2024年04月16日
【イベント告知】新刊『シニアになって、ひとり旅』発売記念
下川裕治(共著)の新刊『シニアになって、ひとり旅』発売を記念して、トークイベントを開催いたします。
詳細は以下です。ぜひ、ご参加ください!
新刊『シニアになって、ひとり旅』(朝日文庫)の発売を記念して、旅行作家の下川裕治さんをお招きして、一人で巡るシニア旅の楽しみ方についてスライドを眺めながらたっぷりと語っていただきます。
前作『旅する桃源郷』では、ラオスのルアンパバーン、パキスタンのフンザ、ウズベキスタンのサマルカンド、チベットのラサなど、それらの地がなぜ桃源郷なのかを自身の人生を重ねながら綴っていた下川さん。
新刊は、花巻のデパート大食堂に行ったり、小湊鉄道のキハ車両に乗って子供のころの記憶を辿ったり、苫小牧発仙台行きフェリーや東京の路線バスの旅に出たり、尾崎放哉の足跡を追って小豆島のお遍路を訪れるなど、シニアならではの国内旅を紹介した紀行エッセイになっています。
70歳間近になった今も精力的に旅を続ける下川さんだけに、シニアならではの旅の楽しみ方についての貴重なお話が聞けるはずです。下川ファンの方はもちろん、ひとり旅に興味のある方や国内の旅が好きな方はぜひご参加ください!
ご予約はお早めにお願いします。
※トーク終了後、ご希望の方には著作へのサインも行います。
下川裕治 (著)
シニアになって、ひとり旅
朝日文庫刊
-------
●下川裕治(しもかわゆうじ)
1954年長野県松本市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。新聞社勤務を経てフリーに。アジアを中心に海外を歩き、『12万円で世界を歩く』(朝日新聞社)でデビュー。以降、おもにアジア、沖縄をフィールドに、バックパッカースタイルでの旅を書き続けている。
『「生き場」を探す日本人』『シニアひとり旅バックパッカーのすすめ アジア編』(ともに平凡社新書)、『ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅』(中経の文庫)、『日本の外からコロナを語る』(メディアパル)など著書多数。
◆下川裕治さんブログ「たそがれ色のオデッセイ」
http://odyssey.namjai.cc/
-------
【開催日時】
4月25日(木)
19:30 ~ (開場19:00)
【参加費】
1000円(会場参加)
※当日、会場にてお支払い下さい
1000円(オンライン配信)
※下記のサイトからお支払い下さい
https://twitcasting.tv/nomad_books/shopcart/249241
【会場】
旅の本屋のまど店内
【申込み方法】
お電話、e-mail、または直接ご来店の上、お申し込みください。
TEL&FAX:03-5310-2627
e-mail :info@nomad-books.co.jp
(お名前、お電話番号、参加人数を明記してください)
※定員になり次第締め切らせていただきます。
【お問い合わせ先】
旅の本屋のまど
TEL:03-5310-2627
(定休日:水曜日)
東京都杉並区西荻北3-12-10 司ビル1F
http://www.nomad-books.co.jp
主催:旅の本屋のまど
協力:朝日新聞出版
詳細は以下です。ぜひ、ご参加ください!
◆下川裕治さん トークイベント◆
「シニアになって、ひとり旅」(朝日文庫)
------------------------------------「シニアになって、ひとり旅」(朝日文庫)
新刊『シニアになって、ひとり旅』(朝日文庫)の発売を記念して、旅行作家の下川裕治さんをお招きして、一人で巡るシニア旅の楽しみ方についてスライドを眺めながらたっぷりと語っていただきます。
前作『旅する桃源郷』では、ラオスのルアンパバーン、パキスタンのフンザ、ウズベキスタンのサマルカンド、チベットのラサなど、それらの地がなぜ桃源郷なのかを自身の人生を重ねながら綴っていた下川さん。
新刊は、花巻のデパート大食堂に行ったり、小湊鉄道のキハ車両に乗って子供のころの記憶を辿ったり、苫小牧発仙台行きフェリーや東京の路線バスの旅に出たり、尾崎放哉の足跡を追って小豆島のお遍路を訪れるなど、シニアならではの国内旅を紹介した紀行エッセイになっています。
70歳間近になった今も精力的に旅を続ける下川さんだけに、シニアならではの旅の楽しみ方についての貴重なお話が聞けるはずです。下川ファンの方はもちろん、ひとり旅に興味のある方や国内の旅が好きな方はぜひご参加ください!
ご予約はお早めにお願いします。
※トーク終了後、ご希望の方には著作へのサインも行います。
下川裕治 (著)
シニアになって、ひとり旅
朝日文庫刊
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●下川裕治(しもかわゆうじ)
1954年長野県松本市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。新聞社勤務を経てフリーに。アジアを中心に海外を歩き、『12万円で世界を歩く』(朝日新聞社)でデビュー。以降、おもにアジア、沖縄をフィールドに、バックパッカースタイルでの旅を書き続けている。
『「生き場」を探す日本人』『シニアひとり旅バックパッカーのすすめ アジア編』(ともに平凡社新書)、『ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅』(中経の文庫)、『日本の外からコロナを語る』(メディアパル)など著書多数。
◆下川裕治さんブログ「たそがれ色のオデッセイ」
http://odyssey.namjai.cc/
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【開催日時】
4月25日(木)
19:30 ~ (開場19:00)
【参加費】
1000円(会場参加)
※当日、会場にてお支払い下さい
1000円(オンライン配信)
※下記のサイトからお支払い下さい
https://twitcasting.tv/nomad_books/shopcart/249241
【会場】
旅の本屋のまど店内
【申込み方法】
お電話、e-mail、または直接ご来店の上、お申し込みください。
TEL&FAX:03-5310-2627
e-mail :info@nomad-books.co.jp
(お名前、お電話番号、参加人数を明記してください)
※定員になり次第締め切らせていただきます。
【お問い合わせ先】
旅の本屋のまど
TEL:03-5310-2627
(定休日:水曜日)
東京都杉並区西荻北3-12-10 司ビル1F
http://www.nomad-books.co.jp
主催:旅の本屋のまど
協力:朝日新聞出版
Posted by 下川裕治 at
09:49
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2024年04月16日
髪の毛はあるだけでいい
久々に理髪店に行った。このブログでも伝えたが、昨年の1月あたりから一気に頭髪が抜けはじめた。2ヵ月ほどで、髪の毛の7~8割はなくなってしまった。皮膚科のクリニックでは対応ができず、大学病院へ。円形脱毛症の全頭版と診断された。
病理は自己免疫疾患説が有力だ。ある種の白血球であるTリンパ球が毛根を異物と誤認し、攻撃してしまうことで起きる……。頭皮を軽くかぶれさせるという治療を受けた。それを治すために白血球が集まってくる。かぶれが治ると白血球は去っていくが、その際、Tリンパ球を道連れにするというカラクリを、医師は図を書きながら説明してくれた。
その方法に効果があったのかはよくわからない。昨年の秋ぐらいには、なんとなく髪の毛が生えてきたような感覚があった。昨年暮れには、頭髪が戻ってきたことを実感した。
しかし理髪店に行くほどの髪の毛の長さではなかった。髪の毛はその後ものびたが、やがてなんとも不揃いな髪型になった。髪の長さは均一なのだ。髪の毛が更地から芽を出した雑草のように一斉に生えてきたわけだから当然だった。男性は、ときどき理髪店に出向いてそろえてもらう。つまり髪の毛の長さに長短があって、一応、髪型になる。その髪型がない状態だったのだ。
そろそろ行くか……。1年5ヵ月ぶりの理髪店だった。
髪の毛がなくなっていくつかの発見があった。炎天の日射しがきつく、パラッときた雨に敏感になった。そして電車でよく席を譲られるようになった。髪の毛がないと、やはり老けて見えるものらしい。髪の存在が与える印象というものがあるようだ。
僕は隔週で、「旅の本屋のまど」からライブを配信している。ときどき新刊のトークイベントも行っている。4月25日には、新刊の「シニアになって、ひとり旅」のトークイベントもある。
http://www.nomad-books.co.jp/
ライブをよく観る人やイベントに参加してくれた方は、髪がなくなると変わる印象に気づいていたのかもしれない。
しかし……。
3月の下旬、沖縄にいた。鹿児島からフェリーに乗って那覇に行く取材だった。那覇では栄町市場にある「おとん」という店のカウンターに座っていることが多い。しばらく沖縄に行く機会がなかった。1年半ぶり? ということは僕の髪がほとんどなくなったことを知らない。僕はようやく髪が生えてきた話を伝えた。そして、
「なんだか髪が不揃いで、そろそろ理髪店に行こうかと思ってるんだけど」
と伝えると、こういわれた。
「前と変わらないじゃない?」
これでも一応、髪型を気にしていた身には肩の力が抜けるような言葉が返ってきた。
そういうことなのか。
髪がなくなると、一気に老けた印象を与える。しかし髪が生えてくると、その髪型を周りの人は気にしない……。つまり髪の毛は、あればそれでいいということなのか。髪型は自己満足にすぎなくなる。理髪店の存在が全否定されてしまうではないか。いや、これは髪型をあまり気にしない僕だけの話なのだろうか。髪の毛はあるだけでいい……。僕は少し悩んでいる。
■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg
面白そうだったらチャンネル登録を。
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
病理は自己免疫疾患説が有力だ。ある種の白血球であるTリンパ球が毛根を異物と誤認し、攻撃してしまうことで起きる……。頭皮を軽くかぶれさせるという治療を受けた。それを治すために白血球が集まってくる。かぶれが治ると白血球は去っていくが、その際、Tリンパ球を道連れにするというカラクリを、医師は図を書きながら説明してくれた。
その方法に効果があったのかはよくわからない。昨年の秋ぐらいには、なんとなく髪の毛が生えてきたような感覚があった。昨年暮れには、頭髪が戻ってきたことを実感した。
しかし理髪店に行くほどの髪の毛の長さではなかった。髪の毛はその後ものびたが、やがてなんとも不揃いな髪型になった。髪の長さは均一なのだ。髪の毛が更地から芽を出した雑草のように一斉に生えてきたわけだから当然だった。男性は、ときどき理髪店に出向いてそろえてもらう。つまり髪の毛の長さに長短があって、一応、髪型になる。その髪型がない状態だったのだ。
そろそろ行くか……。1年5ヵ月ぶりの理髪店だった。
髪の毛がなくなっていくつかの発見があった。炎天の日射しがきつく、パラッときた雨に敏感になった。そして電車でよく席を譲られるようになった。髪の毛がないと、やはり老けて見えるものらしい。髪の存在が与える印象というものがあるようだ。
僕は隔週で、「旅の本屋のまど」からライブを配信している。ときどき新刊のトークイベントも行っている。4月25日には、新刊の「シニアになって、ひとり旅」のトークイベントもある。
http://www.nomad-books.co.jp/
ライブをよく観る人やイベントに参加してくれた方は、髪がなくなると変わる印象に気づいていたのかもしれない。
しかし……。
3月の下旬、沖縄にいた。鹿児島からフェリーに乗って那覇に行く取材だった。那覇では栄町市場にある「おとん」という店のカウンターに座っていることが多い。しばらく沖縄に行く機会がなかった。1年半ぶり? ということは僕の髪がほとんどなくなったことを知らない。僕はようやく髪が生えてきた話を伝えた。そして、
「なんだか髪が不揃いで、そろそろ理髪店に行こうかと思ってるんだけど」
と伝えると、こういわれた。
「前と変わらないじゃない?」
これでも一応、髪型を気にしていた身には肩の力が抜けるような言葉が返ってきた。
そういうことなのか。
髪がなくなると、一気に老けた印象を与える。しかし髪が生えてくると、その髪型を周りの人は気にしない……。つまり髪の毛は、あればそれでいいということなのか。髪型は自己満足にすぎなくなる。理髪店の存在が全否定されてしまうではないか。いや、これは髪型をあまり気にしない僕だけの話なのだろうか。髪の毛はあるだけでいい……。僕は少し悩んでいる。
■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg
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09:38
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2024年04月08日
【新刊プレゼント】シニアになって、ひとり旅
下川裕治の新刊発売に伴う、プレゼントのお知らせです。
下川裕治 (著)
シニアになって、ひとり旅
朝日文庫刊
◎ 本書の内容
シニアならではの旅がある。デパート大食堂やキハ車両といった子供のころの記憶をたどる旅、70歳間近という年齢なりのフェリーやバスの旅、コロナ禍での高尾山通いなど、これまでの軌跡を振り返りながら国内ひとり旅を味わう。
目次
第一章 デパート大食堂が花巻にあった
第二章 キハの申し子世代、小湊鐵道
第三章 暗渠道を歩く
第四章 苫小牧発仙台行きフェリー
第五章 高尾山登山に没頭した先に駅ビール
第六章 七十歳が待ちきれない路線バス旅
第七章 尾崎放哉。小豆島ひとり旅
新刊本『シニアになって、ひとり旅』 を、
抽選で"3名さま"にプレゼントします!
応募は以下の内容をご記入の上、下記のお問合せフォームよりご連絡ください。応募受付期間は2024年4月22日まで。当選発表は発送をもってかえさせていただきます。
お問合せフォーム
http://www.namjai.cc/inquiry.php
今すぐほしい!という方は、下記アマゾンから購入可能です。
アマゾン:
シニアになって、ひとり旅
【新刊】
シニアになって、ひとり旅
シニアになって、ひとり旅
下川裕治 (著)
シニアになって、ひとり旅
朝日文庫刊
◎ 本書の内容
シニアならではの旅がある。デパート大食堂やキハ車両といった子供のころの記憶をたどる旅、70歳間近という年齢なりのフェリーやバスの旅、コロナ禍での高尾山通いなど、これまでの軌跡を振り返りながら国内ひとり旅を味わう。
目次
第一章 デパート大食堂が花巻にあった
第二章 キハの申し子世代、小湊鐵道
第三章 暗渠道を歩く
第四章 苫小牧発仙台行きフェリー
第五章 高尾山登山に没頭した先に駅ビール
第六章 七十歳が待ちきれない路線バス旅
第七章 尾崎放哉。小豆島ひとり旅
【プレゼント】
新刊本『シニアになって、ひとり旅』 を、
抽選で"3名さま"にプレゼントします!
特に応募条件はございません。
タイ在住+日本在住の方も対象ですので、どうぞ奮ってご応募ください。
タイ在住+日本在住の方も対象ですので、どうぞ奮ってご応募ください。
応募は以下の内容をご記入の上、下記のお問合せフォームよりご連絡ください。応募受付期間は2024年4月22日まで。当選発表は発送をもってかえさせていただきます。
お問合せフォーム
http://www.namjai.cc/inquiry.php
1.お問合せ用件「その他」を選んでください。
2.「お問い合わせ内容」の部分に以下をご記載ください。
・お名前
・Eメールアドレス
・郵送先住所
・お電話番号
・ご希望の書名
(念のため記載ください)
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・お名前
・Eメールアドレス
・郵送先住所
・お電話番号
・ご希望の書名
(念のため記載ください)
今すぐほしい!という方は、下記アマゾンから購入可能です。
アマゾン:
シニアになって、ひとり旅
Posted by 下川裕治 at
16:20
│Comments(0)
2024年04月08日
満開の桜が心に刺さる
東京の桜が咲いた。4月4日が満開ということだが、桜は木によって開花時期が若干違う。我が家の2軒隣の教会の桜は、いまが満開である。
今日、家族と一緒に花見に出かけた。新宿御苑の桜を見てきた。入場は予約制という制限がかかっていたが、園内はかなりの人がやってきていた。天気もよかった。
ぼんやり春の空の下の桜を眺めながら1年前を思い出していた。3月初旬、マスクをつけることが個人の判断にゆだねられるようになった。そして花見の名所の上野公園などでの飲食を伴う飲酒が許可された。
4年ぶりの花見……。ニュースサイトにはそんな記事が躍っていた。
コロナ禍がようやく終わったわけだ。そして5月には、新型コロナウイルスは5類になり、正式にコロナ禍は終わった。
新宿御苑で弁当を広げる人たちの顔は、春の日を浴びて穏やかだ。1年前、まだそんな状態だったことがすっかり消えている。まるで台風一過ならぬ、コロナ一過だったかのように。
人間は鈍感な生き物だと思う。いや、鈍感を装うことで、ウイルスに怯え、行動が制限される時代を忘れようとしている。そういう装置が心の裡に働いている気がする。
しかし歴史や科学はそういかない。再び新しいウイルスに襲われたら、どう対処していくか……。その検証をしなくてはならない。
しかし人々は、あの時代を忘れたいかのように日常のなかに埋まろうとする。満開の桜にカメラを向け、桜をバックに写真に収まっていく。
4月5日に『シニアになって、ひとり旅』(朝日文庫)が発売になった。
https://qr.paps.jp/qT7y9
さっそく読んでくれた知人から、こんなメールが届く。
「高尾山に登る章はぐっときました。新型コロナウイルスが席巻していたときの、あの閉塞感、たしかにそうだったと」
コロナの嵐が吹き荒れていたとき、僕は毎週のように高尾山に登っていた。海外に出ることが難しくなっていた。旅の本も出版されない……。そのなかで、僕は山に登るという行為に没頭した。県をまたぐ行動にも制限がかかり、ぎりぎりの東京都内の山だった。そのなかで、高尾山は僕のなかで名山になっていったという話だ。
記憶から消したい過去をほじくり返すつもりはない。僕のひとり旅を描こうとすると、避けて通ることができない話だったのだ。
物書きというのは因果な職業だと思う。コロナ禍が過ぎ、戻った日常を書こうとしたとき、あの息が詰まるような時間にどうしても触れざるをえないのだ。
満開の新宿御苑の桜を、なにごともなかったかのように眺めることができない。その美しさが心に刺さってしまう。浮かない顔で桜を見あげる姿は「陰キャ」にしか映らない。みごとな桜に、心は動いているのだが。
■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg
面白そうだったらチャンネル登録を。
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
今日、家族と一緒に花見に出かけた。新宿御苑の桜を見てきた。入場は予約制という制限がかかっていたが、園内はかなりの人がやってきていた。天気もよかった。
ぼんやり春の空の下の桜を眺めながら1年前を思い出していた。3月初旬、マスクをつけることが個人の判断にゆだねられるようになった。そして花見の名所の上野公園などでの飲食を伴う飲酒が許可された。
4年ぶりの花見……。ニュースサイトにはそんな記事が躍っていた。
コロナ禍がようやく終わったわけだ。そして5月には、新型コロナウイルスは5類になり、正式にコロナ禍は終わった。
新宿御苑で弁当を広げる人たちの顔は、春の日を浴びて穏やかだ。1年前、まだそんな状態だったことがすっかり消えている。まるで台風一過ならぬ、コロナ一過だったかのように。
人間は鈍感な生き物だと思う。いや、鈍感を装うことで、ウイルスに怯え、行動が制限される時代を忘れようとしている。そういう装置が心の裡に働いている気がする。
しかし歴史や科学はそういかない。再び新しいウイルスに襲われたら、どう対処していくか……。その検証をしなくてはならない。
しかし人々は、あの時代を忘れたいかのように日常のなかに埋まろうとする。満開の桜にカメラを向け、桜をバックに写真に収まっていく。
4月5日に『シニアになって、ひとり旅』(朝日文庫)が発売になった。
https://qr.paps.jp/qT7y9
さっそく読んでくれた知人から、こんなメールが届く。
「高尾山に登る章はぐっときました。新型コロナウイルスが席巻していたときの、あの閉塞感、たしかにそうだったと」
コロナの嵐が吹き荒れていたとき、僕は毎週のように高尾山に登っていた。海外に出ることが難しくなっていた。旅の本も出版されない……。そのなかで、僕は山に登るという行為に没頭した。県をまたぐ行動にも制限がかかり、ぎりぎりの東京都内の山だった。そのなかで、高尾山は僕のなかで名山になっていったという話だ。
記憶から消したい過去をほじくり返すつもりはない。僕のひとり旅を描こうとすると、避けて通ることができない話だったのだ。
物書きというのは因果な職業だと思う。コロナ禍が過ぎ、戻った日常を書こうとしたとき、あの息が詰まるような時間にどうしても触れざるをえないのだ。
満開の新宿御苑の桜を、なにごともなかったかのように眺めることができない。その美しさが心に刺さってしまう。浮かない顔で桜を見あげる姿は「陰キャ」にしか映らない。みごとな桜に、心は動いているのだが。
■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg
面白そうだったらチャンネル登録を。
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
Posted by 下川裕治 at
16:11
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2024年04月01日
林住期旅の初心者
4月5日に発売になる『シニアになって、ひとり旅』の見本誌が届いた。
https://qr.paps.jp/qT7y9
格別にうれしい。これまで100冊を超える本を書いてきたが、今回はその意味が違う。
新型コロナウイルスの嵐が去り、はじめての書きおろした一冊である。コロナ禍だからといって、本が発行されなかったわけではない。分野によってはよく売れた本もあるという。しかし旅の本は違った。旅は不要不急とされ、封印されていった。その環境下では、旅の本を発刊できるわけがなかった。
新型コロナウイルスの収束時期に明確なものはない。知人のひとりは今年の1月に感染し、2週間近く入院していた。日本では5類に移行した昨年の3月を区切りとする向きが多い。しかし一度途切れた旅が復活してくるのには時間がかかる。僕の旅もそこからリスタートし、ようやく1冊の本にまとまった。
恐る恐ると復活していった旅である。ザックのなかにはまだマスクが入っていた。歩いたエリアも海外ではなく、日本である。
2019年の末に中国の重慶から広まりはじめた感染は3年半ほどで収束し、そこから約1年。4年以上も、書きおろしの本を発刊することができなかったのだ。
その間に僕の旅も変わった。コロナ禍前はカメラマンが同行することが多かったが、それが難しくなった。経費の調達ができなくなってしまったのだ。書籍の売りあげが低迷するなかでのコロナ禍だった。それまではネットに旅の記事を書き、その原稿料を経費にあてていたのだが、コロナ禍の間に、旅関係のサイトは次々になくなっていった。ひとりで旅に出るしかなくなってしまったのだ。本のタイトルは、『シニアになって、ひとり旅』だが、「コロナ禍を経て、ひとり旅」と訳せなくもない。
昨年の夏、千葉の小湊鐵道のキハに乗ることから旅ははじまった。キハというのは、僕が子供の頃、まるで国民列車のように全国を走っていたJR(当時は国鉄)のディーゼル気動車である。そこから北海道に渡った。苫小牧発仙台行きフェリーに乗った。吉田拓郎の『落陽』という歌で描かれたフェリーだ。そして東北の花巻。市内に残ったデパート大食堂へ……。
旅の最後は小豆島だった。「咳をしても一人」という句で知られる尾崎放哉が息を引きとった島だった。小豆島を訪ねたときは、寒風に晒され、宿では暖房が必要な時期になっていた。
当然だが、すべてひとり旅だった。
この本の「はじめに」に書かせてもらったが、僕の旅をヒンドゥー教に重ね合わせている。ヒンドゥーの教えでは、人生を四つのステージに分けている。勉学に励む学生期、家庭生活を営む家住期、仕事や家族と離れ、林のなかで自分に向き合う林住期、そして放浪を置き死を迎える遊行期である。僕の旅は林住期に入ったとも思っている。旅をしながら自分と向き合うほど大げさなものではないのだが。
はたしていつまで旅をつづけることができるのかもわからない不安のなかで、旅をリスタートさせた。林住期の初心者の旅……。
書ききれたかどうか……。不安のなかの発刊でもある。
■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg
面白そうだったらチャンネル登録を。
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
https://qr.paps.jp/qT7y9
格別にうれしい。これまで100冊を超える本を書いてきたが、今回はその意味が違う。
新型コロナウイルスの嵐が去り、はじめての書きおろした一冊である。コロナ禍だからといって、本が発行されなかったわけではない。分野によってはよく売れた本もあるという。しかし旅の本は違った。旅は不要不急とされ、封印されていった。その環境下では、旅の本を発刊できるわけがなかった。
新型コロナウイルスの収束時期に明確なものはない。知人のひとりは今年の1月に感染し、2週間近く入院していた。日本では5類に移行した昨年の3月を区切りとする向きが多い。しかし一度途切れた旅が復活してくるのには時間がかかる。僕の旅もそこからリスタートし、ようやく1冊の本にまとまった。
恐る恐ると復活していった旅である。ザックのなかにはまだマスクが入っていた。歩いたエリアも海外ではなく、日本である。
2019年の末に中国の重慶から広まりはじめた感染は3年半ほどで収束し、そこから約1年。4年以上も、書きおろしの本を発刊することができなかったのだ。
その間に僕の旅も変わった。コロナ禍前はカメラマンが同行することが多かったが、それが難しくなった。経費の調達ができなくなってしまったのだ。書籍の売りあげが低迷するなかでのコロナ禍だった。それまではネットに旅の記事を書き、その原稿料を経費にあてていたのだが、コロナ禍の間に、旅関係のサイトは次々になくなっていった。ひとりで旅に出るしかなくなってしまったのだ。本のタイトルは、『シニアになって、ひとり旅』だが、「コロナ禍を経て、ひとり旅」と訳せなくもない。
昨年の夏、千葉の小湊鐵道のキハに乗ることから旅ははじまった。キハというのは、僕が子供の頃、まるで国民列車のように全国を走っていたJR(当時は国鉄)のディーゼル気動車である。そこから北海道に渡った。苫小牧発仙台行きフェリーに乗った。吉田拓郎の『落陽』という歌で描かれたフェリーだ。そして東北の花巻。市内に残ったデパート大食堂へ……。
旅の最後は小豆島だった。「咳をしても一人」という句で知られる尾崎放哉が息を引きとった島だった。小豆島を訪ねたときは、寒風に晒され、宿では暖房が必要な時期になっていた。
当然だが、すべてひとり旅だった。
この本の「はじめに」に書かせてもらったが、僕の旅をヒンドゥー教に重ね合わせている。ヒンドゥーの教えでは、人生を四つのステージに分けている。勉学に励む学生期、家庭生活を営む家住期、仕事や家族と離れ、林のなかで自分に向き合う林住期、そして放浪を置き死を迎える遊行期である。僕の旅は林住期に入ったとも思っている。旅をしながら自分と向き合うほど大げさなものではないのだが。
はたしていつまで旅をつづけることができるのかもわからない不安のなかで、旅をリスタートさせた。林住期の初心者の旅……。
書ききれたかどうか……。不安のなかの発刊でもある。
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Posted by 下川裕治 at
11:29
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