2010年8月6日

先週は、犬郎は、米国マサチューセッツ州のケープコッドというところまで出かけてきました。

目的は大きくわけて二つです。

一つは、休暇旅行。

そしてもう一つは、じつはこれがメインなのですが、エドガー・シャイン博士の5日間のレクチャーを受講するというものです。

ケープコッドというのは、夏の間は海水浴客でごったがえす保養地なのです。冬は寒くて、ほとんどのホテルやレストランが営業休止してしまうという、夏限定のリゾート地。

ここで毎年夏の間だけ、ケープコッドインスティテュート(http://www.cape.org/)という団体が、著名な学者を集めて、セミナーを行ないます。

リゾート地での開催なので、セミナーは午前中のみ、午後は自由時間という大変ありがたいスケジュールとなってます。

シャイン博士は、ここで毎年、レクチャーをされているわけです。御年80を超えられても、博士の旺盛な行動力には頭が下がります。

ここ数年はCHANGEというタイトルでレクチャーをされていましたが、昨年からは新刊書のタイトルでもあるHELPINGをテーマにされています。博士は、このHELPINGというプロセスをご自身の過去60年間にわたる研究生活の集大成と位置づけられておられます。同書は『人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則』という題で邦訳がでています。

レクチャーは、グループに分かれてのディスカッションや、会場の参加者とのかなり白熱した質疑応答を含め、かなり知的な刺激に満ちたものでした。犬郎は参加しませんでしたが、午後に勉強会を自主的に組織したり、参加者の意識レベルもかなり高かったです。HELPINGへの理解がかなり高まりました。

日本では、キャリア・アンカーという概念を提唱された方として人気がありますが、ぜひこのHELPINGの一読をおススメいたします。

参加者は、企業の研修担当者、学校の教員、軍関係者、ケアワーカーが多かったですね。日本で、研修をすると、キャリアカウンセラーばかりが集まってしまうような気がしますが、HELPINGという講義の内容であったことも影響しているのでしょう。ところで、参加者の半数位は、シャイン博士を知らずに参加していたので、この辺りもアメリカ的だなあと思った犬郎でした。

シャイン博士は、おちゃめな方で、毎朝のレクチャーの開始時、休憩後の再開の際に、仏用鐘を鳴らされるのですね。大層お気に入りのようでした。

機会があれば、また博士の別のテーマでのレクチャーを受講したいものですが、きっとHELPINGをしばらく取り上げられるのでしょうね。


犬郎





2010年7月20日

昨日、ノッティンガムから帰って参りました。

2月1日のブログでご紹介したのですが、フィールドホッケーのボランティアのため、会社を1週間休んでお勤めをしてきたのです。

チャンピオンズトロフィーという女子の大会と四カ国対抗の男子の大会が同時開催とかなり豪華な内容でした。

犬郎の役割は、Competition OfficerとProtocol Liason Officerの2役の持ち回りです。Competition Officerは、試合のスターティングメンバーの確認、試合結果のメディアへの配布、得点王ランキングなどの統計処理といった業務。Protocol Liason Officerは、ホッケー協会やその他VIPの応接役です。

会場には、日本人はひとりだけ、まあ予想はしておりました。

なにをお手伝いするかは、職務内容記述書が送られてくるほかは、当日までまったく案内はありません。当日になっても、出席の確認と食券をもらったら、あとは「適当に人を見つけて、その人の指示に従ってください」みたいないい加減なところもあります。要するに、自分の仕事は自分で見つけないと、なにもやることがなければ、それならそれで済んでしまうような感じなのです。ヒマそうにしている人と、かなり忙しいヒトがいますが、お互いにだからと言って文句を言うこともありません。

犬郎のシフトは、毎日、朝一番から夕方、もしくは午後一番から深夜までの仕事でした。

業務の合間には、ホッケーの試合が無料でボランティアクルー特別席から観戦できます。これは役得ですね。会場には、ホッケーグッズを売るショップやファンゾーンといって子どもたちにホッケーを体験してもらうエリアなどがあってなかなか楽しめます。試合が終わった選手なども立ち寄るので、世界の有名選手とコミュニケーションをとることも可能です。ホッケーというマイナースポーツのなせるわざです。サッカーのワールドカップの会場のショップにはメッシやロナウドは来ないですよね。ジャクソン(英国)やミュラー(ドイツ)といった超一流の選手が、犬郎の近くをウロウロしてました。

さて肝心の試合のほうですが、男子の試合には、日本も参加していたので、かなり気合いを入れて応援していたのですが、残念ながら参加四カ国中の最下位に終わりました。それでも、ニュージーランドには1回は勝ったし、ドイツ・イギリスといった世界の上位チームにもそれぞれ2点差と、世界との差はかなり狭まってきたような気がします。女子は、アルゼンチンの3連覇、強豪オランダが2位でした。

犬郎がホッケーを始めたのは、高校に入ってからでした。「2回勝てばインターハイ。今年は沖縄で開催なので一緒に行こう」と言われて入部しました。在学中は、福島―滋賀―徳島の開催で、沖縄はウソでした。また、この2回が勝てずに3年間は終わってしまいました。

実際にスティックを持ってプレーするのはもう10年間ありませんが、それでもホッケーとの関わりは捨てがたく、いまだに童心に帰って試合観戦しています。2004年にはアテネ五輪のホッケー決勝を観戦してきました。

残念なのは、世界的にもホッケーの注目度が低いことですね。競技をしたことのある人には、この上なく楽しいスポーツなのに、そうでない人にはちっとも面白く見えないようです。最速200キロで飛び交うボールのスピードに目が追いつかないのと、なぜ反則なのかがよく理解できないのに、しょっちょうゲームの進行が止まるので、つまらないようです。犬郎の経験ですが、いままで、素人をゲームに連れて行って、再度、ゲームを見に行った人はいません。

競技人口が少ないのもむべなるかなです。日本では、国体の開催県が、天皇杯と皇后杯を獲得するために、マイナーなスポーツを中学や高校に援助をして数年間かけて育成します。日本の高校ホッケーの勢力地図をみると、そうした村おこし的なやりかたで成り立っていることがよくわかります。ヨーロッパにいて、よく整備されたクラブチーム組織やUNDER12くらいからのボトムアップでの選手育成方法を見ていると、羨ましいですね。選手だけでなく、コーチや審判の育成もかなり長期的に組織的に機能してます。

とまれ、犬郎としましては、今後もホッケーの人気向上と、犬郎個人の満足度向上の両方を目指して頑張ってまいります。






2010年5月8日

しばらく休んでましたが、再開します。でもまた止まってしまうかも。

久々に読んだ石光真清の手記4部作(城下の人・望郷の歌・ 曠野の花・誰のために)。

日本から届いた『坂の上の雲』のDVDを観て、(同じ日露戦役のあたりの時代背景なので)再読を決意。ようやく読み終えました。

やっぱり凄い。

神風連の乱や西南の役を間近で見て育ち、陸軍エリート軍人の職を捨て、お国のために滅私奉公し、ロシア・満州で諜報活動に奔走した人物の幼年期から老壮期までの実録です。膨大な日記などの資料を、ご子息がまとめられたものです。

困っている人を助ける日本人の国民性がいろいろな箇所に出てきて、改めて日本人の美徳の一つとして認識すると同時に、こうした美徳をのちのちにも引き継いでいかなければなあと痛感する次第。

国を出ても日本を思う心にも圧倒的に打たれます。

ロンドンにいて思いますが、やっぱりいまの日本人には、日本の現状に対する危機感とか、国を思う心だとか、日本人であるということのアイデンティティが欠落しているなあと思いました。

真清や当時の日本人が一般に抱いていた西洋列強に祖国が蹂躙されてしまうのではないかいうような強烈な危機感が、いまの政治家にも国民にもないですよね。

戦争の定義も、いわゆる武力をもっての戦争だけではなく、経済、金融、マネー、情報といった分野にまで適用されるようになってますけど、これらの戦争のいずれにも負けて取り残されたり、後進国となってしまう危機感もやっぱりないですよね。

イギリス人によく「日本はこの先どこにいっちゃうの?」的な質問をされます。ニコニコ笑って黙って聞いていると、「やっぱり落ち着く先はスイスみたいな国かなあ」、「平和でそこそこ繁栄していて、国民性は悪くないけど、どの分野でもトップじゃない。住めば都みたいな国」、「日本ってなにをするにしても参入障壁が高くって、投資も移住もできないよね」、EU全体の対日輸出高は、対トルコよりも低いらしいなどと聞くといたたまれなくなります。

こんな話を聞いて、猛烈に日本の将来を考えさせられた。いまなにかをしなければと思うようになりました。

状況が揃えばわが同胞日本人も危機感を感じて、いま一度明治の御代や戦後の復興期のような活力のある国民に戻れるのでしょうか。

中国やインドから来た人たちと話すたびに、この人たちのバイタリティーって凄いなって、その原動力はなんだろうって考えさせられるけど、

でもやっぱり負けてたまるか!!
2010年3月1日

著者について:大内伸哉(おおうちしんや)、詳細は犬郎の『労働法実務講義』(2009年12月29日掲載)の項を参照されたい。

サブタイトルに労働法入門とあるが本当の入門者である。紹介されている判例にも、判例名や所収判例集などの情報がないので、本書をきっかけに掘り下げて情報にあたる人の便は予定されていない。

内容的にも、人事の労務担当には、常識レベルの内容なので参考とはならないと思われる。

本書を読まれた方は、かなりのことをしないとクビにはならないとの実感を持たれると思う(とくに懲戒解雇)。みなさんの実感値と比較されるとどうでしょう。

1講 ブログ
2講 副業
3講 社内不倫
4講 経費流用
5講 転勤
6講 給料泥棒
7講 内部告発
8講 合併
9講 残業手当
10講 新人採用
11講 セクハラ
12講 過労死
13講 労災認定
14講 定年
15講 喫煙問題
16講 痴漢
17講 妊娠出産
18講 経歴詐称
補講


犬郎ノート(すんません!スヌーピー自分のためのノートなので整理されてません。)

副業の際の割増賃金の取り扱い(p30)

「原則として、時間的に後にその労働者を雇ったほうの会社に割増賃金の支払い義務があると考えられ」る

副業の際の通勤労災について(p31)
「2006年4月以降は、「就業の場所から他の就業の場所への移動」も「通勤」に含まれることにな」った。

「会社は、どうしても辞めさせたいと考える社員がいるときは、その身辺を調査してなんとかして規律違反を探し出すでしょう。…中略…会社が本気になれば、あなたを辞職に追い込むことはそれほど難しくない」(p72)

公益通報者保護法の保護要件(p80)

会社への内部通報の場合には保護される要件が最も緩く、監督官庁への通報はそれに準じる、会社の外部(報道機関等)への通報となると保護要件が厳格になる。

外部への通報が保護されるためには、

①会社に内部通報すれば報復されることが目にみえている
②証拠隠滅のおそれがある
③会社に通報したのに対応してもらえなかった
④個人の生命・身体に危害が発生する窮迫した危険がある

労働法はぎりぎりの局面では、会社法の前に無力(p88)

どこまでやったらクビになるか―サラリーマンのための労働法入門 (新潮新書)/大内 伸哉

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2010年2月19日

R25の編集者(うち編集長)の本。制作秘話というほどの深遠なものはない。案外軽いのりで作れるのだなぁという印象あり。リクルートだからできたという感じですね。「失敗してもクビになるわけではない」というのが、よくも悪くもR社の勢いの原点なのでしょうか。

犬郎の大好きな高橋秀実については、言及がなかった。残念。しょぼん

第1章 少人数の組織で「業界常識」に立ち向かう
第2章 M1層はホンネを語ってくれない
第3章 M1層に合わせた記事づくり&配布作戦
第4章 世の中のちょっとだけ先を行く発想術
第5章 M1世代とM1商材を結びつける
第6章 さらにビジネスを広げるために


犬郎ノート(すんません!スヌーピー自分のためのノートなので整理されてません。)

「M1層」=二十歳から三四歳の男性。(p4)
対象読者層をM1層に特定した。新聞は読みたいが、読んでいない層。

テレビでは視聴者について独特の区分けがされており、これが広告やテレビ業界では常識化されている。ビデオリサーチ(視聴率調査など各種メディアに関する調査、生活実態調査などを実施する調査会社)が設定している分け方で、業界ではこの視聴者区分を「標準ターゲット」と呼ぶ。
その区分とは、「世帯」「個人全体」「男女4~12歳」「男女13~19歳」「男20歳以上」「男20~34歳」「男35~49歳」「男50歳以上」「女20歳以上」「女20~34歳」「女35~49歳」「女50歳以上」および「世帯主」「主婦」である。

これらは

「男20~34歳」:M1層
「男35~49歳」:M2層
「男50歳以上」 :M3層

「女20~34歳」:F1層
「女35~49歳」:F2層
「女50歳以上」 :F3層

「男女13~19歳」:ティーン層

と呼ばれている。
Mは(Male、男性)、Fは(Female、女性)という意味である。


普段は自意識過剰で、背伸びして、自分を大きく見せようとしている。でも、ポロッと皮をむいたら、真剣で、まじめに生きている「男の子」。(p59)

梅干にM1層をたとえて、「梅干には薄い皮があります。でも、その皮をブチリと破ると、中身がブヨっと出てくるのです。そして、奥のほうに、堅い芯がある。」(p60)

格好の付け方が、男っぽいものではなく、何かすごく中世的な、やり気のなさそうな感じの格好の付け方(p62)

彼らは、実は疲れているのではないか。…中略…時代が変わり、未来への希望や夢が単純には持ちにくくなった世の中で、彼らは彼らなりに奮闘している(p63)

M1層の成長の軌跡は、日本の苦しかった時代とリンク(バブル崩壊、大企業の倒産、終身雇用や年功序列の崩壊、不祥事など)(p68)

R25でやってはいけないこと。①「知ったかぶりをしない」、「遊び心を忘れない」、「無責任に頑張れとは言わない」(p72)

「M1世代のビジネスマンは、情報に敏感で、多忙な中、時間を有効に活用したがっている。その内面は、自分の価値観に一番関心があり、自意識過剰でカッコつけ。そこそこイケてると思っているが、確信はない。顔には出さないが不安感もある。だから実は助言がほしい」(p73)

帰りの電車の中で読んでもらう(p78)

同世代の成功者のインタビューは読みたくない→40代前後の成功者たち(p87)

R25指定(映画の検閲を意識したネーミング)

内田樹の引用「資本主義というシステムはもはや終わっている…でも、終わっているからといって、すぐに退場を迫るというのも、難しい。なぜなら、その昔のシステムが、何十年にもわたって安定した社会をもたらしてくれたこともまた事実だからです。ならば、そのシステムに敬意を表しながら、新しい時代を迎えなければいけない。それが、人間本来の在り方なのではないか」これを内田は「弔う」と表現している(p194)

「R25」のつくりかた (日経プレミアシリーズ)/藤井 大輔

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2010年2月16日

この鬼十則、だれかに貰ったものなので、原文と一致しているのかは怪しい。

しかし、いいこと言ってますな。

ロンドンに来て7ヶ月。どれだけできているか鬼と照合してみる。

うーん。見事にすべて出来ていないような気がする。

いい機会なので、しっかり頭に入れて取り組んでみよう。

この社則ができたのは、戦後間もない1951年というから、もう半世紀以上が経っている。英語版も流通している。

「軍隊的な」との解説もあるが、たとえば5番などは、英語版では、「殺されても放すな!」とまでは書いていない。

また、6番などは、かなりの意訳だと思う。

この6番則の「引きずり回せ」だが、犬郎の身近に、ものすごく強引なイギリス人で、周囲とは摩擦だらけだが、結果としては誰もできなかったプロジェクトを成功させた人間がいた。かれは、周りがなにを言っても、自分のやり方を曲げようとせず、聞く耳を持たなかった。ゆえに、周りの人間は、その強引なやり方や非常識と思える発想に辟易としていた。そして、その彼の尻拭いみたいなことを余儀なくされていた。摩擦だらけだったのだ。しかし、気づけばプロジェクトは成功していた。日本人の同僚には、彼のような振る舞いは到底できまい。曰く、「彼だからできたのだ」と。

"Lead and set an example for your fellow workers."を「導き、仲間に範を垂れる」と読むと、日本語の原文の「周囲を引きずり回せ」とはニュアンスが違うようだが、真のLeaderに求められるのはこの6番なのだろうか。敗戦で自信を喪失した日本人のなかにも、この鬼十則のような社則を作る経営者がいたんですね。いまの時代はどうでしょう?

犬郎は思う。6番則を実行するのは10番則と同じぐらい難しい。でもやらねばと。いつか、この十則では不十分と言える自分の姿を信じて!!

言葉としては、研ぎ澄まされた美しさはないが、なんといっても気魄が伝わってくる。

電通鬼十則

1.仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない。
2.仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3.大きな仕事と取組め!小さな仕事は己を小さくする。
4.難しい仕事を狙え!そして成し遂げるところに進歩がある。
5.取組んだら放すな!殺されても放すな! 目的を完遂するまでは...
6.周囲を引きずり回せ! 引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地の開きができる。
7.計画を持て!長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8.自信を持て!自信が無いから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚みすらがない。
9.頭は常に全回転、八方に気を配って、一部の隙もあってはならぬ!サービスとはそのようなものだ。
10.摩擦を怖れるな!摩擦は進歩の母、積極の肥料だ。でないと君は卑屈未練になる。

※4代目社長吉田秀雄により1951年につくられた、電通社員の行動規範。来日したGE社長に英文版を贈ったとも言われる。

英文版 「Dentsu’s 10 Working Guideline」

1.Initiate projects on your own instead of waiting for work to be assigned.
2.Take an active role in all your endeavors, not a passive one.
3.Search for large and complex challenges.
4.Welcome difficult assignments. Progress lies in accomplishing difficult work.
5.Once you begin a task, complete it. Never give up.
6.Lead and set an example for your fellow workers.
7.Set goals for yourself to ensure constant sense of purpose.
8.Move with confidence. It gives your work force and substance.
9.At all times, challenge yourself to think creatively and find new solutions.
10.When confrontation is necessary, don't shy away from it. Confrontation is often necessary to achieve progress.
2010年2月15日

ロンドンに来て、すっかり銀行とお付き合いすることが多くなった犬郎。

それも、別にこちらが希望しているわけではないのだが、電話がじゃんじゃん掛かってきます。朝の9時前にも、午後3時以降にも掛かってきます。

各種保険や定期預金の勧誘だけではなく、口座にもいろいろとグレードがあるみたいで、「あなたが口座開設して○ヶ月経過したので、お取引状況から判断して、××カードへのアップグレードが可能となりました。」みたいなオファーも来たりします。

犬郎の場合、いちばん下位グレードのカードからスタートしたので、アップグレードのチャンスがあるわけです。まるで出世魚のようです。

その銀行員にとってはしゃべり慣れたフレーズなのでしょう。超高速で、サービス内容の説明をし始めます。

もともとのサービス内容を理解していないところに、さらにお得ですといわれても、「わからんが、よろしく頼む」としかいいようがないのでした。

そして昇格のたびに口座管理手数料(月額)がアップしていくのです。

さて、ここイギリスでは、お買い物の支払いはほとんどDEBITカードで済ませられます。これはクレジットカードとはちがって、銀行の口座から直接代金を引き去るというものです。銀行のキャッシュカードでお買い物するイメージです。

これは結構便利です。キャッシュは最低限必要と思われる分しか持ち歩きません。レストランでも、スーパーでも、役所でもすべてこのDEBITカードで支払いをします。

犬郎のロンドンに来て最初の仕事は、まずは銀行口座を開設してDEBITカードを作ることでした。

HSBC、Lloyds、Natwest、citi、RBS、BARCLAYSのサイトにアクセスして、口座開設の仮申請をしたところ、Lloyds、Natwest、RBSからは、口座開設はできないとの通知がありビックリ。

犬郎って、案外信用ないのね。

仕方がないので、HSBC、citi、BARCLAYSに絞って申し込み。citiは、あっという間に手続き完了です。あとの2行は、手続きに1週間ほど時間がかかりました。

口座の開設は、アポを取って希望の支店に出かけます。ブースに通され、銀行員と1対1で手続きします。

パスポート、年収証明、給与明細の写し、会社の紹介状、現住所を証明する書類(カウンシルタックスの通知書が一番いいみたい)など、お約束の書類を持参します。

日本の資産とか、いつごろどの程度イギリスにシフトするつもりだとか、いろいろ聞かれます。ある程度の取引実績ができたらまた連絡するとかも言われます。(でもしょっちゅう掛かってくるけども、、、)

そして最後にお約束のセリフが待っています。

「本日の、私(共)の接客・サービス内容には満足いただけましたか?犬郎さま、満足いただけたようでしたら、後日、当行からご自宅宛に送付予定のアンケートに、その旨、ご回答の上、ご返信ください。」

とくにインド人系の銀行員の場合は、しつこく念押ししてきます。「わかるっ、大変満足。大変満足にマルをしないとダメですっ」ってな感じです。

きっと、アンケートのフィードバック次第で、昇給や昇進・昇格に差がつくのでしょうね。

やはりこちらの銀行員は、日本の銀行員とはちがう。

ロンゲ、パーマ、スキンヘッド、チョンマゲもいます。

服装も自由だし、ガムをかんだりしているのもいました。耳にピアスの男性も当たり前。さすがに舌にピアスまではいませんけど、、、、

電話攻勢だけでなく、メールをつかってのコミュニケーションもあります。まるで普通に仕事でおつきあいをしているような錯覚に陥ります。

日本の銀行窓口で、口座開設したときに(たいてい窓口は若い女性が担当)、「お客様、今後なにかございましたら私のメールアドレスを差し上げますから、なんでもご連絡くださいね。」なんて言われることはないですよね。

もしあったら勘違いをする人もいるのではないでしょうか。

しかし、銀行から、「あなたとの取引実績を見て、アップグレードをさせていただくことになりました。おめでとう」と言われたら、悪い気持ちはしません。

「取引実績」って、実際なんでしょうかね。月に一度給料の入金があって、あとは公共料金やら生活費の支払いで出て行くだけなんだけど、それって本当に実績なのでしょうか。

でも、銀行員が身近にいて、いろいろと相談に乗ってくれるっていう安心感はあるんですよね。

こういう「取引実績」を積み重ねていって、個人の信用残高が増えていくと、家のローンを組んだりするときにものをいうのだとある人に教えてもらいました。

イギリスで家を買うかって?まずそれはないでしょうね。



2010年2月11日

ノッティングヒルゲートのケンタで、ドラム(足の部分)のみ2本を注文し、まずは腹ごしらえ。

タクシーでゲーテ・インスティテゥートまで飛ばします。5分で到着。

すぐにテストを渡され別室に移動します。このあたりは東京のゲーテとおなじ仕組みです。

でも問題の難易度が、最初から文章の問題です。一番下のクラスを希望する人以外は全員この試験を受けるようなんですけど、これはありですかね?

70問あるうち40問のみ解くように言われていたので、30分程度で終了。

事務所の女性がその場で採点します。28問正解。7割はまずまずか。ほっ!!

そうしたら、あとの30問もやってくださいですと。。。

是非もないので、続きに取り掛かります。うーん、ここからはかなり難易度が上がっている。こちらは、かなりあてずっぽうに片付けてしまいました。というか、たくさん考えても結果は変わらないような気がしました。

採点結果は30問中14問正解でした。

つぎは、面接です。

男性の面接官から、ドイツ語の学習歴、目的、なぜロンドンにきているのかといった挨拶代わりの質問があり、つづいて、いろいろなボキャブラリーについても質問をされます。最後に、教室について説明をしてくださいと言われ、壁の色とか、かかっている写真や絵について説明をしたのですが、しどろもどろでした。

あっという間の10分あまり。

先生と相談をして、B1.3のクラスとしました。当初の目標のクラスよりは2段階上のクラスです。もうちょっと突っ張って実力を主張すれば、上のクラスに入れてもらえたような気もしましたが、まずは、現在の力量にあったところからスタートすることに。

学費を納め、教科書を購入し家路につきました。

来週からは週2回のクラスです。

クラスメイトってやっぱりイギリス人かな!?

ちょっぴり楽しみなイヌローでした。
2010年2月11日

日本は建国記念日である。

これを、同僚になんと説明すればいいのか?

WIKIで見てみると、「日本と大韓民国のみ、設定に建国神話が用いられている。日本は記紀中で神武天皇が即位したとされる日(紀元前660年2月11日)である。また大日本帝国憲法は1889年の同日に発布された。」

なるほど、こんなことを言うと、同僚には「BC660年は、日本ではまだ神話の世界なんだね。ふーん。」とか言われそうな気がする。アメリカ人相手にはよくても、ヨーロッパでは通用しないのかも、、、

そんなことは、どうでもよくって、今日はドイツ語の試験である。

昨日、ゲーテ・インスティテゥートに電話をしたら、「明日がテストの最終日です」とのこと。「まずい、このタイミングを逃すと、次の学期まで待たねばならない。」

覚悟を決めるイヌロー。

犬郎がまじめにドイツ語を勉強したのは、かれこれ20年前のことである。さび付いているとかそういうレベルは通り越して、ほとんど初心者レベルに原点回帰しているものと思われる。

それでも、チャレンジしようと思うのは、なにかにチャレンジしたかったからである。やみくもに何でもいいわけではないので、「昔取った杵柄」を選択した次第。

さて、この試験はクラス分けのためのレベル確認のテストなので、落第があるわけではない。

クラスのレベルは、A1.1からC2.3まで全部で16レベルある。最初からA1.1でスタートするなら受験は不要なのだ。C2.3まで到達すると、ドイツの大学の語学基準は満たしていることになる。週1回程度の学習で、A1.1から開始すると、最速で4年程度(途中飛び級の方法もある)、通常は6年から8年はかかるのだ。

しかし、犬郎にとって、もっとも屈辱的なのはA1.1スタートの判定である。落第に等しい。これは避けたい。犬郎は一度はCレベルまでは到達しているのだ。

というわけで目標はB1.1、百歩譲ってA2.1(下から3番目のレベル)です。

もちろんテストのための準備はしていない。

それでは結果は後ほど。
2010年2月9日

土曜日のことだが、プリンターのトナーを買いに、ノッティングヒルゲートのRYMANに出かけた。

外は寒いと思ったので、ラグビーのジャージーにコートを羽織って、マフラー巻いて、帽子をかぶる重装備である。もちろん、手袋もしました。

ホランドパーク方面から坂を上がっていくと、いつもとは違う雰囲気である。

いろいろなコスチュームを着た人たちが、たくさん路上にたむろしている。ほとんどの人が、ビールの缶を手にしている。なかには、ビールの缶をタテに5つぐらいテープでつないで飲んでいる人がある。あれは、どうやって作るのだろう。

つながって5缶分のビールになっているのか、それとも飲み終えたものをただ、テープで下へ下へと貼り付けただけなのだろうか。

そんなことを考えていたら、そのコスチュームがイヌローに話しかけてくるではないか。なんとも微笑ましい。イギリスで道すがら話しかけられるのは、道を聞かれるときと小銭をせびられるときぐらいだと思っていたので、すこしびっくり。

ところが、どうもイヌローを挑発するような態度の人たちが多いではないか。お酒のマナーを君らは習わなかったのか。憤慨するイヌロー。

ノッティングヒルに近づくにつれ、エスカレートする挑発と罵倒。

イヌロー危うし。いったんマクドナルドに避難。

そのときである、イヌローは気づいた。イヌローの着ているラグビージャージーは、本日はワラビーズ仕様、すなわちオーストラリアのユニフォームだったのだ。

今日は、シックスネーションズだ。http://www.rbs6nations.com/en/home.php

参加国ではないオーストラリアだが、そもそもイングランドの宿敵である。というか、どの国からみてもライバルなのである。

オーストラリアというのは、人口2000万弱の国だが(ちなみにイギリスは6000万)、ラグビーは滅法強い。ワールドカップも6回のうち2回優勝している。でもクリケットもめちゃめちゃ強い。それにホッケーも強い。イギリス発祥のスポーツでことごとくイギリスをやっつけるのだから、これは不倶戴天の敵なのだ。

強いものは疎まれる。ここは、日本のように対戦相手にまで拍手をする国ではないのだ。

ゆえにイヌローは挑発される。

でもこの話はかんたん、イヌローはコートのボタンをしめて一件落着であった。ノッティングヒルゲート駅の周辺は、変装した人たちでカーニバル状態であった。

RYMANに到着し、CANONのプリンタートナーがあるか尋ねた。店員からは、「そのタイプはないな」と一言で返された。せめて、「そのタイプはイギリスでは扱ってないな」とか「ネットで検索してみたら」とかあってもいいのに、「聞かれたことにだけ答えるだけなんてサービス業合ってないんじゃないのアナタ。プンプン

いま来た道を帰っていく犬郎であった。

おわり