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SF拡張の原理

SF拡張の原理

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2024.03.22
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カテゴリ:SF
地球の破片たち    SHARDS OF EARTH     エイドリアン・チャイコフスキー    (英国SF協会賞)


収録書:キンドル
感想・点数:
テーマ:
基調感情:
トピック;
用語集;アーキテクト=建造者、アスピラト、ベトレイド=裏切られしもの、ブロークンハーヴェストソサイエティ(BHS)、コロニー=植民地、カウンシル・オヴ・ヒューマン・インタレスツ=ヒュー=人類利権委員会、ヘゲモニー=覇権、ヘゲモニック・カルト、インターミーディアリ=媒体、インターミーディアリ・プログラム=媒体計画、インターヴェンションボード=介入議会=モーダント・ハウス、カイバーネット、リエゾン・ボード=連絡議会、ネイティヴィスト=純血主義者、オービタル=軌道体、パーセノン=パルテノン、スルーウェイ=通路、アンスペイス=反宇宙=非空(域)。
世界;アムラジ、バーレンホフ、アース=地球、ファーラックス、フォースブリッジ・ポート、フェイ・ケイヴァー=HC、ジェリコ、ロシュ、シンティリャ、タレクマ。
種族:カスティガー、エシエル(=ヘゲモニー)、ハニランブラ=ハニ、ハイヴァーズ=冬眠者族、ナエロマシ=いなご族、オグドル、オリジネイターズ=創始者族、トシアト(共生人)。
宇宙船;アセンディングマザー(AM)、ブロークンハーヴェスト(BH)、カタフラクタ(C)、ダークジョアン(DJ)、ガミン(G),ヘヴンズソード(HS)*、オウマル(O)、パイソネス(P)、ラプトリド(R)、サムファイア(SP)、サルク(SK)、サンダーチャイルド(TC)、ヴァルチャーゴッド(VG)*。
キャラ:
(VG号)ロロ・ロスタンド(船長)、イドリス・テレミア(イント)*、ケリスティナ(=クリス)・スーリン・アルミエ(弁護士)*、オリアン(=オリ)・ティモ、キッタリン(=キット)、ムソク・バルニエ(=バーニー)、メドヴィヒ(ハニの船員)、マーミドン・ソレス(パルテノン出身の強化人、もと戦艦乗員)*、ソレス執行官。
(その他)アンスピーカブル・アクル&レイザー(=かみそり)&フック(=かぎ)、ハービンジャー・アッシュ、ヘレモン、チーフ・レーリ、ルシエル・ロン、メズモン、ハヴァエル・ムンディ*、サン・シアン・パーシファー博士、ヨン・ロベリン、賢人ベアラー・サシエル、アルバス・ソリエ、モニタ・スピリアー・タクト(ソレスの戦艦上司)、リヴォ・スレニコス、ザヴィエンヌ(=聖ザヴィエンヌ)・トリノ、ディリゲイト・トライン、ボヤリン・ピター・チェヴァー・ウスカロ。
人称:3。ソレス、イドリス、クリス、ハヴァエル視点。
設定:
時系列(年表);
107B;地球の探査体、エイリアン船遭遇、最初の接触。虫に似たカスティガー人より、非空(アンスペース)、通路(スルーウェイ)、拡大宇宙について知る。カスティガーは非空航行歴100年足らず、植民規模小。人類をその一部に連れていく。ナエロマシとヘゲモニーの情報提供。
91B;人類、セカンドドーン星に最初のコロニー。カスティガー人向きで人類には向かない環境と判明。
90B;バーレンホフに人類コロニー。90%海、暖かい気候。大企業と富豪に独占され繁栄。
88B;リーフに人類コロニー。小惑星帯に希少鉱物豊富、氷の惑星。アンバーにもコロニー。水晶生態系の暑い惑星、冷却ドーム内に居住。
75B;カスティガーの支援で小コロニーいくつか。産業目的多し。輸送のカスティガー依存問題解決のため、自前の重力ドライブ開発。
72B;重力ドライブ宇宙船1号(ニュートンズバレット号)完成。
61B;森林惑星リコスのコロニーで、オリジネイター遺跡発見。
45B;ナエロマシの箱舟、コルドニエ系のコロニー襲撃、居住衛星を破壊。非公式の戦争勃発。宣戦布告なしも、双方に被害。
25B;エシエル・ヘゲモニーと接触、相互理解困難。のち、アーキテクトの警告だったと判明。オリジネイター遺跡をヘゲモニーに売るようになる。
22B;地球と人類の現状を憂うサング・シアン・パーシファー博士一派、パルテノン設立。遺伝子操作で人類改良。軍事力保有、人造人間製造。科学技術を革新し脅威になる。
5B;カスティガー船がエイリアンのアッシュを伴い来訪、アーキテクト警告。深刻にとらえる者少なし。少数派が一定の準備。
0;月より巨大なアーキテクト、地球近傍のアンスペース(反宇宙/非空)より出現。地球を面妖な渦巻き状の構造体に改造する。多くの生命が失われ、人類文明崩壊。宇宙船で可能な限りの人を避難させるも、数十億人死亡。宇宙船は様々な星へ植民(ポリアスポラ)。アーキテクト戦争開始。
15A;7年にタイタンのコロニー改造、以後周辺コロニー次々改造される。食糧不足。アーキテクトに挑むも気づかれもせず。
21A;チャームプライム星の宗教コロニー、ヘゲモニーに参加。アーキテクト排除の庇護受ける。他のコロニー、ヘゲモニーの陰謀と考え拒否。
28A;作業用ロボットを改造、ロボット兵士ハイヴを開発。
43A;ハニ(ランブラ)人と接触、クラークスワールドでの衝突事故がきっかけ。護衛輸送サービス受ける。
48A;リコスのコロニー無事。アーキテクトとオリジネイター遺跡の関係判明。オリジネイター遺物を神殿に設置し魔除けに。しかし、カリス・コミューン破壊。ヘゲモニーより、遺物の輸送に一定の方法必要との情報。やむなくヘゲモニーに依存。
51A;アーキテクト、アムラジへ。人類、カスティガー、ナエロマシ連合軍戦闘で住民避難。人類の生活水準最低に。
68A;難民船サマーク号のザヴィエンヌトリノ、十五歳、アーキテクトと交信し退去させる。フォースブリッジポート。
76A;アーキテクト交信因子特定、強化措置受けた第一世代誕生、二十歳のイドリス合格。
78A;バーレンホフの戦い。人類とエイリアンのアーキテクト防衛戦。パルテノン兵器と交信因子強化員イントが撃退。イント八名中死者三名、発狂二名。
80A;三十名のイント、アーキテクトと交信。
84A;イドリスらイント三名、ファーラクスにてアーキテクト交信成功。以後アーキテクト出現なし。終戦とともに、貧困化したポリアスポラ人類分裂、エイリアンとの紛争も増える。
88A;人類利権委員会ヒュー結成。パルテノンやヘゲモニー同盟コロニー参加。
96A;サイボーグ兵士ヒヴァーズ独立要求運動。
103A;ヘゲモニー派コロニー改宗運動と破壊工作。ヒューが排除決定。エシエルは傍観。
105A;パルテノンの肝いりでヒヴァーズ独立。人類の住めないコロニーへ移住。以後パルテノンが仲介。
107A;ネイティヴィスト運動勃発。ヘゲモニーに反発、古き良き人類に戻れという一派で、パルテノンなどの強化人も嫌う。ヒヴァーズの復讐を危惧し、へゲモンカルトのスパイ活動を恐れる。
109A;ビトレイド運動勃発。人類は裏切られた、拡張を止められなければアーキテクトに勝てたと主張し、イント、パルテノン隊員、エイリアンを批判、テロ攻撃。
110A;パルテノンのヒュー離脱、伝統コロニーからの独立宣言で和平実現。人類文明復興とともに、分断も進み、過激派やポピュリストも台頭。周縁空域で富裕層とエイリアンが入り乱れ繁栄。
123A;現在。

ミッション:
結果:
一行梗概:
四行梗概:

詳細梗概;
プロローグ
開戦歴78年、一体のアーキテクトがバーレンホフにやってきた。人類と同盟エイリアンは総力戦で戦い、住民を避難させた。ソレスは覚えてた。その場にいたのだ。ヘヴンスソード号女子部隊バシリスク課。あれが初めての戦闘だった。
コロニーには秘密兵器がある、と言われていた。人間兵器が。ソレスも戦争委員会の場で見たことがあるが、おどおどと打ちひしがれた男女の集団でしかなかった。主力艦隊がバーレンホフの防衛準備をするとき、一握りの船が、この「兵器」をすでにアーキテクトに差し向けていた。悲惨な運命を少しでも先延ばししようとして。(絶対に無駄だ。祈って何とかしようとするのと変わんない)と思った。彼女の乗るヘヴンズソード号の全員が、人類(パルテノンを含む)、カスティガー人、ハンニ人、ナエロマシ人(イナゴ人)の船とともに、サイズが月ほどもある巨大なアーキテクトに向かって進んでゆく、人間兵器を乗せたパルテノンの小さな船の群を見つめる。人間兵器とは「イント(媒介員)」のことであり、脳を切り刻まれ改造されて作られるのだと誰かが言う。イントの船が犠牲を出しながらアーキテクトの進路を変え、生還した船からソレスは上司(「母」)の命令でイドリスという男性イントを保護、イドリスは泣いている。ヘヴンズソード号のデッキ半分の住人保護に成功。「もちこたえろ!」ソレスもイドリスも、各自で体を支えなくてはならなかった。イドリスの心はどこか別のところにあり、ソレスには想像すらおぼつかない戦場で戦っていたからだ。
ひどい衝撃があり、スクリーンがしばし機能障害になった。ヘヴンズソード号が破壊され生存者脱出。しかし、彼らイントのおかげで人類史上初めてアーキテクトが破壊されたのだ。
のち、惑星側の広大な医療キャンプで、ソレスがイドリスの手を握っているときに彼は目覚めた。6年後にイントがアーキテクト戦争を終わらせ、以後アーキテクトは現れなくなる。その39年後、彼らは再びソレスを冷凍ストレージから起こし、彼女の戦闘力が必要になったと告げた。アーキテクトが再来したからではなく、パルテノンとコロニー連合が開戦の危機に瀕していたからだ。

第一部ロシュ

ソレス(視点者。以下同)
ソレスは自分の部隊が、監督官の公式護衛らしく全員がぴったり同じぴかぴかの防護服を身に着けてシャトルベイに集合するのだろうと思っていた。
タクトはソレスらを護衛につけてパルテノンの大輸送船を訪問し、外交交渉をする。タクトは2つの動議を出しているが、関税については同意を得る。もう一つの動議については審議中。この章の風景描写で、地球が巨大なソーラーパネル形に改造され、月がなくなっていることが読者に示される。
ルナステーションにいるソレスはタクトからある者と会うように言われる。ステーション下部の指定場所に行くと人に似せたエイリアンのアッシュが来る。アッシュは前回のアーキテクト襲来を人類に警告した者である。それはイントのイドリスが来ているから会うように言い、船の名と場所を告げて去る。ドッキングベイに戻る道すがら、タクトに報告したが、彼は平気な顔をしていた。ソレスは自分の職種にまた新たな役目が加わるのを甘んじて受け入れた。難民(レフュジア)──自分たちの種族が置き去りにした人類種族──の中で、スパイを務めることだ。兵士になりたいだけなのに。


イドリス
コロニー歴・後51年、戦争の真っただ中にあるとき、アムラジのコロニー世界上の非空から、アーキテクトが出現した。ヴァルチャーゴッド号でイドリスが冷凍睡眠から目覚め、駆動ドライブを調整し、他の仲間を起こしに行く。
全員が起きて作業を始める(乗組員の紹介、略)。ガミン号という輸送船(今回は乗客を運んでいる)がアーキテクトによって損傷した状態で非空に逃げ込んでいるため、修繕と生存者の救助を行うのだ。ガミン号を発見するとリングの一部が欠落し、傾いている。生存者がいれば救助しなくてはならない。
彼らは船内に掘り出し物がないか探す。ハッチを避け、壁を切り裂くが、中の空気は抜けていて真空だ。オリが次々とカーゴを開けていく。機能しなくなった冷凍睡眠槽が雑然と並ぶ。奥に進むと、むき出しの死体が見つかる。古い銃を持っており、このせいで空気が漏れたのかもしれない。ハッチの中にはおよそ200人の死体が詰まっており、パニックと狂気に襲われるさまがありありと目に浮かぶ。非空にいることが直ちに死や狂気を意味するわけではないが、そうなる可能性はある。ロロは技師のバーニイに命じる。「コンポーネント比較をしろ。古い船だが、いますぐ再利用可能な積荷がたぶんある」

3、
イドリス
コロニー歴前には、誰も健康のためロシュに行くことはなかった。ヴァルチャーゴッド号はガミン号をロシュに運び休憩するが、イドリスとろろは二人組の男に逮捕・連行される。
ソレス
パルテノン人はお忍び旅行で名高いわけではなかった。ソレスは船員データベースからイドリスを見つけ出す。イドリスとロロが逮捕され市庁舎に連行されるのを見ると、他の船員たちのところへ行き、女に協力を求める。「あんたの友達が困ってるよ」女は相手が話す間もなく言いはなった。「あんたの船長とナビゲイターが。あんたを必要としてる。……そしてあんたには、私が必要」


イドリス
マグダは地球に似た惑星で、寒いが、記述可能な生化学で成り立っていた。ウスカロと名乗るボヤリン人が官庁舎の留置場に現れ、自由人であるイドリスを「イントである以上、逃亡奴隷だ」と決めつけ、それを幇助した船長も共犯だから賠償義務があると主張する。ついてはここで元の主人の下で働けと。彼が去ると、イドリスとロロ(ロスタンド船長)はいかにして逃げるかを考える。
ウスカロはイドリスを奴隷契約下の資産として持ち去ろうとするが、クリスがメドヴィヒを伴って現れ、カイバーネットが認めるヒュー選任の代理人であることを示し、まずロロを釈放させ、次にイドリスが「ウスカロの祖父よりも高齢な、アーキテクトを追い払い非空航行を安全化した伝説的イントの唯一の生き残りであること」を示してウスカロを仰天させ、イドリスを連れ去る。「さあ、ロシュ管理区から、コロニーの自由市民のように堂々と出ていこう」クリスが静かな口調で言った。「それから全速で船まで逃げるよ」彼女は後ろを振り返り、イドリスもそうして──ウスカロのどんよりと飢えた目を見た。「ボヤリンが合法的な手段しか使わないとはとうてい思えないからね」


イドリス
ロシュ管理区の拘置房は、ロシュ・プリマターの比較的文明化された界隈にあった。彼らはボヤリンの追手の追跡を振り切り、ヴァルチャー号に乗り込む。「あら、あいつら、あたしたちを厄介払いできてせいせいしてると思うけど」クリスが言った。パイロット席に収まったイドリスは、軽くうなずくのがやっとだった。惑星の重力に抗して、ヴァルチャー号のエンジンをふかし、空へと浮上させる──鷹のようにとはいかぬまでも、せめてあと一日ぐらいは生きられる年老いた鳥のように。
「よし」ヴァルチャー・ゴッド号が大気を突き破り、ロシュの夜空に散らばる軌道上のデブリを注意深くよけながら進みだすと、ロロが言った。「おまえら、二度とこんなことさせるなよ。ほんのちょっとでもこんなクソみてえな仕事をやるにはおれはもう年を取りすぎてんだ、ベラボウめ」
パルテノンのソレスが新入りとして船に乗り込む。ボヤリンのウスカロの船が追ってくるのでフエイ・ケイヴァーへ飛び立つ。そこにも問題が待っている。なぜならそこは。
(ああ、そうとも。クラムに乗っ取られたんだ)
希望にあふれた「戦前」の時代に、人類のコロニー人たちは、とうとう最も恐れていたものに出くわした。エシエル人のヘゲモニーは、本物の宇宙航行種族で、征服されてエイリアンの主人たちに完全に支配される種族があることによって完全となる。人類が目の前の存在を理解したとき、恐怖と混乱に駆られて退却した。あの当時はだれもが、人類を動物園に追加するエイリアンの政治体制よりも邪悪なものを想像すらできなかったのだ。ヘゲモニーは、まさにそういったものを代表していた。エシエルヘゲモニーはアーキテクト襲来を警告したことで多数の人類を入信させ、植民地を増やし、フェイ・ケイヴァーはその最新植民地の一つだ。着いたらステーションで休憩予定、とりあえず眠って体力を整えようと、各自船室へ。だが、イドリスが船室に着いたとき、すでに誰かがいた。やけに神経の張りつめた表情で、ソレスが彼のベッドに座り、待っていたのである。

第二部フェイ・ケイヴァー
6(ヴァルチャーゴッド、オウマル号捜索でアーキテクト再来の証拠を発見)
ソレス
パルテノンは、地球が破壊されたわずか12年後に、完全装備の軍事力として勃興した。人類の不死鳥、天使として。設立者はサン・シアン・パーシファー。が、アーキテクトによる惑星破壊を遅延させ得るイントを開発したコロニーとパルテノンの関係が悪化し今に至る。このためパルテノンはイント研究に立ち遅れ、バーレンホフ戦役の伝説のイントであるイドリスを獲得すべく、その旧知ソレスを派遣した。イドリスはソレスの申出を拒否する。彼は数十年眠ることも年を取ることもない苦悩を訴える。最近プログラムから生み出された奴隷契約のイントはもっと症状が酷いらしいよ……イドリスはマグダンにもパルテノンにも与するつもりはない、と断言する。「だから無駄だ、あんたはとっととフェイケイヴァーで降りろ」「あらそういうわけにはいかないぜ、俺はこの船と契約したのよ」自分がこの男を操ろうとしてるのかはわからない、彼の表情が緩むと、むしろいよいよ壊れやすくなる、それを見て、人として良心の呵責を覚えるべきなんだろうかと、ソレスは思う。
「見ろ、あのポン引き野郎を」ロロがガラガラ声でがなる。船がフェイケイヴァーに近づく。この惑星は交通網が発達し、赤道周辺に集まっている。エイリアンであるヘゲモニーによる統治が決まり、ポン引き野郎呼ばわりされたヘゲモニー大使の巨大な平底船がちょうど降りて行く現場に出くわす。エシエルの代表はサシエル。空港にはカルト信者が人だかり。新しい依頼者であるラングクロウオービタルの長官ルシエル・ロンから、ヘゲモニー派住民用の衣服を積んだオウマル号が遭難したため捜索してほしいとの内容。ネイテイヴィストのテロも疑われる。合点承知の助で非空(アンスペイス)から深空(ディープヴォイド)をめざす。みな冷凍睡眠。ちょい遅れで、イドリスが去り、残ったソレスも……自分のポッドに飛び込み、貝殻状の蓋が閉じると、冷凍が始まる。
イドリス
そしてソレスは去り、イドリスはおなじみの非空の果てしないこだまを感じた。非空にはスルーウェイ(通路)が何者か(消えたオリジネイターと呼ばれる)によって引かれ、このスルーがリアル宇宙の各所をつなぎ、これに沿って文明が広がっている。通路外の非空はイントのナビゲイターなしでは航行できない。イドリスは星図制作部隊(カートグラフィコープ)所属だったがすぐに辞め、フリーになりこの船に雇われたのだ。イドリスは非空に潜む「存在」を感じつつ、オウマル号捜索に専念し、ついに発見してリアル宇宙に出る。ウーマルはそこにいたが、涙を流して感謝するクルーは誰もいないだろう。オウマル号は(アーキテクトによって?)解体・再構築されていた。花の形をした彫刻として。駄目だこりゃ、生存者がいるわけねえ。まさに戦場の光景だったが、ウーマルはその数日前にドックを出たばかりだったのだ。


イドリス
「ひとつだけ教えてくれ」ロロがしわがれ声で言った。「あれは……もう行ったのか?」オウマル号はうっかりアーキテクトにぶつかったのか。いずれにしろオウマル号の居住部分は一部が無傷なので生存者捜索に行くことになり、オリとソレスが行くことに。
それからクルーは待った。だが生存者なし。ソレスは物質サンプルを採取し、アーキテクトが原因なのかを調べることにする。
バーニイは船を捨てようと提案するが、ロロが反対した。結局、オウマル号をラングクロウオービタルのコフィンまで曳航し、休憩に入る。イドリスとソレスはあの戦争以後何をしていたかをお互いに少しずつ教えあう。
ニュースメディオタイプがアーキテクトの再来をどこも大げさに報じないのが妙に非現実な感じだった。偶然フエイケイヴァーの統治権がヘゲモニーに委ねられる儀式でカルト信者たちが熱狂しているためだ。エシエル人は動物に寄生した生物から進化したらしく、現在の姿は2枚の貝殻で、フジツボに似ている。コフィンがラングクロウに着く。ルシエル・ロンとロロが条件交渉する。数日間の守秘義務。どのようにエシエルの統治者にこの件を伝え利用するのがベストかを検討する。イドリスは思う、急がないとだめだ。1日以上いれば、ほとんどのポートが私たちを必死で排除しようとするだろうと。


ソレス
ソレスの新たな忠誠心はあくまでも目下の一時的なものだった。船員であると同時にスパイでもあるから、タクトに暗号連絡は続けている。船員たちとバーに行き、弁護士クリスと話す。パルテノンからイドリスを雇うため派遣されたと認め、何ならあなたも一緒に雇いたいと話す。そこへ大男が近づき、「オウマル号に案内してほしい、おれの主人が見たがっている」と要求する。しつこいのでソレスが殴り、乱闘になる。と、同時にバーで別の(カルティストとネイティヴィストの)乱闘が始まり、男(腰にキモい生物を貼り付けたシムビオント=共生者、トシアトと呼ばれる)は逃げ出す。イドリス、ロロ、オリがビトレイドと呼ばれるネイティヴィスト、人類原理主義者(右翼、尊人攘夷派)に襲撃されている。ビトレイドはエイリアンを排除し(コロニー)人類の力でアーキテクトを排除し宇宙を征服すべきと主張しているから、カルティストのみならず、パルテノンもイントも邪道の敵であり、テロの標的である。カルティストを襲っている二人組の乗客はネイティヴィストのシンパらしく、ナックルとナイフでソレスに襲い掛かる。この二人をソレスとクリスがやっつける。バーニーが乱闘に加わる。そこへ警備員が到着し、反ヘゲモニーの暴動者を逮捕する。カルティストの銀髪女がロロをディナーに招待する。
「教えてくれ」オービタルの閑静な通路でカルティストのあとを進みながら、ロロがクリスに耳打ちした。「きゃつめら、すでにここを支配しているのに、おれたちに晩飯と酒をふるまっていったい何がしたいんだ……おれたちゃ、何もいいもん持ってないのに」
「カルトも一枚岩じゃないのよ。今、新しいご主人様のマウスピースになるために、いろんな細胞たちが熾烈な競争を繰り広げてるってわけよ……二枚貝……もとい、エシエルは、統治するとなったらすごく放任主義なの、必要なもんが手に入りさえすりゃあ。神様のお気に入りになれれば、こそこそと甘い汁が吸えるってわけ」続いて、ソレスとイドリスの会話。「あんた大丈夫?」「今んとこは。でもバーニーが深空(ディープヴォイド)業務の件をうっかりしゃべっちまって、何とそいつがビトレイドだったんだ」深空業務をするのはイントしかいないってわけ。「いつもこうなるの?」「つまり、パルテノンでは絶対あり得ないってことか」カルティストの集まるディナー会場に着くと、ホストのヒエログレイヴが現れる。ニュースに出ていた有名人の賢者サシエルだ。料理が出る。虫のような集合生物ハイヴァーのメドヴィヒも筐体からぞろぞろと出てきて料理を貪る。サシエルは、オウマル号がアーキテクトにやられたことが明らかな状態だと知っており、ステーション管理官が没収命令を出そうとしていると話す。しかしヘゲモニーがカルティストに反アーキテクトの象徴としてこの船を示せば結束を固め支配を盤石にできる。この惑星には反ヘゲモニーの政治家がうじゃうじゃいる、敵の手に渡れば混乱が増すだろう。だから一緒にあの船を守ってくれとロロに持ちかける。没収命令を排除し、オウマル号をステーション外に移動して展示したいと。ロロは船員の意見を聴く。が、ファクター・ロンは裏切ってあの船を没収しようとしているのだからもう仲間でなく、気兼ねする必要はない。問題は報酬の額だけだ。ソレスにはパルテノンの利害を守る必要があるのでないかときかれるが、今は自分たちの生活の方が大事なので同意。ドックに行くと既にハイジャッカーどもが警備員を殺して船に入ろうとしている。例のトシアトと呼ばれる共生人もいる。また、エイリアンのハニもいる。銃撃戦が始まる。カスティガーというエイリアンがイドリスを襲う。イドリスはヴァルチャー号を操縦するため必要なのだ。カスティガーはイドリスを縦に銃撃を免れ船内へ。バーニーがトシアトを撃つ。銃撃戦でバーニーが死に、メドヴィヒのシェルもカスティガーのビームで焼け、オリのスコーピオンも破壊されるが、イドリスは脱出。しかし結局、敵はヴァルチャー号を奪い出て行ってしまう。間もなくかれらは荒れ果てたベイに残され、バーニーの遺体と、メドヴィヒの全焼した装甲を見つめていた。


ハヴァエル
ヒューの恐るべき介入委員会の委員であるハヴァエル・ムンディは、ひどい服を着ていた。チーフのラエリーが来て、フエイケイヴァーで問題が起こったと告げる。アーキテクトされたように見える難破船が見つかって騒ぎになっているから調べてきてくれ、表向きは「何でもない、ガセだった」と報告すればいい、しかし非公式に実態を確認して来い、この件はハービンジャー・アッシュが噛んでいる。ハヴァエルは聞かなかったことにして出発する。
ハヴァエル、フエイケイヴァー到着。問題の船を曳航してきたヴァルチャーゴッド号がステーションから出てその船を見せびらかしたせいで、惑星は内戦状態の大混乱。ハヴァエルが乗るカスティガーの船はステーションに接近しドッキング許可を求める。ハヴァエルは一件記録を出し、ヴァルチャー号の船員名簿その他の情報を点検する。
クリス
逮捕された後、クリスは彼らが警備員殺害の容疑を向けられるだろうと予想していた。が、サシエルの抗議で全員釈放となる。彼らは死んだ二人の葬儀をし、船を強奪したサシアトとカスティガーを調査。サシアトはアシエルの奴隷種族であるトシアという虫に似た生物と志願者とのスーパー共生体で真空でも生きられるらしい。クリスは苦労してシンティラで優秀な学生となった過去を思い負けん気を振り絞る。大学は殺伐として決闘が横行していた。クリスはナイフ使いの才能があり、ある金持ちの子息を半殺しにし逃げるようにそこを出たが、あのままいた方がよかったかもと思う。犯人の共生人はメスモンという名で、ハイヴァーのユーリが知っている人物。サーク号という船できており、その船は既に去っている。サーク号のクルーはタレクマ宛の積み荷を受け取っていた。つまりタレクマに向かった。ヴァルチャー号の行方が分からない以上、そこに行くぐらいしかすることはなさそうだ。あるいは彼らは盗まれたヴァルチャー号と同じ目的地に向かってすらいないかもしれないが、ともかく前に進むしかなかった。

10
ハヴァエル
乗客ベイから続く廊下にはピッカピカのテレビ画面が並んでいた。ラングクロウの税関で順番待ちしながらいらいらと靴を鳴らすハヴァエルは時間を持て余していたので、20人のコメンテイターがヴァルチャーゴッド号の逃亡事件をめぐって侃々諤々議論をするのを丸々見ることができた。船長の過失だと主張するトーキングヘッドも何人かいたが、支配的な意見は、正体不明の一派がヴァルチャーゴッドをハイジャックし、消え去ったというものだった。間違いなくアーキテクトされた難破船のなれのはてがヴァルチャーゴッド号のクローに挟まれている様子を撮ったものと思しい録画映像がいくつか流されていた。パニックが起こってはいたがこれを事実と認めない者もあった。誰もが思っていることを誰もが認めたくない。てなわけで。一触即発の静寂がラングクロウを支配している。まだ悲鳴を上げて避難する群衆は現れていない。現在この惑星は事実上ヘゲモニーの支配下にあるから、フエイケイヴァーへの停泊料金は鰻上りになりかねない……世論はエシエルに有利な方向に傾きかねない──ここでもここ以外でも──ひとたびこのニュースが広まれば。入国手続きを済ませ、コネを使ってサシエルと会談。「アーキテクトの証拠」隠滅事件の背景にあるヘゲモニー信者とアンチ信者(ネイティヴ主義者、攘夷派)の対立状況の説明を受ける。サシエルはヘゲモニーの信者ではなく、人類のために何が最善かを考えたうえで、ヘゲモニーにかしずくのがベストという判断をしているだけだといい、ハヴァエルも納得して別れる。しかしなおエイリアンの奴隷種族になるという結論には承服できない。次は船員に事情を聴かねばならない。最初は船員たちのホウクス(いかさま)と思っていたが、死者が2名でた以上、そこまでしていかさまを仕組む理由を見出しがたく、信念が揺らいでいる。船員たちに会うと、ハヴァエルはメディオタイプの記者という偽のプロフィールをかなぐり捨て、ヒューから派遣された捜査官だと明かすが、良し悪しで、モーダントハウス(ヒューの本部)の干渉を嫌うイドリス・テレミアは顔をしかめ皮肉を言う。彼らはアーキテクトにやられた船を持ってきたが盗まれた、やられたのはつい最近だ、以上、と証言。イドリスは自分を連れ戻しに来たのだと思い込み、「絶対に戻らねえぞ」と断言。一見若く見えるが実年齢は聖ザヴィエンヌ猊下と大差ないのだとハヴァエルは思う。「気が変わって何か知らせたくなったら遠慮なくいつでも。留守電にメッセージをいただければ折り返します」とハヴァエルは名刺を渡す。そこへパルテニの女(=強化人間兵士)登場。ハヴァエルはビビッて速攻お暇する。そして報告書を頭の中で仕上げる。「パルテノンがかかわってます。追加の指示をください」と。
イドリス
コロニーの伝統は、悲しみを短く済ませることだった。新しい仕事を探すも見つからず。ソレスはロロのクルーに留まると言い、クリスとオリを探しに行く。
ロロとクリスは、タレクマがいかにやばい場所かを講釈する。戦前に7つのスルーウェイを結ぶ要衝の地として過酷な環境を地球化する事業が行われていたが、アーキテクト戦争の難民が集まり、エイリアンもカルト信者もこぞって押し寄せ、以後、ヒューの管理のキャパを超える状況が続いていると。ヒューは法を及ぼすのを差し控え、そこをスパイ活動の場として使っている。暴力団も多数おり、ブロークンハーヴェストもその一つであると。エシエルも無法者を嫌いつつ、一目置いている。BHはしかし、オウマルに関してはオークションで高く売って利益を上げうるだろうが、ヴァルチャー号の価値は知れたものだから、買戻しに応じてくれるかもしれぬというオリの希望的観測。イドリスは思う、しかしBHに利益を与えることはバーニーとメドヴィヒを殺した犯人と結託することになるんじゃないか、みなそこが気になっているのでは? 案の定、ロロはBHへの「復讐」を口にし、キタリング(キット)にタレクマ行きの切符をいくらかかってもいいから買ってくれと言い、クルーには「おりたい奴はここでおりて構わない、おれはこれから馬鹿なことをしでかすつもりなんだ。だからおりたからって恨んだりはしないよ」と告げる。タレクマまでかかる日数は3日以上、旅費は高額になるだろう。何だかんだで全員が行くことに同意。ドックに行くと、ダークジョアンという船だけがあり、ソレスはすでにその船を執行官として徴用済み(借用)と告げる。自分は確かにスパイであるが、イドリスを説得し手に入れるのが任務だった、しかし船員になるというのも自分の真意で決めたことで、単なる偽装ではなかった、船を取り戻したいというのも自分の真意で、そのために自分の強制徴用の権限を用いたが、そのことへの反発も理解できる、だから拒否するのもあなた方の自由だと、正直に腹を割ってぶっちゃける。また、パルテノンに対しても誤解がある、単に男性に対する嫌悪から強化人間の女性を試験管ベビーとして作っているわけではなく、単に女性から始めるのが容易だからで、決してミソジニー思想からできた組織ではないと弁解する。裁決を取り賛否同数、ロロに決定をゆだねる。ロロは受諾する。イドリスはほとばしる興奮を感じた。ハイジャック犯を出し抜くというのはぞくぞくするミッションだが、何よりも頭について離れないのは、ダークジョアン号ほど洗練された宇宙船を飛ばしたことはこの世に生を受けてこの方ついぞないということだった。

第三部タレクマ
11
イドリス
パルテニの厳格な外交官であるジョイ監督官は、ソレスの伯母でもおかしくないような外見だったけれど、少なくともそれよりは10年以上あとに生まれているらしかった。ダークジョアン号の艤装が終わると、イドリス以外の全員が冷凍睡眠に入る。イドリスはバーレンホフでパイソネス号に乗った時の悲惨な経験を思い出しながら、船を虚空へ発進させる。かたやアーキテクト、こなたエンティティ、はっけよい、残った残った! 二つの超越存在を感じながら。ディープヴォイド(深空)の旅は長くかかるだろう。
クリス
「荒れてるね」クリスは控えめに表現したが、この手の状況でイドリスを扱うのはいつも難しいことだった。タレクマに到着すると、クリスのシンティラでの学友であるスレニコス検察官を通じて仲介者のシュリーム大臣に賄賂を支払い、ブロークンハーヴェストの者と会合することになる。クリス、キット(ファクターのハニとして)、ロロ(船長として)の三人が参加、ほかのクルーは喫茶店で待機する。ハニ同士が「ランドステップ」というゲームで価格交渉し、値引きに成功。「事態は全く違った方向で進展した」シュリームの人工音声は穏やかだったが、手足は興奮で小刻みに揺れていた。「アクルの宮殿への招待状──ハーヴェストのまごうかたなき統治者、アクルの宮殿だ。いきなりトップに面会できる」

12
クリス
(気味が悪いと思ってはいけない)
アクルの眷属の言葉は、ロロがだれか代弁する者を用意することを求めていた。・・・
・・・
「ええ、船長」キタリングが認めた。・・・ゲームは続いた。

13
イドリス
「この様子は気に入らないな」オリーが加速するブロークンハーベスト号の映像を見せた。・・・
・・・
ソレス
ソレスはアクセルの目盛りを下げ、ヴァルチャー号の船体や積み荷への損傷を最小にしようとした。・・・
・・・
それからメズモンは、脇腹にいくつも開いた穴をものともせずに戻ってきた。そして彼女は、自分自身にももっと大きい問題があることを悟った。
イドリス
「クリス」イドリスは言った。「後ろに折りたたみ式の座席がある。それを出して座り、シートベルトをしろ」
・・・
ソレス
メズモンはソレスのヘルメットに拳骨をたたきつけた。・・・
・・・
それからようやくオリがこじ開け、みなで中身を見下ろした。たしかに、麻薬だの宝石だのといった類のくだらない品ではなかった。偽物かもしれないが──世界の運命を手に握る手段になるかも知れなかった。

14
ふたつのコロニーの物語
リコスのコロニーは、難民の波が押し寄せる以前は、強固な環境保護論者や異星農業技術者からなる小さなこぶでしかなった。・・・
・・・
クリス
クリスは4年の間、ヴァルチャーゴッド号の外で暮らしていた。・・・
・・・
「たしかに」とソレスが認めた。「見分けられる人がいるとしても、ヘゲモニーの外には、オリジネイターの遺物の専門家はろくすっぽいない。それに、私たちそっちには、行きたくないよね?」

15
ハヴァエル
タレクマと、より広範な人類利権委員会との関係は、複雑なものだった。・・・
・・・
それから座って、一体全体どうして、ヴァルチャー号がこのタイミングでジェリコに着いたのかを調べた。

第四部ジェリコ
16
クリス
キタリングのいる区域は、人類のクルーから離れた、ハニランブラの故郷にある小さなバブルだった。・・・
・・・
「彼らにもっと大きな獲物がいるのを祈るだけ」クリスがいい、ヘゲモニーのカルト教団メンバーにうなずいた。せめてエレベーターを出るまでは、ビトレイドやカルト教団メンバーがナイフを手元に持っていられますようにと願うだけだった。

17
ソレス
ジェリコのアンカータウン(港町)は、同心円状のレイアウトで、個々の円は、次の難民の波が押し寄せるまでの、各世代の野心の限界を示していた。・・・
・・・
ジェリコの短い2昼夜が過ぎた後、ガタゴトときしむ車が小道を通ってやっと発掘現場に到着した。・・・その底に、時間それ自体の骨のように、オリジネイターが残したすべてがあった。

18
イドリス
周辺にある人類入植地の不気味なこだまのように、オリジネイターは建築に関してはたしかに同心円状のレイアウトを好んでいた。・・・
・・・
「運が良ければ、かれらはあなたたちを放っておくだろう」パルセニは付け加えた。「すまない。私にできるのはそれだけだ」

19
イドリス
ソレスは一行を木立の2メートル中に配置したが、そこに隠れたままアンカータウンの小道を覗き見ることができた。・・・
・・・
クリス
「で」オリは大きな体で、閉まろうとするハッチと格闘しながら叫んだ。。「イドリスは、私の後任としてちゃんとやれるの?」
・・・
「ハマー号、こちらはダークジョアン号。これからそちらに向かう」クリスが同意した。(マグダンの手にかかるよりはましだ。たぶん。おそらく)

20
ハヴァエル
「ハヴァエル・ムンディ?」ケリスティナ・スーリン・アルミエがきいた。「待って、ラグマンのような? <伝わった意見>の男?」
・・・
イドリス
ヴァルチャー号のクルーは必死でハマー号と通信しようとしていた。・・・
・・・
ほかのクルーはまだ全員サスペンションポッドの中にいたが、最後のモーションを反対側でやり過ごさねばならなかった。・・・そして彼らはジェリコ星系から深淵へと落ちた。

21
イドリス
というか、その計画だった。
・・・
クリス
クリスはこだまする警報、別の部屋の音と振動に目覚めた。ほかのだれかに悲劇が襲い掛かったのだ。
・・・
かれらはまだ、非空からの通常の出口がこれまで導いてきたどんな場所よりも遠く離れたところにいた。・・・バーレンホフ。コロニーのスフィアの中心。

第五部バーレンホフ
22
イドリス
戦争の78年目に、アーキテクトはバーレンホフにやってきた。
・・・
アーキテクトは死んだ。・・・銀河の反対側から見つけ出したビーコン、無味乾燥な虚空の中の里程標。

23
ハヴァエル
「あんたがこれをどんな風に扱ったのかが、既に問題になっている」ラエリー隊長が言った。・・・
・・・
ソレス
トラインの自動スプリンター・ユニットはまだ作動していて、非空の中を高速追跡中だった。・・・
・・・
「一つ困ったことがある」彼は特にオリーに向かって言った。「・・・私の上司と面接する羽目になる」

24
クリス
かれらはオリーをスコーピオンから追い出した。・・・
・・・
船が攻撃されてるんだ、とクリスはぼんやり悟った。・・・誰かが常軌を逸した偏見で、アクルーの宮殿を襲っていた。

25
ソレス
ソレスはインプラント越しに、ちっちっという荒い声を聞いた。・・・
・・・
ソレスは訂正したかった。(それをやるのは死刑執行人・・・)・・・
「ヴァルチャー号からコーディ号へ」彼女は相手の船に言った。「案内して、シスター。私たちはついていく」

26
イドリス
イドリスの記憶では、アーキテクトは死んだ。・・・
・・・
「でもだめだ、聞いてくれ」彼は声をからして言った。「聞いてくれって。全然そうじゃないんだ。あいつらは戻ってきてる。アーキテクトたちがまた現れる。感じたんだ、非空で、戦争のようだって。また戦争が起ころうとしてる」

27
ハヴァエル
パニック。悲鳴。神への祈り、無慈悲な宇宙への呪詛。・・・
・・・
イドリス
かれらはバーレンホフの後、インツを大きく広げ、人類のスフィア(生存圏)を守ろうとした。・・・
・・・
「やってくる」彼はクルーに言った。「もうここにいる」

28
ソレス
同胞たちは、これに続いて取り急ぎ開催された集会で、ソレスをヴァルチャー号のクルーとともに立たせた。・・・
・・・
イドリス
イドリスとソレスがヘヴンズソード号のブリッジに着いた時、トラインはもうそこにいた。・・・
・・・
その驚くべき巨大な塊は、かれらに非空に逃げる暇を与えなかった。・・・そして彼は船を救い、だれもがまだそこで生きていた。少なくともアーキテクトが追いつくまでは。

29
イドリス
かれらはイドリスの脳の炎症を治し、内出血を止めるため、薬漬けにした。・・・
・・・
そしてそれは去った。その巨大な塊のすべてが、現実宇宙から非空へと落ちていった。バーレンホフ星系を明け渡し、後に散らばる宇宙船と合金のデブリを残して。

30
クリス
イドリスが意識を回復したのは、クリスが番をしている時だった。・・・
・・・
ハヴァエル
ラエリー隊長は、明確な理由があって、「歩きながら話す」形での会合を言い出すタイプではなかったが、今回は、ハヴァエル・ムンディと美しい景色を眺めて回ることにした。・・・
・・・
クリス
「われわれにはこれを戦闘行為とみなす権利がある!」というのが、クルーが入ってきたとき最初にクリスに聞こえた言葉だった。・・・
・・・
ソレス
タクト上級監督官は、ヴァルチャー号のクルーの四方山話が終わった時にはもう、サンダーチャイルド号に向かった後だった。・・・
・・・
「はい、母さん!」そしてソレスは颯爽と踵を返し、歩みだした。・・・ヴァルチャー号を迎えに出ていくときには、一人ほくそ笑んでいた。

引用:
開戦78年目に、一体のアーキテクトがバーレンホフにやってきました。
・・・
「はい、母さん!」そしてソレスは颯爽と踵を返し、歩みだしました。・・・ヴァルチャー号を迎えに出ていくときには、一人ほくそ笑んでいました。





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Last updated  2024.03.22 03:25:28


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