こんにちは、藤島知子です。
みなさまにご覧いただいている『スイフトスポーツ伝説blog』、
carviewに掲載されている『
新モダンSPORTハッチ伝説』
テレビ神奈川の『スイフトスポーツスペシャル』のロケなど、
ここ数ヶ月で新型スイフトスポーツのハンドルを握り、サーキット、高速道路、一般道とさまざまなシーンで試乗させていただきました。
こうした取材と試乗の機会を通じて私が実感したことは、スイフトスポーツは『自動車という工業製品を単なる商品として捉えていないクルマだ』ということでした。
もちろん、自動車メーカーがクルマづくりをするにあたり、アイディアを凝らし、目標とする製品に向かって真摯に取り組んでいく姿勢はどのメーカー、車種でも比べようがありません。しかし、みなさんもご存知のとおり、私たちの心に響く自動車を生み出すことは、それほど単純なものではありません。
なかでも、こうしたコンパクトカーのハッチバックモデルは、ベースモデルが幅広い層に受け入れられなければならないために、ユーザーの要求は多岐にわたります。ことさら日本においては、秀でたポイントが賞賛されることよりもネガティブな発言が大きく取り上げられることも多く、それらの意見を盛り込む際に個性が弱まり、曖昧な商品になり得るリスクが潜んでいるのです。少なくとも、『日本の自動車が面白くなくなった』と言われてきたここ十数年は、そうした負のスパイラルに苛(さいな)まれていたように思います。
しかし、実際はスタイリッシュで美しいデザインや走りが楽しいパーソナルカーよりも、居住性や実用性に重きを置いたクルマが販売台数を伸ばしたケースも少なくないワケで、皆を納得させるだけの強い力が働かないかぎりは、通を唸らせるクルマを造りあげることはなかなか厳しい。日本は世界で3本の指に数えられるほどの自動車エンスー国であるにもかかわらず、国内市場は手薄な状況に陥ってしまったのです。私の周辺を見渡しても、乗りたい国産車が見当たらないと語る人たちが輸入車に乗り換えたケースは少なくありません。
その点、スイフトスポーツは『現代の国産車でもこれほど高次元な走りを楽しませてくれるのか!』という気持ちを抱かせてくれたクルマ。
私は現行スイフト / スイフトスポーツのチーフエンジニアを務めた竹内氏に直接お話を伺ってみました。新型スイフトスポーツを作るにあたって、竹内氏がとてもシンプルな発想でクルマ作りに取り組まれたことに驚かされてしまいました。竹内氏はできあがった製品がいかに凄いものかと誇張するどころか、『クルマを操る上でドライバーが向き合いやすく、また同乗者も快適に。自分たちが納得できるクルマを追求していくために必要なことをやり遂げていった』と淡々と語り出したのです。
開発者インタビュー参照(http://www.suzuki.co.jp/swiftsport/index.html)
前回、ブログでご紹介したように、スイフトスポーツはスポーツモデルだから乗員に不快さを与える次元から脱却し、その走りはじつにしなやかなで扱いやすいものに仕上げられています。
中でも竹内氏が力を入れたと言うのが、安定性と応答性を高次元でバランスさせた高性能シャシー。フロントストラットのチューブ径は45φから50φに大径化し、足の動きのスムーズさを犠牲にせずに従来よりも車体の傾き(ロール角)を15%低減できるリバウンドスプリング内蔵式のショックアブソーバーを採用。さらには、フロントサスペンションのフレームメンバーをV字ブラケットで補強を施しているのだとか。操舵に対するレスポンスは上がったものの、リヤのスタビリティもアップさせなければならないということで、フロントに負けないようにリヤサスペンションはスイフトスポーツ用に専用設計。リヤタイヤの追従性を高めた仕様になっています。こうした努力によって、操舵に対するリヤの追従性は先代よりも20%上がっているとのこと。
また、先代と比べてホイールは17インチにサイズアップしながらもフローフォーミングリム成形の採用で強度の確保と軽量化を両立。前後に大径ブレーキキャリパーを採用しつつ、フロントのローターを10%厚く、リアのブレーキキャリパーのアルミ化など含め、バネ下重量を10kg程度低減してフットワークを軽快にしています。さらには路面側から入力があったときのリニアリティもアップして、ステアリングは正確性が向上。クルマの挙動が扱いやすいため、走ることに不慣れな運転初心者から走りにコダワリを持つベテランがハンドルを握っても、クルマの動きをコントロールしているという実感が持てます。
先に述べたとおり、メッセージ性のあるクルマづくりが難しい今日において、現代のスポーツモデルの在り方を表現してみせたスイフトスポーツ。一見すると2代目の雰囲気を踏襲し、大きな変化を感じづらい地味な変化に見える現行スイフトですが、目指したところはスイフトらしさの深化。高い次元で操縦安定性と快適性を両立できた背景には、『ユーザーを楽しませるクルマを作りたい』というエンジニアたちの思いが一つになってこそ、成し得たものなのでしょう。
ついつい長くなってしまいましたが、このクルマはあれこれ語ることよりも、一般道を流すだけで違いが分かるクルマです。国産ハッチバックの新たなベンチマークに君臨するスイフトスポーツ。みなさんご自身の目で、感性で、実感してみて欲しい一台です。
Posted at 2012/01/17 19:34:01 | |
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