5カ月ほど前に傷めた右肩の痛みがほぼ無くなった。
インクラインバーベルベンチプレスを行ったときに、傷めたものだった。
一時は、ベンチプレスやショルダープレス等のプレス系のトレーニング種目で常に、痛みを感じたり、違和感を覚えていたし、チンニングのような上から引くような動作は、痛みにより全くできないときもあった。
日常生活にも支障があった。
たとえ重いものでなくても、肩よりも上にあるものを取ろうとすると、痛みや違和感があった。
それらのことが今はほぼ無くなっている。
一昨日、家でどこでもマッチョ(なんとかならんかなこのネーミング…、ちなみにリンク先は、自分が持っているものよりも何段階か進んだもの)で、チンニングをしてみたら、全く痛みが無くて、驚いた。
重量を追うのをやめていたが、それがよかったんだと思う。
ここ1~2カ月、ビッグ3(バーベルベンチプレス、デッドリフト、スクワット)を行っていない。
特にバーベルベンチプレスは2カ月間、一度も行っていない。
北村克哉氏の動画を参考にして、トレーニングをしていた。
氏のセットの組み方は、中強度×ハイレップというもの。
中強度と言っても、フォームについては、かなりストリクトにして行うので、ビッグ3の1rep Maxからすると、極端に重量が落ちる。
氏はたしか、「一時は200kgを超えるバーベルベンチプレスを行っていたが、今では30~40kgのダンベルでのダンベルベンチプレスで十分」と言っていた。
自分も一時はバーベルベンチプレスで120kgに届こうとしていたが、今のやり方では20kg×3set×20repのダンベルベンチプレスを行うこともできない。
そのやり方は、以下の3点を意識ながら行うもの。
2点目までは氏の説明するやり方に、トレーニング前の「ストレッチ」について、自分の意見を加えたもの。
3点目は、全体が自分の付け加えたものだ。
①フォーム⇒ベタ足(つま先だけではなく、足全体を床にべったりとつけること)と尻つけ(寝ているベンチから尻を浮かさないこと)だけではなく、次のことを意識する。幅が広く、分厚くて長いリストストラップ(リストラップではない)を用いて、ダンベルの根元の部分に巻きつけ、ファットグリップのようにして持つ。トレーニングベルトを用いて、体幹部分を固定する。ダンベルは、手のひらの指側に近い部分よりも根元の方の広い部分で持つ。脇は開き過ぎず、手首は適度に寝かせ、前腕を少し回外させる。ダンベルを少し傾けて、ダンベルの根元の重りの部分を面で持つようにする。このとき、ダンベルが前腕に付いていてもよい。スタートポジションから最大限にストレッチするように下制し、親指の根元を前に押し出し、ひじの内側を近づけていくような軌道でダンベルを挙上する。手(ダンベル)の間隔が狭すぎると、大胸筋よりも上腕三頭筋に刺激が入りやすくなり、広すぎると肩を傷めやすくなるので、適切な間隔を探る。痛みがある場合には、痛くないフォームを探る。あごを引いて頭を少し持ち上げてもよい。肩を傷めていない場合には、脇を開き、手(ダンベル)の幅を広くして行うことによって、より強い刺激を大胸筋に入れることも可能。
②ストレッチ(伸張)&スクイーズ(収縮)⇒負荷が抜けない範囲で、筋肉を最大限可動させる。痛みがあるときには、フォームと重量の調整を行うと、多くの場合、緩和ないし解消される。また、トレーニング前のいわゆる「ストレッチ」も重要だ。よく「『動的ストレッチ』はウォームアップとケガの防止に有効だが、『静的ストレッチ』は出力(パフォーマンス)が下がり、ケガのリスクも増す」という記事がウェブ上で見受けられるが、私の体感としては、ケガのリスクを少しでも減らすためには、トレーニング前に「静的ストレッチ」→「動的ストレッチ」を行うことが有効だ。「静的ストレッチ」によって出力が下がることは感じられるが、ケガのリスクが増す要因は、出力が下がっている状態から、無理に出力を高めようとすることにあるのではないだろうか。つまり、「静的ストレッチ」そのものにケガのリスクが増す要因があるのではなく、挙上できない(またはしにくい)重量を無理に挙上しようとすることが、その他の筋肉や関節に適切でない負荷をかけることになるのではないかということ。体感としては、むしろ「静的ストレッチ」そのものには、ケガのリスクを減らす効果があると思える。痛みが少なくなり、それに伴って無理なフォームで行うことが少なくなるからだ。その仮説に則り、「静的ストレッチ」において、出力が下がることと、ケガのリスクを減らすことのどちらを選ぶかと言われれば、私は後者を優先する。骨盤職人、ストレッチポール、フォームローラー等の器具を用いることも有効だ。
③エキセントリック⇒動作中のネガティヴもポジティヴも時間をかけて、セット中はずっと対象筋に刺激が入るように行う。例えば、ダンベルベンチプレスであれば、大胸筋の中部(~下部)に負荷が常に乗るようにしながら、スタートポジションから3~5秒かけて下制し、2~3秒かけて挙上する。挙上も早すぎないことを心がける。ひじを伸ばし切らず、負荷が抜けなければ、ある程度のレストポーズは可。よく「下制するときにはエキセントリックを意識し、挙上するときは『爆発的に』挙上しろ」と言われるが、この意識の持ち方が有効なのはおそらく、1rep Maxを上げるための、言い換えれば、「強くなる」ためのトレーニングを行うときだろう。もちろん、1rep Maxの重量に近づけば近づくほど、「爆発的に」挙上しても、時間がかかるようになり、その結果として、エキセントリックを意識しながら行う場合と、パッと見は変わらないようになるということはあるだろう。(すなわち、意識としていくら「爆発的に」挙上しても、ゆっくりとしか挙上できないということ。)ただし、いくらパッと見は似ていても、「爆発的に」挙上するか、エキセントリックを意識しながら挙上するかによって、変わってくるものもある。大きなものは、姿勢の保持の意識だ。いずれにしても、ケガのリスクを少しでも低くするためには、挙上のときにもエキセントリックを意識し、早すぎないように行う方がよい。
以上のことをふまえたトレーニングメニューは、ケガのリスクを可能な限り排除しており、自分としても驚くほどにケガが改善した。
氏の動画でも、ケガのリスクの排除について述べられてはいるが、ここに私の意見を付け加えるならば、この方法は予防的にケガのリスクを減らすだけではなく、ケガの回復という面においても有効なのではないか。
何せ、ある部位を傷めたとき、または、痛むときに、それを改善するためには、痛くないようにして、できるだけ動かすことが重要だからだ。
より厳密に言えば、ストリクトなフォームで行っても、痛くないフォームを探っても、ケガをして間もなくは、痛みや違和感を完全に無くすことは難しい。
ただし、十分にコントロールできる重量を扱えば、セット中に痛くないフォームを探ることができる。
そして、それがケガの改善につながる。
また、体幹部分のトレーニングとしても有効だ。
例えば、ベンチプレスでは、姿勢の作り方、その保持の仕方について、次の3点が重要だと言われる。
①肩甲骨を下制し、②背中の真ん中に寄せて、③骨盤を前傾させることにより、ベンチ上にアーチを作る。
フォームをストリクトにして、エキセントリックを意識すると、この姿勢が崩れにくくなる、というか、この姿勢を保持するために必要な広背筋、腹直筋、前腕等にも意識が向くようになる。
しかも体感として近いのは、セット中、姿勢保持のための筋肉にダンベルの重量が逃げるというよりは、対象筋により効かせるための姿勢を保持しようとした結果、姿勢保持に必要な筋肉が鍛えられるという感覚であり、姿勢保持に必要な筋肉が鍛えられればまた、対象筋に意識をより集中することができるようになる。
だから、上で述べたように、ストリクトなフォームで、エキセントリックを意識しながらダンベルプレスを行うと、結果的に、広背筋、腹直筋、前腕等も鍛えられる。
実際にそれらの部分が、筋肉痛にもなる。
これは、例えば腹筋に関して、「スクワットやデッドリフトを行えば、自然に腹筋等の体幹部分の筋肉も鍛えられるのだから、とりたてて腹筋のみを鍛える必要はない」と言われていることと、似たような話だろう。
ただ、大きい腹筋、一つ一つの溝が大きく、陰影がくっきりと出るような腹筋を作るためには、やはり個別に腹筋を鍛えるような種目を取り入れた方がよい。
それに、スクワットとデッドリフトも、ストリクトなフォームで行うことができれば、体幹部分を健全に鍛えることはできるだろうが、そうでなければ、扱う重量が比較的大きいこともあり、体幹部分を鍛えられないどころか、ケガのリスクが大きく増すだろう。
実際に、自分はスクワットでもデッドリフトでも腰を傷めた。
さらに言えば、体幹を鍛えるということと、ケガのリスクを減らすということは、密接に繋がっている。
同じことの別の面と言ってもよいくらいだ。
しかし、ここで一つ注意しておきたいこととして、「体幹」と言ったときに、それが何を指しているのか、ということがある。
私がこれまで述べたことの中での「体幹」というのは、あくまでウェイトトレーニングにおいて、姿勢を保持するために必要な筋肉ということだ。
そして、それはウェイトトレーニングの中で鍛えることが望ましいと思う。
例えば、「体幹」を鍛える種目として、巷でよく挙げられるのが「プランク」だ。
確かにプランクは腹筋と背筋が鍛えられるものであり、いわゆる運動不足の人が、日常生活をより快適に過ごすために行った方がよいメニューとして、おおむねは正しいものと考えることはできる。
自重によるアイソメトリックのトレーニングであり、ケガのリスクもかなり少ない。
ウェイトトレーニングを始める前の、予備のトレーニングとして行うことも有効だろう。
ただ、一旦ベンチプレスを行えるようになってから、ベンチプレスのより良いフォーム作りのために、プランクを行うのは非効率的だ。
それよりは、十分に扱える重量で、フォームを意識してベンチプレスを行う方がずっと効率的だろう。
また、そのあたりのことを合理的に考えておかないと、どこにも効かせられていない種目を、「まぁ、どこかしらには効いているからいいだろう、少なくとも体幹には効いているからいいだろう、よく分からないが疲れるから何かにはなっているだろう」という考えにもなりかねない。
これは消耗する考え方だ。
新しいやり方を考えるなということではなく、無駄に終わるかもしれないことをするなということでもなく、無駄なこととそうでないことは分かっていた方がよいということ。
せっかくジムでトレーニングをするんだから、基本的なことを理解しながら、強くなることや、スタイルが良くなることの喜びをちゃんと味わった方がよい。
自分で理解する喜びというものもあるし、最短距離を進めというわけでもない。
自分が喜びを感じながら頑張って結果を出したいし、他の人も同様に頑張って結果を出して欲しいということ。
ただ、結果が何も要らないという人はいるかもしれないし、また、どこまでのことを満足の行く結果として捉えるかは人それぞれだということも、忘れないようにしよう。
さて、ケガのリスクを減らすために、ストリクトなフォームとエキセントリックを意識してのトレーニングについて述べてきたが、いくら重量を追わないとは言え、楽なトレーニングというわけでは決してない。
自分のことで言えば、トレーニング中は汗だくになるし、毎回、筋肉痛は生じる。
今の時期、かなり冷房の効いたジムで、自分だけ汗だくということもしょっちゅうだ。
そして憂鬱だ。
1rep Maxのような爽快感はなく、1setの時間も長い。
あの、「伸るか反るか」みたいな感覚がない、スリルが少ない。
そのような楽しみは少ない。
しかし、重量を追わないことによって、痛みはなくなった。
そして、体重はそれほど増えていないが、バルクは増している。
ボディメイクを行うということであれば、これが最良の方法なんじゃないだろうか。
あとは、強さだったり、ボディメイクだったり、その両方だったり、その人にとって何が楽しいのか、それぞれの人が何を目指すか、ということだと思う。
ただ、重量を追わないとは言え、それはあくまで「1rep Maxを上げることを主な目的にしない」というだけであって、ストリクトなフォームで扱える重量は増やしていく。
目標は、現状維持ではなく、より良いフィジークを実現させることだからだ。
しかし、また1rep Maxの更新にチャレンジしてみたい気持ちもある。
もちろん、その際にも、ケガのリスクをできるだけ少なくするということは重要だ。
とは言え、これまで述べてきたように、そもそもケガのリスクをできるだけ少なくして、ボディメイク、筋肥大をするということであれば、1rep Maxの更新にチャレンジすることは、必ずしも得策とは言えない。
でもやっぱりまた、あのスリリングな体験をしたい。
見上げるほどの高い壁を飛び越えられるか、目の前にあるぶ厚い壁を叩き壊せるか、そもそもそれにチャレンジする覚悟が自分にあるのか…、試されている、そんな感覚。
また、あの場所に立ってみたい。
1rep Maxの更新にチャレンジすることが、ボディメイク、筋肥大と絶対的に矛盾するというわけではない。
色んな刺激を与えることが有効だからだ。
大事なのはリスクをどう管理するかということ。
最大限ケガには気を付けて、これからもトレーニングを楽しみたい。