ぴ舞台感想② 双牙~新炎~/信長の野望 炎舞/誰ガ為のアルケミスト 聖ガ剣、十ノ戒

『双牙 ~新炎~』

 

会場 シアター1010

公演期間 2021年 3月5日 ー 3月14日

役名 シズク

 スタッフ

【演出】町田慎吾 【脚本」羽仁修 【殺陣】六本木康弘

パルクール演出】HAYATE 【音楽」TAKA

 キャスト

【オウカ】猪野広樹 【ツムギ】伊崎龍次郎

【シュリノスケ】杉江大志 【シュゼン】櫻井圭登 【シンパチ】中村太郎

【コウエイ】田中尚輝 【ヒャクタカ】小玉久仁子

【殺陣衆】宮川康裕 菅原健志 寒川祥吾 前田りょうが 相田真滉

     川島翔太郎 深澤悠斗 古川貴大 遠藤拓海

【シズク】小泉萌香 / 【デンベイ】荻野崇 【ゲンシュウ】笠原紳司

 

【あらすじ】

 領土は小さいが豊かな経済力を持ち他国の侵略を許していなかった椎名家には「椎名の矛」と呼ばれる武将・オウカと「椎名の盾」と呼ばれる軍師・ツムギがいた。

 しかし、2人がいる限りは安泰かと思われていた椎名家にも、ついに日本の3分の1を手中に収めたゲンシュウ軍がせまってきていた。
 協議の結果、椎名家は降伏を選択。財産を明け渡すことを条件に平和的に治まるはずだった。
 だが城の明け渡しの日、ゲンシュウ軍は突如大軍勢で攻め込んでくる。
 大混乱の城内でバラバラになってしまうツムギとオウカ。
 そして1ヶ月の後、再会した2人は敵同士となっていた。 互いの胸に、互いの思う正義を抱えて・・・!

 

 てっきり『牙狼フランチャイズの一環かと思っていたら全然そんなことはなかったファンタジー時代劇。ファンタジーと書いたけどファンタジックな要素は忍者ヒャクタカくらいで、後は真田兄弟とか信長とかを想起させる武将たちのいる世界。

 二人の友情がやがて大きな戦乱を呼ぶスケールの大きな話で、構成は綺麗な王道を描き各キャラの見せ場もしっかりあって完結する。

 特にミソとなるのがパルクール(ここではステージ上のセットの段差を用いて、宙をかくようなジャンプや殺陣を扱う)込みのアクションシーンで、2.5次元俳優の豪快にして微細なアクションを堪能できる。

 

 ただ、、、入っていけなかった。

 2.5次元舞台が没入感を持つのは、本来フィクショナルな世界を、舞台機構を用いて立体的に表現した上で虚構的な言動のキャラクターを並べるから、つまり観客がウソの世界にダイブする環境を用意してくれているからであって。

 本作「普通の時代劇」的な世界観で非常に「漫画チック」な男の友情譚を延々続けているので、この世界のウソを信じられなかったのです。

 何かファンタジックなギミックや装飾を世界観の側に一つ施すか、あるいは思いっきり戦国時代にして『キングダム』的な味付けにするか。

 終始様々なブロマンスのショーケースを見ているような気分に。一人だけ浮いている、明らかに芝居のタッチが現代寄りでラフな荻野崇さんの個性的な存在感が水を差すことで、かえって世界に地に足がついて安堵するのが皮肉。

 歴史の流れに翻弄されるキャラ達を見せたいにしては、ラスボス的立ち位置のゲンシュウが中盤丸っとほとんど出てこない存在感の無さでスケール感に乏しい。非常に大仕掛けの戦術は出てくるのだけど、ここもリアリティラインがわからないことにはピンとこなかった。

 ヒャクタカの癖の強いキャラの是非はともかく、他のキャラ達も始まって早々にアドリブ風誘い笑いを出してくるのも「まだ早いて、こっちその世界に入ってないから」と思ってしまった(悲惨な終盤への落差が始まってたのだとは思うけれど)。

 

 俳優さん的には、徐々に狂気で追い詰められていく伊崎龍次郎が圧巻。

 小泉さんと最も舞台共演してる男性俳優なのでだいぶファンになりつつあるしひいき目かも知れないけれど、ヒャクタカの変身の術でパルクールまで見せた上での後半ずっとあの壊れていく表情。W主演である猪野広樹の方が割りを食ってたなと思う。存在感がイーブンにはならなかった。

 シズクは出番は多くないけれど話の要であり紅一点(ヒャクタカ入れる・・・?)。

 序盤で本当に一人二役やってるのかと思った「演じ分けの演じ分け」や、数少ない出番で一気に感情を収束させて涙目になったり、一点集中型で一定の爪痕は残せているかと。打掛姿でそそと歩く様美しく、その衣装の縛りで普段のあの綺麗な90度のお辞儀が僅か15度くらいしか曲げられてないのが可愛い。

 

信長の野望 炎舞』

 

会場 光が丘IMAホール

公演期間 2020年1月18日(土)~22日(水)

役名 帰蝶

 スタッフ

【脚本・演出】栗原彰文 【音楽】印南俊太朗

【舞台演出】松本仁志 【照明】本田純也 【大道具】唐崎修

【衣装】つちや紗吏 【舞台美術】長峰麻貴 【殺陣振付】福澤利之

【原作】コーエーテクモゲームス

 

 キャスト(Aキャスト)

織田信長徳山秀典 【明智光秀】鷲尾修斗

森蘭丸田野優花 【豊臣秀吉岩崎孝次 【竹千代】西泰平

帰蝶】小泉萌香 【お市】引地志歩 【浅井長政】川邉裕亮

柴田勝家】滝沢亮太 【武田勝頼】庄田佑右 【足利義昭】篠木隆明

織田信忠】入倉慶志郎 【織田勝長】薗一輝

今川義元】西岡歩 【朝倉義景小野剛聖 【佐久間信盛】山本侑平

六角義賢斎藤道三】柳沢成人 【丹羽長秀】黛凛太郎

安藤守就】小川竜平 【氏家直元】藤井惇成 【稲葉良通】海老原なつ美

村井貞勝】畠山留佳 【林秀貞細川藤孝】春山航平

毛利輝元】二宮禎祥 【鳥居元忠】鍬次郎

 

【吉法師】直井瑞季 【織田信秀】鈴木吉行

【平手政秀・武田信玄】高田正人(平日出演)

 

【茶々】月山和香 【初】伊東映里奈 【江】森麻理子

【築山御前】岬優希 【くの一・志乃】鈴木澪 【くの一・小夜】日向みお

【女性】川原歩夢 櫻井恵里佳 福田結希 三浦亜美 服部友貴穂

【殺陣アンサンブル】高野智哉

 

【あらすじ】

 ここは16世紀の日本。現在の愛知県西部に、四方を有力な大名に囲まれた小さな国、尾張の国があった。この地も戦国時代の流れに飲まれ内乱が続いていた。そこへのちに「大うつけ者」と呼ばれる男児が生まれる。その名は、織田信長。瞬く間に尾張を平定し四方の大名を武力、政略によって統治していくが・・・。
明智光秀の裏切りに遭う運命の日、炎が舞う本能寺に我々の知らない一つの意思が紛れ込んでいた。

 

 オーケストラピットに楽団が控えて、生演奏で送る時代劇ミュージカル。

 こんなにミュージカルらしいミュージカル、実は小泉さん出演作でも唯一では? となる序盤が楽しい。こういう舞台もっと観たいんだよな。特に脇を固めるベテラン俳優陣、存じ上げないのですが本職の方たちじゃないだろうか。鈴木吉行さんの歌が作り出すミュージカル空間が圧巻で、その後の全体を食ってるまであった。

 武将たちの話に移行する前にアバンで民草の地獄を見せ、戦争とはまた別にある、自由のない女性達の地獄もちゃんと示す点、かなり誠実だと思う。時代劇のタイプとして双牙と信ミュ、対照的な歴史との向き合い方をしていて、後者の方が好み。

 その上で、しかしこれあくまでゲームの舞台版なんだよな……? と思っていたら、某ユアストーリーみたいな仕掛けが! その仕込みが「幕間の休憩時間、客席の通路で起こる」のも面白い。

 これは劇場で観劇したかったな。

 お話はどうしても史実から離れること難しく、いよいよ歴史の分岐点をIFに舵取ります!ってところで終わってしまうのが勿体ない。前半でそこまでやって、オリジナルな歴史を紡ぐとこまでいっても良かった、それだけ「この舞台上の戦国時代」が盛り上がっていたと思う。

 帰蝶はクレジットは三番手で、はて帰蝶にどんな歴史上の役割が、と思ったけど普通に脇役だったな。ただ登場から高飛車の一筋縄ではいかない風格、普段と全然違う声音で、「このミュージカル一座の一員としてしっかり収まっている」姿がむしろ嬉しい。

 逆に、この時点でそれでも(遥かに出番のある蘭丸役の)AKBの子とか押しのけてクレジット三番手なんだ? というのも、当時を知らない身からすると驚きが。

 この頃の小泉さんの呟き検索したら、告知一覧に2019年年末からかけて『巌窟王』『信長の野望』『さよならローズガーデン』『誰が為のアルケミスト』『スタァライト』『やがて君になる』……ズラッと並んでて、ちょっと引く(カラマリもやる予定だった筈)。

 もうこの頃からずっと止まらず忙しいんや。

 ここで打掛の捌き方など時代劇の所作を会得したのだと思いますが、巡り巡って栞子の衣装のひらひら使いなどに援用しているのかも知れない。「時代劇の所作を知っている」というのは大きな武器なので、アミューズさん堂々と大河ドラマなど押し込んでみてくれないかな。

 

 主演は『巌窟王』にも出ていた徳山さん。知ってた役者は小泉さんと彼だけで(世代なので、特に彼の昔の作品はよく存じてます。ドラマや映画何見ても出てる頃あった)、正直「重厚な芝居を見せる一座の中で信長だけ粗野」な雰囲気を出したかったのかもしれないけど、ただ軽いように見えてしまって微妙に呑まれていたかなと。こと歌声が弱いのも説得力に欠けた。

 カーテンコールで既に呂律も回らない彼から「皆さん見慣れない顔が多いかと思いますが、ここにいるのはオーディションで選ばれた者ばかり。偽物はございません、どうか一人ひとり覚えて帰ってください」というメッセージがあり、これは少し熱かったです。逆にいえば舞台出ずっぱりの彼から見て「偽物、、、」ってなるキャスティングがよそではそれなりにはあるってことなんだ。 

 個人的には足利義昭役の篠木隆明さん、非常に面白かった。

 

『舞台版 誰ガ為のアルケミスト 聖ガ剣、十ノ戒

 不惑の双刀編/不憎の呪術編』

 

会場 新宿FACE

配信期間 2020年3月13日(金)~3月22日(日)

     (不惑の双刀編5回/不憎の呪術編4回)

役名 カグラ

 スタッフ

【原作】今泉潤/FgG『誰が為のアルケミスト』 【総合演出】今泉潤

【脚色・演出】宮城陽亮(DMF) 【脚本】谷口健太郎・深浦佑太

【美術】濱田真輝 【音響】星知輝 【衣装】加藤佑里恵

【小道具・武器・甲冑制作】湯田商店 【殺陣指導】泉紫太朗・谷口敏也

 キャスト

【クダンシュタイン】橘龍丸 【ソル】太田将煕 【カノン】花影香音

【カグラ】小泉萌香 【フューリー】永山聖一朗 【オーティマ】遊馬晃祐

【アハト】大藪丘 【ズィーヴァ】三浦海里 【フィーア】 橋本全一

【セーダ】花奈澪 【ヤウラス】宮原華音 【モンゼイン】上杉輝

【バシーニ】村瀬文宣 【オライオン】渡辺和貴 【ゼクス】柏木佑介

 

【あらすじ】

 バベルの塔を臨む大地・バベル大陸にて――。

 絶対正義の名のもとに、大陸の平和を守る為に戦う「聖教騎士団」。突出した「錬金術」の才を持つ彼らは「ロードマスター」に率いられている。第10代ロードマスターを務めるザインは、歴代でも屈指の人望を集める存在であった。正義の象徴に相応しい強さ、気高さを備えたザインは、多くの者を照らし続けた。しかし太陽が沈むように、光もまた、潰える時が来る。
 ――“獅子王の進撃”。グリードダイク皇帝「オライオン」が引き起こした戦いは、またたく間に大陸全土を巻きこみ、宗主国ノーザンブライドもその侵略の憂き目に遭う。同じノーザンブライドに本部を置く聖教騎士団は、辛うじて壊滅を免れるが、引き換えに聖剣エクスカリバーと、そしてザインを失う。
 正義の象徴であるエクスカリバーとザイン。二つの支えを同時に失った聖教騎士団だが、ザインに託された正義の意志で彼らは立ち上がる。エクスカリバーの復活」――彼らの正義を、そして大陸を奪還する為の戦いが始まる。
 ――そしてオライオンのそばで圧倒的な力を振るった黒衣の男。彼らは如何なる結びつきで、何の為に戦うのか…。眩い光があるところに、深き闇があるように、白き大陸の正義の前に、黒衣の男が率いる手勢が立ちはだかる。

 原作版『誰ガ為のアルケミスト 聖石の追憶 獅子王の進撃編』が、舞台の為に新解釈・再構成された新たなる歴史。まだ誰も知らない物語が今、幕を開ける――。

 

 どうでしょう。このあらすじ理解できたでしょうか。実際見てみると段々ベタな話だとわかって呑み込めてくるのですが、理解出来たとて真剣に見るのはなかなか難しい。

 サテライト制作の劇場版アニメは見たことあったのですがキャラ誰も被らない。というよりそこにも出ていた重要人物の死後の物語っぽいです。

 要するに象徴(オールマイト)を失ったヒーローたちと、こちらはこちらで矜持を持ったヴィラン連合の小競り合いなんだなとヒロアカに重ねて納得。

 正義と悪の抽象的な問答を前のめりに見せるのはなかなか難しいので、いかに美男美女がエッな衣装と格好良い武器で「それっぽく」ふるまうかを堪能する、ザ・2.5次元ですね。単調に感じてしまった理由は場面転換による起伏の無さもあると思う(トワツガイみたいに舞台がグルグル回ってればまた違ったかも)。

 我儘な客なので、『双牙』では「アドリブで誘い笑いするの早い早い」と思ってたけど、本作では「全然キャラ覚えられないからもっと早くアドリブコーナーやってください!」となってたし、現に笑いに走るとそこそこ息抜きとしては楽しい。それでいいのか本編。

 最終的に正義と悪の抽象的な問答に行動の選択で回答を出すのは悪くないかとは思いますが、何度も見てきた話のような気も。

 2公演あるんですけどあまり違いわからなかったです。途中の小競り合いでスポット当たるキャラが変わるのかな。

 カグラもひたすらビジュの良さで目を惹きますが、さしたる殺陣もさしてもらえず添え物のような扱い。

 

 本作のハイライトは本編よりむしろ、「コロナで公演中止になったけど、全公演演じて配信した」というスタイルではないでしょうか。加えて、この映像収録の為にも公演している。

 なのでアドリブ時に観劇してるスタッフの声や時に野次が入ったり、特典についてるアドリブコーナー全種やアフタートークそのものが、2020年春に舞台の現場で起こっていたことの記録として面白い。大赤字だという内情も本番中に吐露されるw。

 Pがめっちゃ出張ってて、舞台ってお山の大将気取りやすい空間なんだなと、ハラスメントの温床であることも妙に納得はいってしまいました(このPがそうということではなく)。

 

 本編よりアドリブ面白かったなー。

 萌香ちゃんの(緊張してたらしいが)全力で男に媚びうる可愛い仕草。これで落ちない人間男女問わずいないだろうと、見てはいけない顔を見てしまった気分。

 また2.5次元に稀に混ざっている全方位エンターテイナー、カラマリの富田翔さんなんかが顕著ですが、『はめステ』のハプニングさえ見落とさず拾って笑いにしてた三浦海里くんも忘れ難く、その海里くんが本作にも出演。

 アドリブコーナーで自分の確定申告還付金額を叫ぶという謎サービス精神を発揮して、流石に笑いました(Pから「イケメンはすぐ大声で笑い取ろうとする、それしか出来ねえからな!」とイジられてるのも草)。

 

 

 現在視聴可能で未見の舞台、残すは『少女ヨルハ』だけ。『パリピ孔明』公演直前、なんとかここまで間に合いました。

1+1 ≒ 2.5 - 『「少女☆歌劇レヴュースタァライト」 2nd STAR LIVE ”Starry Desert”』

2018年、私たちのことを『まったく知らねえ』って人も沢山いる訳ですよ。

 うちらって、めっちゃカッコいいやん?

 殺陣もするー、歌も歌うー、ダンスもするー、舞台もしちゃうー。

 練りこまれ過ぎやん?

 こんな私たちをどんどん知ってほしいなって」 --小泉萌香

 

2018.12.22.パシフィコ横浜 国立大ホール.

スタァライトの大規模イベントの中で、唯一未見だったライブ鑑賞しました。

単独での巨大ステージも初では?

 

「今から振り返ればうんとあどけないのに、既に舞台度胸は備わっている」という旬の時期の九九組が最初からずっと初々しく、同時に頼もしい。

それは九九組としては新人でも、それぞれの積み重ねてきたキャリアを持ち合わせているから。しかしこの座長おぼこいな。

 

1.星のダイアローグ

2.よろしく九九組

3.舞台プレパレイション

 

B組舞台創造科も登場しての『舞台プレパレイション』、実家のような安心感を覚えるこの曲の後で「初披露させていただきました」でまずびっくり。

その後、アニメBD特典曲を一気に初披露。

この時点でTVアニメのBDもまだ1巻しか出てないという。わからない。リアルタイムで知らないので、この時のスタァライトの規模感やファン層、需要のされ方など、結局さかのぼって知ることはできない。

過去ァライトに触れている時のこのもどかしさとはいつまでたっても仲良くなれなさそう。

TVアニメは見てたのになぁ。

一体どうしたらもっと早く沼ってこのパワーを浴びることが出来たのか考えるのですが、どんなパターンを通っても「その金銭的余裕はその頃なかった」でポシャるのが悲しみです。それでも一番ありえるとしたら、舞台1st見てYouTubeも経た上であの1st LIVEの現地にいたら沼れてたのかも知れない。

同時に何故TVアニメだけでは沼らなかったのか、このライブを見てその理由もわかった気がしました。

 

4.恋は太陽 ~CIRCUS~

5.My Friend ~Arrie~

6.you are a ghost,I am a ghost ~劇場のゴースト~

 

劇ス後沼りたての時に見て深く刺さった『劇場のゴースト』、まさかの初演だったんだ。舞台に憧れてこの世界に入るも声優界でやっと居場所を見つけて、ブシロから懇願されて泣く泣く再び舞台への情熱を取り戻したみもさんが演じることの業。

スタァライトは夢=呪いの世界で、決して前向きでハッピーなだけじゃない、というか前向きであること=決死の覚悟であるという、その後ろ暗い情熱が客席にいる自分にも居場所を与えてくれてるってハッキリわかんだね。お前の舞台に立てと。

からのFly me to the star、いきなりのまひかれスタート、6年遅れで映像で観たのに悲鳴を上げてしまいました。

 

ここでスクリーンに流れるめばち絵のエンドロール。

後のレヴューパートでくっきりしますが、舞台上のパフォーマンスが完成されているからこそ、アニメとの融合が効果を倍増させて、歌声の、演奏の、そして感情の臨場感に没入させてくれる。

 

7.Fly me to the star

8.ロマンティッククルージン

9.ディスカバリー

 

豪華客船貸切でロマンティッククルージンの九九組実写MVを作ってくれ委員会会長。

『豪華客船貸切でロマンティッククルージンの九九組実写MVを作ってくれ』

一生言い続ける。

スタァライトの厄介なところとして、「聞けば大好きなのだが曲名とイントロの違いが覚えられない」問題がある身として(それでいて他のコンテンツとは明確に異なる、いかなる時代の流行とも切り離された独自宇宙のサウンドなので一発でスタァライトだとわかる)、すぐに好きな曲名として挙げることが出来る『劇場のゴースト』『Fry me to the star』『ロマンティッククルージン』が続いてきて気分はハイに。

このBD視聴時、ほぼ寝てなくてヘロヘロの状態で寿司を買い酒を呑みという異常状態だったので、この時点で既に感極まってました。

 

ところがーー。

本編は始まってもいない、ここからだった。

ここから先、TVアニメ全12話のレヴューシーンの再現をノンストップで展開。

「ここからは劇場です。皆さん着席してください」ともよちゃんが煽り、

キリン(CV.津田健次郎)のナレーションが入り、舞台が始まる。

 

10.世界を灰にするまで

11.The Star Knows

12.誇りと驕り

13.恋の魔球

14.花咲か唄

15.RE:CREATE

16.星々の絆

17.~Star Divine~ フィナーレ

18.舞台少女心得幕間

19.スタァライト

20.星のダイアローグ episode 12

 

スクリーンに流れるアニメに合わせて歌い、踊り、闘う舞台少女たち。

愛城華恋に至ってはほぼ出ずっぱりで。

2.5次元舞台それなりに観てきましたが、ここまで「アニメの中に取り込まれる」ような感覚は他ではないのでは。それこそスタァライトのナンバリング舞台でさえもっと「舞台」に寄っていた。

思えば、TVアニメ初見時に沼れなかった理由ーー「見せ場の作画や贅肉を削ぎ落し無駄なく整えられた本編、完成度が高過ぎるが故に完結していて、外部からはとりつくしまがない」という印象はある意味正解で、多層式展開のスタァライトという全体像を構成するピースとして、『舞台』も『TVアニメ』も頑ななまでに屹立している必要があったのだと。

思えば失敗しているメディアミックスは片方、あるいは双方が「0.7」や「0.5」くらいの完成度でもう片方に寄りかかろうとしていたのではないか。

互いに等しく「1」の完成度を持った後景のアニメ、前景の舞台少女たちが同時に現出した時に、1+1は2に付随する新たな感慨をその場に生じさせる。

「舞台で待ってて」

完成されたアニメの中でアニメのキャラに呼びかけられた言葉をここで演者が客席に呼びかける時、アニメの立体化は真に成ったのだと思いました。

そしてアニメではエピローグに流れる『星のダイアローグ』の最中、双葉が客席に合図して観客が立ち上がるーーああ、ここのお客さん達アニメの中に入った! 

 

ENCORE

21.願いは光になって

22.約束タワー

23.スタァライトシアター

 

そして初披露の『約束タワー』。

この歌詞が凄くて、あどけないあの頃の九九組たちが『あどけないあの頃の私たち』を振り返って、そして未来で見ている観客に『約束タワーで待ってて』と呼び掛けてくる。

スタァライトの楽曲の多くがそうであるように、「過去」→「現在」→「未来」と流動すると思い込んでた時間の概念が壊れて、等価に存在する「過去」「現在」「未来」が互いを照射し合っている、そのすべてに私と彼女たちが偏在する。

 

スタァライトのライブに参加した際にいつも過剰に鼓舞される、あの過去と未来が同居するような不思議な気持ち。そのコアの部分の原典にして、2.5次元の一つの極致のようなライブでした。

 

※ばなながカメラに向かって「未来のあなたに言ってます」と呼び掛ける一幕があって、あの瞬間をスタァライトのメモリアル映像とかで使ってほしい!

朗読劇『私の頭の中の消しゴム 15th Letter』

4.11(木)よみうり大手町ホールにて.

日本の連続ドラマ『Pure Soul』、及びそのリメイク作で日本でも大ヒットした韓国映画私の頭の中の消しゴム』を原作に、15年間続いてきた朗読劇。

その15年目最初の公演に小泉さんが出演されたので観劇して来ました。

お相手は元歌のお兄さんとして有名な横山だいすけお兄さん。横山さんのファンダムらしき集団がお子さん連れだったのが少し面白かったです。

 

家の外観を思わせるセットを背景に、そのセットが家の「中」にも「外」にも取れる仕組み。

まず小泉さん演じる薫、横山さん演じる浩介は互いの朗読劇の台本(日記)を手に取って読み進める。

いよいよ二人が出会うところから自分の台本へと持ち替えて本編スタート。

全編通して、台詞の前に日付を読み上げ経年を感じさせる効果が強烈。

お話はもう有名なので紹介するまでもないかも知れませんが、直球のメロドラマとしての男女の出会い、衝突から恋愛にいたるまでをストレートな喜怒哀楽で描き、幸せなゴールインを迎えてから、薫を若年性アルツハイマーが襲う、というよりすでに蝕まれ始めていたことが明らかになる。

前半ではだいすけお兄さんの芝居に笑いを堪えたりして、リラックスした表情さえ見せてくれた小泉さんですが、後半の冷静に努めようとしたり諦観に囚われたりする健常時と幼児退行したかのような健忘時のお芝居の緩急が圧巻で、なまじ「綺麗な容姿」と「幼い愛らしさ」を行ったり来たりすることが魅力な(そのことを自覚されている)小泉さんが演じるからこそ、普段のチャームさえ残酷な現状として現前するので、うわ助けてくれ、ここから逃がしてくれと動揺してしまいました。

病状を通告されたあと、スポットライト当たる小泉さんの完全なる「絶望」の無表情、無言のまま何十秒も会場を無音が支配するあの時間。観客にそこから先の覚悟を強いる沈黙。

当日は平日の日中、決して多いとは言えない客入り、言い換えればみんな目の前でこのお芝居に対峙して、不要な音すら立てられない、目を逸らそうものならその態度すら役者に見透かされるだろう緊張感を強いられる。

舞台って、本当に文字通りの意味で「役者と観客がいて成り立つ」場で、つまりこちらも油断してはいけないんだと思い知らされました。

次第に「催涙弾を投げ込んだよう」という定番の表現がぴったり当てはまるような啜り泣きが会場を支配していき、それでも容赦なく芝居が続くことで、逃げようのない病気というものがそこにただ展開し続けます。

 

映画版は今はない津田沼パルコの最上階の、さらにとっくになくなっていた津田沼テアトルシネパークで鑑賞していたのですが(映画館の無料鑑賞券が当たって、普段あまり通わない映画館に行ったことでドキドキしたのを覚えている。二番館的な形態で、封切り時ではなかったかも知れない)、その時と感想はほぼ同じ、「メロドラマ的なチープな展開を、悲劇の総量と畳みかけで圧倒してくる」作品。

後日、それぞれの推し目当てに他の回を鑑賞したフォロワーさん達の感想で、「彼と彼女の職業をしてその言動はおかしい」「実際目のあたりにしたこの病気の身内の動向としてはありえない」など冷静な指摘が入り、実はちょっと安堵したというか腑に落ちるところもあったのですが、その違和感を押し切られるほどに小泉・横山ペアの相性の良い芝居に打ち震えていました。

(15年も続けているのであれば、細かくブラッシュアップしても良いのではとは確かに思うし、最初の日記の交換も終盤に活かしようがある気がした)。

後半は小泉さんに圧倒されましたが、前半は横山さんの教育テレビ仕込みの明朗な、観客に語り掛けてくるようなお芝居のお陰で朗読劇の世界に入りやすかった点、自身の出自を上手くプラスに作用されてるのだなと、完全なる同郷の者として少し誇らしいです。

 

白眉は後半、痴呆が進み続け、それでも努力して記憶を維持するために壁に貼り付けたメモのポストイットが、一枚、また一枚と落ちていく、不条理な時間の不可逆性。

最初に一枚がひらりと落ちた時、「本当に落ちたんだな、偶然が舞台に味方してる」と思ってしまったたくらい自然だったのですが、その後最後の一枚にいたるまで落ち続けて「あ、これ仕掛けなんだ」と驚き、最後に壁かけのフォトフレームが傾いで終わりを告げる。

フォトフレームはともかく今振り返ってもあのポストイットの仕掛けはどうやってるのかわからず、本来「台本持ってる役者ふたり」という、観客にも手の内が全部見えるはずの朗読劇という場で、こちらがまったく手の内さえわからない現象が=アルツハイマーの恐怖として展開する場面、息を呑みました。

 

去年、朗読劇WARAIGOEの中の一篇で、いつになく穏やかで慈愛を湛えたオーラを放つ芝居をされていた小泉さんが「実は妊娠していた」という設定を演じきった時、「女優:小泉萌香」の新境地を視線の合う最良の席で見つめること叶い、言い様のない気持ちになったのですが、ある意味その芝居の前後にあたるような恋から愛、そして喪失にいたる女性としての小泉さんをすべて味わえてしまった気分。そんな切ない充足感と、胸に穴が開くような寂寥感とを覚えました。

 

悲劇は突き抜けるとカタルシスになる。

最後まで演じきった後、カーテンコールで出て来たお二人が、観客に対して何か言葉を放つのではなく、拍手の続く限りただ何度もステージに現れては「幸福な薫と浩介」として何度もステージからはける、、、を繰り返して、それが演出なのかもしかしてお二人の発案か、はたまた気分のままにアドリブでしたのか、こういうカーテンコールの使い方もあるのだなぁと。

あの時間がなければしんどいままでしたからね。

徹夜で仕事し、開演30分前に最寄りの駅で終えるという無茶を押し切って観劇したこと含め、忘れられない体験となりました。

 

 

余談.

 

あの限られた観客の体験と啜り泣きの海の中に雛形さん混ざってたんかいとクスッとなりました。