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世田谷での高線量の放射線検出に関しては、原因が空き家になっている家屋の床下にあった、がん治療などに使われるラジウム226と推定されるビンが原因で、やはり福島原発とは関係がないことが判明しました。住民の方も一安心されたのではないでしょうか。

原因は、「やはり」なのです。たまたま小倉さんの朝の報道番組で現場にいた専門家のかたが、周辺は極めて放射線量が低く、つまり自然なレベルにもかかわらず、その場所だけが高線量が検出されてことは不自然であり、原因を調査しなければなんともいえないと疑ったように、必ずしも福島原発事故とは関係があるとは思えないと感じた人も多かったはずです。しかし、その件に関しての武田教授の昨日のブログは、この方がいかに科学的でないかを示したものでした。

つまり、世田谷で高い線量の放射線が検出されたときに、普通に考えるのなら、そういったなんらかの放射性物質がそこにあるか、福島第一原発事故の影響なのかの2つのケースがすぐさま頭に浮かんでくるはずです。しかも状況からは、前者の可能性のほうが高く、まずは住宅を調査したというのは正解です。


ご記憶の方もいらっしゃるかもしれませんが、つい最近、中学生が規制値を超す放射性物質トリチウムが入った「光るペンダント」をネットオークションで販売して逮捕された事件がありました。キーホルダーに入っていたトリチウムの放射線量は最大で法定規制値(1ギガベクレル)の約12倍だったといいます。武田教授が目を回しそうな数値ですが、中学生はシンガポールの通販で購入したものでした。

それ以外でも医療などで検査やがん治療に使われる放射線医薬品も管理されているとはいえ、人によっては入手できます。放射線を出すものは、福島の原発事故で発生し、拡散した放射性物質だけではないということです。花崗岩の巨大な岩などは放射線をだしていますが、むしろパワースポットとして人気があります。ラヂウム温泉も放射線を出しています。京都のある温泉ではさすがにホームページは微妙に表現が変わっていましたが、看板に「放射線たっぷりで健康によい」と謳っているのを見て思わず失笑してしまいました。

しかし、武田教授はさまざまな可能性があるにもかかわらず、最初から、疑うこともなく、それは福島原発事故でばら撒かれた「毒物」が降りそそいだものと決めつけてしまいました。思い込みの怖さです。
世田谷の高線量率と福島の新米(緊急) - 武田邦彦 (中部大学) - BLOGOS(ブロゴス) :

世田谷で1時間あたり2.7ミリシーベルトが観測されましたが、道路の脇の藪の傍で、当然、死の灰の性質からいって予想されることです。毒物が飛散した場合、「どこに毒物があるか」というスタンスで毒物の多いところを探して、そこを警戒するのに、「できるだけ事故を小さく見せたい」ということで公園の真ん中など意味のないところを測定していたのです。

だれでもわかるように「毒物が飛散した」というと道路の真ん中や公園の広場を調べるのではなく、丹念に「どこに行ったか?」を調べるのですが、今までは「なさそうなところ」を測るというとんでもないことをやっていたのです。

世田谷のケースは、「毒物がどこに飛散したのか」を調べるよりも、普通の人なら、まずは、そこだけでなぜ高濃度の放射線が検出されたかを調査します。

また、そこにもうひとつ理にかなわない主張があります。道路の真ん中や公園の広場をまっさきに調べるのは、住人や子供たちが通行したり、遊んだりすることが多いからであって、迅速な対応を求めるのなら当然の優先順位です。しかも、そこしか測定していなければ、世田谷の住居の塀から高濃度の放射線は検出されなかったはずです。

武田教授の発言で一貫しているのは、わざとなのか、権威主義なのか、もともとの被曝とガンの発生率のデータから、危険性、あるいは安全性を語るのではなく、専門家や官僚が決めた基準値を上回る被曝をすると、かならずガンになって死ぬという説です。

科学的根拠ではなく、法律でそう決められたからなのです。

広島や長崎の被爆者から長年追跡調査を行い積み重ねたデータは、国際放射線防護委員会(ICRP)が基準値をつくる根拠となっています。その基準をもとに日本の国内の基準値も設定されています。そのデータをグラフにしたものを池田信夫教授が掲載されていましたが再掲しておきます。当然ながら、放射線学会の方からいただいた資料と同じものでした。
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池田信夫 blog : 微量放射線は健康にいい? - ライブドアブログ :

10ミリシーベルト以下の微量放射線被曝では死亡率がむしろ低くなっているのですが、統計的な誤差を加味すると絶対安全とは断定できるかどうかは微妙なところです。しかし、念のために厳しい基準値を採用する立場を取ったということは、テレビの取材を受けた国際放射線防護委員会(ICRP)の委員が説明していました。

基準といえば、どうしてもそれが良心のなせるわざなのか、あるいは責任逃れ、アリバイづくりなのかはわかりませんが、ことさら厳しく設定してしまうことがあります。ユッケや牛肉の生肉に関して、厚生労働省がだしてきた基準は、もうビジネスとしてはありえない調理を求めるものでした。おそらく完璧を求める基準を設けたのでしょう。

厳しすぎると思える基準が設定されているのですが、武田教授流にいうなら、もし基準を守っていない生肉には、毒の菌がついているのでかならず食中毒になって死ぬと毎日書き続けるのと同じです。なぜなら違法だからです。

法律や基準をつくるための根拠を示し貢献するのが科学者であり、また法律が間違っていれば、それに異を唱えるのが科学者です。法律で決まっているという根拠しか提示できない人は科学者とはいえないし、また思い込みが激しい人は、そこから逃れられず、普通の人ならおかしいと思うことにも気づかないのです。

もし武田教授がいう「違法学者」が悪いのなら、違法な地動説を唱えたガリレオは歴史に残る犯罪的「違法学者」だったのかもしれません。


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