1月
浅草東洋館1月初席
落語ファンをやっているからには1月初席は欠かせない。
浅草までひょいと電車に乗って向かう。
大好きな天どん師匠、ギリギリの人が出てきた危うさが魅力だと思うのだが、この日は客席の温まりが想定以下だったらしく、「どうしたんですか皆さん!何があったんですか!」と、珍しくうろたえる芸風を見せていてオオッっとなった。
末廣亭1月下席
鯉八師匠がトリ。
若手(だった)ユニット「成金」メンバーのなかでも異彩を放つ新作派、伯山ラジオでもよく名前が挙がり、一度見てみたかったので向かう。
演目「鯉八女学園」。
師匠の鯉八ワールドは「言語化できない独特の世界」と聞いていたが、マクラから本編へのつながりといい、繰り返されるモチーフのたたみかけといい、奇想天外の素晴らしいネタだった。
他にも成金メンバー柳雀の「疝気の虫」は仕草がダイナミックで良かったし、不名誉な「落語が不自由」と噂されてしまう小笑さんも、初めて聞いた普通にうまくて面白かった。
「成金」は何と力のあるユニットであることだろうか。
1月の寒い夜だったが、向かった価値が大いにある会だった。
鈴本演芸上1月余一会(一之輔独演会)
一之輔「長屋の花見」「蛙茶番」「花見の仇討ち」
安定の一之輔クオリティ。
色物で出てきたシルヴプレも大変良かった。
余談だが、落語を見に行き始めてから、初めて人に取ってもらったチケットで行った会だった。落語仲間が増えた喜びを感じる。
2月
神田伯山独演会(伯山プラス)
伯山プラスはチケットもプログラムもノボリも無いので、何一つとして記録物が残らないのが少し寂しい。
物販大好き伯山による、物販を買わせようという戦略なのかもしれない。
伯山「出世浄瑠璃」
琴調「幡随院長兵衛 芝居の喧嘩」
伯山「雨夜の裏田圃」
3月
浅草演芸ホール3月上席前半
伯山が中トリで出ていたのでシュッと向かって聞いてくる。
演目は「阿武松」
伯山得意の「本来40分かかる話をギュギュギュッと詰めて……15分で(笑)」のパターン。
このトリでは無いときの伯山もすごく僕は好きで、話のヤマが高密度で畳み掛けてくる高揚感がものすごく、伯山を初めて聞いた「扇の的」のときもそれでやられたのが今ならよくわかる。
以前から注目していた前座・空治さんが二つ目昇進ということで、めでたい会でもあったが、この期間、トリの圓輔師匠92歳が最後まで話を語りきれなかったという事象も起きたらしく、伯山がその件をラジオで熱く語っていた。涙なしでは聞けない神回だった。
僕が行ったのはその翌日。
ラジオを聞いて、あらためて寄席という劇場と同じ時代を過ごせていることが素晴らしいことだなと感じた。
上野鈴本演芸場 三月下席・林家つる子真打披露興行
この半年、これを楽しみに生きてきたと言っても過言では無い、林家つる子の昇進披露。春風亭一之輔以来12年ぶり、しかも女性初の抜擢真打という鳴物入りの興行だけのことはあり、前売りは続々と売り切れだった。
華もあるし芸もある、圧倒的な演技力と構成力で観客を自分の空間へ引き寄せる力がすごいので、未見の人は一日でも早くこの人の落語を見に行くべきだと思っている。
そしてこの日の顔付けは、寄席の興行としても素晴らしい日だった。
大好きな天どん師匠。この日はつる子を祝って出し物は「つる」。玉の輔師匠もつる子の寿ぎで、出し物は「つる改」
安定の一之輔、絶好調の馬風師匠、そして6代目小さん。
正直、小さん師匠は池袋で何度か見たけれど評価△な感じだったのだが、この日の「長屋の花見」はめちゃくちゃイケてた。披露興行で満員御礼だと気合いも違うのだろう!
同時昇進のわん丈。「喪服キャバクラ」
昨年、浅草の余一会で見たとき、こんな面白い若手がいるのかと目が覚めるほど驚いたが、この日も絶好調に面白かった。今回の興行はつる子をまず押さえたが、やはりわん丈も行かねばならんなと奮い立たされた。天どん師匠の口上も聞けるし。
トリ、つる子は「しじみ売り」。
志の輔師匠のCDでしか聞いたことがなかったが、つる子師匠の手にかかって、新星のような輝きを放つ作品に仕立て上げられていた。この人が真打になってこれからも寄席に出続けてくれると思うと胸が高鳴る。
落語を聞き始めて4年目になるが、今年もますます楽しめそうな1年になりそうだ。