NGOなど通し市民の声を反映
NGOなど通し市民の声を反映尾松 亮海洋汚染削減課す条約英国北西部セラフィールドでは、1994年に使用済み閣念力からプルトニウムとウランを分離するソープ再処理工場が運転を開始し、放射性物質による海洋汚染の深刻化を懸念する周辺国からの非難が高まった。海洋汚染低減に向けた法的効力のある合意を確立し、その実現に向けた国際ルールづくりを後押ししたのが98年に発効したCSPAR条約(「北東大西洋の海洋環境の保護を目的としたオスロとパリ委員会での条約」)である。この条件に基づく周辺国からの要求を受けて、英国ではセラフィールド起源の海洋汚染削減の取り組みを実施せざるを得なくなる。その結果、問題となっていたテクネチウム(Tc)99の放出量は急激に減少した。セラフィールド起源の放射性物質の放出削減を強く求めたのは、アイルランドやノルウェーなど海洋汚染の影響を受ける国の政府だけではない。締約公会議や放射性物質に関する作業グループ会議には、環境NGOなど市民社会の代表者らが出席し、実効性のある対策を要求した。Tc99汚染の問題については、条約が発効する98年の時点から、作業グループ会議で国際環境団体グリーンピースが厳しくこの問題を追及していた。この98年の作業部会でグリーンピースの代表らは報告書を提出し、「Tc99の汚染源と放出量削減の選択肢」{Tc99のさらなる発生を防止する策}「既存放射性廃棄物から生じるTc99放出量の削減」に関わる情報を提示した。この報告書に基づき、グリーンピースはセラフィールド再処理施設におけるTc99のさらなる発生を防ぐことか喫緊の課題であることを訴えた。このような公式の場でのNGOからの訴えも、英国政府に汚染削減策を実施させる圧力となった。2010年6月に行われた小委員会では、海洋環境保護団体KIMOインターナショナルが「英国再処理施設での放出量が増えることでOSPAR条約の目標達成が危ぶまれる」という懸念を表明した。その際に小委員会の議長は、英国政府とKIMOインターナショナルの間での協議を求めている。このようにOSPAR委員会は、非政府組織を巻き込むことで市民の声を議論に反映する取り組みを続けている。(廃炉制度研究会代表) 【廃炉の時代―課題と対策―52】聖教新聞2023.1.24