2024/04/19

夜のスギ林で倒木を高速道路(獣道)として利用する野ネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年8月上旬〜中旬 

スギの防風林にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞場phを自動センサーカメラで見張っていると、野ネズミ(ノネズミ)が夜な夜な登場しました。 


シーン0:8/4・午後12:07・晴れ(@0:00〜) 
たまたま明るい日中に撮れた現場の様子です。 
真っ直ぐなスギの倒木が林床に放置され、その左横で立木の下に黒々としたタヌキの溜め糞場phがあります。 
真夏のスギ林床はシダ植物が繁茂しています。 


シーン1:8/4・午後19:33(@0:04〜) 
晩に野ネズミがスギ倒木の上を伝い歩いて奥へ向かっています。 
倒木から右に跳び下りたようで、右上の林床をウロチョロする野ネズミの白く光る目が動いています。 


シーン2:8/6・午前3:21(@0:16〜) 
2日後の未明に、野ネズミが再びスギ倒木を伝って奥へ走り去りました。 
画面の上端からなぜか手前に戻って来かけたものの、結局は奥に姿を消しました。 


シーン3:8/7・午前2:23(@0:29〜) 
翌日の未明、野ネズミがいつものようにスギ倒木上を伝って一旦奥へ行ってから、なぜか途中で方向転換して手前へ引き返して来ました。 

余談ですが、スギ立木の幹に止まっている黒い2匹の虫が何なのか、気になります。 


シーン4:8/10・午前2:59(@0:42〜) 
3日後の未明にトレイルカメラが起動したときには、野ネズミはスギ倒木に乗ってじっとしていました。 
倒木上を右往左往してから手前に向かって来ます。 
珍しく倒木から左の林床に飛び降りると、溜め糞場phへ慎重に近づきました。 
約1時間45分前にタヌキが排便しに来たばかりなので、新鮮な糞便臭で嗅ぎ当てたようです。
(匂いによる定位) 
それと同時に、黒い糞虫(種名不詳)がスギ立木の根本から溜め糞phに誘引されています。 
すぐ目の前を黒い糞虫が歩いているのに、野ネズミは気づいていないのか、捕食しませんでした。 
新鮮な溜め糞phの匂いを嗅いで点検しただけで、野ネズミは左下に立ち去りました。 


シーン5:8/11・午前3:28(@1:40〜) 
画面中央の林床を左から来た野ネズミが、右のスギ倒木の上にピョンと身軽に飛び乗りました。 
そのまま倒木上を伝い歩いて奥へ向かいます。 
奥から少し戻ってくると、右の林床にピョンと飛び降りて、右上に立ち去りました。 

ところで、手前の空中に斜めに張られたクモの糸に大きな粘球が2つの連なり、暗視カメラの赤外線を反射して白く光っています。 
ピンぼけで人魂のように見えますが、静止しているので全く怖くありません。 

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
野ネズミにとってシダ植物などの下草が繁茂する林床は歩きにくいのか、それとも捕食者が潜んでいる危険性があるのかもしれません。 
スギ倒木を見通しの良い安全な高速道路として、野ネズミはよく利用していることが分かりました。 
自然界でこれほど真っ直ぐな獣道は他にありません。
倒木から下道に降りるのも、高速道路に戻るのも自由自在です。 
まるで川に架けられた丸木橋のように、頻繁に渡り歩いています。 


林業の観点からは、植林地内で倒木を放置しておくのは良くないことなのでしょう。
倒木があると歩きにくくなりますし、いろいろな作業の妨げになります。
「手入れが行き届いていない荒れた山林」と呼ばれて問題になっているのをよく耳にします。
しかし、生態学の観点からは、菌類の力によって長い年月をかけて朽ち果て土に還っていく倒木もまた森を構成する一つの重要な要素である気がします。
倒木とは樹木の遺体です。
倒木自体がさまざまな生きものに餌や隠れ家や道などを提供しています。
林内で朽木や倒木をありのままに残しておく方が生態系のバランスが保たれ、長い目で見たときに森の健康が守られるのではないでしょうか?
ただし、住宅地にすごく近い森の場合は朽ちた倒木からシロアリが発生するとまずいことになりそうですし、理想論などは言ってられないかもしれません。

つづく→ 


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アナグマの巣穴付近で餌を探すシジュウカラ【野鳥:トレイルカメラ】

 

2023年7月中旬 

ニホンアナグマMeles anakuma)の家族が転出した後の旧営巣地をトレイルカメラで見張っていると、昼間にシジュウカラParus minor minor)が現れました。 


シーン0:7/13・午前16:33・くもり(@0:00〜) 
明るい昼間にたまたま撮れた現場の状況です。 
若い二次林の林床にアナグマが掘った巣穴Rが開いています。 


シーン1:7/17・午前9:47(@0:04〜) 
モノクロ映像で被写体のシジュウカラが小さいので、1.5倍に拡大した上でまずはご覧ください。 
後にオリジナルの映像でリプレイします。 (@2:06〜)
アナグマが巣穴を掘った土砂を外に捨てる際にできる特有の斜面や溝をアクセストレンチと呼びます。 
巣口Rから右に伸びたアクセストレンチで、シジュウカラがピョンピョン跳んで移動(ホッピング)しながら地面をしきりに啄んでいます。 
採食しながら巣口Rの縁ギリギリまで行くものの、巣内には決して侵入しませんでした。 


シーン2:7/17・午後12:04(@1:04〜) 
2時間15分後の正午頃に、右手前に生えた灌木の細い枝にシジュウカラが止まっていました。(赤丸に注目) 
周囲の安全を確認すると、少し奥に生えた細い蔓に一旦飛び移ってから、地上に飛び降りました。 

今度は左側の穴Rlに入り、その少し奥でも採食しました。 
巣口Rの周囲に生えたマルバゴマキ(別名マルバゴマギ、ヒロハゴマキ、オオバゴマキ)灌木の根本で嘴を拭ったり、羽繕いしたり、落葉を嘴でめくって虫を探したりしています。 

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】
アナグマの巣穴(現在はタヌキもときどき出入りしている)にシジュウカラが繰り返しやって来る理由は何でしょう? 
監視映像を見ると、昼も夜もハエやアブが巣穴の回りを常にブンブン飛び回っています。 
アナグマが掘った巣穴の中には枯れ草などの巣材が大量に溜め込まれていて、その寝床は幼獣の糞尿で汚れて堆肥状になっているはずです。
私の嗅覚では巣口が特に臭いとは感じないのですが、それに誘引される食糞性昆虫や分解者がいるのでしょう。 
実際に現場検証すると、キイロコウカアブPtecticus aurifer)をよく見かけます。 
アナグマの巣口付近に通うシジュウカラは、キイロコウカアブの老熟幼虫や囲蛹を捕食しているのかもしれません。 


【参考文献】
櫻庭知帆; 小林秀司; 髙﨑浩幸. キイロコウカアブはニホンアナグマを対象とした自動撮影カメラの設置適地を教えてくれる. Naturalistae, 2016, 20: 57-60.


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2024/04/18

ニホンアナグマ家族群による獣道を塞ぐスギ倒木への対処法:くぐり抜け、乗り越え、伝い歩き【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年8月上旬〜中旬 

スギ防風林の中で倒木の横にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞場phにニホンアナグマMeles anakuma)が登場したシーンをまとめました。 

シーン0:8/4・午後12:07・晴れ(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の様子です。 
スギ立木の根本とスギの倒木の間に黒々とした糞塊がこんもりあります。 
夏の林床にはシダ植物が繁茂しています。


シーン1:8/5・午前0:27(@0:04〜) 
深夜にトレイルカメラが起動すると、アナグマの成獣がスギ倒木の下の隙間をくぐって右へ行く様子がちらっと写りました。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイ。 
続けて左から2頭の幼獣が来たので、先行する個体は母親♀だったようです。 
(計4頭の幼獣が居るはずなのですが、残る2頭はカメラの死角を通ったのか、あるいは単独行動をとっているのでしょう。)
まだ体の小さな幼獣は、倒木を乗り越えるのにひどく苦労しています。 
アナグマ母子の群れはタヌキの溜め糞場phには近寄らずに素通りしました。 


シーン2:8/12・午後20:59(@0:49〜) 
7日後の晩にもトレイルカメラの起動が遅れ、倒木を伝い歩いて右下へ行く獣がちらっと写っただけでした。 
顔が見えませんでしたけど、夏毛のタヌキはこんなに丸々と太っていないはずなので、おそらくアナグマの成獣だと思います。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイ。
今回のアナグマ個体もタヌキの溜め糞場phには興味を示さずに素通りしました。 

※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。

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