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より良い明日をめざして



 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。(日本国憲法 前文)
2024年04月20日
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テーマ:ニュース
カテゴリ:ニュース
昨日の欄に引用した機関誌「市民の意見」高嶋伸欣氏の記事の続きは、広島市長が職員研修に教育勅語を使用し始めたのは12年前からであったが、新規採用の職員に書かせる「宣誓書」から憲法順守の項目を外し、広島市独自の様式に変更したのは、実は40年前の荒木市長の時代であったことを明らかにしている;


◆憲法遵守抜きの「宣誓書」が下支え

 広島市役所は、なぜここまで違法な状況に対して鈍感な官庁になってしまったのか。最大の要因は、独善的な人物が、2011年4月以来の長期間、首長の座に君臨していることにある。

 だがそれだけとは思えない。松井氏の講話への抗議や撤回を求めている市民グループ、各組織などが異口同音に指摘している疑問点の一つが、これまで内部告発等がなかったことだ。

 公務員としての服務に際し、人権尊重等の憲法遵守を宣誓した経験のある者としては、納得できない。そこで、改めて広島市の宣誓書の検証を試みた。すると、同市の宣誓書の検索は不可能で、非公開同然という事態に直面させられた。

 地方公務員法の31条(服務の宣誓)は「職員は、条例の定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない」と規定している。全国の自治体では、電子版の例規集で条例も公表している。同条例では、宣誓書を条例の一部分とする「別記様式」で示し、その宣言書には憲法遵守を含む文言を明記しているのが通例だ。

 ところが、広島市の服務宣誓条例には「別記様式」がない。代わりに、条例本文で、「任命権者の定める様式の宣誓」を義務付けている。任命権者とは市長のことだ。「別記様式による」としていた条例が改定されたのは、荒木武市長時代の1979年だった。以後、広島市では宣誓書の文面については、市長の専決事項となった。やがて1983年、荒木市長によって、宣誓書の全文が改変された。市議会などでの議論もなく、法治主義とは相いれない、密室同然の市長の恣意的便宜的な手順によってだった。改変後の宣誓文には憲法遵守の文言だけでなく、厳格に定義された用語頽はほとんど含まれていない。

 なぜ条例改定から4年後の全面改変なのか。市側は「1980年に政令指定都市へと発展を遂げたことを機に熟慮の上」「1983年に改め、以後40年近くにわたり用いており、良い宣誓書であるとの評価もあるところです」(2021年9月27日、市議会総務委員会での企画総務局長答弁)としている。

 政令指定都市への移行などでは、諸準備を数年前から進め、移行の時には関連規定の改定を済ませておくのが普通だ。1983年の改変の根拠を、1980年の制度変更とするのは、不自然すぎる。

 前の総務委員会で宣誓書に憲法遵守の文言を除いた点を衝かれた企画総務局長は、概略次のように答弁した。「宣誓書にある国際平和文化都市は、最高目標の都市像として掲げている。そこには当然憲法の理念がそのまま流れ込んでいるものと考えます」と。理念が「流れ込んでいる」とのあいまいな表現に、「そのまま」という語を組み込ませている。論理性がない。それに議会にも諮らず、電子版での検索も不可能にしている。内部文書扱いの宣誓書を、誰にいつ見せて、「良い宣誓書」との評価を得たのか。密室での恣意的運用を証明したに等しい。

 広島市の現行版宣誓書は、その策定過程が不明朗な点で際立っている。そのことが、宣誓書からの憲法遵守文言欠落と密接不可分の関係にあるように見える。

 これら脱法・違法な手法によって、広島市職員は、憲法遵守、市民等への奉仕者理念を明確に意識する機会になる宣誓を骨抜きにされ、40年を経過した。「爾臣民」を引用した前代未聞の違憲違法な講話の存在が、12年間も外部に知られなかったのは、これら不公正な状況に市役所が覆われていたからこそだった。

◆記者も市民も「爾臣民」に無反応

 それだけではない。本件にはもう一つ深刻な問題点が潜んでいる。それは、昨年12月以後の各紙報道や論評、さらには批判や抗議をした市民団体などでも、「爾臣民」の引用を特に問題視している様子がほとんど見えないことだ。

 そもそも本件は、全国規模のメディアの記者たち対象の11月16日の懇談会で、研修に用いた紙資料(A4版、19ぺージ)を市長自ら配布したのが発端だった。その中の勅語引用部分を問題視した初報道は、12月11日の共同通信配信の記事だった。「読売」「日経」を除く他社が12日から後追い報道をし、全国にも知られる事態になった。

 その報道で松井講話の事実を初めて知り、東京在住の身ながら私も情報の拡散や異議の声を挙げた。やがて12月18日の記者会見で市長自身が、記者との懇談会で紙資料を配布したのが発端だったと明らかにした。そのことを、WEBで知った。そこで、懇談会はいつだったのか、広島の関係者に確認し、11月16日だったと判明し、愕然とした。資料配布から初報道まで問が空きすぎている。

 オフレコが原則の懇談会であっても、重大な事案については、即報道となった前例は多い。11日以後の報道では、教育勅語総体や「兄弟に友に」などの徳目を問題視しているものばかりだ。「爾臣民」引用の反社会性を認識していれば、もっと早くの報道に踏み切ったのではないか。

 12月14日の市議会でも、野党議員は「爾臣民」について追及していない。さらに抗議や批判の声を次々と挙げた市民団体や労働組合なども同様だ。

 本件を違憲違法事案と認識している者としては、地元の弁護士会など法律家たちの動きが鈍いのも不可解でしかない。私は、日本国憲法施行から間もなくの社会科教科書で、自由平等の理念を学んだ。人権侵害や自尊心を傷つけられた時には声を挙げるのが、主権者としての権利と義務だと高校生に30年間語り続けた。大学での教員養成でも同様だった。生徒や学生からの異論はなく、同じ思いの教員仲間との交流を重ね、教科書執筆にも参加してきた。それなりの自負もある。

 だが、松井事案によって、「爾臣民」という語に反発する意識(自尊心)が今の世の中では予想外に希薄なのだと、気づかされるに至った。我々の社会科教育は上滑りだったのか。教育勅語に関する教科書記述にも隙があったのではないか。

 松井講話が浮上させた論点は、数多くある。議論の継続を強く望みたい。


(たかしま・のぶよし/「教科書・市民フォーラム」共同代表、琉球大学名誉教授)

*非公開同然の宣言書の本文や条例改定の経過などは、宣言書改変について追及している篤志家のブログ「広島市『職員の服務に関する宣誓書』」(その1~3)を参考にさせていただいた。


2024年4月1日 月刊「市民の意見」 202号 26ページ 「広島市長が『爾臣民』を職員研修で心構えとして協調」から後半を引用

 この記事を書いた高嶋氏は、戦争が終わったときには3歳だったらしいが、我々のように戦後に生まれた者にしてみれば、「爾臣民」などという文言を見ても、ただの古臭い言葉に過ぎず、そんな言葉を発する人間が目の前にいても、今時そんな言葉を発するのは奇人変人の類だとしか思えないのであるが、松井市長は何を考えて、職員研修の教材にそのような文言を入れたのか、聞いてみたいものだ。職員研修の教材に「教育勅語」を入れておけば、やがて日本を再び天皇が統治する国家に変革できるとは、私には考えられないが、しかし、天皇が国民に対して「爾、臣民!」と呼びかけることに違和感を感じない国民が、松井市長の思惑通りに増えていけば、日本の民主主義が終わる時が来る可能性は大きいと思います。野党議員もメディアも、このような事態に敏感に反応できていないのは、やはり危機的状況であることを示している気がします。





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最終更新日  2024年04月20日 01時00分07秒


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