3月11日月曜日。
朝8時の新幹線にて青森へ。同行の友人と席がばらけるとのことで緊張していたが乗車してすぐに眠りこけ、あっという間に仙台を通過していた。青森駅についてすぐ、一度経験してみたかった、牡蠣を殻からズルン、を一個する。事前に地図を眺めるなどの予習をしなかったのだが、まず予想外だったのは町と海の近さ。陸奥湾の静けさを岸辺の公園から眺める。青函連絡船八甲田丸が停泊展示されていて、横に「津軽海峡・冬景色」の歌碑が建っている。同行の牛さんと「うえのはつのやこうれっしゃおりたときから」と歌い始め、いったい何万人がこの歌碑の前でこの歌詞を口ずさんだろう、と思う。うっかりしていて14時46分は多分ホテルのエレベーターの中にいた。 主な目的地だった古書らせん堂さんでは、その品揃えの文芸色濃厚な面白さと、古書と新刊の絶妙な同居の様子に驚いた。敷地内で別居しているのではなく(そういう部分もありつつ)、同じ列に混じって並んでいる新刊書と古書。20数年前、将来の書店像を思い描いていたころ、古本と新刊書が同じ棚に並んでいる書店をぼんやり思い浮かべていたことがあった。後の業務を通じて新刊書の扱いに難しさを感じ、古書のシンプルさに埋没して、混成の想像は床下に放置したまま朽ちていった。しかしらせん堂さんにはその一つの活きたモデルがあった。古書の量のほうが新刊よりもかなり多いが、棚の細部を追っていくと、過去と現在の時空の長い定規によって視界を横に広げられるような気持ちになった。寄り目と離し目のちょうどいいバランス。タイトルだけをなぜかときどき無為に唱えるのに読んだことがなくて気になっていた井上光晴『胸の木槌にしたがえ』、新刊の文庫『寺山修司全歌集』を購入。 夜、らせん堂さんと鳴門煉煉さんと小宴。ご飯の上にすきな海鮮具材を大いに載せる「のっけ丼」の話題から、天井近くまで棚の背丈を延長して本を大いに載せているらせん堂さんが、「うちはのっけ本」と仰っていて可笑しい。宴の終盤に皿に残っている最後の一つの食べ物を「遠慮のかたまり」と言い表したりするが、別の言い方に「津軽衆」というのがあると教わった。お二人ともまったく津軽衆で、食い意地だらけの我々はなんだか恥ずかしかった。 3月12日火曜日。 古書らせん堂さんでお土産の日本酒をいただき散歩。3月で老朽化のため閉館予定の棟方志功記念館。銭湯トド湯近くのスーパーマーケット、ユニバース青柳店では数の子と枝豆のコンビネーションおつまみが売っていて衝動買い食い。「莨(たばこ)町」という町。正三角形のビル、アスパム。居酒屋ゆうぎりさんなどで遊ぶ。 日付けが変わるころに帰宅。YouTubeで青森の歴史を付け焼き刃の復習。青函連絡船操業当時を知る青森駅の駅員さんが、まさに歌の通りに「北へ帰る人の群れはだれも無口」だった、とお話なさっていた。陸奥湾の景色の印象が濃い。 3月13日水曜日。 休み。なんとなくドラマ「タイガー&ドラゴン」連続ドラマ放送前のスペシャル版を観る。とても面白い。 夕方店に立ち寄ると、多めなお持ち込み買い取りがあったようで店員TTがばたばたとダンボール箱と格闘していた。少し手伝って仕分け、急いで査定、お客様へ連絡。 来週始めにエアコンの交換工事があり、ついに抱えている設備故障の一つが一旦終わる、という感慨を持っているのだが、トイレに入ったら天井に設置されている換気扇が轟音で「俺も壊れたぞー、おい壊れたぞー」と鳴っていた。 3月14日木曜日。 今後真似して利用させてもらおうと思っていた文言を思い出せず、M1グランプリ2023のヤーレンズさんの最終決戦の漫才を観直す。お客様にお釣りを渡す時、「こちら過払金です〜」と言うこと。 開店して諸事。この数日間にあったお持ち込み買い取りの小山をミックスして仕分け、値段つけ、配架。 午後早めにお客様から許諾の連絡をいただく予定だったが電話は鳴らず、昨日お預かりした大山の買い取りが成立し次第切り崩そうと計画していたが延期。 深夜、知人から水前寺清子の歌「ありがとう」を教わり、なんていい歌だろうとちょっと泣く。 3月15日金曜日。 青森、古書らせん堂さんで買った新刊『新居格随筆集 散歩者の言葉』(荻原魚雷編 虹霓社)を読み始める。著者名の読みは「にいいたる」。無政府主義、と言っても、硬い政治運動としてのそれではなく、個人的生活態度上の無政府主義のようで、浅薄ながらディオゲネスや山之口貘を思い浮かべる。書中最初の随筆「自由人の言葉」が約100年前の昭和2年(岩波文庫創刊、『ソクラテスの弁明・クリトン』など)に刊行された本から採られているのに、その読みやすさ、古さの無さに驚く。すぐにファンになった。 開店して諸事。 お持ち込みの大山から、ツブシの台車1.5台分、他2箱を確認と仕分け。 夜、『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』を観る。らせん堂さんが東京に勤めていらした時、寅さんを観に少し遅れて池袋・文芸坐に入ったのと同時にスクリーンで青函連絡船の汽笛が鳴った、というエピソードをお聞きしていて、そのシーンや映画の中の青函連絡船、陸奥湾を観たかった。とても面白かった。船越英二は船越英一郎のお父さん、と後で教わった。 3月16日土曜日。 開店して諸事。 週明けのエアコン工事のために少しでも足場を広くしておきたくて、裏に溜まった市場商品を縛って準備、車に乗せて出品へ行く。普段なら経営員さんにお会いしてカーゴに載せたまま束数の多いやっかいな商品の設置をお願いしたりするのだがなぜか経営員さんがいらっしゃらず、久しぶりに自分で1点ずつ、場所が見つかった分だけ設置。めずらしく空いている気がした。 市場の行き帰りの道中、東京音楽大学の横に、卒業式だったのだろう羽織袴姿のかたがたがたくさんいらっしゃりとても華やいでいた。新型ウイルスをもっぱら警戒していた期間にそういう光景をまったく目にしなかったので、その空気のざわざわした扇動でなんだかふわっと嬉しくなった。 3月17日日曜日。 開店して諸事。番台上中山に値段つけ、配架など。 夕方から、明日のエアコン工事に備えて店内の片付け。既存エアコン周辺の棚の天板に載っているセットものなどを全部降ろし、室外機のある機械室内の約30個のダンボール箱を店内に移動して積み上げ、配電盤前のごちゃごちゃした備品を移動、エアコンに近い場所に吊るされているペンダントライトのガラス製シェードを全て外して保管。 作業の途中、2年前だったか、店員ノムとスヌーピーを通じてお話しするようになったお客様が、そのころから目指していた芸術系の大学院に合格した、とご報告に来てくださった。「合格は往来座さんのおかげ」などと猛烈なおべっかを言ってくださるなど、とても嬉しい。彼はぼくがウィッグをつけて店番をしていた時にそれを爆笑してくださったかたでもあった。拍手とともに手近にあったスヌーピーグッズをお贈りする。やや遠方に移住なさるとのことで、湾から船を見送るように、行ってらっしゃいと手を振った。 店からの帰路、毎年恒例の、勝手に雑司が谷名物認定、個人宅お庭の大白木蓮を眺めた。 #
by ouraiza
| 2024-03-13 18:16
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3月4日月曜日。 午後遅めから最近の手作業不足を補うべく無約束営業はせず店内籠城作戦。 ・W=Water(地下のどこかで水道管から漏水して毎月2万円ほど通常より水道料金が高く、さらに毎月増加している問題)。 ・A=Airconditioner(店内に2台あるエアコンがスイッチすら入らない故障状態にある問題)。 ・S=Shatter(店の外壁に設置されているシャッター4枚のうち1枚が完全に動かず、他もいつ動かなくなってもおかしくない問題)。 細かく見れば他に・T=Tent(テントの布地が経年劣化ですぐにでも裂けそうな問題)・C=Car(愛車八号がそろそろ車検を通過できなそうな問題)などが挙げられはするが、ひとまず喫緊の3つを「WAS問題」と総称することで気分を軽くして前向きに取り組もうとしており、「A」に関する懸念だった連絡事項を息を詰まらせながら終わらせる。多分通常の経営者さんが30分で終わらせる作業をぼくは10日ほどかけている、と情けなく不思議。 ハヤカワ文庫『Uボート』上下巻のうちの下巻だけを探していらっしゃったご近所の80代男性に、普段はしないがご事情によってはお手伝いする通販取り寄せによって到着した下巻をご購入いただいた。あまりにも面白く上巻を読み終わりなんとしてでも下巻に続きたかったが新刊では在庫無し、インターネットも縁遠い、というご高齢のかたで、いかに『Uボート』という小説と映画が魅力的で素晴らしいかをお聞きした。ドイツの戦争もののほうが日本のものより断然面白いとのことだった。本に埋没する時間を過ごしている人がいる、という抜き差しならない現実をお客様からはっきり教わることがある。 海外文芸系中山の値段つけに集中。 閉店後、ご近所のSさんと店員ノムと、普段は率先して食べない変わり種ラーメンを冒険して食べる会「アド麺チャー」を実施。池袋西口、ホタテ出汁ラーメンのNOODLE VOICEさんへ。なるほど、と思った。 3月5日火曜日。 休み。有意義な休みにしようと念じてはいても家窟の沼から抜け出すための火種が湿っていて立てず、午後遅くやっと自分に立てと命じて食器洗いなどをする。雨が降り始めたが発起して夕方市場に出品へ。AヒロさんやA処さんにからかわれて楽しい。帰宅してまた茫然と天井やYouTubeを眺める。 0時近く、雨中目白駅周辺まで散歩。 3月6日水曜日。 休み。のうのうと家事や私事をしたりしなかったりし、夕方から約1年の島暮らしから帰ってきた友人Kくんの感慨を聞く会。北東池袋の中国西北家庭料理・沙漠之月さんにて。ご主人はモンゴルの少し南、甘粛省張掖市(かんしゅくしょうちょうえきし)という地の近くのご出身で、軽検索すると池袋から3460kmの距離。Kくんから池袋から1345km先の南方の島での暮らしぶりを聞きつつ、ときどきご主人が砂漠でのあれこれをお話しくださったり、想念が池袋の隅から遠方へ駆ける。丼内でつるつるのストレート麺がスープに絡まない問題。尋常ではない辛さの麻婆豆腐で頭から蝋燭が溶けるように汗が垂れ続ける。 深夜、一旦休止していた2006年のドラマ「芋たこなんきん」鑑賞を再開。先代とともに切り盛りを続けた写真館が空襲で焼失してしまった父親が、敗戦後の年末に多分そのショックから寝込んで亡くなってしまうことがとてもあっさり軽く流されており不思議で寂しい。今はまだいいか、と再休止しようと思う。ドラマのモデルである田辺聖子さんの父親についての文言を軽検索で探してみると、当時の日記が2021年に発見され出版もされているという複数の記事があった。 3月7日木曜日。 開店して諸事。急いで銀行業務を終わらせて、継続的に仕入れをさせていただいている事務所様へ出張買い取りお預かりへ。手動エレベーターがまだ現役で稼働している歴戦の倉庫から約40箱を車に積み込む。 昨日までに店員TTが商品化を終わらせてくれている海外文芸系の中山を新入荷棚に配架。 夜、いろいろ余裕のあるタイミングで事が運んだからだろうか、数年に一度あるかないかの、今日はいい日だ、という感覚が急に降ってきた。 シャッターに鍵をかけて帰ろうとしてふと上空に見慣れない影があることに気がついた。明治通り向こう岸のビルとビルの間に看板なのだろうか、直方体の建造物があるように見える。それが今までそこにあったものなのか最近現れたものなのか全然わからないのだが、あれはなんだという違和感だけはある。好都合な視野の産物か。 3月8日金曜日。 鳥山明さん急逝のニュース。週刊少年ジャンプに夢中だったころの近所の公園の壊れかけたベンチの手触りや、小砂利が敷かれた地面にドッジボールの陣地を示す線を引いたつま先の摩擦する感覚を思い出す。同じフライパンの上でドラゴンボールの火に炙られその焦げ目を刺青として体のどこかに持っている世代。 開店して諸事。 先週末に入荷した映画パンフレットを商品化する。グーニーズ、グレムリン、ターミネーター、バック・トゥー・ザ・フーチャー、ゴースト・バスターズ、トップ・ガン、カクテル、霊幻道士、など、1980年代ハリウッド作品のパンフレットは、常時入荷してあぶれて売れないもの、売れないし買えない見切っているもの、だったのだが、1年ほど前に東京蚤の市という催事で岐阜・徒然舎さんのお手伝いをした時に、徒然舎さんの売り方が丁寧だったせいもあるのだろうが、それらがまさに飛ぶように売れている光景に遭遇し、ついに時代は周回してグーニーズがかっこいいものになったのだ、と判断基準の大きな変更に想いを馳せたのだった。おそるおそる、気張らない値段で配架してみることにした。 昨日お預かりしてきた約40箱を査定開始。内容が面白くて手が止まりがちで15箱ほど空けたところで時間切れ。 夜、先月観た映画「ザ・マジックアワー」をもう一度観る。 3月9日土曜日。 開店して諸事。 昨日に続いて大山の査定、仕分けを一日中。複数のダンボール箱に渡って収納されているセットものが、ランダムに箱を開けているうちにだんだん揃ってくることに喜んだり諦めたり。早めに終われば縛って市場へ出品に行きたかったが閉店近くまでかかってしまい、車に積むだけに留まる。 店員ノムが約20個の空いたダンボールを重ねて縛りゴミ収集所へ運び、やれやれやっと終わったぜ、と安堵していたが、昨日から風景の一部と化していた別の約20個の空きダンボール箱の存在に気付いて愕然としていた。さらに作業終了後、普段から間違ってプリントアウトしたコピー用紙は小さく切ってメモ用紙として利用しているのだが、店員ノムがその用途でメモサイズに紙を切っていたはずが、切り終わった紙片をきれいにまとめてゴミ箱に投げ入れたのだった。次の角を曲がれば春がある。 週明けの旅行に備えて猫用と人用の備品をツルハドラッグで調達。 3月10日日曜日。 開店して諸事。 ここ数日で溜まったお持ち込み買い取りの小山をミックスして仕分け、商品化、配架。 市場での委託販売の売り上げを受け取りに来てくださったお客様が手土産に「越乃寒梅」を持ってきてくださった。でかい瓶!と思った。 番台に積みっぱなしていた文庫の大山を解いて仕分け、一部に値段つけ。 WAS問題のうちの「A」(エアコン)の工事日が決定し、その事前周知のお知らせをプリントアウト。マンションエントランスの掲示板に貼り、上階住人のかたがたのポストに投函する。「WAS」がほんとに過去形のwasになってくれる日を待つ。
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by ouraiza
| 2024-03-11 19:11
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ウィンドウズだと「コントロール(ctrl)」、マックだと「コマンド」というキーを押しながらのキーボードのショートカットという機能を、なんとなくパソコンを使っているうちに覚えていたのだが、初めて「ctrl」+「a」=全選択という技を友人から教えてもらいびっくりした。生まれた時からパソコンが当たり前にあった世代の人と同僚として働くとその体得具合の自然さに大きな差があることを感じる、と友人が言っていてとても腑に落ちた。 定休日の無約束営業はせず休む。 夕方から都営三田線蓮根駅へ。同行のムトさんの約35年前のある思い出を確認するために駅周辺をできるだけ隈なく歩く。個人が過ごしてきた時間と、とある街角に過ぎた時間、それを結びあわせる手がかりになるはずの蜃気楼のような記憶の風景に思いを馳せる。揺らめく場所を明瞭ではない記憶だけを頼りに探すことが現実的ではないとは思えない。そういう場所はたいてい見つかる。とは思いつつも今回は見つからず、セブンイレブンで缶ビールを買って飲む。 ミヤモトくんと落ち合い、発行人ミヤモトくんがおすすめするお店で『月刊災難』創刊記念会。当初の目標だった中華太陽軒さんは満席で入れず、蕎麦のあさひさんと居酒屋巴さんにて。板橋区の未踏の路地の、熟年の素晴らしく居心地のいい2軒だった。巴さんではエンドレスで演歌が流れ、杯を空けるうちにだんだん細胞の呼吸が演歌調になっていく。ものごとを「好きな行為だ」とか「好きなものだ」とか判断することの嘘くささ、というか欺瞞というか、かんがえていきたいことだ。好きなものを見つけるべき、などとよく言ってしまう。 志村三丁目から浮間舟渡駅へ新河岸川沿いを歩く。板橋区リバーサイド。新河岸橋と長後さくら橋は大きかった。ムトさんが撮影。後の軽検索結果だが、埼京線浮間舟渡駅 のホームは半分が板橋区で半分が北区、だった。 造園職人でもあるミヤモトくんが、今年は沈丁花が咲くのが早い、と教えてくれた。 休み。 猛烈な風。猛烈では足りない危険な風。2年に1度くらいはある気がするが、そういえばここ数年こんなに危険な風力は無かった。店番のTTから風対策についての悲痛なメッセージが来る。外に棚を出すことができないのでツノだけ出したカタツムリシフト、とのこと。 夕方店に寄るとやはり外の棚を一つ倒してしまったらしく、後付け工作で最上段に取り付けた飾り板がグラグラしている。 木村衣有子さんが新しい御著書の納品に来てくださっていて、ジュンク堂まで一緒に歩く途中、びっくりしたんだけどあれなに?と焼き鳥母家さんのビルの壁に大きな電光スクリーンが張り付いているのを教えてくださった。明治通りに面して壁画が描かれていた壁がぴかぴかな巨大広告モニターに変わっていてとても驚いた。 税理士の山田くんが繁忙期の3月になってしまう前に、とYBA(山田ビリヤードアカデミー)。4対10の敗け。絶対に決めるべき難易度が高くもないシュートをどうして外すのか、愕然とする。地軸がずれている。通算57勝113敗。硯家さんにて反省会。競馬の面白さを聞く。 2月28日水曜日。 休み。 雑司が谷のスーパー、オレンジマート前の100円ショップキャンドゥが店内を空になさっている。とてもお世話になっているので改装だけであってほしい。 夕方、神田文房堂へムトさんが額縁を誂えに行くのに付いていき、帰路江戸川橋辺りを散歩。 夜、映画「イコライザー3 THE FINAL」を観る。シリーズ中最もシャープだと思った。 2月29日木曜日。 開店して諸事。 一昨日のバイオレンスな風で傷んでしまった特価本スタンドの飾り板を修理。 修理気分のついでになんとなく億劫で敬遠したままだった、20年使っている屋外オーニングテントの経年劣化の亀裂を修理。買っておいたテント布補修用のテープでテントの裂け目を塞ぐ。脚立に乗ることの恐怖感が年々大きくなっている自分の経年劣化は塞げない。 夜、『名画座かんぺ』最新号の表紙作り。案ひねり出しの壺が、ごまかしの最後の一滴すらなくからからに乾いていて逆さにして振り回してもなにも出てこない。新作は無理と諦め、過去3作のデータを透明度を変えて重ね合わせ調合する。これは言ってみれば、vo.102とvo.110とvol.120のリミックス。まるで新作に見える。今後も使える忍法を見つけた。 夜、ホラー映画「X エックス」を観る。 3月1日金曜日。 開店して諸事。 たまにある、お知り合いが重ねて多く来てくださる日。ぽつぽつとお持ち込み買い取りの小山をミックスして商品化など。 美術や文学に魅かれている看護学校生のMさんが来てくださり、埴谷雄高『死霊』をお探しだったがあいにく在庫がなかった。少しお話しして帰り際、そういえば何歳?と尋ねると2004年生まれ、今年二十歳になる、とのことで驚いた。2004年は古書往来座が開業した年で、彼と同い年。なんと、人が生まれてからハタチになる期間なのか、と驚いていたら、5年ぶりに来ましたけど変わらないですね、と、1995年から営業していた前店舗にも通ってくださっていた懐かしいお客様がお会計のために番台にいらっしゃった。 閉店後、いつも通りの帳場での井戸端会議にふと参加なさったご近所のSさんが持参してくださった瓶に入った透明な酒、スピリッツというのだろうか、をいただいて飲みすぎ、記憶が霧散する。ムトさんにひたすら怒られたという印象は残っている。胸のうちで「コントロール」キー+「Z」キーの「作業を元に戻す」操作を繰り返し、繰り返し。 3月2日土曜日。 開店して諸事。透明な洋酒の心身への残り方が普段の缶ビールの気持ち悪さとは全く違い、ふわっと浮いて漂うような新感覚で余計に怖い。 ふわっと時は過ぎていき夕方、買い取りご常連の極ご近所のお客様宅へ出張お預かりへ。お客様から、ヴィム・ヴェンダース監督の新作映画「パーフェクト・デイズ」の影響で新潮文庫版フォークナー『野生の棕櫚』がamazonでいたずらに高額化している、とお聞きする。 『名画座かんぺ』最新号の折り、83枚。 3月3日日曜日。 開店して諸事。晴れている週末なのでお持ち込み買い取りとその処理作業が多め。 店の営業20周年記念に欲しいものは、と友人が尋ねてくれて非常に悩む。そもそもぼくは「周年」が、時という獰猛な大河が流れただけ、としか感じられず苦手なのだが、祝ってくださるというかたがたを拒むこともおおいに間違いだと感じていて、さてそれでは具体的になにが欲しいのか。とりあえず「車」が思いついた。ルノー・カングー、日産ラシーン、真っ赤なジャガーXJ。しかしどの車種もたくさんの本を運ぶ仕事には不向きそうで、まずは車種探しから始めねばなるまい。手頃なところでは工具、AC式の赤いグラインダーが欲しいと以前から思っている。もしくは赤い折りたたみコンテナ。いや、さらに友人と話していて欲しいものがわかった。しっかりした管理会社と契約しているビル一棟。うるさくなく閑静すぎない商業も成立する立地でエレベーター有り、1階が古本屋、2階が友人が運営する喫茶店、さらに上階は友人知人も住める住居(ペット可)、屋上に農業ができる畑、池。地下1階はビリヤード場にするか音楽スタジオにするか。 『名画座かんぺ』最新号の折り188枚。配布してくださる地への発送26件。 昨日お預かりしたオリコン3つ分の海外文芸系中山を査定、仕分け。 現在抱えている問題、水道「Water」、エアコン「Airconditioner」、シャッター「Shatter」を統一して「WAS問題」と名付けることによって、粘ついて晴れないもやもやした不安から極ほんの少し開放された気がする。閉店後、今日の最重要事案だった「A」についての書類を作る。
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by ouraiza
| 2024-02-27 14:23
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2月19日月曜日。
集中した商品化作業をしたくて定休日の無約束営業をする。小雨が降り静か。 先月から準備をし楽しみだった市場の本番で、何度も古書組合の市場売買サイトをチェックし、一喜一憂。 商品化に手間のかかる同一著者セットを時間をかけて作る。 ふと思いついた工作をする。以前本の画像を撮影するためのライトを帳場の横に取り付けたが、実質的にほとんど使うことがなかったので、もっと有効だろうと思われる場所に移動。従来のアームライトを支えるクランプを本棚の天板に付けるとその天板が使い辛くなってしまうので、クランプの代わりになるアタッチメントを作り本棚に固定。
2月20日火曜日。 休み。 東京での大市にいらっしゃっている沖縄のBOOKSじのんさんが予定変更があってぽっかり時間ができたのでどこかで飲み語らおうと誘ってくださり神保町にて遊ぶ。焼き鳥、カラオケ、中華。ビールをどうせおかわりするのだから先におかわり分も頼んでおくシステムで飲んでいるうちにいつしか約50歳のぼくと約60歳のじのんさんが抱き合っていたりする。じのんさんはとってもカラオケが上手でその美声と歌心に痺れているうちに意識が霧に包まれ、その後中華料理屋さんで卓上にこぼしてしまったキュウリをじのんさんがボリボリと食べていたり皆とにかくご機嫌だったと後に同行のムトさんから聞く。「あたし褒められて伸びるタイプ♡」というじのんさんを思いつく限りに称揚していたことは記憶にある。 その日の手帳にはじのんさんの恩師のお名前と、「新しい古本屋さんが企画したZINEパーティーをジンを飲みまくる宴会だと勘違いして若い人は豪気なことをするもんだと思った」という挿話を書き留めておこうとした形跡が残っている。 2月21日水曜日。 二日酔いで世界が回り立っていられず、夕方まで瞑目。非番の日でよかった。 夜、プレステ2で「GOD OF WAR 2」をプレイ。 『ちくま日本文学全集 梅崎春生』から「蜆」を読む。 ”蜆が鳴くことをお前は知っているか。俺は知らなかった。俺は驚いた。リュックの中で何千という蜆が押合いへし合いしながら、そして幽かにプチプチと啼いていたのだよ。耳をリュックに近づけ、俺はその啼声にじっと聞入っていた。それは淋しい声だった。気も滅入るような陰気な音だった。” 2月22日木曜日。 開店して諸事。なにかと諸事が多く緊張と弛緩を繰り返す。 電話を数本かけ、日程予約を数個。 天気予報では雨が夕方前に止むと報じられており、一旦止んだので安心して外の棚を全面展開したがすぐにまた降り出したのでまた閉鎖。行ったり来たりに疲弊。 来年版『名画座手帳』に関する最初の会議。とても面白くまた飲みすぎる。 2月23日金曜日。 開店して諸事。 商品化の直前段階にある番台上の山の掘削をここ数週間進めてきたので、ひとまず何も無いまっさらな状態にして気分を一新しようと画策するも手が働かず、最も商品化に手間のかかる中山の頂上を数センチ削るのみに終わる。 今日も昨日同様、雨が止みそうで止まない惑いの空。寒い。 夕方、友人宅へ遊びに行く。誕生日の友人の娘Tちゃんになにを贈ったらよいものか悩み、手塚治虫『ゴッドファーザーの息子(「紙の砦」同時収録)』と『ブラック・ジャック』冒頭数巻にする。ジュンク堂書店がとても混んでいて驚く。こんなに賑やかな書店内の場面を見たことがあっただろうかと思う。 「子」を女性の名前に使わなかった時代。友人のガンマGTPへの心配を肴にまた缶ビールを飲み過ぎる。ケーキ。浸かりすぎて塩が浮いている究極的にしょっぱい梅干しの焼酎割りの美味しさ。赤い木瓜の花。 2月24日土曜日。 開店して諸事。数日ぶりに晴れる。どうにも番台上の山の商品化を進めることに集中できずにまた午後を消失。 夕方、先週の仕入れで車に積んだ荷物を降ろす。約4年分の月刊誌の同じ号がそれぞれ2、30冊ぐらいずつあり、商品としてどう構成するか悩みつつ市場用に縛って準備。 友人のガンマGTPへの対処として、そうだシジミだ!と思いつき、ぼくもしょっちゅうお世話になっている「1杯でしじみ70個分のちから」カップを数個買って発送。 夜、「GOD OF WAR 2」をプレイ。 2月25日日曜日。 散漫ではない雨。ガードシフトで開店して諸事。松下竜一35冊一括のデータ作り、溜まった外用特価本の値段つけなど。 夕方から実家にて”実家片付けねばならぬ隊”の活動。ひとまずの探索目標だった父親の小品原型を埼玉の鋳物屋さんが保存してくださっていると母親が電話で突き止めたことで今日の活動は終わり。しかしほんの僅かでもいいから実家から物を減らそう、と、使途不明な電熱器かもしれない器具を持ち出す。抽象画ばかり描いてきた母は最近、学生時代以来約50年ぶりに具象画に取り組んでいて、とても楽しいとのこと。 夜、プレステ2の「GOD OF WAR 2」をやっとクリア。ギリシア神話が基になっているストーリーがさっぱり理解できないままだったが、操作性の良さと難所解決難度のちょうど良さに引っ張られた。クリアしたことでさらにボーナスステージがプレイ可能になってプレステ3への移行は延期された。 #
by ouraiza
| 2024-02-26 03:06
| 工作
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2月12日月曜日。 ムトさんズと往来座編集室ズで集い、王子の友人Kさん宅で料理をして食べる会。まず王子駅そばの今後再開発されるらしい複合施設「王子サンスクエア」内のスーパーマーケットなどで食材調達。<王子駅周辺の再開発/https://newswitch.jp/p/38332>。編集部Aさんにメインシェフになってもらいつつ、午後からずっと缶ビールを飲み食事をする。遠足前の小学生のように(とキーボードを叩いてみたがそういえば小学生のころ遠足が楽しみだったかというとそうでもないかもしれない、ということは想像上のそれ以上に)この日がとても楽しみで、最近の業務を無事に終わらせる糧にしていた。Kさんのお住まいの新築マンションの設備や構造を拝見して社会見学をするなど。額縁を飾るお手伝いをほんの少しし、陽光がそそぐ健やかな空間で気を使う必要のない人々とゆっくりダベる。なんて日だろうか。 美味しかったことを伝説として胸に刻み込んでいる編集部Aさんによる「イカスミのリゾット」をついに再び食べられる日が来た。やはり格別に美味しかった。 「Aさんのイカスミリゾット」を初めて食べたのがいつだったのか、ついに該当日が判明し、そうかそうだった、と驚いた。ある催事がありその会場でAさんが料理をしてくださったのが2008年6月8日日曜日。世に言う「秋葉原通り魔事件」が起こった日だった。 深夜、プレステ2で「GOD OF WAR2」をプレイ。主人公がイカロスさんから翼を奪って翔ぶことができるようになった。2007年発売のゲームだが、初代ファミコン世代のゲーム観からするとグラフィックや操作性などがとんでもなく凄い。まさか羽ばたいてジャンプの飛距離を伸ばすとは。 2月13日火曜日。 休み。家窟にて無為の修行。 「GOD OF WAR 2」を遊び、『おかえり横道世之介』を読み終える。1993年春から1994年の春、池袋の北西。1994年の4月で物語は一旦閉じる。その年末までにアイルトン・セナの事故、オウム真理教松本サリン事件があり、翌年初めに池袋西口に古本大學芸術劇場店が開業した。 夜、ドラマ「不適切にもほどがある」を観る。とても面白く、アーカイブが本放送に追いついてしまうと次回まで待つのがじれったいので全話終了後にまとめて観ようと決める。ツイッター(現X)界的な満員電車の煮凝りのような反応が世間から出そうなのをミュージカル表現で軽快に避けている気がして楽しい。 2月14日水曜日。 午後から店で市場の準備。普段多くは触らないジャンルなので新鮮。天気が良くて春めき、絶好の屋外作業日和。政治経済歴史の堅いところ折りたたみコンテナ11個分の小口のイタミチェックをしながら仕分け、縛り。内村鑑三全集は平成の新再版だと猛烈に思い込んでいたがばっちり昭和旧版でびっくりした。市場に向けたナイス準備ができた。 夜、プレステ2「GOD OF WAR 2」をプレイ。 2月15日木曜日。 開店して諸事。先日買い取り時に注意事項を伝えたご常連のお客様からの被害妄想分裂呪文告発怪文書入りの封筒を、店員ノムが出勤時シャッターに挟まっていたのを拾い、あわあわしている。そのお客様に対して店として平坦に長くお付き合いするつもりだったのでなんだか余計に残念で悲しい。こういうことが5年に1度くらいはある気がする。 猛烈な風が吹く。飾っていた料理本のカバーだけどこかに飛んでいってしまったりする。夕方前からは外の本を各棚の隅に集めて寄せ固めの型でしのぐ。 古書組合のいつもより規模が大きな市への出品物を経営員さんが集荷に来てトラックに積んでいってくださった。エフをつけておらずお手間を取らせてしまったが、経営員さんのエフの付け方が熟練の技で美しく、今後の課題にしようと思う。本の束がどの商品の一部なのかを識別するエフ(荷札のようなもの)。 ふわふわと落ち着かない流れが続いてさて今日の業務に身を入れようとするころにはもう夜、閉店時間はすぐそこ。 閉店後、最近の最重要懸案事項だったお手紙を書き終えることができてよかった。 2月16日金曜日。 開店して諸事。昨日よりは弱いがしっかり主張してくる風。 番台上の数個の中山をミックスしてじりじりと値段つけ。 時が時を演じているかのように過ぎる。 夜、プレステ2「GOD OF WAR 2」をプレイ。 2月17日土曜日。 開店して諸事。もんやりとした暖かさ。 店員ノムが体調を崩し帳場の横に布類を敷いて倒れている。急に暖かくなった最近のとりとめのない寒暖差による神経バランスや花粉症の影響もあるのかもしれない。一昨日にお客様からの怪文書で空気の圧が重くなり、よりによって昨日店員ノムは深夜に「砂の器」と「天国と地獄」という大作を続けて鑑賞したらしい。中毒の「中」、なにか鈍重な気配の連続に、中(あた)ったのだと思われた。 ほうほうの体で自己診断し検索して「『救心』てやつがよさそう‥‥」とノムが言うのでツルハドラッグに買いに行く。その容器と丸薬がシルバニアファミリーのようなかわいいミニチュアぶりでとても驚いた。 とにかく店を出れないので極ご近所のお客様と極々ご近所のお客様の御蔵書整理のお手伝い、下見を数日延期させていただく。 早めに店を閉め、最近の手数の不足を補うためひたすら値段付けの残業をする。 ムトさんが経堂のゆうらん古書店さんで買ってきたH.N.Werkmanの画集『H.N.Werkman』を見せてもらったがとても素敵だった。画像検索結果。 2月18日日曜日。 開店して諸事。 お持ち込み買い取りの小山と番台上中山への値段つけを諸事を挟みつつ断続的に。 古本屋という商店が少なくなりめずらしい業種になったせいもあるのだろうが、週末は特に、良い意味でもない店の観光地化の進行を意識する。継続的に配架できるお土産商品はないものだろうかとかんがえてみたり。 ウェブでの販売やカード決済の比重が増え、レジに残る現金の少なさにびっくりすることが増えた。 閉店後、松屋にてシュクメルリ鍋というものを食べる。ミルキーにんにく鶏鍋。おいしかった。 #
by ouraiza
| 2024-02-19 02:02
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