 ★★★
- ジェーン ★★
- 溺れるナイフ ★★★★★
- ぼくのおじさん ★★★
- オーバー・フェンス ★★★
- この世界の片隅に ★★★★★
- 聖の青春 ★★★★
- ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅 ★★
- ジャック・リーチャー NEVER GO BACK ★★★★
- 五日物語−3つの王国と3人の女− ★★★★★
- シークレット・オブ・モンスター ★★★
- ガール・オン・ザ・トレイン ★★★
- アズミ・ハルコは行方不明 ★★
- シング・ストリート ★★★★
- 私の少女時代 Our Times ★★★
- ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー ★★★★★
- ぼくは明日、昨日のきみとデートする ★★★★★
いずむうびい謹製2016年映画ベスト
年間ベストの時節となりました.2016年映画館で見た新作映画は112本.レンタル配信等も含めると130本くらいの鑑賞になったでしょう.これは自分史上最高クラスの本数でした.お金使ったなー.ではベストテン.
2016年映画ベストテン
- ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
- シン・ゴジラ
- 映画 聲の形
- この世界の片隅に
- 貞子vs伽耶子
- WE ARE YOUR FRIENDS ウィー・アー・ユア・フレンズ
- イット・フォローズ
- ボーダーライン
- ヒメアノ〜ル
- ぼくは明日、昨日のきみとデートする
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は最高だった.そしてズルい.銀河系全体の大戦争なんだからそりゃ死屍累々を積み上げているもんだとは分かっちゃいるけどそれをフォースというエモーショナルでもって描いてくるんだもん.こちとらディズニー傘下になって油断しているところにフォースの覚醒といいローグワンといい観客をめっちゃ殺しにくる不意打ち.ヤツら本気です.エピソードⅧは本当に驚天動地のことが起きると思う.ライアン・ジョンソン監督は大好きなので今から1年間覚悟しつつ期待して待つ.
『シン・ゴジラ』は不安が大きかったけど今じゃそれも良い思い出.会話スピードがどうとか音楽とかキャラクターとかゴジラ以外のことで惹きつけられる要素が多いのはもちろんのこと何といってもゴジラの形態変化が素晴らしい.蒲田に現れたゴジラを劇中の者たち同様「巨大不明生物」と認識していたときのこの先どうなるのか分からなくてグラつく感覚.あれこそが映画の醍醐味だ.それを忘れぬよう蒲田くんではなくあれは巨大不明生物と呼んでいきたい.ローグワンもゴジラも新たな血を取り入れてシリーズに新規客を取り込んだことが印象深いです.
2016年はアニメの蜂起の年だった.200億のミラクルヒットになった『君の名は。』も含めて『映画 聲の形』『この世界の片隅に』の傑作アニメ映画3本はついにパンドラの箱を開けたのだ.ジブリやディズニーといった看板が無くとも,リピート鑑賞推奨グッズ等々の売り方宣伝手法に頼らずとも作品の地力で大ヒットしてしまったのだ.観客は面白けりゃ何度でも見に行くということがきっちり証明されたわけだ.万歳.これからのアニメ映画に注目である.
時期を間違えた年末特番のようなドリームマッチ映画『貞子vs伽耶子』,EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)という音楽ジャンルを活かした構成が実に見事で実質ボクの海外作品ナンバーワン映画『WE ARE YOUR FRIENDS ウィー・アー・ユア・フレンズ』,おぞましさと美しさを絶妙なバランスで共存させた次代の青春ホラー『イット・フォローズ』,虎視眈々と2017年に公開作を控えるドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の描写力光る『ボーダーライン』なども忘れられない.
『ヒメアノ〜ル』と『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』には共通点があった.タイトルコールが映画中盤にくるのだ.そこから映画は急展開を見せる.こういう分かりやすく素直な構成に弱いのよね.
『ヒメアノ〜ル』の狙いはこうだ.年代は社会人だがいわゆるスクールカーストでは底辺に属していたであろう者たち(濱田岳とムロツヨシ)を登場させて輪をつくり,タイトルコール後にさらにその下の者(森田剛)を出現させるのだ.下には下がいるというわけである.これから何が起きるのだろうと映画に一気に引き込まれてしまった.そして佐津川愛美の可愛さがヤバイ.
『ぼくは明日〜』の場合はタイトルコール後に物語のルールと登場人物の範囲が開示される.タイトルにならっていえば「あさっての方向」へと物語が動き出すわけだ.そこからは劇中の時間を止めてほしいと出来る限り長く二人(福士蒼汰と小松菜奈)の時間が続いてほしいと願わざるをえないものが描かれる.デートシーンのつるべ打ちに自分のライフポイントが心配になった.ゴジラや貞子は別物とすれば邦画豊作といわれた今年のトップ2はボクにとってはこの2本でしたね.
以上.と言いたいところだけどここに入りきらなかった次点作品もいくつか挙げて締めとします.いやー今年は本当に映画をよく見た.現実を生きていく燃料としてこれからも虚構に惑わされ続けていきたいです.それでは読んでくれたひとありがとう.メリークリスマス良いお年を!
次点作品見た順
- 残穢【ざんえ】−住んではいけない部屋−
- セトウツミ
- コップ・カー
- スーサイド・スクワッド
- 五日物語−3つの王国と3人の女−
選ばれし者ではなく自ら選んだ者たち『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』
感想パート2
2D字幕吹替と2回見て感想かたまったので更新.エピソードⅣのオープニングクロールにあった「犠牲」とはどんなものがあったのか.犠牲を払うとはどういうことなのか.そもそも何のために払うのか.そしてその答えはいったいどのようなものなのかといった物語の映画でした.
◯「希望」とは?
将来こうあってほしいと望むことを希望というがローグワンが偉いのは何故希望が必要なのか?を描いているところ.それはキャシアンによって語られる.「今まで大義名分のためにこの手を汚してきた。今ここで信じることをやめてしまったらその全てが無駄になる。」.希望というものは「信じることをやめないために必要なもの」なのだ.信じることをやめてしまったらそこで物語は終わる.諦めたらそこで試合終了ですよと相場は決まっているのだ.オリジナル3部作を思い返そう.あの物語が大団円を迎えられたのは「ルーク・スカイウォーカーが父を信じたから」ではないか.ダース・ベイダーとなり恐怖の存在になっていたとしてもアナキン・スカイウォーカーであったときに持っていた善の心を失ってはいないハズだと.父を殺すことはできない・自分の代わりにレイアを暗黒面に差し出すこともできないという恐怖を乗り越えて,父を信じることができたからこそルークは皇帝に勝つことができた.その信じることに必要な希望のともしびはどのように点火したのか?を『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は描いてくれるのだ.偉い.偉すぎる.
◯“選ばれし者”ではなく“自ら選んだ者”たち
ローグワンのキャラクターは何を希望にして信じることをやめないでいるか.または何に絶望して信じることをやめてしまっているのか.ほとんどの登場人物がこの二面性でもって描かれている.冒頭,ゲイレン・アーソをさらいにきた帝国軍に銃を向けるゲイレンの妻ライラ.彼女の最後のひとこと「うまくいくわけない」とはきっとゲイレンが事前に伝えていたであろう「もしもの時のため」の手段のことだ.その詳細は描かれないがライラは最後の最後でゲイレンのことを信じることができず凶弾に倒れてしまう.
ソウ・ゲレラも同様だ.ジン・アーソを実の娘のように匿い育ててきたが彼女が帝国軍の人間を父に持つと分かった途端に彼女を人質にしようという反乱同盟軍の意向に納得いかなかった.そこには彼があのように疑心暗鬼になるのに十分な裏切りと失望があったはずだ.ゲイレン・アーソが死にものぐるいで託したメッセージを信じ切ることができず怪物にその判断を委ねてしまうし,長年待ち焦がれていた瞬間であろうジン・アーソとの再会にも罠かもしれないと警戒してしまう.ソウ・ゲレラもまた信じることをやめてしまった者なのだ.ソウ・ゲレラ及びジェダはデス・スター最初の標的となり消滅する.しかしこの死は「ジェダのために!」と戦地へ赴く者たちへ確かに紡がれている.ライラとソウ二人の死を経てジンは最後の希望を持ってゲイレンに会いに行き,その希望を信じる決意をする.ジンをはじめとするローグワンの仲間たちとはフォースに導かれし選ばれし者ではなく,最後の希望を捨てずに自らの意志で信じることを選んだ者たちなのだ.
◯クレリック長官が好き!
森羅万象を司るものとしてフォースを信じるチアルート.そのチアルートを信じるベイズ.託されたファーストメッセージの重みに耐えながらゲイレンを信じるボーディー.失敗する確率や悪いことの起きる確率ばかりを強調しながら逆のことばかり起きる現実に人間の可能性を感じ始めるK-2SO.自らの存在意義をもう一度信じるためにジンに希望を託したキャシアン.そして彼らと出会う前は名前さえ変えて自分自身のことを信じきれないでいたジン.ローグワンの面々はみんな魅力的だったがボクは今回クレリック長官がいちばん好きだった.中間管理職的な立場で成功すれば上の手柄で失敗すれば全責任が自分にくる.なんという損な役回りだろう.内部事情的な方面からターキン提督ってワルだな!ベイダー卿ってほんとにコワい!皇帝はサイアクだ!なんてことを思わされて意外性バツグンだった.彼の送るデススターへの眼差しもまた希望を失ってしまった者の悲壮感があって映画に華を添えていたのである.
以上.年内に行けたらもう一回くらいは見ておこう.字幕より吹替のほうが楽しめた気がするけど映画館でしか見る機会のない3Dに次は赴くよ.フォースと共にあらんことを.
我とスターウォーズが共にあらんことを『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』
スターウォーズは王道だ.同盟軍と帝国軍,ジェダイとシス,こんなにも分かりやすく壮大な図式は他にはない.王道が王道たりうるために必要なものを惜しむことなく搭載している完全装備の王道.それがスターウォーズだ.
まさかの新作として登場した昨年のエピソードⅦはエピソードⅣとⅤのハイブリッドであった.王道をやりきって神話になろうかという過去作を教本にするのだから傑作にならないワケがなく,一歩間違えれば焼き直しと非難されようものがJ・J・エイブラムスや地球最強ディズニーのブレーンたちが一歩間違えることなどしないのであった.しかしフォースの覚醒にはもっとも大切なハートの部分でも確かなものがあった.それはスターウォーズをふたたび始めるということは「スターウォーズをもう一度終わらせること」なのだという「覚悟」だ.フォースの覚醒は物語できちんとその覚悟を表明している傑作だった.
で,ローグワン.結論からいって最高オブ最高.今年のベストワンを見事にかっさらっていった.同盟軍と帝国軍,ジェダイとシスといった王道の横道をいくはみ出し者が主役のイマドキヒーロー映画であり,大義名分に苦しむ戦争映画であり,ジン・アーソなるジャンヌ・ダルクと生き方を強いられた者たちの絆の映画であった.こんなんズルいわ.泣くわ.横道にいくと思いきや各方面の王道かき集めました映画なんだもん.キャシアンが口封じをする序盤で見せる表情ひとつで映画の方向性を示すのまじで上手いと思った.ライトセーバーが出てこない初めてのスターウォーズになるかと思いきやしっかりとダース・ベイダーが史上最凶の形で披露してくれる.ボクの記憶にあるライトセーバーアクションとはジェダイとシスの戦いであるか誰かを守護るものだったり誰かを救出したりするときに用いられるものだったので完全に奪いにくるためだけの純粋悪の武器として使用する今回のダース・ベイダーは史上最凶だと思った.カッコ良すぎて暗黒面に墜ちる.オープニングクロールが無いのもサイドストーリーに徹していてたいへん素晴らしい.エピソードⅣのオープニングクロールがまるでローグワンの続きであることのように感じてしまう.まったく文句のつけようのない大満足の逸品だった.
ローグワンについてはまだまだ見る予定があるので感想はここらへんにしておいて来年12月に控えるライアン・ジョンソン監督(最高!)のエピソードⅧやその後のスターウォーズに思いを馳せておく.
「続編映画の傑作はパート2」の法則がエピソードⅧにはきっと当てはまるんじゃないだろうか.起承転結でいえばオリジナル3部作すべてを「承」としてそこへ至るまでの『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』が「起」,新たな主人公と物語と対峙する『スター・ウォーズ エピソードⅦ/フォースの覚醒』が「転」.そして次なるエピソードⅧが「結」になり,コリン・トレヴォロウ監督のエピソードⅨではまた新たな起承転結を目の当たりにする.そこには未だかつてない新しいスターウォーズがあるはずだし覚悟を表明した以上はその境地にいかなくてはいけない.そんなような機運がこのローグワンでより一層高まったように思う.頼むぜライアン・ジョンソン.壮絶で荘厳な「結」を待っている.ボクたちにもいよいよその「覚悟」が必要なのだ.もう一度始まるスターウォーズ,もう一度終わるスターウォーズ.その流れはもう止められない.我とフォースが共にあらんことをフォースと我が共にあらんことを.
女子高生のカリスマから女子力の神へ!西野カナ『Just LOVE Tour』へ行ってきた。
西野カナが好きである.可愛いし声が伸びやかだし可愛い.11.26に全国アリーナツアーのゴール地点であるさいたまスーパーアリーナに遊びに行ってきた.ライブはとても素晴らしく楽しいひとときを過ごさせてもらった.はじめはちょっと鼻声かなと思ったけどバラードになるとさすがのまとめ方で『君が好き』は特に良かったです.あらためて西野カナ好きだなと思えるライブだったので,その余韻を少しでも持続させるためにここでは西野カナをなぜに好きになったのかということとこれからの彼女に期待していることが何なのかを書いておく.映画ばっかしじゃ何だからね.
さて,デビュー当時の彼女についてはまったくと言っていいほど知らなくて,世間と同じように2010年の『会いたくて 会いたくて』で存在を認知した身分だ.あの頃は「震えすぎwww」とやたらと揶揄されている様子をぼんやり外から眺めていた記憶がある.まあ,とくべつ西野カナという存在が叩かれようが女子高生に人気が出ようがボクにとってはまだ何ともない存在だったのだ.彼女のことを気になりだしたのは2012年の『GO FOR IT!!』からだ.
単純にプロモが可愛いと思ったのだ.男ってやつはどうしたってチアっぽいのに弱い.それと「L!O!V!E!Y!O!U!」なんてスラムダンクの流川への応援歌だってギャグになってるフレーズを何の気兼ねもなくスッキリと伸びやかに歌っているさまが素直に格好良いなと思った.今日も会いたくて震えてるんだろうと言われている印象しかなかった彼女に純粋に興味がわいてきたのだった.
それからテレビで見かければ眺めて,歌を聴いて,三重県の喋りが可愛いってことと歌唱力は全然バカにできないことに気が付いた.会いたくて震える日もたまにはあるんじゃないだろうかと思い始めて普通以上ファン未満な感じがしばらく続いた.そんな状態で耳にした2014年の『Darling』.これで一気にファンになった.曲うんぬんや可愛いからなどといった理由ではなく,彼女に変化を感じたからだ.
それまでの彼女の歌は片想いや失恋,わたしからの「君(キミ)」への想いという一方的なものが多かったのだが,『Darling』は彼氏との同棲生活を歌ったもので,明らかに年齢層ターゲットが西野カナの実年齢を意識するように変わっていた.子どもの頃に夢見ていた煌めく恋愛ではないけれど,私は私なりに幸せですなどと言い放ち何とまあ等身大の歌に路線変更してきたのだ.これにグッと心を掴まれてやられてしまったボクは,過去作品をある程度チェックしつつ,新譜をリリース毎に聴くようになっていった.
2015年の『好き』に書かれている「キミ」はそれまでとはニュアンスが違って歳上女性からのそれにも対応できる内容になっている.『もしも運命の人がいるのなら』はともすれば婚活や合コンなんかも経験値として積んでいそうな女性のナンバーになっている.極めつけはやはり今年の『トリセツ』だが,女性なら1つは心当たりがありそうなフレーズをこれでもかと入れ込んで,一点物につき返品交換はできませんご了承くださいなどとおどけてみせてはいるもののその内容は女子無敵状態の男子ムリゲーソングであり,神をも恐れぬ西野カナの女子力にはもう降参するほかなかったのである.
そう.西野カナはデビューしてから女子高生のカリスマを経て大人の女性になり,2016年についに「女子力の神」へと目指す頂を変えたのだ.
そんな彼女の新曲『Dear Bride』は初のウェディングソングだ.だが,この歌は木村カエラの『Butterfly』のように結婚式場が公式に使用するような歌にはならないだろう.いやなる必要がない.歌詞の中に「彼(旦那)」がいたうえでの「君(キミ)」なので,あくまで女の子による女友達への結婚祝福ソングになっているからだ.しかし,これぞ西野カナが突き進む女子力の道なのだ.女子による女子のための女子ソングを彼女には歌い続けていってほしい.
昨年の『With LOVE Tour』と本日の『Just LOVE Tour』で2度彼女のライブに行ってきたが次のツアーにも絶対に行こうと思う.ツアーの名前にはこれからもLOVEを冠してもらって是非ともその道を極めていただきたい.今,日本でいちばん女子力の高い女の子・西野カナ.これからもどうぞよろしくね.おわり
いずむうびい謹製戦争映画ベストテン
http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20161031
最近は年2回開催のワッシュさんのベストテン企画に参加しました.すでにコメント欄に投稿させていただいたので備忘録としてブログにも.あらためて探してみたら戦争映画っていろんな角度のものがあるんですね.新しめの作品を優遇する気質にあるので2000年以降の作品を中心に選びましたとさ.それでは10位から1位を発表.内容はあんまり語れないや.1回しか見てないものもそりゃあありますともさ.
第10位:パンズ・ラビリンス
戦争:スペイン内戦(1936-1939)
製作:2006年(スペイン)
監督:ギレルモ・デル・トロ
いきなり戦争映画と呼ばれたことをきいたことのない言わずと知れたギレルモ・デル・トロのダークファンタジー.こういう映画って日本じゃまず実写化できないじゃないですか.その希少価値だけで忘れがたいっていうか,普通にめちゃくちゃ面白かったよね.
第9位:気狂いピエロの決闘
戦争:スペイン内戦(1936-1939)
製作:2010年(スペイン)
2本つづけてスペイン内戦!そして内戦シーンは冒頭のみ!でももうこの画像だけで面白さわかるでしょ!面白い!イグレシア最高!
第8位:ジョニー・マッド・ドッグ
戦争:第二次リベリア内戦(1999-2003)
製作:2008年(フランス)
監督:ジャン=ステファーヌ・ソヴェール
画像に選んだドレス姿の少年兵が強烈に印象に残っているのでセレクション.それだけなの?と思われたならそれだけです!と答えよう.
第7位:麦の穂をゆらす風
戦争:アイルランド独立戦争(1919-1921),アイルランド内戦(1922-1923)
製作:2006年(アイルランド/イギリス)
監督:ケン・ローチ
戦争映画ベストテンときいてまずはじめに浮かんできたのがこれ.ケン・ローチ監督好きなんですよ.これと『この自由な世界で』(2007)はほんとうに好き.見返さないとなあ.
第6位:ローン・サバイバー
戦争:第二次アフガニスタン紛争(2001-現在)
製作:2013(アメリカ)
監督:ピーター・バーグ
ネイビーシールズ史上最悪の事件とされるレッド・ウィング作戦の映画化.ここら辺からはさすがに記憶が鮮明になってきました.これほど凄い「削り」の映画は見たことがない.心身ともに人間が擦り減っていく.それも屈強なネイビーシールズたちが.傑作でした.
第5位:ブラックブック
戦争:第二次世界大戦(1939-1945)
製作:2006年(オランダ)
監督:ポール・バーホーベン
バーホーベンがオランダ凱旋制作の映画.とてつもなく面白かった記憶がある.それなら内容を少しくらいはといきたいところですが面白かった想いのみが残っている所存でございます.
第4位:イングロリアス・バスターズ
戦争:第二次世界大戦(1939-1945)
製作:2009年(アメリカ)
これはね!さすがに語れます.語れますけどもここはやはり画像で納得していただきたい.ミルクをいただいてもよろしいかねの第1章はタランティーノの最高傑作と思う.ミスタぁ〜ラパディいトぅ〜
第3位:縞模様のパジャマの少年
戦争:第二次世界大戦(1939-1945)
製作:2008年(イギリス/アメリカ)
監督:マーク・ハーマン
3位だけどイチオシはこの映画.画像の通りナチス将校の息子と強制収容所の少年2人の友情を描いた作品.スーパーウルトラどんより映画です.
第2位:ハート・ロッカー
戦争:イラク戦争(2003-2011)
製作:2009年(アメリカ)
監督:キャスリン・ビグロー
好きなんですよねーこれ.ハートロッカーってスラングだけど「戦争 」そのものを言い当てた上手い言葉だなと.スナイパーする場面とか空気感と緊張感が描写されててほんとうに好き.
第1位:この世界の片隅に
戦争:第二次世界大戦(1939-1945)
製作:2016年(日本)
監督:片渕須直
日本には戦争=原爆って傷跡があるからどうしたって悲しくしかならないしそこから何かを見出そうなんてもう映画が担うことはないなんて思いがあったけれどそんなことはなかった.物語はまだまだやれる.そんな映画でした.
- この世界の片隅に
- ハート・ロッカー
- 縞模様のパジャマの少年
- イングロリアス・バスターズ
- ブラックブック
- ローン・サバイバー
- 麦の穂をゆらす風
- ジョニー・マッド・ドッグ
- 気狂いピエロの決闘
- パンズ・ラビリンス
以上.戦争映画ベストテンでした!
この世界に生まれてほんとうに良かった『この世界の片隅に』
主人公すずにとっては,18歳で嫁に行くことや毎日をやり繰りすることが戦争に対しての抵抗だった.戦争なんかに挫けてなるものか,暴力に屈してたまるものかという想いを抱いている人間が確かにその時代にいたのだという肝っ玉と説得力が素晴らしい.だからそれが打ち砕かれたときはどうしようもなく悔しいし悲しくてやりきれない気持ちになる.不勉強に拠るところなのかもしれないが「敗戦」の中にはこんな感情もあったのかと驚かされる.単純に笑ったり泣きそうになったりするポイントもあるけれど,かつて出会ったことのない物語とそこに流れる感情にただただ圧倒されるばかりの映画だった.
圧倒されたあとに頭を駆け巡ったのは「現実対虚構アニメ版」というフレーズだった.今年いちばん好きな映画は『シン・ゴジラ』に確定したのでキャッチコピーになった「現実対虚構」が頭をもたげているというのもあるが,現実対虚構の「現実」には「ニッポン」,いっぽう「虚構」には「ゴジラ」とフリガナが振られていたのでその意味でのみ捉えることが正解だとは思うが,「現実」を東日本大震災とし,「虚構」を『シン・ゴジラ』という映画の心意気と捉えることもできる.そうして称賛される声が映画を後押ししたことは事実だろう.
だが,この『この世界の片隅に』を見て,その捉え方は「逆」なんじゃないだろうか?と思った.実は「現実」のほうが「映画」であって「虚構」のほうが嘘みたいな出来事が起こる現実なんじゃないだろうか?もしかして無意識的にそう捉えてしまっているところがあるんじゃないだろうか?
911をニュースで見たとき311を肌で感じたときを思い出す.あのとき自分の目にしたものが現実だとは受け止められなかった.ただただ言葉を失うばかりで何を見ているのかわからなかった.それまで生きてきた常識では推し量ることができなかった.現実なのに虚構としか思えなかった.しばらくして現実であることが確定してもまだそう信じきれない.むしろ虚構だと思ってしまっていたほうが納得がいくんじゃないだろうか.虚無感と無力感でいっぱいになって,いつからかその感覚にフタをして,そうすることにも慣れてしまって,見て見ぬフリをしながら今この世界を生きてしまっている.
『この世界の片隅に』も従来の捉え方というか辞書的な意味でいえば「現実」にあたるのが戦争や原爆で「虚構」にあたるのがアニメーションや漫画といった文化だ.しかし,それも逆なのだと思う.アニメーションや漫画は現実の飛躍でしかないから「現実」なのだ.人智を超えた未曾有の事態が起こりうる可能性を秘めた現実こそが「虚構」なのだ.現実は時として虚構としか思えないものに姿を変えて牙をむく.その対抗手段とはすずの持つ「絵を描くこと」といった現実逃避という名の現実しか無いのだと思う.
「この世界の片隅にいるわたしを見つけてありがとう」とすずは云った.あれは夫に向けられた言葉だったがこの映画を見に来てくれた観客,この物語と出会った観客に向けても云っていることに間違いはない.いやいや,お礼を言うのはこちらのほうだ.すずのおかげでボクも同じ世界の片隅にいることが分かったし,そこにいても何ができるのか何を失わないべきなのかを教えてもらったような気がする.現実が虚構をどれだけ凌駕しようとも,物語の可能性を信じることだ.嘘みたいなことが起こるのが現実もきっと悪いことばかりではないはずだから.すずの云う「ありがとう」にはそんな意味が込められているように思った.あらためて,この映画をつくってくれた人たちみんなありがとう.もう1回見に行きます.おわり