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決まり始めたケンタッキーダービー出走メンバー 日本馬に立ちはだかる強敵とは?

  • 2024年04月17日(水) 12時00分

フォーエバーヤングは現在3番手評価


 4月13日にキーンランド競馬場で行われたG3レキシントンS(d8.5F)をもって、フルゲート20頭の出走枠を争うポイントが設定された競走で構成される「ロード・トゥ・ケンタッキーダービー」が終了した。すなわち、5月4日にチャーチルダウンズで行われる第150回ケンタッキーダービーの出走メンバーが、ほぼ固まったわけだ。

 G3レキシントンSを制したのは、B.コックス厩舎のエンシノ(牡3、父ナイキスト)で、同馬はここでダービーポイント20点を獲得。前走LRジョンバタグリアメモリアル(AW8.5F)を勝って得ていた20点と合わせて、獲得ダービーポイントが40となった同馬は、この段階で、優先順位21番目でダービー出走枠に入っていなかった。ところが翌14日、G3サムエフデービスS(d8.5F)1着、G3タンパベイダービー(d8.5F)2着で45ポイントを持っていたノーモアタイム(牡3、父ノットディスタイム)が、拠点としていたフロリダ州のパームメドウズトレーニングセンターでの調教後に、左前脚管骨骨折を発症したことが判明。戦線を離脱することになり、繰り上がってエンシノが出走枠に入ることになった。ただし陣営は、レース後の馬の状態を見極めたいとして、ダービー出走を明言はしていない。

 さらに、現段階で出走枠に入っている馬の中で、前走G3ジェフルビーS(AW9F)1着のエンドレスリー(牡3、父オスカーパフォーマンス)と、前走G2ウッドメモリアルS(d9F)8着のデターミニスティック(牡3、父リアムズマップ)の陣営が、回避を仄めかしており、圏外から前走G1フロリダダービー(d9F)3着のグランドモーザファースト(牡3、父アンクルモー)、前走G2ルイジアナダービー(d9.5F)5着のコモンディフェンス(牡3、父カラコンティ)が繰り上がる可能性がある。

 この原稿を書いている4月16日の段階で、ブックメーカーが売る前売りで1番人気の座を争っているのが、T.プレッチャー厩舎のフィアースネス(牡3、父シティオブライト)と、C.ブラウン厩舎のシエラレオネ(牡3、父ガンランナー)の2頭だ。

 昨年秋にサンタアニタのG1BCジュヴェナイル(d8.5F)を制し、エクリプス賞最優秀2歳牡馬の座に輝いたのがフィアースネスだ。今季2戦目となった3月30日のG1フロリダダービー(d9F)を、レース史上最大着差の13.1/2馬身差で圧勝。2歳チャンプ健在を示している。

 これだけの実績を踏まえれば、抜けた1番人気になってもおかしくはなさそうだが、そうはなっていないのは、この馬が「強さ」と裏腹でもつ「脆さ」を、ファンが危惧しているからだ。BCジュヴェナイルでの同馬は、オッズ17.5倍の6番人気という伏兵だった。というのも、その前走のG1シャンパンS(d8F)で同馬は、勝ち馬から20馬身以上離された7着に敗れていたのである。さらに同馬は、今季初戦となったG3ホーリーブルS(d8.5F)でも、オッズ1.2倍という圧倒的1番人気を裏切り、3着に敗れている。すなわち、強い競馬と脆い競馬を1戦ごとに繰り返しているのがフィアースネスなのだ。

 さらに、フロリダダービーは確かに強い競馬だったが、最初の2Fが24秒06、半マイル通過が47秒50と、逃げたこの馬にとってはお誂え向きの展開になったことも確かだった。激流になることが多いケンタッキーダービーで、果たして自分の競馬が出来るかどうか、懐疑的な見方をするファンも少なくないのである。

一方、ここまで4戦3勝、2着1回と、堅実な成績を残しているのがシエラレオネだ。今年に入ってから、2月17日にフェアグラウンズ競馬場で行われたG2リズンスターS(d9F)、4月6日にキーンランド競馬場で行われたG1ブルーグラスS(d9F)を連勝。母ヘヴンリーラヴがG1アルシバイアディーズS(d8.5F)勝ち馬という良血馬で、ファシグティプトン・サラトガ1歳セールにてセッション最高値となる230万ドル(当時のレートで約3億1255万円)で購買されたエリートが、期待にたがわぬ出世を見せているわけだ。

 ただし、この馬にも不安材料があって、それは脚質だ。近走における道中の位置取りは、G2リズンスターSが12頭立ての9番手、G1ブルーグラスSが10頭立ての9番手で、そこから猛然と追い込んで勝利を収めている。すなわち、確かな末脚の持ち主なのだが、20頭立てのケンタッキーダービーで馬群をさばき切れるかどうかが、懸念材料となっているのである。

 この2頭に続く3番手評価となっているのが、矢作芳人厩舎のフォーエバーヤング(牡3、父リアルスティール)だ。前述したシエラレオネとは従兄弟同士(祖母がいずれもダーリングマイダーリング)になる同馬。日本の競馬ファンには先刻御承知のことだろうが、3月30日にメイダンで行われたG2UAEダービー(d1900m)を制し、デビューから無敗の5連勝を飾っての参戦となっている。直前走がUAEダービーだったという馬は、これまでケンタッキーダービーに19頭出走し、最高着順は5着という、この馬にとっては負のジンクスがあるが、米国の競馬メディア「ブラッドホース」は、「長年のジンクスを覆す馬が現れるとしたら、それはこの馬であろう」と論調している。

 日本調教馬が有力馬の1頭としてケンタッキーダービーに出走する日が来ようとは、たった10年前ですら、夢にも思わなかったことだ。13日に決戦の地チャーチルダウンズに到着したフォーエバーヤングが、万全の状態でゲートインできることを、切に祈っている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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