激汗ライフ

生活からこぼれた言葉、音楽にかきたてられた言葉、マイペースに書いていきます。

星野源の魅力

今回のテーマは、星野源。ニューアルバム『YELLOW DANCER』がチャート一位を記録し、初週10万枚超え。ドラマ『コウノドリ』に出演し、バラエティ番組でもよく見るようになった、まさに時の人だ。
取材したことは少ないけれど、SAKEROCKの『慰安旅行』以来、その表現を追い続けている。ミュージシャン、役者、文筆家……何をやっても光る、彼らしい存在感。ミュージシャンやシンガーがアーティストと呼ばれることも多い昨今だけれど、彼のような人こそ、アーティストど真ん中ではないだろうか。
そんな中でも、特に彼の表現で私が好きなのは著作物だ。彼のキャラクターが最もダイレクトに伝わってくるから。『そして生活は続く』、『働く男』、『蘇える変態』……どれも、生々しい生活や心境が綴られており、情けなさも痛みも疲労もあらわ。でも、全てにそこはかとないユーモアが混ぜ込まれているのだ。彼の音楽や芝居にも通じるけれど、こういう表現が出来る人は、本当に強い人だと思う。

結局、いかに笑って日々を過ごせるかが人生を決めるのだ。楽しいことばかりじゃないなんて、もうわかりきっているのだから、そんな中でも、笑えるポイントを見つけたもん勝ちというか。ただ、それには想像力や体力を酷使することもある。病気になったり、人生の大きな曲がり角を迎えた時は、特に。そんな時に彼の表現に触れると、大袈裟な言い方になってしまうけれど、生き方の指針を掴むことが出来るのだ。そういう意味で、彼は芸能人っぽくはないけれど(いや、世間的には完全に芸能人だけれど)、こんな時代の時の人となるに相応しいと思う。
なんか、著作物についての話じゃなく、星野源の魅力の話になってしまった。彼のナチュラルにしてリズム感がある文章、そして知識や記憶の引き出しを柔軟に開け閉めして、無駄に思われがちなものもきっちり拾い上げて、遥かなる想像力でアレンジしてしまうセンスが、大好きです。何気ない日々は、笑いとアイデアに溢れている。そう気付いてもらえるような文章を、私も書いていきたい。また、お会いしてみたいな。

『おかあさんといっしょ』の『今月の歌』が気になる

昨日のホルモンから一転して、今日のテーマはEテレ『おかあさんといっしょ』で流れている歌について。この振り幅! でも、ライターなスイッチを入れて歌を聴いていると、気になって仕方ないポイントが、いろいろあるのだ。

何より、「子供向けの歌を作るには、とんでもないスキルがいるのではないか?」ということ。

だって、歌詞の背景やコード進行の妙などといった、頭で考えるところではなく、ひたすら感性に訴えかけなければならないのだから。しかも、きまぐれでまっさらな感性に。

だからなのか、子供向けの歌には、意外なほど、癖のあるものが多い。

たとえば、『おかあさんといっしょ』の11月の『今月の歌』だった、『メダルあげます』。作詞作曲は、坂田おさむ。かつて歌のおにいさんを務めていた人だけあって、歌詞もメロディも王道だ。ざーっくり言うと、お日さまやお母さん、日々頑張ってるみんなにメダルをあげます!という。

ただ、全てが王道な中で、一つだけ違和感があるのだ。♪メダルう~う~う~、という感じに、サビでメロディーが波打つのである。急な展開に驚き、惹きつけられる。そしてまた、ほのぼのした歌へ戻るのだ。子供を退屈させないスパイスは、ひと匙ぐらいがちょうどいい、ということか。なーんか、料理にも通じません? 流石はおさむおにいさん、子供の心を掴んできたベテラン料理人だ。

また、10月に流れていたのは『ガチャゴチャガンボ!』。メキシコのスープ、ガンボを愉快な歌に仕上げている……って、なんじゃ、その大人も食べたことないようなマニアックなメニューのセレクトは! でも、「何よそれ?」というメニューと、気持ち良い語感に、子供は惹きつけられるのだ。どこから生まれてきた発想なんだろう、凄い!

我が家的には、9月の歌『おもちゃのブルース』が大問題だった。一歳の娘が、初めて歌を聴いて泣いたのだ。しかも、だんだん目に涙が溜まり、口がへの字になっていき、歌が終わる頃にうえーん、という、見たことがないさめざめとした泣き方。いや、ブルースといいながらも、可愛い歌なんだよ? おもちゃが歌い踊り、最後は片付けてね~、って躾に持っていくという。それが嫌だったのかな?とも思ったけれど、ツイッターで呟いたところ、コード進行ではないか?というリプライが。作曲は久住昌之。マンガ『孤独のグルメ』の原作者で有名な、多才な顔を持つ人だ。あの、後味が残る作風を、娘も感じているのかな? 理由が聞きたい、娘よ!

ちなみに、私のお気に入りは、今年1月の歌で、最近寒くなったからまた流れている『ゆきだるまのルー』。作詞はおーなり由子。私が小学生で、雑誌『りぼん』を読んでいた頃にマンガを描かれていた方の名に、30年後に再び出会うことになるとは。こういう、親にならないと気付けない意外な作家さんが『おかあさんといっしょ』をはじめとして、Eテレでは活躍しているのだ。引き続き注目していきたい。

 

マキシマム ザ ホルモン

ライターの高橋美穂です。

書く場所を作りたくて、今更ながら、ブログをはじめることにしました。

タイトルは、以前やっていた連載から持ってきました。相変わらずの汗臭い音楽から、1歳の子供と一緒に歌いまくっているEテレ・ミュージックについてまで、徒然なるままに書いていこうと思います。

 

挨拶はこのへんにして。初回のテーマは愛するマキシマム ザ ホルモンの映像作品『Deka Vs Deka』について。

これまでもホルモンは亮君の世代観を色濃く反映してきたけれど、今作は特に、40代以上や20代以下の人にはわかるの?と思ってしまうような、ピンポイントなネタがてんこ盛り。でも、チャートを席捲している状況からは、幅広い世代の心を掴んでいることがわかるし、これはもう、80年代の復讐と言ってもいいような気さえしてしまう。狭間の時代ならではの未完成なチープさ、面倒臭さ……でも、だから楽しいし愛しいんだぜ!っていう。また、単なる懐古主義ではなく、かといってスマートにアップデートするわけでもなく、あの頃を今に通用するエンタテインメントに昇華させているところも素晴らしいのだ。亮君と同い年の自分としては、懐かしさ以上に、誇らしさで泣けてくる。

そこも含めて、今作は一言で総括すると、全編を通して、「夢って叶う」ということを教えてくれるのだ。ホルモンにそぐわないキラキラワード? いやいやいや! スタートアップDISCの内容や、収録されている数々のとんでもない企画を見るに、今作は、あり得ないをありにするという夢を実現してきた記録そのものと言えるではないか。また、どんな細かい作業も、苦労なしでは成し得ないような荒行も、自分たちも周りも笑えるような落とし所に持っていく彼らの姿は、「生きていると面白いこといっぱいあるよー」と言ってくれているように見える。それはこの時代に、どんな具体的なメッセージより説得力をもって響くのだ。

……え、肝心のDVDの詳細がよくわからないって? だって今作は、前知識がなければないほど楽しめるんだもん! きっと、見れば私が書いたことに「そういうことねー」と思ってもらえるはず。

出会った10年以上前は、ここまで大きな存在になるとは予想していなかったけれど、彼らは芯を変えないままで、理想の表現に辿り着いた。暫く、今作以上の映像作品を生み出せるバンドは出てこないだろうな。だからナヲちゃん、ゆっくり妊活してください!