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1−4月
だいぶ間が空いてしまった。やってきたことを整理して書き留めておく。

1月
2月にJ-PARCでパルス電流+中性子小角散乱の実験があるので、それに向けて中性子用の試料に電流を流して抵抗値の変化を見る実験をひたすらやっていた。
(奇しくもこのパターンは去年の2、3月と同じ。去年は3月のANSTOでの同様の実験に向けて、2月にひたすら電気抵抗測定をしていた。)

年末に一度良い結果が出たのだけど、その後まったくそれが再現しない日々が続いて、電流パルスを打てども打てども期待した変化が観測されない苦しい日々が続いていた。(思えば去年も同じような理由で悩み続けていた。)
あるとき試料の位置がずれていて正しく磁場がかかっていないことが原因であると気づき、スティックの長さを再調整したところ、やっとそこそこもっともらしい結果が得られて中性子実験のめどが立った。こんな単純なミスで時間を無駄にしていたのかと自分に腹が立ったけど、とりあえず中性子実験が出来そうだという安堵感がそれに勝っていた。これが1月最終週だったと思う。


2月
1月に予備実験を続けていたJ-PARCのパルス電流実験は2月の中〜下旬。その前に2月前半はドイツFRM-IIでの小角散乱があった。今回は1年半前にやった実験の続編で、試料の質量を数倍にして、以前見えなかったシグナルを見に行こうというもの。こちらは狙い通りの成功実験だった。これは何よりたくさんの試料を合成して綺麗に並べた共同研究者さんの頑張りが全てと言って良いと思う。試料が良ければしっかりした結果が得られるという鉄則通りの実験だった。
実験前半に宿の近くのレストランでポーク・シュニッツェルを食べたのだけど、共同研究者の人と「最後までうまく行ったらビーフのシュニッツェルを食べましょう!」と約束して、見事ビーフを食べるに至った。

また、前回は磁場の制御が完全に手動だったので長いスキャンが組めなかったのだけど、今回はその点が改善していて温度も磁場も含めてマクロを組むことができた。最低限これだけ出来るようになると、次からもこの装置を使いたいと思えるようになるな。(しかしこれがJ-PARCの装置だとまだ出来なかったりする。うむむ。)


2月の後半は1月から準備してきたJ-PARCでの実験。
実験は装置の立ち上げも含めて1週間程度だったのだけど、出発前日あたりから体調がおかしかった。とにかく咳がひどくなり、やがて発熱。実験してるのもキツい状況になったのだけど、今回の実験は自分が倒れるとおしまいなのでなんとかやりくりするしかない。とりあえず、キューピーコーワゴールドと風邪薬の合わせ飲みで乗り切ることを決意した。途中、風邪薬が尽きてしまったので装置担当者のOさんに買い足しをお願いして、苦しみながらも最後まで実験を進めることができた。
自分の体調がぼろぼろなのとは裏腹に、実験自体は極めて順調。予備実験で条件出しをほぼ終えていただけあって、無駄無くデータをとることが出来た。


3月
J-PARCから帰ってきてからすぐに医者に行ったところ、まず疑われたのはインフルエンザで、その検査も受けた。しかし結果は陰性。とりあえず回りにインフルエンザウィルスをまき散らした訳ではないとで安心して、まずは自分の体力回復に努める。
しかしその後すぐにANSTO論文のRevisionの締切がやってきて、週末出かけた先からなんとか共同研究者に改訂原稿を配信し、改定期限前日に共著者からのコメントを集約してresubmit。

その後、3月はイベント尽くしだった。
長年職場で向かいの席だった同僚のMさんの送別会、その後、量子ビームサイエンスフェスタに日帰りで参加、そして大阪の物理学会へ。学会では古巣の発表を聞いて昔自分が取り組んでいたテーマを懐かしく思い出すなど。


4月上旬
4月の第一週からJ-PARCで反射率実験に参加させてもらった。中性子を長年やってきたけど、反射率は初めての実験だった。実験としては装置の性能を検証するのが第一の目的で、物理的な発見は無かったのだけどそれでも面白かった。来期はこれにプロポーザルを出してみようかなと思い、少しずつアイディアを練ってみることにした。うちの研究所ならではのテーマで、新しいコラボが生み出せるような機会になると良いな。来期の締切は6月上旬なので、それまでにじっくりfeasibility checkをして行きたい。




# by nt-neutron | 2017-04-18 23:28 | 研究日誌
BSCoFAO論文online, Skype質疑
先日PRBにacceptされたBSCoFAO論文がonlineになった。

ORNL滞在はまだまだ続く。これからは実験の後半戦。とりあえず実験の途中経過をsample growerの方々に送ったところ新しい測定のアイディアの元となるようなデータをもらったので、それを見ながら実験プランの再考中。
ここからは分光器2台の並列実験になるので、なんとか時間をやりくりしながら進めたい。

しかしJRR-3で実験してた頃は3装置並列実験とかもやってたからなぁ。あの頃は学生さんがそれなりにたくさんいたから、自分1人でやった訳じゃないけど。


あと、某学会の賞を頂くことになったのだけど、現在ORNL滞在中で受賞講演ができませんと言ったところ、講演は録画で、質疑応答はスカイプでやることになった。今からそのスカイプ質疑の時間なのだけど、さて、どうなることか(^^;
# by nt-neutron | 2016-12-02 15:13
ORNL
4度目のORNLに来ている。

今回は初めてORNL guest houseをやめて、West Gate Lodgingに泊まってみた。

結果、すごく快適。guest houseの3倍くらいの広い部屋で、広いキッチンも付いて、値段はむしろ安い。
近さはどうしてもかなわないけど、落ち着くのは断然west gateの方(一泊税込みで53ドルくらい)。
今度からはこちらにしよう。

West Gate lodgingはその名の通りロッヂであってホテルではない。
なので、朝食は自分で用意する必要があるのだけど、そのためにwalmartに行ったところ、なんか店員が沢山いて客を整列させるための?ロープまで店内に張られていて物々しい雰囲気。なぜかおもちゃも大量に積んである。
こちらの研究者の方に聞いたところ、今日から感謝祭休暇で、特に今晩は日本で言うところの新年発売りのようなセールをやるものらしい。
言われてみれば、店員さん達も頭に飾りを付けたりなんか盛り上がっていた。


実験の方は昨日からスタート。試料はまたしてもhexaferrite。
今回は装置3台を使った実験で、先ずはWANDからスタート。
新しく装置担当者になったMatthias氏が手際よくセッティングしてくれたおかげで速攻で実験が軌道に乗った。彼は装置のことも非常に良く理解しているし、色々装置のアップグレードにも関わっている。しかもやたら親切で、電話くれればいつでも駆けつけるよと言ってくれている。
こうゆうひとが担当者だと、またこの装置を使いたくなるな。

ちょうどタイミングよく,去年のORNL実験の結果が今月に入ってPRBにacceptされ、editors' suggestionにもなったので、それを伝えたところJaimeも喜んでいた。
一応これで、これまで3回のORNL実験は全て論文になった。さて、今回はどうなるか。。試料のクオリティからしてもやや難しいかもしれないけど、なんとか有意義なデータを取って帰れるようにしたい。



さて、実験の合間をぬって、来週末の遠隔発表スライド等準備せねば。

# by nt-neutron | 2016-11-25 10:15 | 研究日誌
KT+Haldane
ノーベル物理学賞にKT転移とHaldane gap。

領域3の人間としては素直に嬉しい。
磁性を研究している者として、その分野の大学生〜大学院生向けくらいの教科書に書いてある内容でどーんとノーベル賞が出るというのはやはりモチベーションが上がるし、誇りに思う。
本棚から「物理学論文選集 Haldane gap - スピン系におけるマクロな量子現象(勝又・田崎)」を引っ張りだして読み返したりしている。理論のパートはなかなか全てフォローできないけど、実験も計算機も協力して予想を裏付けて行くあたりは非常に面白い。

ただ、これほど一般的に説明するのが難しいのもなかなか無いんじゃないだろうか。
今年から某科学館のボランティアに関わっていて、スタッフさんやボランティアの人が過去のノーベル賞の内容を噛み砕いて説明しようと頑張っているのを目にしてきたのだけど、今回のKT+Haldaneは過去最高の難易度なんじゃないだろうか。

だいたい科学館に関わろうと思う人、科学館に来る人は、動植物学、宇宙・地球科学といったところに興味を持つのが殆どなんじゃないかと思う。そこにきて固体中のスピン系のquasi-LROが、、有限のGapが、、と言ってもなかなかピンと来ないのがむしろ当然のように思う。
(そもそもこの手の内容は博物館の展示の内容になりにくい。。)

ただその難しいところを上手く伝えるのがスタッフさん達の腕の見せ所でもあるので、ぜひ期待したい。僕もちょっとメールで解説を送ったりして、ちょっとでもサポートできればと思ってるとこ。果たしてどうなるか。。


# by nt-neutron | 2016-10-10 23:10
9月中旬
物理学会@金沢大が終了。

自分の発表は可もなく不可もなく。
物理としての内容は自分でも面白いと思うのだけど、10分に詰め込むとどうしてもぎこちなくなってしまう。
物理学会の講演で、スライド中に色々アクションもつけながら流暢にしゃべりきっている人を見ると本当に尊敬する。どうやって練習してるんだろ、あれ。

聞く側で面白かったのは何と言ってもイジング型コンピュータのシンポジウム。今まで漫然と聞いていた「量子コンピューター」という単語がすごくよく分かるようになった気がする。
ハードとして量子性を使っていこうという方向性と、最適化問題に、統計力学、量子統計力学のモデルを使って行こうという方向性(両者はある意味同じ方向を目指しているのだけど)があることがよく分かった。
基礎から応用、さらには商業的なところまで同じセッションで語られるといのはなかなかない。そして何より取り組んでいる人たちの熱気を感じた。分野外だったけど行ってみて大正解のシンポだった。


学会から帰ってきてからは久々のバルク測定。
自作のスティックを久々に取り出して、試料をマウントして、さあ測定を開始しようかと思ったらヒーター線がショートしていた。
マンガニン線を50Ω分切って、ねじってねじってヒーター作成。その場でスティックに取り付けて、クライオスタットにマウント。とりあえず明日からこれで測定。


この7月、8月を乗り切った精神的な疲れが出てるなぁ。持ち直すにはちょっと時間が必要。
しばらくは低空飛行で乗り切ろう。


# by nt-neutron | 2016-09-18 23:57 | 研究日誌


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某私大で助教を4年間勤めたあと、現在はR研でポスドク。専門は磁性・中性子散乱。
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