本・書評
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津村記久子さん「水車小屋のネネ」 現実的な善意描き、本屋大賞2位
2024/4/28 13:00 1198文字毎日新聞で連載していた津村記久子さんの『水車小屋のネネ』(毎日新聞出版)が、全国の書店員の投票で決まる2024年本屋大賞(同賞実行委主催)で2位に選ばれた。津村さんは毎日新聞の取材に応じ、「2位になるとは思ってもいなかった。本屋大賞自体が縁のないものだと思っていたので、ノミネートされたのはいい思い
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点字毎日 図書室 サピエ情報/貸し出し点訳図書
2024/4/28 10:12 2022文字◇誰一人取り残さぬ社会 ◆すべて世のため、後(のち)のために 塙保己一とヘレン・ケラー【堺正一(しょういち)文、吉澤みか絵、墨字】 小学館と日本児童教育振興財団の助成を受けて作成した、桜雲会発行の絵本シリーズ第7弾。全盲と全ろう、言葉も話せないという三つの障害があった偉人、ヘレン・ケラーが心の支え
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「ひきこもり時給2000円」 元当事者がエッセー、悩む人にエール
2024/4/28 09:48 1408文字川崎市在住のNPO法人職員、岡本圭太さん(49)は20代でひきこもりとなった経験を持つ。現在は若者の就労支援に携わり、2023年12月にエッセー集「ひきこもり時給2000円」(彩流社)を刊行した。そのタイトルに込めた思いとは。【蓬田正志】 「僕自身、こんな目に遭うとは思っていなかった」。ひきこもっ
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絡み合う謎、理解されぬ純愛 7年ぶり長編刊行、佐藤正午さんに聞く
2024/4/28 07:30 2509文字「月の満ち欠け」で直木賞を受賞してから7年。佐藤正午さんの待望の新作長編「冬に子供が生まれる」(小学館)が刊行された。デビュー以来、故郷の長崎県佐世保市で執筆活動を続ける作家に会いに行った。 <今年の冬、彼女はおまえの子供を産む> 夏の雨の夜、自宅にいた30代後半の会社員、丸田優は、差出人不明のメ
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情熱の筆・山崎豊子生誕100年
山崎と戦後日本 敗戦引き受けた「善なる男」 社会学者・大澤真幸さん
2024/4/28 02:00 1928文字戦後日本で読者の圧倒的な支持を得た作家の山崎豊子(1924~2013年)。作品の累計発行部数は4000万部を超え、「白い巨塔」や「大地の子」など大ヒットした映像作品も多い。山崎作品はなぜ、これほどまで人々の心をひきつけるのか。<「山崎豊子」という社会現象>を自著で分析した社会学者の大澤真幸さん(6
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村上春樹をめぐるメモらんだむ
村上春樹さんの文学的井戸 「我々は『小説的に』繫がっている」
2024/4/27 07:30 4258文字3月上旬、村上春樹さんに約1年ぶりでインタビューする機会を得た。2月に出たエッセー集「デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしい世界」(文芸春秋)をきっかけにした取材だったが、同月に亡くなった指揮者の小澤征爾さんや、戦争が続く世界の現状に関する質問などにも答えてくれた。詳しい内容は毎日新聞ニュー
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山焼きの意義考えて 研究書「聞き書き秋吉台と生きる」出版 荒木陽子さん(55)=大津市 /山口
2024/4/27 05:22 835文字◇風化の危機、2年かけ取り組む 人と自然との共生 29人が語る 約11平方キロメートルに及ぶ草原が広がる秋吉台の住民から聞き取り調査をした研究書「聞き書き 秋吉台と生きる」を大津市在住の研究者、荒木陽子さん(55)が執筆し、3月に美祢市の外郭団体「Mine秋吉台ジオパーク推進協議会」から出版された
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「デジタルではない価値を」 あるあるネタで人気の山田全自動さん 博多区住吉に古書店オープン /福岡
2024/4/27 05:21 428文字「あるある」ネタで人気を集めるイラストレーター、山田全自動さん(41)=本名・山田孝之さん=の古書店「ふるほん住吉」が26日、福岡市博多区住吉の美野島通りにオープンした。漫画や雑誌など約1万5000冊のほか、カセットテープやレコードなど懐かしい品々がそろう。山田さんは「気軽に立ち寄ってほしい」と話
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イラストレーター・山田全自動さん(41)「デジタルでは再現できない」 「ふるほん住吉」福岡市に開店 /福岡
2024/4/27 05:21 449文字◇漫画や雑誌、カセット、レコード…懐かしい品々 「あるある」ネタで人気を集めるイラストレーター、山田全自動さん(41)=本名・山田孝之さん=の古書店「ふるほん住吉」が26日、福岡市博多区住吉の美野島通りにオープンした。漫画や雑誌など約1万5000冊のほか、カセットテープやレコードなど懐かしい品々が
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今週の本棚
『運び屋として生きる モロッコ・スペイン領セウタの国家管理下の「密輸」』=石灘早紀・著
2024/4/27 02:01 458文字(白水社・3080円) 女性が何枚も重ね着している。衣服の下には「密輸」品が隠されている。モロッコにあるスペイン領の飛び地セウタの国境の通路で、著者が目にした場面から本書は始まる。だが「運び屋」が扱うのは金塊や薬物といった大それたものではなく、ストッキングなどの日用品。なぜ利ざやの薄い品物を必死に
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今週の本棚・CoverDesign
鈴木成一・選 『kiitos.特別編集 わたしを好きになるメイクBOOK』
2024/4/27 02:01 129文字スタイリッシュな欧米女性モデル写真で飾る大判ファッション誌コーナー。その中心、孤高に鎮座している。メイクはすでに「表面」ではなく、精神性の発露なのだろう。 ◆ 『kiitos.特別編集 わたしを好きになるメイクBOOK』(三栄・1350円)より。
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今週の本棚
藻谷浩介・評 『テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想』=橘玲・著
2024/4/27 02:01 1324文字(文春新書・990円) ◇天才たちの壮大な箱庭づくり 橘玲(たちばなあきら)氏は、意見や価値判断を排して、事実や見通しを簡潔に示す著述家だと思う。 氏がかねて語る、「世界はリベラル化していく」との見通しは、評者(藻谷)が現実と向き合う際に、重ねて立ち返るポイントだ。この点からロシアや中国、イスラエ
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今週の本棚
渡辺保・評 『彰義隊、敗れて末のたいこもち 明治の名物幇間、松廼家露八の生涯』=目時美穂・著
2024/4/27 02:01 1339文字◆目時(めとき)美穂・著 (文学通信・2750円) ◇狂熱に捧げた人生、虚実検証の伝記 幕末から明治にかけて活躍した新吉原の名物太鼓持ち(幇間(ほうかん))松廼家露八(まつのやろはち)は、実に数奇な人生を歩んだ。 十五代将軍徳川慶喜の実家一橋家の家臣土肥半蔵の長男に生まれて本名土肥庄次郎。十九歳の
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今週の本棚
『検証 川中島の戦い』=村石正行・著
2024/4/27 02:01 487文字(吉川弘文館・1870円) 越後の竜=長尾景虎(上杉謙信)と甲斐の虎=武田晴信(信玄)が激突した合戦は、小説やドラマなどで繰り返し描かれてきた。あまたある戦国合戦の中でもとりわけ広く知られているだろう。だが、同時代の史料は少ない。著者によれば「川中島の戦いに関わる研究はある意味で飽和状態といえる」
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本はともだち
雲で描く「生と死」
2024/4/27 02:01 1301文字<くらしナビ ライフスタイル> 台湾の絵本「ママはおそらのくもみたい」(ポプラ社)を手がけた絵本作家2人が読者との交流イベントのため来日した。生と死という重いテーマを扱いながら、優しいタッチの絵と個性豊かなキャラクターの登場で軽やかな気持ちで読み進められる一冊だ。文を担当したハイゴー・ファントンさ
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今週の本棚
『裁判官 三淵嘉子の生涯』=伊多波碧・著
2024/4/27 02:00 514文字◆伊多波碧(いたば・みどり)著 (潮文庫・880円) NHK連続テレビ小説(朝ドラ)「虎に翼」の放送が今月始まった。物語はフィクションで、主人公の「猪爪(いのつめ)寅子(ともこ)」も架空の存在だが、モデルになった実在の人物がいる。日本初の女性弁護士の一人で、のちに日本初の女性裁判所長にもなった三淵
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今週の本棚・著者に聞く
秦郁彦さん 『日本近代史12の謎を解く 伝承と美談の狭間で』
2024/4/27 02:00 868文字◆秦郁彦(はたい・くひこ)さん 『日本近代史12の謎を解く 伝承と美談の狭間(はざま)で』 (PHP研究所・2640円) ◇細部から歴史の大局を知る 1次資料を駆使する実証史家の最新作。旺盛な好奇心で設定した謎を解いていく力量は相変わらずで、読者を歴史の迷宮へと誘う。 「右の人からは左。左からは右
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今週の本棚
斎藤環・評 『真実と修復 暴力被害者にとっての謝罪・補償・再発防止策』=ジュディス・L・ハーマン著…
2024/4/27 02:00 1363文字◆『真実と修復 暴力被害者にとっての謝罪・補償・再発防止策』=ジュディス・L・ハーマン著、阿部大樹・訳 (みすず書房・3740円) ◇トラウマ臨床の「政治」回帰がここに ハーマンの前著『心的外傷と回復』(みすず書房、邦訳1996年)は「フロイト以来最も重要な精神医学書」とも評されたトラウマ臨床の古
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今週の本棚・なつかしい一冊
増山実・選 『めもあある美術館』=大井三重子・著
2024/4/27 02:00 1029文字(『新版 水曜日のクルト』 偕成社文庫所収 770円) 大井三重子(仁木悦子)の「めもあある美術館」を小学六年の国語の教科書で読んだ時、なんて面白い物語なんだと思いました。私が小説を書くようになった根っこには、この物語があります。 主人公の少年は、ある日、姉さんと喧嘩(けんか)して髪を引っ張ったこ
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今週の本棚・話題の本
『ありえない仕事術』=ヒコロヒー
2024/4/27 02:00 855文字自分を救えるのも窮地に陥れるのも常に自分しかいないと気がついたのはいつ頃(ごろ)だっただろうか。敵や味方も好きなものも嫌いなものも、それらを作り出しているのは紛れもなく己の心や解釈であるからして、つまりは己自身こそが最たる敵となり味方となりうるのだと漠然と知っていったのは、いつ、そしてなぜだったの
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