『双牙 ~新炎~』
会場 シアター1010
公演期間 2021年 3月5日 ー 3月14日
役名 シズク
スタッフ
【演出】町田慎吾 【脚本」羽仁修 【殺陣】六本木康弘
キャスト
【オウカ】猪野広樹 【ツムギ】伊崎龍次郎
【シュリノスケ】杉江大志 【シュゼン】櫻井圭登 【シンパチ】中村太郎
【コウエイ】田中尚輝 【ヒャクタカ】小玉久仁子
【殺陣衆】宮川康裕 菅原健志 寒川祥吾 前田りょうが 相田真滉
川島翔太郎 深澤悠斗 古川貴大 遠藤拓海
【シズク】小泉萌香 / 【デンベイ】荻野崇 【ゲンシュウ】笠原紳司
【あらすじ】
領土は小さいが豊かな経済力を持ち他国の侵略を許していなかった椎名家には「椎名の矛」と呼ばれる武将・オウカと「椎名の盾」と呼ばれる軍師・ツムギがいた。
しかし、2人がいる限りは安泰かと思われていた椎名家にも、ついに日本の3分の1を手中に収めたゲンシュウ軍がせまってきていた。
協議の結果、椎名家は降伏を選択。財産を明け渡すことを条件に平和的に治まるはずだった。
だが城の明け渡しの日、ゲンシュウ軍は突如大軍勢で攻め込んでくる。
大混乱の城内でバラバラになってしまうツムギとオウカ。
そして1ヶ月の後、再会した2人は敵同士となっていた。 互いの胸に、互いの思う正義を抱えて・・・!
てっきり『牙狼』フランチャイズの一環かと思っていたら全然そんなことはなかったファンタジー時代劇。ファンタジーと書いたけどファンタジックな要素は忍者ヒャクタカくらいで、後は真田兄弟とか信長とかを想起させる武将たちのいる世界。
二人の友情がやがて大きな戦乱を呼ぶスケールの大きな話で、構成は綺麗な王道を描き各キャラの見せ場もしっかりあって完結する。
特にミソとなるのがパルクール(ここではステージ上のセットの段差を用いて、宙をかくようなジャンプや殺陣を扱う)込みのアクションシーンで、2.5次元俳優の豪快にして微細なアクションを堪能できる。
ただ、、、入っていけなかった。
2.5次元舞台が没入感を持つのは、本来フィクショナルな世界を、舞台機構を用いて立体的に表現した上で虚構的な言動のキャラクターを並べるから、つまり観客がウソの世界にダイブする環境を用意してくれているからであって。
本作「普通の時代劇」的な世界観で非常に「漫画チック」な男の友情譚を延々続けているので、この世界のウソを信じられなかったのです。
何かファンタジックなギミックや装飾を世界観の側に一つ施すか、あるいは思いっきり戦国時代にして『キングダム』的な味付けにするか。
終始様々なブロマンスのショーケースを見ているような気分に。一人だけ浮いている、明らかに芝居のタッチが現代寄りでラフな荻野崇さんの個性的な存在感が水を差すことで、かえって世界に地に足がついて安堵するのが皮肉。
歴史の流れに翻弄されるキャラ達を見せたいにしては、ラスボス的立ち位置のゲンシュウが中盤丸っとほとんど出てこない存在感の無さでスケール感に乏しい。非常に大仕掛けの戦術は出てくるのだけど、ここもリアリティラインがわからないことにはピンとこなかった。
ヒャクタカの癖の強いキャラの是非はともかく、他のキャラ達も始まって早々にアドリブ風誘い笑いを出してくるのも「まだ早いて、こっちその世界に入ってないから」と思ってしまった(悲惨な終盤への落差が始まってたのだとは思うけれど)。
俳優さん的には、徐々に狂気で追い詰められていく伊崎龍次郎が圧巻。
小泉さんと最も舞台共演してる男性俳優なのでだいぶファンになりつつあるしひいき目かも知れないけれど、ヒャクタカの変身の術でパルクールまで見せた上での後半ずっとあの壊れていく表情。W主演である猪野広樹の方が割りを食ってたなと思う。存在感がイーブンにはならなかった。
シズクは出番は多くないけれど話の要であり紅一点(ヒャクタカ入れる・・・?)。
序盤で本当に一人二役やってるのかと思った「演じ分けの演じ分け」や、数少ない出番で一気に感情を収束させて涙目になったり、一点集中型で一定の爪痕は残せているかと。打掛姿でそそと歩く様美しく、その衣装の縛りで普段のあの綺麗な90度のお辞儀が僅か15度くらいしか曲げられてないのが可愛い。
『信長の野望 炎舞』
会場 光が丘IMAホール
公演期間 2020年1月18日(土)~22日(水)
役名 帰蝶
スタッフ
【脚本・演出】栗原彰文 【音楽】印南俊太朗
【舞台演出】松本仁志 【照明】本田純也 【大道具】唐崎修
【衣装】つちや紗吏 【舞台美術】長峰麻貴 【殺陣振付】福澤利之
【原作】コーエーテクモゲームス
キャスト(Aキャスト)
【柴田勝家】滝沢亮太 【武田勝頼】庄田佑右 【足利義昭】篠木隆明
【今川義元】西岡歩 【朝倉義景】小野剛聖 【佐久間信盛】山本侑平
【安藤守就】小川竜平 【氏家直元】藤井惇成 【稲葉良通】海老原なつ美
【平手政秀・武田信玄】高田正人(平日出演)
【茶々】月山和香 【初】伊東映里奈 【江】森麻理子
【築山御前】岬優希 【くの一・志乃】鈴木澪 【くの一・小夜】日向みお
【女性】川原歩夢 櫻井恵里佳 福田結希 三浦亜美 服部友貴穂
【殺陣アンサンブル】高野智哉
【あらすじ】
ここは16世紀の日本。現在の愛知県西部に、四方を有力な大名に囲まれた小さな国、尾張の国があった。この地も戦国時代の流れに飲まれ内乱が続いていた。そこへのちに「大うつけ者」と呼ばれる男児が生まれる。その名は、織田信長。瞬く間に尾張を平定し四方の大名を武力、政略によって統治していくが・・・。
明智光秀の裏切りに遭う運命の日、炎が舞う本能寺に我々の知らない一つの意思が紛れ込んでいた。
オーケストラピットに楽団が控えて、生演奏で送る時代劇ミュージカル。
こんなにミュージカルらしいミュージカル、実は小泉さん出演作でも唯一では? となる序盤が楽しい。こういう舞台もっと観たいんだよな。特に脇を固めるベテラン俳優陣、存じ上げないのですが本職の方たちじゃないだろうか。鈴木吉行さんの歌が作り出すミュージカル空間が圧巻で、その後の全体を食ってるまであった。
武将たちの話に移行する前にアバンで民草の地獄を見せ、戦争とはまた別にある、自由のない女性達の地獄もちゃんと示す点、かなり誠実だと思う。時代劇のタイプとして双牙と信ミュ、対照的な歴史との向き合い方をしていて、後者の方が好み。
その上で、しかしこれあくまでゲームの舞台版なんだよな……? と思っていたら、某ユアストーリーみたいな仕掛けが! その仕込みが「幕間の休憩時間、客席の通路で起こる」のも面白い。
これは劇場で観劇したかったな。
お話はどうしても史実から離れること難しく、いよいよ歴史の分岐点をIFに舵取ります!ってところで終わってしまうのが勿体ない。前半でそこまでやって、オリジナルな歴史を紡ぐとこまでいっても良かった、それだけ「この舞台上の戦国時代」が盛り上がっていたと思う。
帰蝶はクレジットは三番手で、はて帰蝶にどんな歴史上の役割が、と思ったけど普通に脇役だったな。ただ登場から高飛車の一筋縄ではいかない風格、普段と全然違う声音で、「このミュージカル一座の一員としてしっかり収まっている」姿がむしろ嬉しい。
逆に、この時点でそれでも(遥かに出番のある蘭丸役の)AKBの子とか押しのけてクレジット三番手なんだ? というのも、当時を知らない身からすると驚きが。
この頃の小泉さんの呟き検索したら、告知一覧に2019年年末からかけて『巌窟王』『信長の野望』『さよならローズガーデン』『誰が為のアルケミスト』『スタァライト』『やがて君になる』……ズラッと並んでて、ちょっと引く(カラマリもやる予定だった筈)。
もうこの頃からずっと止まらず忙しいんや。
ここで打掛の捌き方など時代劇の所作を会得したのだと思いますが、巡り巡って栞子の衣装のひらひら使いなどに援用しているのかも知れない。「時代劇の所作を知っている」というのは大きな武器なので、アミューズさん堂々と大河ドラマなど押し込んでみてくれないかな。
主演は『巌窟王』にも出ていた徳山さん。知ってた役者は小泉さんと彼だけで(世代なので、特に彼の昔の作品はよく存じてます。ドラマや映画何見ても出てる頃あった)、正直「重厚な芝居を見せる一座の中で信長だけ粗野」な雰囲気を出したかったのかもしれないけど、ただ軽いように見えてしまって微妙に呑まれていたかなと。こと歌声が弱いのも説得力に欠けた。
カーテンコールで既に呂律も回らない彼から「皆さん見慣れない顔が多いかと思いますが、ここにいるのはオーディションで選ばれた者ばかり。偽物はございません、どうか一人ひとり覚えて帰ってください」というメッセージがあり、これは少し熱かったです。逆にいえば舞台出ずっぱりの彼から見て「偽物、、、」ってなるキャスティングがよそではそれなりにはあるってことなんだ。
個人的には足利義昭役の篠木隆明さん、非常に面白かった。
『舞台版 誰ガ為のアルケミスト 聖ガ剣、十ノ戒
不惑の双刀編/不憎の呪術編』
会場 新宿FACE
配信期間 2020年3月13日(金)~3月22日(日)
(不惑の双刀編5回/不憎の呪術編4回)
役名 カグラ
スタッフ
【原作】今泉潤/FgG『誰が為のアルケミスト』 【総合演出】今泉潤
【脚色・演出】宮城陽亮(DMF) 【脚本】谷口健太郎・深浦佑太
【美術】濱田真輝 【音響】星知輝 【衣装】加藤佑里恵
【小道具・武器・甲冑制作】湯田商店 【殺陣指導】泉紫太朗・谷口敏也
キャスト
【クダンシュタイン】橘龍丸 【ソル】太田将煕 【カノン】花影香音
【カグラ】小泉萌香 【フューリー】永山聖一朗 【オーティマ】遊馬晃祐
【アハト】大藪丘 【ズィーヴァ】三浦海里 【フィーア】 橋本全一
【セーダ】花奈澪 【ヤウラス】宮原華音 【モンゼイン】上杉輝
【バシーニ】村瀬文宣 【オライオン】渡辺和貴 【ゼクス】柏木佑介
【あらすじ】
バベルの塔を臨む大地・バベル大陸にて――。
絶対正義の名のもとに、大陸の平和を守る為に戦う「聖教騎士団」。突出した「錬金術」の才を持つ彼らは「ロードマスター」に率いられている。第10代ロードマスターを務めるザインは、歴代でも屈指の人望を集める存在であった。正義の象徴に相応しい強さ、気高さを備えたザインは、多くの者を照らし続けた。しかし太陽が沈むように、光もまた、潰える時が来る。
――“獅子王の進撃”。グリードダイク皇帝「オライオン」が引き起こした戦いは、またたく間に大陸全土を巻きこみ、宗主国ノーザンブライドもその侵略の憂き目に遭う。同じノーザンブライドに本部を置く聖教騎士団は、辛うじて壊滅を免れるが、引き換えに聖剣エクスカリバーと、そしてザインを失う。
正義の象徴であるエクスカリバーとザイン。二つの支えを同時に失った聖教騎士団だが、ザインに託された正義の意志で彼らは立ち上がる。「エクスカリバーの復活」――彼らの正義を、そして大陸を奪還する為の戦いが始まる。
――そしてオライオンのそばで圧倒的な力を振るった黒衣の男。彼らは如何なる結びつきで、何の為に戦うのか…。眩い光があるところに、深き闇があるように、白き大陸の正義の前に、黒衣の男が率いる手勢が立ちはだかる。
原作版『誰ガ為のアルケミスト 聖石の追憶 獅子王の進撃編』が、舞台の為に新解釈・再構成された新たなる歴史。まだ誰も知らない物語が今、幕を開ける――。
どうでしょう。このあらすじ理解できたでしょうか。実際見てみると段々ベタな話だとわかって呑み込めてくるのですが、理解出来たとて真剣に見るのはなかなか難しい。
サテライト制作の劇場版アニメは見たことあったのですがキャラ誰も被らない。というよりそこにも出ていた重要人物の死後の物語っぽいです。
要するに象徴(オールマイト)を失ったヒーローたちと、こちらはこちらで矜持を持ったヴィラン連合の小競り合いなんだなとヒロアカに重ねて納得。
正義と悪の抽象的な問答を前のめりに見せるのはなかなか難しいので、いかに美男美女がエッな衣装と格好良い武器で「それっぽく」ふるまうかを堪能する、ザ・2.5次元ですね。単調に感じてしまった理由は場面転換による起伏の無さもあると思う(トワツガイみたいに舞台がグルグル回ってればまた違ったかも)。
我儘な客なので、『双牙』では「アドリブで誘い笑いするの早い早い」と思ってたけど、本作では「全然キャラ覚えられないからもっと早くアドリブコーナーやってください!」となってたし、現に笑いに走るとそこそこ息抜きとしては楽しい。それでいいのか本編。
最終的に正義と悪の抽象的な問答に行動の選択で回答を出すのは悪くないかとは思いますが、何度も見てきた話のような気も。
2公演あるんですけどあまり違いわからなかったです。途中の小競り合いでスポット当たるキャラが変わるのかな。
カグラもひたすらビジュの良さで目を惹きますが、さしたる殺陣もさしてもらえず添え物のような扱い。
本作のハイライトは本編よりむしろ、「コロナで公演中止になったけど、全公演演じて配信した」というスタイルではないでしょうか。加えて、この映像収録の為にも公演している。
なのでアドリブ時に観劇してるスタッフの声や時に野次が入ったり、特典についてるアドリブコーナー全種やアフタートークそのものが、2020年春に舞台の現場で起こっていたことの記録として面白い。大赤字だという内情も本番中に吐露されるw。
Pがめっちゃ出張ってて、舞台ってお山の大将気取りやすい空間なんだなと、ハラスメントの温床であることも妙に納得はいってしまいました(このPがそうということではなく)。
本編よりアドリブ面白かったなー。
萌香ちゃんの(緊張してたらしいが)全力で男に媚びうる可愛い仕草。これで落ちない人間男女問わずいないだろうと、見てはいけない顔を見てしまった気分。
また2.5次元に稀に混ざっている全方位エンターテイナー、カラマリの富田翔さんなんかが顕著ですが、『はめステ』のハプニングさえ見落とさず拾って笑いにしてた三浦海里くんも忘れ難く、その海里くんが本作にも出演。
アドリブコーナーで自分の確定申告還付金額を叫ぶという謎サービス精神を発揮して、流石に笑いました(Pから「イケメンはすぐ大声で笑い取ろうとする、それしか出来ねえからな!」とイジられてるのも草)。