小野不由美 東の海神 西の滄海 十二国記 3

雁国に新王が即位して20年。延王・尚隆と延麒・六太が誓約を交わしてから、先王の圧政で荒廃した国土は平穏を取り戻しつつあった。しかし道半ばには達していなかった。延王に異を唱える者たちが、延麒を誘拐し謀反を起こそうとしていた。国の安泰と玉座を賭けて、2人の理想が衝突する。

人々の生活に紛れ込んで声を聞き、玉座に帰れば政治を仕切る。20年前は、そんな王を格好いいと思っていた……。現場を取り仕切り決裁を待つ役人たちのストレスを見ていると、全く感情移入できなくなっていた。

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佐々涼子 エンド・オブ・ライフ

京都で在宅医療を取り組む医療従事者たちを取材し、患者の終末期と家族を寄り添うように見てきた著者。友人の看護師が末期がんになり、自身の最後へと向き合うときがきた。著者と難病の母、献身的に介護する父。終末医療の一角を記録する。

2020年本屋大賞ノンフィクション部門で大賞を受賞した、「命の閉じかた」を書いた教科書。患者たちを見る医療従事者と、幕を閉じていくことになる看護師、著者自身の家族の3つの要素を交えながら書く。まさに今、息絶えてもおかしくない女性が家族と潮干狩りに行くエピソードは、太陽の刺さるような痛さまで伝わってくるようだった。家族の愛が潮風と波の心地よさと混ざり合い、涙を止められなかった。

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黒木あるじ 怪談四十九夜 鎮魂

新しいアルバイト先に来たお客さんが。学校の先生の一言が。旅先で見たテレビ番組に映ったあれは……。気づいてしまうと、今までの日常には戻れないのかもしれない。現代実話怪談の作家たちによる49話。

祖父宅で食卓に出た「赤いゼリー」(真白圭)。工作で作った人形が動き出す「ダンボールマン」(神薫)。妻の実家で行われる正月の恒例行事「数珠繰り」(つくね乱蔵)。多くの凶作が収録されている中、最後に収録されている黒木あるじの複数話によって、全てを吹っ飛ばしながら読み終えることになる。

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