平成26年3月25日 衆議院消費者問題に関する特別委員会 

○穀田委員 私は、きょうは、いわゆる健康食品問題について質問します。  健康食品とは、厚生労働省のホームページによれば、法律上の定義はなく、広く健康の保持増進に資する食品として販売、利用されるもの全般を指しているものだと書いてあって、そのうち、国の制度としては、国が定めた安全性や有効性に関する基準等を満たした保健機能食品制度があると書かれています。簡単に言うと、健康食品というのは明確な定義がない。しかし、消費者は、健康の維持増進、疲労回復または栄養補助や病気予防、美容効果など、健康食品への期待を持って使っているという感じですよね。  いわゆる健康食品の市場規模、今お話しした特定保健用食品、いわゆる特保というんだそうですけれども、それを含め、どのくらいあるかということを、まず状況を教えてください。

○山崎政府参考人 お答え申し上げます。  御指摘の健康食品の市場規模でございますが、これは民間の調査でございますが、平成二十五年におきまして、いわゆる特定保健用食品を含めまして、全体で一兆八千二百億円というふうに報告されてございます。

○穀田委員 多くの国民がこれらの商品に高い関心を持っている。  大臣もお気づきかと思いますが、この宣伝というものは物すごくえげつないというかすさまじいというものがあることは御承知かと思います、副大臣が頭を下げていますが。あれは本当にひどいものなんですね、ちょっと私はどうかと思うことがあるんですが。しかし、国民が日常的に使用、利用しているということになっているわけで、テレビの影響というのは私は大きいかなと思っているんですね。  ところが、健康食品摂取による健康被害、期待した効能、効果がないことによるトラブル、さらには悪質な事業者による財産被害など、さまざまな消費者問題があります。  全国の消費生活センターに寄せられた健康食品に関する相談件数は年間どのくらいあるかという問題と、もう一つ、健康被害や注意が必要な事例が報告されているわけですけれども、実際どのような被害が起こっているかについてもあわせてお答えください。

○山崎政府参考人 お答え申し上げます。  まず第一点でございますが、健康食品に関しまして全国の消費生活センターから寄せられた平成二十五年度の相談件数でございますが、全体で四万四千三百九十八件でございます。このうち、大変多いのは、いわゆる送りつけ商法と言われるものに関する相談でございまして、これが二万九千五百二十二件となってございます。  第二点目の御指摘ですが、健康食品に関します健康被害といいましょうか、その関係する相談事例というものでございます。これはさまざまでございますが、少し、一部具体例を御紹介申し上げますと、例えば、ダイエット食品を購入して食べたところ下痢になったといったような御相談、ダイエットサプリを購入して服用したところ赤い発疹が生じたといった、そういった御相談事例があるというものでございます。

○穀田委員 今、お話、報告がありましたように、四万四千三百九十八件。これを調べてみると、送りつけという問題も、今、山崎さんから報告がありましたけれども、ふえ続けている。送りつけなどは、前年に比して二倍にもなっているという現状があります。そして、健康被害も出ている。だから、経済被害と健康被害、二つ出ているということが大きな特徴だということがあります。  そこで、過去に、消費者事故に対して、消費者庁としては、パンフレットやさらにはシンポでの啓発、ホームページでの情報提供などを行ってきたのを私も見ています。現場で起きているいわゆる健康食品被害に対して、消費者庁としてどういう対応をしているのかということですね。その点での、どういう対応をしているかということと、それらをどんな基本姿勢で取り組んでいるのかということについてお答えいただきたいと思います。

○山崎政府参考人 お答え申し上げます。  まず、基本姿勢、基本的考えでございますが、いわゆる健康食品に関しましては、やはり、消費者みずからが適切に消費行動を判断できるような、そういう消費者自身の理解が大変重要であるというふうに認識してございます。  したがいまして、その面でいきますと、まず、健康食品全般にわたりまして、この安全性等に関しますリスクコミュニケーション、そういう取り組みを進めてございます。具体的には、本年二月に全国三カ所で消費者との意見交換を開催してございまして、その中で、健康食品に関しますさまざまな全体的な状況、基本認識について、いろいろな面で情報発信を行ってございます。  例えば、この健康食品を考えた場合も、これはいわゆる一般の医薬品と違うということを認識していただいて、健康食品を病気の治療目的に用いない、さらに、過剰摂取を避ける、仮に体調不良を感じたら摂取を中止する、こういったことについても十分な理解の促進を図っていただくような取り組みを進めている、こういう状況でございます。

○穀田委員 一番最初に言った基本姿勢でいうと、みずからが判断できるように、こう言うのだけれども、私、そこはちょっと違うんじゃないかと、はっきり言って、思うんですよ。  山崎さんはそういうふうに言うてはりますけれども、やはりあれだけの相当豊富な宣伝量、しかも、先ほどありましたように、ダイエット食品でいろいろなことが起きているということを、二つ事例も出ていました。だから、誤認させることを目的としてとは言わぬけれども、それまがいのことはだあっとやっているというもとで、じゃ、別にそれと比較するつもりはないけれども、オレオレ詐欺とかそういう商法を含めて、だまされる方が悪いわけじゃないんですよね。だます方がまず悪いんですよ。だから、そういう消費者被害に遭わないように、とことん努力するというのが私は基本姿勢だと思うんですよ。  つまり、もちろん、その前段として判断してもらうというのはありまっせ。だけれども、やはり消費者庁というのは、消費者被害をなくすということが前提であって、そのために何があるべきかというふうに言わないと、みずからが判断できるようにするのが第一だと言われると、それはちょっといかがかと私は思います。そんなんでええのかということを今後のために私ははっきりさせておきたいし、そういう発言があったということは記録しておきたいと思います。  厚生労働省消費者庁国民生活センターからも、注意が必要な健康食品として、インターネットなどでも注意喚起も行われています。今ありましたように、医薬品と違うというようなことで、摂取量や摂取方法を誤れば健康被害を起こしている実態があるわけで、そこからなんですね。最悪の場合には命にかかわることになりかねぬということなんですよ。だから、みずからが判断できるようにというのは、判断できなかったら、死んでもらっちゃ困るんですよ。そこが私はちょっと違うなという気がしたんですね。  大事なのは、これらの健康被害について、消費者庁としてどういう認識で対応しているかということを聞きたいわけです。  過去には、中国製のダイエット用健康食品、天天素を約二カ月間服用していた都内の女子大生が心不全で死亡する、二〇〇五年でした。その他ダイエット用食品で報告があっただけでも、健康被害事例は七百九十六件。うち四人の死亡例が厚生労働省から報告されている。これは医薬食品局の数字で明らかなわけです。  ですから、改めて大臣に聞きたいんだけれども、このように人命にもかかわることだということで、重大な問題であるとの認識はあるかということについて聞きたいと思います。

○森国務大臣 人の口に入るものでございますから、健康食品を含めた食品の安全性の確保については、大変重要な問題であると認識しております。  食品安全基本法で条文に規定されているとおり、国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識のもとに政策が講じられていかなければならないと思っています。健康食品に関しても、かかる基本認識に基づいて、健康食品による消費者の健康被害を防止することが極めて重要であると考えております。  このため、消費者庁においては、健康被害に関する情報の収集、公表、健康食品に関する表示の適正化、そして健康食品に関する消費者理解の増進等の取り組みを進めてきたところでありまして、今後とも健康被害の防止に向けて取り組んでまいりたいと思います。

○穀田委員 今大臣からありましたように、私が山崎さんに言ったときには、みずからの判断ができるようにとありましたけれども、やはり哲学といいますか基礎はそうじゃないと思うんですね。  今ありましたように、健康保護が第一である、だから、防止することは基本だということを据えないと、その上で何をすべきかといった場合に、どういう場合でも判断できるようにする、そういう下地をつくる必要があるね、ここはわかるんですよ。それを第一に言ってもらうと、ちょっと違うんじゃないかと思うんですよ。  だって、そんなことを言い出したら、判断でけへんような、そういう判断を狂わされるような宣伝がいとまなくやられている、しかも、それと見まごうような形でやられているという巧妙なやり口があるわけでしょう。きょうはその広告の問題をしたかったのですが、それはそれとして次回にまたやるとして、そこが私は大事だと思っています。だから、重大な問題だという意味での認識が共有されたとすると、やはり、現に起こっている被害をなくしていくためにも、手を打っていく必要がある。  では、そういう被害をなくす、防止するという立場からして、政府がどういう方向に進もうとしているのかということについて次に聞きます。  安倍首相は施政方針演説で、「世界で一番企業が活躍しやすい国を目指します。」として、「企業活動を妨げる障害を一つ一つ解消していきます。これが、新たな規制改革会議の使命です。」というふうに強調しました。  この路線に立って、規制改革会議は、健康食品の機能性表示について、健康・医療ワーキング・グループにおいて、四月からわずか二カ月程度の議論で取りまとめを行って、政府は、同報告を踏まえ、六月に、いわゆる健康食品の機能性表示等を認める答申を打ち出して、各関係省庁に対し、二〇一四年度をめどにその仕組みの整備実施の要請を行っています。  これを受けて、消費者庁は昨年末から、食品の新たな機能性表示制度に関する検討会において、健康食品の機能性表示にかかわる新たな方策についての検討を開始しています。ことしの夏を目途に報告書を取りまとめる予定とのことだけれども、大臣、どのような見直しを考えておられますか。

○森国務大臣 食品の新たな機能性表示制度については、御指摘の昨年十二月に立ち上げた検討会において検討を行っております。この検討会では、規制改革実施計画、これは平成二十五年六月十四日の閣議決定でございますが、これに基づき、国ではなく企業等がみずからその科学的根拠を評価した上で、その旨及び機能を表示できるための制度を検討しているところでございます。  検討の際には、まず、消費者の誤認を招かないこと、そして消費者の自主的かつ合理的な商品選択に資すること、そういった制度としていくことが重要であると認識しておりまして、検討会において、まずは安全性の確保のあり方、そして機能性表示に必要な科学的根拠の考え方、そして誤認のない機能性表示の方法のあり方について、順次御意見をいただきながら検討を進めているところでございます。

'○穀田委員 どうもそこが、私、心配しているところなんですよ。  

機能性表示とは一体何かという問題なんですね。食品やその成分が体や健康にどう働くかということを示すものですよね。現在、おなかの調子を整えます、こういう表示ができるのは、国が審査、認可した、先ほど言いました特保、特定保健用食品のみです。ビタミン、ミネラルを一定量含む栄養機能食品は、カルシウムは骨や歯の形成に必要な栄養素ですなどと表示例が決まっています。  今やろうとしているのは、総理大臣は、安倍首相は機能性表示の解禁ということをしきりに言っていまして、これはこれ以外のいわゆる健康食品が当然対象になります。  食品成分の機能性について評価手法を検討するに当たって、消費者庁は、二〇一一年度事業、食品の機能性評価モデル事業を実施しています。その中で、特定十一成分の機能性評価について、二〇一二年四月に結果を公表しています。その中心ポイントはどのようなものですか。

○森国務大臣 御指摘の消費者庁の平成二十三年度予算事業の食品の機能性評価モデル事業でございますけれども、今回、食品の機能性評価モデル事業の評価対象とした論文について、よい結果が出た研究のみ論文として公表、評価されているという、いわゆる出版バイアスがかかっているという可能性が否定できないこと、研究資金の提供元など利益相反関連情報の記載のない論文が少なくなかったことなど、さまざまな課題があることが明らかとなりました。  これらの課題を解決するため、例えば出版バイアスの解決には、肯定的、否定的結果を問わず、結果の公表を研究計画時に約束させる仕組みの一環として、研究計画の事前登録を行うことが有効であると考えられます。  消費者庁としては、論文をもとに機能性評価を適正に行うための今後の参考となるようにしてまいりたいと思います。

○穀田委員 報道によっても、さまざまな意見が出ているということで、期待できる効果別にAからFに分類したけれども、大半がBからD、根拠不十分、期待する効果を裏づける根拠が乏しかった問題だとか、さらには、今ありました研究資金を利害関係のある企業が提供して、客観性に問題があったりする論文もあったということで、簡単に言うと評価は難しいということですわな。結局、結論は、考慮すべき課題は多いということが挙げられているんですね。  だから、今大臣からもあったように、結局のところ、食品の機能性評価及び健康強調表示にかかわるさまざまな課題が挙げられて、今後、そういう制度化する上では課題は多いということを簡単に言うと総括した、まとめたということになると思います。  私は、機能性表示をするためには、食品成分の機能性について、科学的手法を確立し、その上で科学的根拠の基準及び表示の基準を明確化することが必要だと考えます。そして、評価手法の研究段階でさえ検討課題が山積みしているにもかかわらず、そういうときに、政府は、二〇一三年度中に新制度の検討を終わらせて、二〇一四年度中に結論を得て実施する、これでは余りに拙速じゃないかと私は考えるんです。  それで、そこの意見を聞きたいんですが、その拙速と思わぬかということと、もう一つ、一番大事なポイントは何か。これは、こういう機能性表示を行えば健康食品被害というのはなくなるのか、ないしは少なくなると考えているのか。この二つをちょっと答えてください。

○森国務大臣 まずスケジュールでございますけれども、平成二十五年六月の規制改革実施計画において、平成二十六年度の結論、措置とされたところでございますので、消費者庁としては、閣議決定で示されたこのスケジュールに沿って検討を行っているところでありまして、昨年十二月に設けました検討会を開催して精力的に御議論をいただいております。その内容も十分踏まえて適切な制度設計を行ってまいりたいと思います。  そして、二点目の御質問でございますけれども、健康被害が拡大することがないように、そして、この健康被害については効果的に防止、救済をできるような制度としてまいりたいと思います。

○穀田委員 誰かて希望はそう思っているんですよ。別に、悪魔であって、これで健康被害をふやそうなんて考えている人はいないんですよ。  問題は、客観的に、今言いましたように、科学的手法をきちんとやって基準や根拠を明らかにすることが必要だ。大臣がおっしゃった最初の答弁は、要するに、閣議決定を行ったスケジュールどおりやらせていただきますと言っているだけなんですよ。それじゃ何の意味もないんですよ。拙速とちゃうか、そういう点では、きちんとやる必要があるんじゃないか、そして基準をはっきりさせてやる必要があるんじゃないかということを私は言いたいんですね。  その上で、おっしゃったのは、拡大することがないようにと。だから、ないようにじゃないんですよ。もう一遍言いますけれども、機能性表示という大転換をやった場合には、少なくとも被害が少なくなるとお考えですかと聞いているんですよ。

○森国務大臣 食品の新たな機能性表示については、先ほど申し上げましたとおり、検討会を開催しておりますけれども、その主な論点として、私は、先ほども申し上げましたけれども、まず第一に、安全性の確保、そして、機能性表示の範囲をきっちり明確にしていくこと、さらには、科学的根拠を示す場合の科学的根拠のレベルをしっかり決めていくこと、そして、食品表示制度として国が関与していくこと等の論点があるというふうに考えておりまして、これらの論点について検討会でしっかりと検討をさせていただいているところであります。  先ほどお示ししたスケジュールの中で、可能な限り精力的に、学識経験者のみならず消費者や事業者団体の皆様にも御意見をいただいておりまして、消費者被害が拡大しないような方向で取りまとめてまいりたいと思います。

○穀田委員 希望はわかりました。そういう方向でやりたいと。それは誰かてそう思っているんですよ。だけれども、そういう善意の悪魔というのがいるんでね。  先ほどお話がありましたけれども、リスクコミュニケーションをやっていると言っていましたわな、三回やったと。その三回やっている、パネラーをやっている方は、求められている機能性表示をすることが適切かということを問題提起しているんですよね、そういうやり方に対して。私は、どうも違うんじゃないかという意見なんですね。  では、この制度というものを、何を参考にそういう内容を検討しているのか明らかにされたいと思います。

○山崎政府参考人 御説明申し上げます。  まず第一点でございますが、御指摘の参考という面でいきますと、この閣議決定の内容で書いてございますが、アメリカのダイエタリーサプリメント表示制度を参考にということで、この制度についても、この制度を一つの参考にしてございます。  ただ、当然、この制度は参考にしますが、先ほど来大臣がしっかり申し上げていますように、安全性の確保を含めた検討を行ってございます。また、先生の、健康被害の関係がございますので、この安全性の確保の中で、当然、何が対象になるかに加えた上で、その後の市場の状況、情報収集、さらには危険な商品の流通防止対策、こういった点についても今回検討会において議論を行っている、こういう状況でございます。

○穀田委員 アメリカの制度を参考にすると言うんですけれども、この制度は、大臣、言っておきますけれども、安全性、有効性については強制力のないガイドラインしかないこと、これが一つ。二つ目に、表示の意味や科学的根拠の質等で有効性の実証が不十分にしかなされていない可能性があること。それから、免責表示がない不適正表示や有害事象発生時の連絡先不表示、健康被害事例の発生など、さまざまな問題点が指摘されているんですよね。  しかも、アメリカの会計検査院の報告によれば、物すごく、六千件も有害事象報告事例があって、その七割は、複数のサプリメント使用による、相互作用による被害だったと指摘されているんですね。だから、そんな、複数やったらあかんとか何かいろいろ言ったとしても、こうなるということなんですよね。  

先ほども、事業所も含めてと大臣はおっしゃっていましたけれども、事業所はどう言っているかというと、「健康食品産業の未来予測とビジネス」ということで、「動き始めた大きな健康食品市場に参入する、最後で最大のチャンスです。」ということで、ビジネスチャンスと捉えているんですね。だから、ここに安全が第一なんて一つも書いていないんです。だから、そういうのを相手にしているということを見なきゃならないんですよ。  それに対して、日弁連だとか全国消団連だとか食の安全・監視市民委員会、さらには主婦連、こういったところでは、この規制緩和に反対するという意見を出しています。  健康食品に関する問題は、健康食品摂取による健康被害、先ほど言ったトラブル、それから悪質な事業者による財産被害など、さまざま多岐に及んでいるわけです。現在やっている制度を変えるに当たって、結局のところ、どんな機能があるかというのは企業任せで、機能性表示を認めようとしているものであります。  

私は、その点では、健康食品には現状でも、皆さん、今の健康食品の、あのサプリメントから何から始まってやっている宣伝を見て、それで、紛らわしい表現で効果を想起させる商品が目立っているというのは、みんな思っていますやろ。思っていない。思っていないとしたら、よっぽど見てへんのか、それとも、そういうことについて目をつぶっているのかということになるわけだけれども。  こういうものに対して国がお墨つきを与えたら、これに拍車がかかることは間違いないと私は考えます。したがって、消費者にとって大変困惑するような表示が市場にふえて、消費者の合理的な判断や選択を害することとなって、かえって消費者トラブルを拡大することになりやしないかと思うんですが、いかがですか。

○森国務大臣 私は、食品の新たな機能性表示制度の検討に当たっては、安全性の確保を大前提とすることを申し上げております。ですので、消費者の誤認を招かないこと、そして、消費者の自主的かつ合理的な商品選択に資する制度としてまいりたいと思います。御指摘のような、紛らわしい宣伝や消費者が困惑するような表示による消費者トラブルにつながらないように制度設計をしてまいりたいと思います。

○穀田委員 これは命にかかわる問題ですから、起こってからでは遅いんですよ。私は危ないと言っている。あなたは危険がないようにと言っている。それは歴史が審判するでしょう。でも、私がそういうことは危ないよと言っていて、大臣は安全性が大前提と。大前提は当たり前なんですよ。それはそうなんだけれども、今の事態はそれを保証する事態にならないということを言っているわけですね。  

今やろうとしているのは、明らかに、食品市場の拡大と輸出拡大ということを目的に、わざわざ規制緩和ということを書いているわけですよね。この食品についての機能性表示は、何も安全性を目的としてやるんじゃないんです。あなたのおっしゃっているのは、機能性のところをやるときには安全性を第一に考えたいと言うんだけれども、目的が違うんですよ。  健康食品の機能性表示を解禁するという目的は何か。それは輸出の拡大と食品市場の拡大と銘打っているんですよ。だから、目的が全然違うんです、今の政府のやり方は。そこを履き違えちゃあかんよと。だから私は、そういう緩和じゃなくて、規制強化が必要じゃないか、主婦連を初めとした団体もそう言っているということを言っておきたいんです。  ですから、私は最後に、薬事法等の適正な適用を図って、違反した広告宣伝物の表示に対して取り締まる規制強化、それから、景品表示法に基づく措置命令等の権限付与の必要性、こういったものを訴えて、そして、複数の健康食品の利用や薬との併用にかかわる注意喚起だとか、アレルギーを持つ者や高齢者等に対して利用にかかわる注意事項の義務づけ、それから、届け出制度、登録制度の導入、最低限こういった厳しいことをしながらやらないと、制度設計を間違う、大臣がおっしゃる安全を第一にということじゃない事態になりかねないということを警告して、質問を終わります。

平成23年2月1日 衆議院予算委員会

○石破委員 日本各地で多くの災害に見舞われた方々の御労苦に心から思いをいたし、政府におかれては、迅速、適切な対応をお願いしたい。私どもも全力を挙げてこれに当たってまいりたいと思っております。
 まず、石原幹事長から申しましたが、小沢さんの問題。
 総理、この話にそろそろ切りをつけませんか。総理は在職三十年、私も二十五年になります。その多くを、小沢さんなのか小沢さんではないのかということに費やしてきた。
 きのう、小沢さんが強制起訴を受けてのコメントは、国民の皆様、同志の皆様に御心配をかけていることをおわびする。おわびをするのは御心配をかけていることじゃないでしょう。
 ずっと、この長い間、本来我々は議論をすることがもっとほかにあったはずだ。そういう議論に我々は時間を費やすことではなくて、それは新進党であり、あるいは今の民主党もそうかもしれない、小沢さんなのか小沢さんじゃないのか、そのことに物すごく時間を費やしてきた。このことの国政の停滞、これに切りをつけないと、いつも申し上げているように、財政も経済も安全保障もすべて危機管理のモードに入っている、我々はそのことにすべてを費やして議論をし、総理がおっしゃるように熟議を尽くして結論を出す、それが我々が国民から与えられた責任だと思っています。
 私たちは、国会議員をやっていて本当にむなしくなったことがある。きょう一日きょう一日、また小沢、小沢じゃない、私はこういうことをやるために国会議員になったんじゃない、そういう思いを持ちました。
 小沢さんの理想が、例えば自己責任の原則の確立とか……(発言する者あり)静かにしなさい。原則の確立とか、あるいは政権交代可能な選挙制度の確立、それはそれなりに立派なこともあった。だけれども、今問題となっていることは何だろうか。
 例えば、強制起訴を受けて、素人が何がわかる、権力をもって白となったものが素人が集まって何がわかるんだということをおっしゃいましたね。この強制起訴を可能とする法律の改正に、小沢さんはそのときいたかいないか知らないけれども、民主党は賛成をしているんだ。国会議員として賛成しているんです。国民から負託を受けた者として賛成している。それを今ごろ何だ。素人が集まったものに何の意味がある、こんな不遜なことを言っていいのか。私はそうは思わない。
 検察審査会は単なる素人の集まりじゃないですよ。資料を提供されて、それを精査して、議論して議論して強制起訴という形にしたんじゃないですか。どうせ素人なんかにはわかりはせぬ、私はこの考え方が嫌いなんです。
 子ども手当を二万六千円まけば、戸別所得補償すれば、高速道路無料化すれば、高校無償化すれば、それはみんな一票入れるはずだ、財源がつくのかつかないのか、そんなことは関係ない、権力をとってから考えればいいという考え方だとすれば、私たちは絶対にそのような考え方に賛成しない。
 政治倫理綱領というのはだれがつくった。政治倫理綱領をつくったのは、あなた方は当選していなかったかもしれないけれども、それは議院運営委員長たる小沢さんでしょう。疑惑を持たれたときは、みずから進んでその解明に努めなければならない、それが政治倫理綱領でしょう。法廷の場では、法律に触れたか触れないか、それが問われている。しかし我々は、倫理、どうなのだと国民が素朴に思っていることにこたえるべきではないのか、そして、それは国会議員としての責務だと私は思っている。
 私たちの同僚、例えば竹下元総理にしても、私は自民党は完全無欠の政党だったなんて思っていませんよ。だけれども、多くの政治家、自由民主党の政治家が、政倫審にもあるいは証人喚問にも出ました。あるいは総理が先ほどおっしゃったように、田中角栄元総理に対して、中曽根総裁、自民党総裁としてですよ、自民党総裁として議員辞職を迫った。あるいは小泉総裁、中曽根議員に、宮沢議員に引退勧告をした。党のトップとはそういうものじゃないですか。
 総理はきのうも、岡田幹事長を中心としてということをおっしゃった。ですけれども、党のトップとして、もうこれ以上国政を停滞させない、熟議をしよう、結論を出そう、そのために小沢さんと。鳩山さんがそうであったように、政倫審は出ないと言ったらおしまいなんです。議決されても出なかったじゃないですか。だとするならば、残る手は証人喚問しかないではありませんか。それが、政治倫理綱領、これに従う道ではないのですか。
 民主党代表として、御党は代表と総理を分離されたとは聞いていない。自民党でいう総総分離なんかやられたとは聞いていない。総理、あなたは民主党代表であられる。代表として、この問題にけじめをつけるべく、幹事長に任せるのではなくて、証人喚問に出よということをなぜおっしゃれないのか。おっしゃれない理由があったら述べてください。
菅内閣総理大臣 石破議員も、長い政治経歴の中で、いろいろな立場でこの問題あるいは小沢元代表との問題にもかかわってこられたことは私もよく承知をしております。また、今言われた中でも、すべてとは言いませんが、共感を持ってお聞きする部分も多々あったことも率直に申し上げたいと思います。
 そういう中でいえば、私は、九月の、これは民主党の中の代表選挙ではありますけれども、その中で、クリーンでオープンな政治というものをその代表選挙の公約に掲げて、そして党員、サポーター、地方議員、国会議員の皆さんに御支持をいただいて代表に再選されました。その方針で、党の運営、そして国政の運営にもそれを軸にして当たっております。
 そういう意味で、私は、率直に申し上げて、それに反するような形の意見、意見はもちろんあっても構いませんけれども、それは民主党としての基本的な方針にはならない形に現在来ている。そういう意味で、小沢元代表の問題は、確かに、先ほども申し上げましたように、国会での説明は私は行われるべきだと思っております。
 しかし、そのことと、では小沢元代表が今の、例えば私の政権なり党運営について、もちろん、ある程度の影響がないと言えばうそになりますけれども、基本的なところでは、決して小沢さんによって、例えば二重権力とかなんとかということには全くなっておりませんので、そういう点では、私は、一遍に越えられたかどうかは別として、かなりのところ、この長い間の問題について一つの山を越えつつある、このような認識を持っております。
○石破委員 なぜ与党の方がここで手をたたくのか、私にはよくわからない。(発言する者あり)これが明快だとも思わない。
 私は、本当にこの問題にけりをつけなければ、この国会が動かなくなっちゃうと思うんです。総理はいろいろなことを議論されたいでしょう。私たちも議論したい。ですから、党内でできることは党内でやってください。我が党としてあれこれできる立場にない。代表として、政治倫理綱領のとおりに、証人喚問に出よと言えばそれで済むことです。ぜひそうしていただきたい。総理のお答えは結構です。
 私は、国会議員になる前に渡辺美智雄先生のお話を聞いたことがある。何とおっしゃったか。政治家とは何なのか、勇気と真心を持って真実を語るのが政治家だと教わったのです。選挙のために、これもただ、あれもただといって、有権者の喜ぶことばかり言って票をとるのは、それはお世辞家というのであって政治家ではない。何が本当なのかということを見きわめ……(発言する者あり)あなた方のことを言っているんじゃないですよ。何を勝手に失礼だとかなんとか言っているんですか。政治家というのはそういうものだと教わったということを申し上げている。
 何が本当なのかということを見きわめるのはそんなに簡単なことではありません。これから先議論しますが、TPPについても国論は完全に二つに割れている。国債の発行についても、格付についても、先ほど総理がおっしゃったことと我が党が言ったことは全く違う。この予算の正当性についても全く違う。何が本当なのかということを見きわめるのはそれだけ大変なことです。
 本当のことを仮に見きわめたとして、それが国民の耳に心地よいこととは限りません。消費税を上げる、だれも喜びません。憲法を改正する、そんなことはできない、そういう方も大勢いらっしゃる。だけれども、国民の耳にたとえ耳ざわりのよくないことであっても、それを語る勇気を我々は持つべきではないでしょうか。そして、それが自分だけわかっていればいいんだというひとりよがりじゃなくて、あの人の言うことだったら本当なんだろうな、そう思っていただく真心、きざな言葉で言えば、我が身の不徳を省みず言えば、真心を持たねばならぬのじゃないかというふうに思っております。
 私は、もう今から二十八年ぐらい前になりますか、渡辺先生のその講演を聞いて余りに感激して、そのテープをもらってきて、国会議員になるまでの間、二年近く、ほとんど毎日それを聞き続けた。自分がそうであるとは思わないが、そうありたいと思って努力をしてきました。ぜひ、総理、真実を語ってください。そして、それを語る勇気を持ち、わかってもらえる真心を総理は持っておられると思うんだ、それをぜひ発言していただきたい、そのように思っておるところであります。
 最近の総理のお言葉は、どうも、よくお考えになってのものではないのではないか、そう思われます。例えば、野党が税と社会保障の一体改革に応じないのは歴史に対する反逆行為だ、そうおっしゃった。参議院の本会議の質問に答えて、いやいや、それは特定の人を非難したのではないというふうにおっしゃいましたね。だけれども、野党がとおっしゃった。歴史に対する反逆行為という、これ以上ない強い言葉をお使いになった。これが非難でなくて何ですか。
 私たちは、揚げ足をとるつもりはないけれども、協議にはいつでも応じます。我が党は、昨年の参議院において、消費税を一〇%ということを掲げた。その使い道も示して、国民の皆様方から御投票をいただいた。それ以来、党内でずっと、野田税調会長を中心として、どういう制度であるべきか、日々議論を重ねている。少なくとも我が党は、消費税を五%上げさせていただく、それは社会福祉目的に使う。そして、財政健全化責任法案、これはもう一度修正をして出しますが、これも出している。私たちは、きちんと議論をし、案をまとめ、国民の皆様方から投票もいただいている。
 総理は、参議院選挙において、自民党の数字を参考にして消費税一〇%とおっしゃった。その後、あれはどうなりましたか。その後、党内でどのような議論がありましたか。協議を呼びかけるのであれば、まず民主党の案をまとめるのが先でしょう。
 自分の党の案がなくて、ばらまきと言おうが何と言おうが、私は、ばらまきの定義というのは、要は、政府に集まった金を家計に移転する、そのことだけではGDPは一円も上がらないですね。お金を移転するだけではGDPは一円も上がらない、経済の当たり前の話です。それを、総理がおっしゃったように、お金はあるだけでは意味がないのであって、使わなければ意味がない。六割が目的外で使われ、その多くが貯蓄に回っているとするならば、そのお金は生きていますか。つまり、恒久財源がないままに経済効果が十分発現されないもの、それをばらまきと私たちは言っているのです。言葉の定義はそういうものです。
 だとして、そういうものを全部残したままで、子ども手当は差し上げます、高校無償化です、高速道路ただの社会実験は続けます、戸別所得補償ですということはそのままにしておいて、さて、税も含めた一体改革は野党と議論しましょう、それはおかしくないですか。民主党の中でこうだという意見をまとめて、自由民主党はもうまとめています、そこから協議をするというのは当たり前の話じゃないんですか。まず、協議を呼びかけるからには、民主党の議論をまとめる、それが当然だと思うが、違いますか、お答えください。
菅内閣総理大臣 基本的には、私、石破さんが今言われたことを否定するつもりはありません。
 今、社会保障については、昨年の暮れに、基本的な考え方を五項目まとめました。その一つは、先ほども議論になりましたけれども、若い世代への支援を強化する全世代型対応の社会保障とすること、それから子ども・子育て支援を強化し、未来への投資としての社会保障とすること、そしてサービス給付を重視し、雇用創出効果を高めること、そして役所の縦割りを超えた包括的支援を行うこと、そして安定財源を確保し、次世代に負担を先送りしないこと、そういう考え方を昨年まとめました。
 そして、現在、政府と与党の間で、この問題の対策本部をつくりまして、与謝野さんに責任者になっていただいて、これから、四月に向けて、まず社会保障制度の改革の案をまとめ、そしてその後、六月をめどにして社会保障と税についての一体的な案をまとめていきたい。
 ただ、私たちが申し上げているのは、我が党、我が内閣としての段取りを決めてはおりますけれども、できれば、もっと早い段階からいろいろな意見を交換して、案づくりそのものの段階から与野党で議論ができないか、そういう認識で、御党に対してもできればそうした議論をしたいということを申し上げているところであります。
○石破委員 議論をするのは私は喜んで受けたいと思っています。その前に案をまとめてください。
 総理、この時間は総理の時間ではありません。私の時間でもありません。国民の時間なのです。国民から与えられたこの質問時間です。端的にお答えください、国民の時間なのですから。
 総理は、私が聞きましたのは……(発言する者あり)端的にしているでしょう。案をまとめますか、まとめませんかということを聞きました。まとめない、その案をつくる段階から自民党と協議をしたい、それが端的に言えばお答えですね。総理の後段の部分はそうだったでしょう。できれば案づくりの段階から野党も乗ってくれ、そのことを呼びかけている、端的に言えばそれが答えでしょう。違いますか、どこが違いますか。案づくりの段階から、つまり、民主党案というものはまだない、固まっていない、だから、案づくりの段階から野党も協議に参加するよう呼びかけている、違いますか。どこか違うんだったら言ってください。

平成31年2月4日衆議院予算委員会 

○野田委員長 この際、小川淳也さんから関連質疑の申出があります。長妻さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。小川淳也さん。
○小川委員 立憲民主党・無所属フォーラムの小川淳也です。
 まず、委員長、賃金がはね上がったのは去年の六月です。システム改修が始まったのは去年の一月です。システム改修を指示したのは一七年五月、一昨年五月の当時の石原統計室長です。それはなぜだったのか。そこには、賃金の水準を、まさにアベノミクスの成果を偽装するために、少しでもいい数字を出そうという思惑はなかったのかどうか。
 中間報告を読んでもわからないので、私はきょう聞きたかった。参考人要求していますが、なぜ来ていただけないのか、委員長のお答えを求めます。
○野田委員長 先ほども申し上げましたが、お昼の理事会において協議をいたしましたが、協議が調いませんでした。一部の参考人の招致については、協議が調いませんでしたので、招致をしないことと決定いたしたところです。
○小川委員 この国会に対して、これだけの統計不正が起きているわけですからね。ほとんど関係大臣ですよ。そして、この国会に対して、一定の真相究明、国民の期待は高いです。しかし、肝心の真相を知っている人を更迭するわ、出さないわ、全くもって真相の究明のしようがないじゃないですか。
 もう一人。一回チャンスがあったんですよ、これは。中間報告を見ると、一七年の冬に当時の石原室長は上司に報告をしている、実は不正をしていたと。それを聞いた当時の酒光統括官、すぐに正しなさいと指示をしている。しかし、石原さんはそのまま放置をし、酒光さんも一切その後お構いなし。この辺の経過が、なぜ監督責任を果たせなかったのか。
 私は酒光元統括官にも聞きたかった。参考人要求をしましたが、なぜこれも受け入れられないんですか。
○野田委員長 小川委員にお答えいたします。
 今後の招致については、引き続き与野党で協議をしていただきたいと思います。
○小川委員 委員長、今のお言葉は重いと思いますよ。ここだけやり過ごせばいいということではありませんから、委員長の責任においてしっかりリーダーシップを発揮してください。
 与党側も与党側ですよ。なぜ同意しないんですか。今私が申し上げたキーマンを呼ばなければ何もわからないじゃないですか。一緒に解明するんじゃなかったんですか、与野党を超えて。激しく苦言を申し上げたいと思います。
 本題に入りますが、安倍総理、去年の六月に三・三%という驚異的な数字の伸びがありました。二十一年五カ月ぶりと大きく報じられたわけであります。当時、安倍総理は、初めて民間に対して具体的な数字を挙げて賃上げ要請をしています。その数字が三%でありました。したがって、この三・三%という数字が大きく報じられたときに、何らかの印象なり記憶なり感想なりがあったと思うんですが、まず、それをお聞かせいただきたいと思います。
安倍内閣総理大臣 御存じだと思いますが、私は、そのときの毎勤が上がったことについて発言したことは一度もございません、私自身は。ですから、私自身が非常に印象に残っていればそうだったんだろうと思いますが、私自身、それが上がったということについて、実は、一々毎勤統計については私は報告を受けていません。
 私が統計で報告を受けるのは、失業率と有効求人倍率閣議において厚労大臣、総務大臣から報告を受けるときでございまして、基本的に、一々の毎勤統計について私は一喜一憂する考えはございませんし、そもそも、もう小川委員もお気づきになっているでしょうけれども、むしろ私は、この毎勤統計について、それは先ほども御説明をしたんですが、事業所において、その事業所の職員で割ったものの平均でございますから、経済の実態を直接示しているかどうかということについて、むしろそれは総雇用者所得で見るべきだという議論をいつもしていたわけでございまして、ですから、そういう意味において、そこを私は特別な印象を持っているわけではないわけでございまして、実態から見れば、ぶれがあることもあると。
 あと、その前に入れかえも行われたということだったということもあるんだろう、こう思う次第でございます。
○小川委員 今のは今ので、非常につれない御答弁だと思いますね。
 これだけ毎年民間に賃上げ要請、賃上げ要請、そして、昨年は初めて具体的な数字まで出して、そして、毎月毎月、一々と聞いていませんよ、二十一年五カ月ぶりという大きな報道があったわけですから、何らかの印象が残っているのではないかと期待をして私は聞いたわけであります。しかし、残念ながらその数字はうそだったわけでありまして、今その善後策にてんやわんやされているわけであります。
 長妻委員がさっき午前中に指摘しかかったこと、少し追いかけさせていただきたいんですが、この勤労統計、つまり、いろいろと反論はあるでしょうけれども、幾つもの段階で去年の数字はかさ上げされているわけです、幾つもの段階で。単に三倍補正で復元したという話ではないわけです。
 さっき長妻委員が指摘されたように、この議論は一五年の六月から始まっています、厚生労働省内で。しかし、慎重意見がたくさんあって、結論は出さなかった。むしろ、慎重だという結論を出した。
 ここにこう書いてあるんですよ、この検討会を設置したときに。根本大臣、検討会の中間整理はごらんになっていますよね。
 近年、政策の効果をはかる指標の一つとして、特に労働者の賃金に関心が高まっており、増減率の動向について注目度が高い。増加から減少に転じた月、つまり入れかえによってですね、が発生したことで、各方面からわかりにくいといった意見等が寄せられた。
 根本大臣、お答えになれる範囲で結構なんですが、各方面から下がったことに対して意見が寄せられた、各方面とは誰ですか。
○根本国務大臣 この問題については、例えば統計の専門家などからの指摘もあったと聞いております。
○小川委員 それは、過去から確かにこの勤労統計についてはいろいろ話はあるんですが、大事なことは、七十年同じ方式で調査してきたんです。少々エコノミストから言われたとか、少々外部から言われたで、私は急ハンドルを切るとは思えない。
 思い返すと、総理、これも御記憶だと思うんですが、私ここにいまして、一四年当時でした、十月の三日だったか四日だったか、当時、前原さんがアベノミクスの誤算という質疑をしたんですよ。悪い物価上昇が続いている、つまり原油高と円安ですね。そして実質賃金が上がらない、そして輸出数量が伸びない。私は、非常に力のある質疑だったと今でも記憶しています。一四年のそれが秋のことです。
 そして、一四年の十二月に何があったか。総理は、消費税を先送って衆議院を解散するという新手に出たわけです。これは、増税必至だった財務省に激震が走ったと思いますね、当時。まさに政権にとっては、アベノミクスにとっては、雇用も成長率もいい数字が欲しい。増税必至の財務省にとっても、何が何でもいい数字が欲しい。一四年の秋から一五年にかけてそういう思惑なり熱意が生じたとしても、私は不思議ではない。それが、この一五年十月の麻生発言につながるんじゃありませんか。
 麻生大臣、ちょっとお聞きします。
 わざわざ十月の経済財政諮問会議で、勤労統計を名指しして、おかしいから見直せと言っていますね。一体これは、財務大臣、何の権限に基づいて統計にここまで具体的に示唆しているんですか。
 それから、ぜひ聞きたい。これは、大臣が発言したいから財務省に資料を用意しろと言ったのか、それとも、財務省からぜひこの趣旨で発言してくださいと言われたのか。それも含めて、大臣の当時の発言の真意を聞かせてください。
○麻生国務大臣 勤労統計というのか、毎月勤労統計、いろいろありますけれども、こういったようなものは、私ども財政をいろいろやっていく上において正確な基礎統計というものが出ていないと話になりませんから、そういったものをきちんとやってもらいたいというものの中の一つで、例えば消費者物価なんかでも、いわゆる通販が入っていないじゃないか、今どき通販が入っていなくて何で消費者物価がわかるんだというような話やら何やらいろいろなことをしているんですよ、ここで。
 その中の一環で、私どもとしては、この勤労統計の中においても、いわゆるサンプルのあれがえらく動くというのを毎年よく言われている、今までもよく言われている話なんで、こういった話をして、精度の向上に向けて取決めでやってもらいたいという話をしたのであって、これを私どもが、財務省からこれを言ってくださいと言われたような記憶はありません。
○小川委員 では、大臣のイニシアチブで、発案でこの発言はしたと受けとめました。
 統計の精度を上げろというその言葉なんですよね。大体そう言うんですよ。正確な統計を出せ、時代に合った統計を出せ、精度を上げろ、大体そう言うんですよ。それが本当かどうか。裏に隠された意図はないのか。私は、そこを今回非常にいぶかっています。
 ちょっと資料をごらんいただきたいんですが、これはまさに麻生大臣が経済財政諮問会議に提出した資料ですよ。よく見ると、極めて私は意図的だと思う。
 まず、右の端、ごらんいただきたいんですが、消費関連指数が乖離しているじゃないかと大臣は発言しているわけです。しかし、上の青い曲線は、これは小売側の統計です。そして、下の赤い曲線は家計調査です、買った側の統計です。つまり、売った側と買った側が合っていないんじゃないかと言っているわけですが、正確に議事録を申し上げると、気になっているのは、統計について、家計調査だと言っている。つまり、上の小売統計については何も言っていないわけです。下振れしている家計側、買った側の数字がどうかしているんじゃないかと暗に示唆している。
 二番目の、まさにこれは毎月勤労統計です、勤労統計。これはサンプルを入れかえるんですよ、後ほど議論させていただきますが。サンプルを入れかえたときに、確かに数値が下がるんですよね。この資料、ちょっと黄色マークしたところを見てください、真ん中。大臣は、公式には、段差が大きいのが問題だと言っている。しかし、資料には、下方修正していることが問題であるかのような表現になっている。わざわざですよ。だから、上がったら文句言っていなかったんじゃないか、下がっているから問題だと言いかけているように私には見える。
 さらに、右側。ネット販売、今、さっきおっしゃいましたが、ネット販売がふえているんだから、それを統計に入れろとか、あるいは、リフォームがふえているんだから、それもつかめ、数字をつかめと。それはそうかもしれませんが、これは財務大臣が目くじら立てて統計に言うようなことですかということを私は申し上げている。
 極めて政治的な意図が裏に隠れているんじゃないですか。精度を高めろ、正しい統計を出せと表では言いながら、裏では、数字を上げろ、いい数字を出せと暗に政治的圧力をかけているんじゃありませんか。
○麻生国務大臣 役所におられたらおわかりと思いますけれども、圧力をかけたら数字が上がるものでしょうか。
○小川委員 役所にいたから聞いているんですよ。ちょっと、この政権は公文書を書き換えさせていますからね。それは具体的に指示したんですか。指示していないのに何でやるんですか、官僚がそんなことを、追い詰められて。そういう政権なんですよ。そういう体質を持った政権なんだ。その前提でこの数字について聞いているわけです。
 では、ここから先、ちょっと議論しましょう。七十年間、毎月勤労統計がこういう全数入れかえをやってきたにはそれなりの理由がある。そして、わざわざ、自前の研究会では、それをしないという結論を出した。その後、厚生労働省では一度も公式に研究していません。いきなり統計委員会の場に持っていかれた。つまり、相当政治的な力学が働いたと私には思えてならない。
 ちょっと、具体的な議論に入る前に指摘したいことが幾つかありまして、まさに、この一五年の時期から、極めて統計に対して政治家が発言するんですよ、安倍政権のもとで。私に言わせれば、統計に政治の手が入っている、統計が政治化している。
 具体的に言いますよ。これは翌年、二〇一六年です、一六年。これは経済財政諮問会議の骨太方針。二〇一六年の六月ですね。副題は「六百兆円経済への道筋」ですよ。
 私は、先に申し上げておきますが、麻生さんの発言、大臣の発言が一五年の十月です。一五年の九月に何があったか。安倍総裁が自民党総裁選挙で再選されているんです。そして、九月二十四日、アベノミクス新三本の矢と大々的に発表した。その一本目がGDP六百兆円なんですよ。
 このGDP六百兆円という大本営発表に、一生懸命官僚がついてきたんじゃないですか、霞が関を挙げて。何とかつじつまを合わそうと。そういう文脈の上でお尋ねしています。
 心して聞いていただきたいと思いますが、この骨太方針、第二章は成長と分配の好循環、そして、その二が成長戦略の加速なんですね。成長戦略の加速ですよ。
 その中に、まあわかりますよ、東京オリンピックやろうじゃないか。PFI、TPP、国土強靱化、まあまあわかりますよ。しかし、最後に、TPPやオリンピックやPFIや国土強靱化と並んで、統計改革、統計改善と書いてあるんですよ。
 何でですか。ちょっとこれは誰が担当ですか、茂木さんですか。なぜ統計改革が成長戦略なんですか。
○茂木国務大臣 御指摘のこの統計の問題、計算方法の変更、これは二〇一六年の十二月に実施しましたGDPの基準改定、このことを指しているんだと思います。(小川委員「聞いたことに答えてください」と呼ぶ)お聞きください、冷静に。
 これは、RアンドDの資本化など、最新の国際基準に対応するとともに、最新の産業関連表であったりとか推計手法を反映した改定であります。この改定によりまして、日本経済の実力をより正確に計算できるようになったと考えております。
 なお、この基準改定は、先生が与党にいらした民主党政権時代の一一年に対応方針が決められ、その後、専門家で決めさせていただいた話であります。
○小川委員 答えられないんですよ。なぜ統計改革が成長戦略に位置づけられるのか、答えられないんですよ。それはそうでしょう。統計なんて、極めて技術的、客観的、科学的、中立的にやってこそです。
 もう一つありますよ。
 この委員室にもおられると思いますが、山本幸三先生。当時、経済財政担当大臣だった。(発言する者あり)ごめんなさい、行革でした。失礼しました。訂正します。おわびして訂正します。立派なお仕事です。
 一六年の、いいですか、今のが六月。一六年の十二月に、今度は山本大臣がわざわざ臨時議員として経済財政諮問会議に出かけていった。何を言ったのか。政治主導の統計改革を実現しようですよ。何でですか。なぜですか。なぜ統計改革を政治主導でやらなきゃいけないんだ。
 いいですか。皆さん、一党一派に偏った政治家ですよ。一党一派に偏った政治家が、やれ統計改革、やれ統計改革、そんな旗を振ること自体が不謹慎だ。おかしいんですよ。
 誰か答弁したい人いますか、これ。じゃ、総理、どうぞ。
安倍内閣総理大臣 これは山本大臣が政治主導の統計改革と言ったのは、別に一党一派に偏るような統計をしろと……(小川委員「偏っている人ですから。みんな偏っていますから」と呼ぶ)いやいや。偏るような統計改革をしろと言ったのではないですよ。これは、議事録が残るところでの発言でありますから。
 つまり、第四次産業革命が今進行中である中において、今までの統計のやり方を墨守していていいのかということなんです。
 もちろん専門家がやりますが、それに対して政治家がまさにこの新しい時代の変化をしっかりと嗅ぎ取りながらこういうことをやっていくべきではないか。しかし……(発言する者あり)
○野田委員長 静かにしてください。
安倍内閣総理大臣 つまり、その中でもう一度統計のあり方を専門家で考えてもらったらいいのではないか、こういうことであります。
 それは一切、では、一切、我々は一言も口を出すなということなんでしょうか。そうではなくて、専門家が決めていくことではありますが、今までのやり方でいいのかどうか検討しろということは、これは政治主導でないとできないんですよ、それは。政治主導でなければできないということは申し上げておきたい、こう思うわけでございます。
 この際、ずっと今まで小川先生がおっしゃっていた、まるで私たちが統計をいじってアベノミクスをよくしようとしている、そんなことできるはずがないじゃないですか。そんなことできるはずがないんですよ。
 今、やっているじゃないですかという声があったんですが、でも、これは、もし東京の五百人以上の事業所をちゃんととっていれば、我々が政権をとった後の指標はもっとよくなっているんですよ。景気回復は東京からよくなっていくし、どちらかというとやはり大手の方からよくなっていきますから、もっとよく差が出てくるんですよ。
 それを、むしろそのまま、下がっていたから、今度、雇用保険労災保険船員保険もこれは対応しなければいけなくなっていたわけであって、私たちがもし上に何かかさ上げしていたんだったら、これは逆になるわけでありますから。
 だから、もっと冷静に、何が何でも安倍政権が何か偽装しようとしていたかという結論ありきになると正確な議論ができませんから、やはりここは落ちついて統計の議論をされたらどうなんでしょうか。
○小川委員 これは私が思っているだけじゃありませんからね。多くの論評でありますよ、これはエコノミストから、外国のメディアから。そして、後ほどお聞きしますが、日銀と内閣府の間でもやりとりしているんですから。もとデータを出せ、そんな話になっているんですよ。
 更に言います。
 山本大臣が政治主導で統計改革をやるべきだとわざわざ出張っていかれて発言したのが一六年の十二月。そして、一七年の二月に、今度は菅官房長官を議長として統計改革推進会議なるものができているわけですよ。
 メンバー。梶山行革担当大臣。茂木、当時もそうですね、経済財政政策大臣。そして予算委員長、総務大臣。そして麻生財務大臣。世耕経産大臣。もちろん学識もいますけれどもね。
 こうして、相当統計に政治のエネルギーというんですか、政治の、よく言えばリーダーシップというのか、私に言わせれば政治的圧力だ、これは。
 現実に、この時期、統計委員会における統計手法の変更件数はふえている。大体、民主党政権のころは九件とか七件というんですけれどもね、年間ですよ、統計手法を変更したのは。安倍政権になって、十五、十三、十二、十五、十二、物すごい数の統計手法の変更をさせているんですよ。これは事実だ。
 それこれ見ると、今総理がおっしゃったような、何か全体を見ているんだという安気な話なのか、麻生大臣がおっしゃったような精度を高めているんだというようなきれいごとで済むのか。私にはとてもそう思えない。
 具体的に、勤労統計について少し議論させてください。
 麻生大臣、よくお聞きいただいて、できれば、麻生大臣、それから根本大臣も、わかる範囲で結構ですから御答弁いただきたいんですが、今回、不正調査をしてきたことは明らかに問題であり、違法です、長年にわたって。しかし、午前中、長妻さんが指摘したように、これは単なる不正の復元だけでこの数字は出ていないわけです。不正の復元を隠蔽したことも問題。しかし、それ以上に、これだけ高い数値が出るには、もちろん、公表ベースでいえば、サンプリングを入れかえたとか、標本で大企業の割合がふえたとか、もっともらしいことを書いていますよ。
 しかし、正面から、私はこの制度改革をした二つの点について議論させていただきたい。
 一つは、まさに麻生大臣が嫌がった全数入れかえを部分入れかえに変更すると何が起きるかということです。これは誰に御答弁いただきましょうかね。
 七十年間、全数入れかえをしてきたんですよ、三年に一回。麻生大臣、三年に一回全数入れかえをすると、麻生大臣が嫌がるとおり、数字は下がるんですよ。私、これは驚きました。昭和四十年代、五十年代、もう高度成長期かと、バブル以前の成長率の高いときですら下がっている。
 なぜだと思いますか、麻生大臣。
○麻生国務大臣 私は、そのことをやれば上がるとか下がるとかいうことを私どもは指摘したわけではありません。
 私は、統計の数字がきちんとしたものが出ないと、入れかえるたびに上がったり下がったりするのはいかがなものかというので、きちんとしたことをやってもらいたいという話を申し上げた結果なのであって、その数値の結果についてより、私は、そこに出てくるいわゆる問題が大きいんだということを申し上げた。先ほど、どなただったか、通販の話をしたんでしたかな、今の時代に通販が入っていないということ自体おかしいじゃないですかというような一連の話の中から出たんだと記憶しています。
○小川委員 私もその数字が正しいのかどうかを議論しているわけですから、大臣、ちゃんと真面目に議論に向き合ってください。わからないならわからないで結構です。
 大臣はいつも、俺は経営者だ、経営をやっていないやつにはわからないだろう、よくそういう反論を飛ばしてこられますよね、国会質問で。だから聞いたんですけれどもね。
 では、言います、大臣。なぜ三年に一回全数調査を入れかえれば数値は下がるのか。
 この国の一年間の廃業率を御存じですか、麻生大臣。御存じですか。知っていたら首を縦に振って、知らなければ結構です。(麻生国務大臣「知らないですな。今でしょう」と呼ぶ)今。大体、これは五%なんですよ、廃業率が。
 それで、五年に一度の経済センサス、つまり経済界に対する国勢調査ですね、見てもそうなんですが、ということはなんですが、企業の五年生存率は約八割なんです、毎年五%ずつ企業は淘汰されていきますから。そして、企業を全数入れかえするということは、廃業、倒産直前の企業も入るわけです。そして、もちろん生まれたての新発企業も入る。しかし、いずれも賃金水準は低いんですね。
 ところが、継続サンプルで一年目、二年目、そして三年目と継続調査をすればするほど、比較的優良な成績を上げた企業の、賃金水準の高い企業が標本として残るわけです。だから、三年間これを続けると賃金水準が高く出、そして、三年後にサンプルを全数入れかえで入れかえると必ず低く出るわけです。
 そこで、大臣に聞きます。どちらが国民の経済実態に近いですか。優良企業ばかりじゃないですよ、世の中は。どちらが実際に働いている現場の労働者の賃金感覚に近いですか。
○麻生国務大臣 多分、全数入れかえの方がと言いたいんだと思いますけれども、景気の事情によって違うわね、今の話は。景気が変わってくると随分変わるような気がするけれどもね、今の感じは。
○小川委員 それが間違いだから聞いているんですよ。さっき申し上げたでしょう。昭和五十年代から、あるいは平成に入って一桁、まだまだそんなに、今みたいに言われていないころですよ。調べてみてください。毎回下がっている。二年、三年に一回。それぐらい企業の生き残りバイアスと、これは統計委員会で議論された資料です。読み上げます。
 ローテーションサンプリング、つまり一部入れかえ制導入に伴う留意点として、賃金の水準を見ると、継続調査されている共通事業所の賃金は、全ての事業所の合計よりも約四千円、一・五ポイント高くなっている。継続調査されている事業所の賃金水準が、新規事業の水準よりも高くなっていること、ちょっとややこしいね、結論だけ言います。つまり、生き残りバイアスが一定程度存在することを示している、これが統計委員会の結論です。
 したがって、段差があることに麻生財務大臣はちょっと文句をつけておられますが、これは健全な段差だったんですよ。七十年間この手法で調査してきたんだ。それを鶴の一声で今回変えさせた、それで一段目、積み上がったわけです。
 厚労大臣、認めてください。全数調査をした方が世の中の実態に近い、つまり労働者の受け取っている賃金感覚、いい企業もあれば、そうでもない企業もあります。これを継続している会社にすれば、企業の継続バイアスがかかり、生き残りバイアスがかかり、比較的賃金は高く出る。これは統計委員会でこう言われていますから、大臣、ここで認めてください。
○根本国務大臣 今その点についてお答えします前に、委員は本当にこの問題の本質を言っているんですよ。
 全数を入れかえるでしょう、三年に一遍。そうすると、おっしゃるように段差が生じるんですよ、段差が生じる。だから、今までどうしてきたかというと、補正する、段差を調整するためにさかのぼって補正するんですよ。
 実はここが問題にされたんですよ。基幹統計九統計の……(小川委員「されてもはね返さなきゃいけなかったんだ」と呼ぶ)いやいや、違う違う。これは、九統計のうち、私の記憶ではローテーションサンプリングをやっている統計がたしか六統計あると思いますよ。ですから、どういう統計のやり方が正しい数値をあらわすか、極めて私は、これは統計の専門家の議論で、ですから、おっしゃるとおりなんですよ。だから、三分の一、いや、二分の一ずつ入れかえれば、これは段差が生じるということはないから、そうすると、これからはその指標で見ていきましょうと。
 ですから、段差が生じるかどうか、これは勤労統計でも長年の課題で、これはいろいろな議論がされてきた。今回それを統計委員会で、客観的な統計委員会で、段差を修正して補正するのがいいのか、ローテーションサンプリングでやるのがいいのか、そして、ローテーションサンプリングでいいという結論を、これでいきましょうという結論を出したんですよ。
 それと、委員のおっしゃる継続している事業所のお話、これはあれですか、共通事業所系列のお話ですか。(小川委員「違いますよ。制度論、一般論」と呼ぶ)わかったわかった。だったら……(小川委員「もういい、大臣」と呼ぶ)いや、違うんです。ちょっとしゃべらせてくださいよ、聞かれているんだから。
 だから、例えば三年に一遍だと、やはり倒産していく企業がある。そうすると、おっしゃるように、生き残っている企業、そしてサンプルを入れかえると、そこは段差が生じるんですね。ですから、もちろん継続してやっている企業だけをずっととれば、それは高く、だから高く出る可能性が、だってだめな企業は潰れていくんだから。だから、それはそういうことですよ。そういうことじゃないですか。
 だから、三年に一遍がらっとかえると旧サンプルと新サンプルで段差が出る、そこが問題視されたということですよ。
○小川委員 大臣、何を御答弁されている。
 つまり、そういうことなんです。それで、段差が出ることは統計処理上課題がある。それはそのとおりです。したがって、これを三分の一入れかえ制にすれば比較的統計は連続するでしょう。しかし、それは、世の中の経済実態から少しとはいえ乖離した指標が出がちになる調査方法に変更したということです。しかも、一七年と比較すると一八年は比較的高く出る、これで一段目のげたを履いたわけです。
 もう一つ聞きます。
 この年、もう一つやっていますよね。これまで勤労統計は常用雇用者について調べているわけですが、常用雇用者の定義から日雇労働者を外しましたね。それまで、月に十八日間勤務していた日雇労働者は、常用雇用者に含めて計算をしていた。ところが、この一八年一月から、常用雇用者からこの日雇労働者を除いた。これも賃金は高目に出るんじゃありませんか。
○根本国務大臣 日雇を除いたのは事実です。
 その結果どういう影響が出るかというのは、私は、にわかには、今お答えはできません。
○小川委員 わかる範囲でお答えいただければいいとはいえ、どう考えても上がるでしょう。
 御紹介しますよ、統計委員会の部会での審議。
 実は、今回の勤労統計の統計手法の見直しに当たって、ここは統計委員会から相当警告が来ているんですよね。それを振り切ってやったんですよ、今回、厚生労働省は。
 読みますよ。まず部会の委員から、これはどのぐらいの影響があるんだと質問している、議事録を見ますとね。そうすると、労働者数でいうと、大体全体の一%だという統計はとれているという答弁がありました。しかし、残念ながら、これは、賃金水準の調査が明確にあるわけではないので、わからないということになっているんですが、納得のいかない委員が、更に追いかけてこう言っているんです。
 ざっとイメージしようじゃないですか。常用雇用者の賃金が大体三十万円として、仮にです。日雇労働者の賃金が大体二十万円だとすると、労働者数が一%であれば、これは賃金水準に最大〇・三%の影響がある可能性がありますよ。それは黙っていていいんでしょうか、頬かむりしていていいんでしょうか、そのまま先へ進むというのはやはり難しいんじゃないでしょうかとまで立派な意見を言っている人もいるんです。これを振り切ってやったんだ。
 統計の正確さを正そうとか連続性を高めようとか、それは美名のもとにいいですよ。しかし、実際には、あの手この手を尽くして、賃金水準を少しでも上げてやろう、そういう絵姿が見え見えじゃないですか、これは。この上に三倍補正をやったんだ。それで三・三%なんという二十一年ぶりの数字。しかも、総理は、それは余り記憶にないと言う。
 今回、これで無理をした結果、長年陰に隠れていた不正が明るみに出たわけです。異常に高くなったからです。そして、異常に高くなった背景には、こういう、それをそれと気づかせない、隠された意図、隠れた故意で、統計の数字に政治が介入してきた疑惑がある。
 これが果たして、勤労統計だけなのか、それにとどまらないのか。私は、徹底的な検証が必要だと思いますよ。なぜなら、この政権は、公文書を書き換えさせているからです。
 私も霞が関の出身ですよ。官房長官、よく聞いていただきたいんですが、最近、この質問の準備をするに当たっても、あるいはその他ででも結構ですよ。現場で、私は野党ですから、幹部の方は来られません。せいぜい係長、課長補佐、若い人が来ますよ。しかし、彼らのモラルは今どうなってしまったんだと思うことが多々ある。組織にこびへつらって、何が正しいかではなく、何が都合がいいかを一生懸命探し、一生懸命、この政権に対して、尻尾を振れば必ず出世し、盾突いて正論を吐けば飛ばされて左遷される。どうですか、霞が関の皆さん。そういう体質が蔓延してきているんじゃないですか。
 私は、民主党政権のときに十分に国民の期待に応えられなかったことは、今でも良心の呵責です。その後、自民党は立派だと思ってきた面もある。確かにプロですよ、政治の運営にかけては玄人だ。しかし、政権が、それでも、これだけ長く続くと、この霞が関のあんな若い人たちまでこうしてしまうのかと。私は、やはり長期政権はかえなきゃいけないと。非常に強い危機感。これはやがて社会の隅々まで、末端までモラルを崩壊させる。正義感や倫理観を失わしめる。政権の延命以外に目的がないじゃないですか。私は、今回それぐらいのことを感じているわけです。私だけですかね、この統計に関して言っているのは。
 きょう、お忙しい中、日本銀行に来ていただきました。関根局長は、大変お忙しい中ありがとうございます。
 ちょっと、私もこの記事、驚いたんですが、もちろんここで言えること、言えないことあるでしょう。しかし、こういう報道が出たこと自体、非常にゆゆしき事態だと私は思います。しかも、公的機関の最たるものである日本銀行が、政府、内閣府の出している統計を信用できない、もとデータを出せといったようなことを言うというのは前代未聞。
 関根局長、ここで言えること、言えないことあると思いますが、なぜもとデータを出せというところまで言わなければならなかったのか。私に言わせれば、言うところまで追い込まれたのか。この政府統計の不信に対するあなたの考えをここで述べてください。
○関根参考人 私がこの場に出席させていただいておりますのは、日本銀行調査統計局長としての立場でございます。
 統計委員会では、日本銀行としてではなく、一有識者としての立場から御意見を申し上げておりました。統計委員会に関する事項については、本日はお答えする立場ではございませんので、御理解を賜れればと思います。
○小川委員 関根さん、立場は理解しますよ。それは言えないでしょう、ここではね。だけれども、相当いろいろなやりとりをしていることは統計委員会の議事録にも残っていますから。そして、内閣府がそれに抵抗をし、一定の折り合いをつけたんでしょうが、少なくとも、それが外部に漏れて、これだけの報道の紙面を飾ったということ自体ゆゆしきことです。
 関根局長、これから内閣府からデータをもらうんでしょう。それは自宅に持ち帰って趣味で扱うわけじゃないでしょう。日本銀行の調査局に持ち帰るんですよね。そして、いろいろ、金融政策を考えるに当たって、経済指標の分析に使うはずだ。統計委員会の一員としてであって日銀の背景はないという御答弁は、大分割り引いて、私も立場をわきまえたいと思いますが、それでも不適切だと思いますよ、不正確だと思う。だから、こういう報道につながっているんです。
 最後に、勤労統計について、その隠れた意図があると私は思っている、隠された意図があると私は思っている。しかし、何といっても、アベノミクスの本丸はGDPでしょう。
 麻生発言の前の月に、安倍総理は、私だけではないと思いますが、相当世の中は、あるいは国際社会は、GDP六百兆というのは唐突に受けとめました。なぜなら、その時点でのGDPは五百兆に届いていなかったからであります。そして、五年間で六百ということは、四%近い成長を毎年しなきゃいけない。しかし、その時点まで、まさに今世紀に入って、二〇〇〇年代に入って、この二十年、実現できた成長率は、三%に到達した年はありません。
 したがって、これは経済界からも、単なる政治的なメッセージではないか、あるいは外国メディアも、これは根も葉もない、余りまともに取り合う必要がないんじゃないかという冷ややかな受けとめでありました。
 しかし、後にややちょっと驚いたことがあるわけですけれども、ちょっと先にお聞きしましょう。
 総理は、このGDP六百兆円構想、私の仮説では、この六百兆円構想がエンジンになっているんですよ、いい数字を出すということに関して、経済指標、雇用指標。これにみんな仕えているわけです、一生懸命。この六百兆という構想をぶち上げたときに、総理は、どの程度の確信なり、あるいは自信があったんですか。まず、それをお聞かせください。
安倍内閣総理大臣 五年で六百兆ではなくて、二〇二〇年代の初頭という言い方をした、こう思っております。ですから、二〇二〇年にということではないわけでございます。
 その中で、デフレではないという状況をつくった。この後、黒田総裁と政府との間で、インフレについて、物価安定目標を二%としているわけでございまして、この二%はデフレーターとイコールではございませんが、この中で、しっかりと成長を確保し、この物価安定目標に近づいていくことによって成長を確保していけば、十分に可能性があるのではないか。それと同時に、観光も伸びておりましたし、あるいはまた、この第四次産業革命の大きな波の中で、生産性を上げていくということではないかと思います。
 その中で、別に、その六百兆円目標に向かって、統計をいじるということではなくて、いかにこれは、生産性を上げていくか、投資を伸ばしていくか、あるいは人材に投資をしていくかという、みんなでそういう目標を共有することが大切だ、こう思ったところでございます。
○小川委員 ただ、実際には、総理、総理の御発言が一五年の九月です。一六年、翌年の十二月、GDPの計算方法が大幅に見直されました。それによって、何とGDPは三十一兆円、こんなに、GDPの国際基準に合わせるという名目のもとにですよ、計算方法を変えて、成長率を伸ばした国はほかにはありません。
 わかればでいいんですが、一六年の時点ではじいたGDPは、一五年のものなんですね。その時点で、一五年のGDPは史上最大規模になりました、伸ばしたことで。もし統計方法を変えなければ、一体、史上何番目ぐらいのGDPが史上最高になったか、おわかりの方はいらっしゃいますか。茂木大臣、いかがですか。
○茂木国務大臣 二〇一五年度のGDPにつきましては、旧基準と比べて、国際基準への対応によりまして二十四・一兆円、最新の産業連関表や推計手法の反映によりまして七・五兆円、合計で三十一・六兆円の上方改定となっております。
 なお、先ほど申し上げましたが、この方針は、先生が与党時代、二〇一一年の民主党政権時代に基本的な方針を決められ、その後、実際には、統計委員会を始め、民間の有識者によります審議を経た上で行われた。
 いずれにしても、古い基準、これを日本だけが使い続けて、いい悪いと言ってもしようがないんですよ。やはり、国際競争力を強めて、潜在成長率も上げて、正しい、実力として六百兆円経済を目指していく、これが安倍政権の方針であります。
○小川委員 わかりました。
 お言葉ですが、大臣、内閣府に、国民経済計算、つまりGDP計算、次回基準改定に関する研究会で、具体的な方針の検討に入ったのは一三年の三月です。いいですか。そこでの検討を踏まえて、統計委員会GDP計算部会における具体的な審議に入ったのは一四年の十月です。この具体的な検討の中で、何は入れる、何は入れない、入れるとしてどう計算する、入れないならなぜという検討をやっているわけです。
 お答えになりませんでしたから、私の方から申し上げましょう。
 二〇一五年のGDPは最高水準になっています。総理は今も、一六年のGDP、一七年のGDP、一八年の速報値、毎回のように本会議を始め会見でも、GDPは史上最高になりました、史上最高になりました、毎回のように繰り返しておられる。
 しかし、ごらんのとおり、これは、図、わかりますでしょうか。一六年にGDPの計算方法を改定して、こんなにかさ上げされているわけですね。過去までさかのぼって試算すると、全てにおいて上昇しているわけです。しかし、上昇幅は昔はさほどない。安倍政権になってから、上昇幅はワニの口のように開いている。つまり、旧基準で計算したGDPより新基準で計算したGDPは、安倍政権になってからのはね幅、上げ幅が大きいということです。
 茂木大臣、先ほどもきれいごとをおっしゃいました。国際基準に合わせたんだとおっしゃる。その部分、確かにあるんですよ。
 しかし、このグラフを見てください、今お手元。国際基準に合わせたのは、あくまで、このグラフ、棒グラフでいう白い部分です。ここはわずかに三%程度の上昇にしかなっていません。実は、これは研究開発費を入れたとかその手の話なんですが、確かに、今大臣おっしゃったように、国際基準に合わせて、先行しているのはヨーロッパ諸国なんですよ。ここでも確かに大体二%から三%上げているんですよね。それでいうと、日本もそれに符合するんです。
 ところが、この赤い部分、わかりますか。ちょっと資料が白黒の先生方には申しわけないんですが、赤い部分は、国際基準適合と違う、その他の部分ですから。その他の部分で、過去のGDPは、試算すると押し下げ要因になり、そして、安倍政権になってからの三年間はウナギ登りの上昇要因になっている。いろいろ説明も聞きましたよ。わかるところ、わからないところ、ある。でも、結果においてこれは不自然だ。どう見ても不自然です。
 このその他の部分を少しわかりやすく線グラフでも御用意しましたので、ちょっと見ていただきたいんですが、どうですか。安倍政権になる前はほとんどマイナスでしょう、このその他の伸び率が。ところが、安倍政権になるとウナギ登りなんですよ。
 こういう状況で、総理、一つ聞かせてください。
 一五年の九月に総裁に再任されてGDP六百兆円を打ち出したとき、翌年の統計改定で三十兆円以上GDPがかさ上げされるということは御存じだったんですか。
安倍内閣総理大臣 基準改定が行われること自体は承知をしておりましたが、具体的な計算方法までは説明を受けておりませんから、それが果たしてどういう方向に行くかということについては私は存じ上げませんでした。しかし、目標というのは、絶対できるからということで立てるというよりも、やはり、これから、ある種のそこで跳躍をして進んでいくということでありました。
 確かに、これは随分高い目標だなということは私は感じておりましたが、しかし、それは、例えば農林水産物の輸出額一兆円だって、これは絶対できないと言われていました。あるいはまた、昨年ですね、海外からの観光客が三千万人を超えるなんということを六年前に誰が想像していましたか。大体八百万人がずっと壁だったんですから。
 そういう中において、しっかりと目標をつくったことでそれが達成できたわけでありますから、達成できないかもしれないというリスクはありましたが、それをみんなで目標にしていこう、こういうことでありました。
 ですから、その目標に向かって、こういう、基準値をどうのこうのということは、これは考えられないことであります。
○小川委員 私は、今の御答弁は怪しいと思いながら聞きました。
 当時、経済財政担当大臣は甘利さんなんですよ。総理のまさに盟友中の盟友とお聞きをしております。そして、内閣府はさまざま試算をやっているらしいですね。ちょっと私も、これは公開資料からしかたどり着けないので、どれほど詳細に、どれほど具体の数値を挙げて、どれほどのオプションを議論しているかはわかりません、正直。
 しかし、例えば、報道ベースで御紹介すると、霞が関は、既に内閣府は、ひそかに二〇一一年からGDPを新基準で再計算していて、総理の六百兆円表明の時点では、まあ二十兆以上は上乗せされることは織り込み済みだと自民党関係者は言っているとかですね。
 しかし、その裏には、後にこういう記事も出始めるんですが、GDP六百兆円が見えてきた。これは日本経済新聞です。内閣府の幹部はしびれたと言って驚きを隠さない。数字を見てですよ。恐らくこれは試算の数字でしょうね。そして、与党の一部や日銀、財務省は、GDPを始め政府統計が実体経済を反映できていないとして見直し圧力を強めている。これに対し、当の内閣府からは、改善は大事だが、GDPを押し上げるために統計の仕事をしているわけではないんだと幹部からの恨み節が聞こえてくるという報道もあるわけです。
 火のないところに煙が立っているんだとおっしゃりたいんでしょうが、私はなかなかそうじゃないと思いますよ。
 総理が今おっしゃったのが本当かどうか。これは統計委員会の公開資料なんですが、一四年の十月の時点で、研究開発費の算入、暫定試算で三%から三・六%程度押し上げるだろう。防衛装備品、軍事物資、軍事装備品の算入により〇・一%程度押し上げるだろう。不動産の仲介手数料を計算に入れることにすれば〇・二%程度上昇するだろう。土地改良の対象範囲を見直せば〇・三%上昇するだろう。中央銀行の産出額の計算方法を見直せばわずかだが上昇するだろう。まあ、どうすればGDPが上昇するかの試算を連発しているんですよ。
 茂木大臣、もし知っていたら答えてください。このとき、国際基準に合わせるという名目のもとに、一つ議論になったことがあるんですね。それは私立学校の扱いなんです。従来は、非営利法人、非営利性の事業体としてカウントされていました。しかし、一定程度授業料収入がありますから、私立学校の場合は。これは市場性の事業法人に位置づけるのが国際基準に倣ったやり方なんです。けんけんがくがく統計委員会でこの点を議論されています。
 まず、この議論があったことを御存じですか。
○茂木国務大臣 存じ上げませんので、また確認をさせていただきますが、一点だけ。
 我々は、統計をよくして経済を上にさせよう、そんなことは考えていません。先ほど先生がお示しいただいたグラフ、これは、GDPの算定方法を変更する前でも後でも、前の政権の時代より圧倒的にGDPは伸びているんですよ。
 我々は、人づくり革命を進める、生産性革命を進める、そういった中で潜在成長率を高めていく、こういったことによって六百兆円経済をしっかりと、正々堂々と目指していきたいと思っております。
○小川委員 ぜひそうしてください。ここで統計をさわってGDPを上げようなんて思っていますなんという人はいないんですよ、この場で。それが本当かと、一つ一つ情況証拠を積み上げながら聞いているわけです。私にも証拠はない、内部資料は持っていないし。しかし、情況証拠はかなりいろいろ怪しいですよと申し上げている。
 それで、まさにおっしゃった正々堂々とでいいんですよ。最後のパネルを見ていただきたいんですが、これは極めてちょっと政治的に、どうなんですか。前の総選挙、二〇一七年、総理、これは自民党広報のツイッターか何かだと思いますが、ぜひ拡散してくれと。この五年間でGDP、五十兆円以上ふえたんだということを盛んにPRしているんですよね。
 それは勝手といえば勝手ですよ。しかし、問題にしたいのは、GDPの基準を改定した後、一六年、一七年の旧基準の数値は出さないことになっているんですよね。私は出してほしい。
 なぜなら、国民は、イザナミ景気を超えたんですか、今。一体、誰がそんなに好景気を実感しているんですか。七割以上の人が、ほとんどない、全くないですよ。しかし、GDPは史上最高だと総理はおっしゃる。
 ちなみに、税収も史上最高ですとおっしゃいますよね、総理。消費税を五%も上げた総理大臣、過去いませんからね。これだけで十数兆、十五兆円近い増税ですよ。むしろ、私の経済政策の成果ですと誇らしく言うんじゃなくて、私は史上最高に増税した総理大臣です、国民負担をお願いした総理大臣ですと申しわけなさそうに謙虚に言ってもいいぐらいだと私は思う。
 新基準で五十兆円ふえたという主張はわかりますが、旧基準だったらどうなのか。私、見てみたいので出してください、総理。
安倍内閣総理大臣 安倍政権で名目GDPは一割超えて五十四兆円増加をしておりますが、これは基準改定後の数字同士の比較でありますから、前の数字が改定前の数字で、今がそうでなければ、それはおかしいと思います。
 それと、私が二〇一二年の政権交代前にお約束をしていたのは、GNI、国民総所得ですね、失われた五十兆円を取り戻します、こう申し上げて、このお約束はかなり早い段階で達成したわけでございます。
 それと、ちなみに、来年度予算の税収の見込みでございますが、六十二・五兆円、これは過去最高になるんですが、これを、次の二%の引上げ分を引いてもこれは過去最高になるということは、一応つけ加えさせていただきたいと思います。
○小川委員 その前に三%上げているじゃないですか、総理。
 茂木大臣、今ちょっと言い忘れたんですが、結果として、いろいろ議論あったようですが、私立高校は入っていないんですよ。国際基準に合わせなかった。もし合わせていたら、GDPは〇・八兆円下がっていたんです、どうも議事録を読みますと。
 つまり、いろいろ理由はあるでしょう。が、取捨選択しているということです、安倍政権になってから。
 最後に、こんなことを聞きたくないけれども、つまり、統計の信頼は揺らいでいる、これは認めていただけるでしょう。そして、それには、技術的なものもあれば、役所が隠蔽してきたこともある。そして、その背景に、背後に、政治的なプレッシャーがあるのかないのか。これは間違ってもないようにしてもらわないとということは重ね重ね申し上げたい。
 それで、もうこんなことを聞きたくないんですが、最後、菅家政務官、来ていただきましたので、今どきまた家庭にカレンダーを配って歩いているというのは言語道断じゃありませんか。
○菅家大臣政務官 御指摘の点は、あくまでも政策広報用の室内用ポスターとして作成をいたしました。希望者のみに作成趣旨を説明いたしましてお渡しをしてきた点でございますが、ただ、国民の皆様方に誤解を与えている点については、心から反省し、おわびを申し上げます。
 以上です。
○小川委員 内部資料という説明は通らないと思いますよ。カレンダーという有価物にあなたの写真を入れたんだ。そして、配っている。公職選挙法違反だと思いますよ。
 引責する気はありませんか。
○菅家大臣政務官 室内用ポスター、ごらんになったと思うのでありますが、あくまでも政務官の集合写真です、を踏まえて、やはり、そういった、私も政府の一員として職責を、しっかりと取り組んでいくということを多くの支援者の方々にPRする、広報するための目的としてつくったものでありますので、まさに政策広報用の室内用ポスターでございますので、当然、職責を全うしてまいりたいと思います。
 以上です。
○小川委員 極めて軽率きわまりないと思います。
 委員長、次回は、必ず、私どもが要求した参考人をこの場にお呼びいただくことを心からお願い申し上げまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。

 

平成22年2月5日衆議院予算委員会

○石破委員 自由民主党の石破であります。  まず最初に、私のスタンスを申し上げておきます。  昨年の総選挙で自由民主党は敗北をいたしました。厳粛な事実であり、政権交代が実現をいたしました。  これは、なぜそのようなことが起こったか。民主党の勝利であると同時に、自民党の敗北であったと私は思っております。  私たちは、相手を批判するばかりではだめだ、そのように思います。そして、今何が一番問題かといえば、内閣の支持率も下落をしている、そしてまた民主党の支持率も下落をしている、しかしながら自民党の支持率がそれにかわるものとして上がっていない、そこが極めて問題だ、私はそう思います。  参議院選挙で、三年前、我々は厳しい警告を国民からいただいたと思っています。それに十分こたえることができなかった。たび重なる総理の交代、閣僚の交代、あるいは政策提示のまずさ、苦しい人、困っている人に対する思いやりの欠如、そういうものが自民党的なるものとして国民から審判を受けたのだ、私はそう思っております。  我々自由民主党は、批判をするだけではない。では、おまえたちはどうなんだ、必ずそう言われることがよくわかっています。私たちは、闘わねばならないものが二つある。一つは、権力をもてあそび、そしてまた、みずからのために権力を利用しようとする、そういう勢力とは断固として闘わねばならない。あわせて、我々は国民から拒絶された古い自由民主党とも闘っていかねばならない、そのことはよくわかっております。  私はそのスタンスに立って質問をしたい、このように思っております。  政治家の役割というのは何なんでしょうか。勇気と真心を持って真実を語る、私はそれが政治家の役割だと思っている。真実を語らねばならない、それを語る勇気と真心を持たねばならない、きょう一日自分がそうであったか、そういう自問自答はいつもしなければならない、そうでないとわかったならば、一日も早く政治家なんぞやめるべきだ、私はそう思ってやってまいりました。  私はこう思うんです。権力をもてあそんだ者は必ずその報いを受ける、そしてまた、安全保障をもてあそんだ者は必ずその報いを受ける、財政をもてあそんだ者は必ずその報いを受ける、国民の心をもてあそんだ者は必ずその報いを受ける、政治はそうあってはならない、そのように考えております。
○菅(義)委員 やはり私は、党としてのしっかりとした判断をすべきであるということを申し上げたいと思います。  また、きのう、横綱朝青龍、暴行事件の責任をとって本人は引退を表明しました。高い位置につく人間というものは、やはりみずからの判断ということが大事だというふうに思います。自身でけじめをつけられました。政界の最高権力者であると言われる小沢幹事長は全く潔さがない、こういうことも報道されておりましたけれども、そのとおりではないかなというふうに思います。  そして……(発言する者あり)委員長、静かにするように言ってください。注意してください。  政治資金と倫理についてお尋ねをしてまいりますけれども、私たち衆参両院議員で、政治倫理綱領というものを私どもは決めています。国会議員の手帳の中にもあります。その内容というのは、疑わしいことがあったら責任を明らかにするように努めていこう、みずから進んで解明しよう、説明をしようということです。いわゆる司法で言う推定無罪、疑わしきは罰せずとは全く異なることであります。  総理は、これまでの小沢幹事長の問題について、検察の捜査を見守りたい、こう言い続けてきました。きのうで起訴という新たな段階になったわけでありますから、総理の責任のもとで小沢幹事長に説明をさせる、私はそういう指示をすべきじゃないかと思いますけれども、いかがですか。

令和5年11月8日 財務金融委員会

階委員 立憲民主党階猛です。本日はよろしくお願いいたします。

 早速ですが、財務大臣からまず伺いたいと思います。

 突然ですけれども、大臣の御家庭は、家計は奥様が管理されているのか、それとも御自身で管理されているのか、どちらでしょうか。

鈴木(俊)国務大臣 妻が管理しております。

階委員 すてきな奥様なので、多分そうかなと思っていました。私もそういう感じで、小遣いをもらっています、毎月。

 それで、今回、還元、還元と言われていますけれども、例えば私のケースでいうと、去年、サラリーマンだったとして、残業代が増えました、残業代が増えたものはそのときに生活費とかで使っちゃいました、半年ぐらいたってから、あのとき残業代が増えたんだから小遣い増やして還元してくれよと言っているようなものだと思うんですね。しかも、これから教育費だとか住宅ローンの利払いが増えるだとか、あるいは防犯工事にお金がかかるとか、いろいろ支出がメジロ押しの中で、小遣い増やして還元してくれよと言ったら、奥さん、何と言いますかね。ばか言っているんじゃないよと、私の家庭だったら一蹴されると思いますよ。多分、普通の家庭はそうだと思います。そういった意味で、今回、総理は還元、還元と言っていますけれども、何を言っているんだというふうに私は思っていました。

 と思っていたところ、たまたま今日、日経新聞を見ましたら、自民党の宮沢税調会長が、今回の給付プラス減税の、資料でいいますと九ページにポンチ絵もつけていますけれども、このスキーム、これは還元ではないというふうにおっしゃっているんですね。宮沢氏いわく、還元といっても税収は全部使った上で国債を発行している、それは還元ではないと明確におっしゃっています。

 大臣も、先日の所信では還元という言葉を使っていませんでした。大臣は、今回のこのスキーム、還元というふうに考えているのかどうか、まずそこから確認させてください。

鈴木(俊)国務大臣 階先生の問題意識は、還元といっても、そうした還元する財源が何か今なお手元にあって、それを返すということになるのか、それが本来の意味の還元ではないか、こういうような御質問だと思いました。

 それで、このことについて申し上げますと、財政の構造といたしましては、過去の税収増、これはもう、当初予算でありますとか補正予算の編成を通じまして、主として政策的経費や国債の償還に既に充てられてきておりまして、仮に減税をしなかった場合と比べた場合には国債の発行額が増加することになる、こういうふうに認識をいたしております。

 そして、今回の減税における還元ということを言っているわけでありますが、その還元は、財源論ではなくて、税金を御負担いただいている国民にどのような配慮を行うかという観点で講じるものでございます。コロナ禍という苦しい期間における税収の増えた分を分かりやすく国民に税という形で直接戻すという考え方の下で、賃金上昇が物価高に追いつかず、収入の上昇を実感できなかった賃金労働者を始めとする国民の負担、これを緩和したいと考えているところでございます。

 そして、この減税の目的であるデフレからの脱却を確実なものとして、持続的な経済成長を実現し、財政健全化にもつなげることで、将来世代への責任というものも配慮していきたい、果たしていきたいと考えております。

階委員 今、還元という言葉を、日常用語からかけ離れたように解釈した上で還元ということを言われたわけですけれども、そうすると、この宮沢税調会長の発言、私は至極真っ当なことをおっしゃっていると思いますが、宮沢税調会長が還元ではないと言っているのは、政府の立場からすると間違いだということでいいですか。端的にお答えください。

鈴木(俊)国務大臣 宮沢税調会長の発言を直接聞いておりませんのでよくそこは分からないわけでありますが、先ほど申し上げましたとおりに、還元とこう申し上げるわけでございますけれども、しかし、税収の増えた分につきましては、政策経費でありますとか国債の償還などについて既に使っているわけでありますから、減税をするとなるとやはり国債の発行をしなければならないということにおいて、還元ではないとおっしゃったのではないかな、そういうふうに推察いたします。

階委員 今のおっしゃったことは、宮沢会長の御趣旨に沿ったお話だったと思います。

 そうすると、普通、還元というのは原資があってこその還元だと思うんですが、今回は原資がないけれども政府の言葉で言う還元をするということになりますが、そういう理解でよろしいですか。

鈴木(俊)国務大臣 先ほどの答弁の繰り返しになって恐縮でございますが、今般、還元ということを、減税における還元ということを言っているわけでありますが、これは財源論ではなくて、税金を御負担いただく国民の皆さんにどのような配慮を行うかという観点で行うものでございます。税という形で直接お戻しするという考え方、これが分かりやすいことである、そして、それを通じて国民の負担の緩和をしたいという考えの中で実施をしたいと考えております。

階委員 そうすると、さっきも大臣がおっしゃったように、総理の言う還元を行った結果、借金が増えるということはお認めになるということでいいですね。

鈴木(俊)国務大臣 減税をしないときに比べれば、国債の発行はその分必要となると考えております。

階委員 還元しても、借金が増えれば将来負担が回ってくるわけで、これが、国民は全く今回の減税と給付のスキームを評価しない理由だと思います。還元ではないんだったら、そもそもやれるはずもない、借金を増やすんだったら、やれるはずもないことをやろうとしているということを指摘させていただきます。また後ほど財務大臣にはお尋ねするとしまして。

 日銀総裁にも来ていただいております。

 今日お配りしている資料の一ページ目ですけれども、先週の金融政策決定会合の公表文の一部を、前回、九月の公表文と比較したものをつけさせていただいております。

 ここの中ではちょっと取り上げていないんですが、別な部分で、長期金利の上限を厳格に抑えることは副作用も大きくなり得るという表現が出てきます。副作用には円安による物価高も含まれるかどうか、この点だけ端的にお答えください。円安による物価高は含まれますか。

植田参考人 お答えします。

 私どもが申し上げている副作用と為替レートとの関係という御質問だと思いますけれども、私どもが副作用を抑えるというときに為替レートの関係で念頭に置いておりますのは、私どものYCCの運用がマーケットのボラティリティーを高め、それが為替レートのボラティリティーにもつながってしまう、そういう副作用を抑えることを念頭に置いているということでございます。

階委員 ボラティリティーというのは変動性なわけですけれども、変動性が上方にずっと変動してきて、今、昨年の初めに比べると、物すごい、三〇%も四〇%も円安になっているわけですね。これは副作用だということでいいですか。

植田参考人 常日頃申し上げておりますように、為替レートはファンダメンタルズに沿って安定的に推移するということが望ましいわけですが、そのファンダメンタルズに沿って安定的に推移するということが現実の為替レートの変化との相対でどこまでそうなのかということは、なかなか判断が難しいところでございますので、具体的に申し上げるのは差し控えさせていただければと思います。

階委員 いや、具体的に聞いていません。一般論として聞いています。急激な円安は副作用に含まれるかどうか、結論だけお答えください。

植田参考人 私どものYCCの運用がマーケットのボラティリティーを高めて、為替のボラティリティーも高まるという場合は、それは副作用に含めて考えているということでございます。

階委員 副作用に含めて考えられるということです。

 政府は昨年来ずっと物価高対策を行っているんですね。物価高対策を行うということは、急激な物価高が進んでいるからなんですけれども。

 物価の番人というふうに日銀は言われます。その立場からすると、物価高の大きな要因となってきた、今、副作用を生んでいるということもお認めになった、長期金利の上限を抑え込んでいるイールドカーブコントロール、これは日銀としては、副作用をなくすために事実上放棄せざるを得なくなったのではないかと思いますが、違いますか。

植田参考人 私ども、足下の物価高といいますか、高いインフレ率は、大まかに二つの要因で起こっているというふうに考えてございます。一つは、しばらく前までの輸入物価の上昇が国内物価に及んできているという動きでございます。もう一つは、国内で物価が少し上がり、賃金が上がり、それがまた物価に跳ねるという物価と賃金の循環、うまく回れば好循環でございますが、それが少しずつ起こってきているという部分でございます。

 私どもは、第二の部分がもう少しうまく回って、二%のインフレ率が持続的、安定的に達成されるということを目指してございます。この第二の部分がまだ少し弱いということを考えまして現在の緩和政策を維持しているというスタンスでございますし、イールドカーブコントロールも、その判断の下で、現状、維持しているところでございます。

階委員 第二の力が弱いから金融政策を維持しているというお話でしたけれども、今現在、仮にエネルギーの補助がなかりせば、物価は四%上昇なわけですよ。

 こうした現状に鑑みて、日銀としては、これから物価を上げたいのか下げたいのか、どっちなのかはっきり言ってください。

植田参考人 これは非常に難しいところでございます。

 エネルギー補助金がなかりせば四%前後である全体のインフレ率、これは下がっていくことが望ましいと考えております。しかし、中長期的な観点からは、先ほど申し上げたような第二の力によるインフレ率が少しずつ上がっていくことが望ましいというふうに考えており、その上で、第一の力によるインフレは、輸入物価も減少に転じていますし、ということから、早晩勢いが衰えてくるというふうに判断しております。その下で、第二の力の方を育てていくために金融緩和を維持しているということでございます。

階委員 要するに、将来物価を上げていかなくちゃいけないので、今は物価が幾ら高くとも我慢してくれ、今は本当だったら物価を下げるのが望ましいけれども、将来物価を上げていくために今は我慢してくれということを言っているんですか。あるいは、将来景気をよくしていくために今は我慢してくれ、物価高だけれども、日銀としてはそれには手を出さない、我慢してくれということでいいんですか。

植田参考人 非常に悩ましいところでございますが、足下の物価高が家計や企業に大きな負担を強いているということは重々承知してございます。ただ、申し上げましたように、これがすごく長く続くというふうには考えてございません。

 他方、第二の力的なものがすごい弱い、しばらく前まではゼロあるいはデフレ的な環境にあって、それが二十数年も続いたということによる様々なコストもあったかと思います。

 その両方を鑑みた上で、後半の第二の力の方を育てていこうという観点から、緩和を維持してございます。

階委員 明確にお答えになりませんけれども、今の金融政策を続けていくということは、将来はよくなるかもしれませんけれども、今は物価高につながるということを前提にしていますよね。それでいいですね。

植田参考人 第二の力の部分については、プラスの影響を金融緩和政策が与えるということをもちろん念頭に置いてございます。

 第一の力の部分については、いろいろあるとは思いますけれども、大まかには、近いうちに水準が下がってくるというふうに思っております。

階委員 三ページ目に日銀の物価見通しを出していますけれども、近いうちに下がってくるというのは昨年の春ぐらいからずっと言っていますよ。ずっと言って、その都度、三か月ごとに上方修正、上方修正、先週も上方修正。これって何なんでしょうか。国民にはもうすぐ下がるから我慢してくれと言っておいて、そして金融政策を漫然と続けていって、結局、物価高はどんどん進んでいく一方じゃないですか。

 日銀の誤った物価見通しとそれに基づく金融政策によって物価高が進む一方、そして、さっきも還元の話をしましたけれども、国はお金がないのに減税をやったり給付をやったりしなくちゃいけなくなっている。このことについて責任は感じないんでしょうか。

植田参考人 確かに、輸入物価、あるいはその元にあります国際商品市況自体は昨年の後半から下がる基調にございます。その下で、徐々に国内の物価、特に、先ほど来申し上げているような第一の力に関連する部分はインフレ率が下がってくるだろうという見通しを、ここずっと、先生がおっしゃるように出してきたわけでございますが、その部分について多少見通しが、その後上方修正を続けてきたということは事実でございます。

 どうしてそうなったかということを考えてみますと、輸入物価の国内物価への価格転嫁の率のところについて……(階委員「言い訳は聞いていません。それは聞いていないから。責任を感じないか。問いに答えてください」と呼ぶ)

 もちろん、上方修正につながったような見通しの誤りがあったということは認めざるを得ません。したがって、今後、いろいろなデータをきちんと分析して、見通しが適切に行われるように努めていきたいというふうに思います。

階委員 責任を感じているのであれば、直ちに検証すべきですよ、この物価見通し。私もこの場で前にも指摘していますけれども、毎回毎回なんですよ。その結果、物価高がどんどん続いていって、血税をどんどん物価高対策に投入しなくちゃいけなくなっている。責任を感じているんだったら、直ちに物価の見通しの在り方を検証して、そして、こうした、どうせ誤ってしまう見通しに基づいた金融政策を行っている、このこと自体も問題ではないか。

 二ページ目に門間さんという元理事のペーパー、資料をつけましたけれども、過去に日銀は経済、物価情勢の判断を基にして金融政策を行ったことはないと。アベノミクス以降の話ですけれども。要は、まともな見通しをしていないから、金融政策も変更できないわけですよ。まともな見通しをしていれば、もっと早くに今回のようなイールドカーブコントロールの事実上の放棄みたいなことも出てきたと思いますよ。

 だから、まともな見通しができないことについて責任を感じるんだったら、検証をして、そして、今後こういった見通しに基づいて政策決定していいのかどうか、これも含めて総括をすべきだと思いますけれども、いかがですか。

植田参考人 私ども、三か月に一回、将来の物価、経済見通しを点検し、発表するという作業をしてございますが、その際、毎回、できる限りにおいて、見通しが過去誤った場合には、それはどうしてかということのある種の検証作業を続けてございます。

 その上で申し上げれば、インフレ率全体の見通しを少しここのところ誤っているということは事実でございますが、先ほど来申し上げています、それを輸入物価の転嫁である第一の部分と、国内で賃金、物価が回るという第二の部分に分けた場合に、第二の部分がまだまだ弱い、少しずつ上がってきているけれどもまだ弱いという部分については、余り大きく外していないというふうに思っております。その部分に基づいて金融政策運営を行ってきたということについては、大きな誤りはなかったのではないかなというふうに考えております。

階委員 今回のこの決定文ですけれども、イールドカーブコントロールのところで、金融市場調節方針というのがこの一ページ目の最初の方に書いていますけれども、長期金利については、十年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行うとしている一方で、その実際の運用については、長期金利の上限は一・〇%をめどとするということで、一%超えも容認しているわけですね。これは矛盾していますよね。

 さっき言ったように、物価を上げるのか下げるのか、これも明確にお答えにならないし、こうした公表文においても、ゼロ%程度なのか一%超えなのか、これもよく分からない。こうしたどっちつかずの曖昧な態度を取り続けた結果が、今回、政策決定でイールドカーブコントロールを抜本的に見直したにもかかわらず円安が是正されなかったということにつながっているんじゃないですか。そこはお認めになりますか。

植田参考人 今回の政策、いわばイールドカーブ運営の柔軟化は、これまで長期金利について一・〇%を厳格な上限としてきたというところを、めどという、柔らかな上限ということに変えたということでございます。

 これは繰り返しになりますが、第二の力による物価が上がっていくという部分がまだまだ弱いという下で、イールドカーブコントロールを含めました現在の金融緩和を続けていこうという判断の下に行われた措置でございます。

階委員 確認しますよ。ゼロ%程度で推移するというイールドカーブコントロールの方針と、一%超えも容認するという実際の運用の見直し、これは矛盾しませんか。

植田参考人 全体として強い金融緩和を続けるという意味で、長期金利ゼロ%程度で推移するようにオペレーションを行うということでございます。ただし、その下で金利が変化するものですから、上限を設けようということで、上限を一%というふうに設定しているところでございます。七月との関係では、その上限を、非常に厳密なものから、めどというふうに、ややソフトなものに変えたというところが変更点でございます。

階委員 これもさっきの還元と同じく、一般人には理解し難い話なんですよね。ゼロ%で推移するという範囲に一%超えも含むというのは、どう考えてもおかしいでしょう。そういう言い方をするから、日銀が信用されなくなるわけですよ。幾らマーケットに働きかけて円安を是正したいと思ったとしても、それは功を奏さないわけですよ。そういうことをもう少し真摯に受け止めたらどうでしょうか。

 私は、もう潔く、イールドカーブコントロール、目標としては実質賃金が上がる形で二%達成だけれども、道半ばだけれども、円安、物価高が進んでいるから、これはもう長期金利のコントロールはやめます、それでいいんじゃないですか。そういうふうに正直に言うべきだと思いますよ。その方が物価という意味ではプラスに働いたと思うんですが。

 こういう分かりにくい、矛盾をはらんだ支離滅裂なメッセージの発信は、非常に私はマーケットを混乱させるし、また、日銀が意図した方向と反して物価高を進めているんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。

植田参考人 繰り返しになりますが、足下、まだ基調的な物価の上昇率が二%には少し距離があるという中で、大規模な金融緩和を続けてございます。

 イールドカーブコントロールは実質なくなってしまったのではないかという御意見かもしれませんが、そうではなくて、現在でも、定例のオペ、臨時オペを使ってかなり大量の国債を買い続けて、長期金利をある程度以上、現状では一%以上大きく上がらないようにするというオペレーションを続けてございます。

階委員 最後に、財務大臣に一問だけお聞きします。

 六ページ目に、過去二十年の予算編成時の前提となっている予算積算金利というものと実際の国債の表面利率の平均値、これを対比した表を挙げております。

 今、国債の発行金利は〇・九%ぐらいだと伺っておりますけれども、過去には、例えば平成二十四年度のところを見ていただくと、実際の利率が〇・八%のときに、予算の金利は二・〇%で計算していたというところがあります。しかし、このところ、日銀がゼロ%で長期金利を推移させるといったこともあり、ゼロ%を前提として一・一ぐらいの積算金利ということで、過去の水準に比べると、うんと低い状況で予算編成をしてきたという経緯があるわけですね。

 この一・一は、さすがに、今〇・九とかまでになっているわけだから、見直すべきだというか、見直さないと危ういのではないかと思いますが、最後、大臣にこの見解を伺います。

鈴木(俊)国務大臣 積算金利でございますが、来年度の予算編成に向けましては、長期金利が上昇している状況を踏まえつつ、財務省の担当部局からは、積算金利を一・五%として予算要求を行っております。具体的な利払い費については、これからの予算編成過程において引き続き議論を深めて決定していきたいと思っております。

階委員 一・五%が妥当なのかどうか、これもまた議論の余地があるところだと思いますが、今日はこの辺で終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

津島委員長 階猛君の質疑は終了いたしました。

 

 

昭和56年4月28日衆議院内閣委員会

○神田委員 いま私間違いまして、大将とか中将とか旧軍のあれで言いましたが、これは将とか将補とかということでございまして、ちょっと資料のとおり読みまして失礼をしました。
 いずれにしましても、イギリスやあるいはアメリカ等に比べますと、やはり相当若い年齢で退官せざるを得ないような状況になっておりますが、これはひとつ今後検討していかなければならない問題だというふうに思っております。今後の検討課題ということで、それぞれの立場で御検討をお願いをしたい、こういうふうに思っております。
 防衛問題でちょっと時間をとりましたが、以上で防衛問題について質問を終わりまして、次に、定年法案に対する質問に移らせていただきます。防衛庁長官、どうぞ御退席ください。
 それでは定年法案について質問を続けます。
 まず最初に、定年法案を提案をされてまいりましたけれども、この定年法案によって、政府としては、どういうふうな財政効果をこれで考えているのか。この法律が成立した場合に、昭和六十年三月三十一日から六十歳定年制が導入されるわけでありますが、これに伴って定年退職の対象となる公務員の数は一体どのぐらいなのか、昭和六十年度の場合はどのぐらいで、その後毎年推計何名ぐらいがこの対象になるのでありましょうか。

○斧政府委員 お答えいたします。
 昭和六十年三月三十一日にどれくらいの職員が定年退職することになるかという推計はなかなかむずかしいのでございますが、いま審議されております定年法が通りましたら職員にどういう影響が出るのか、それから人事院総理府、各省、これは定年制の円滑な実施に向けていろいろ準備をする、こういうことになりますので、その影響がどういうふうにあらわれるかということでなかなかむずかしいのですが、非常にラフな推計で申し上げますと、現在五十五歳以上の職員が、給与法の適用職員で言いますと、約五万四千人在職しております。一方、五十四年度中に五十五歳以上で退職しております職員が八千五百人ばかりおります。その関係で、六十年の三月三十一日にどういう数字になるであろうかということを推計してみますと、大体、五十五年の三月三十一日に在職しております六十歳以上の職員が一万四千人ですが、この程度の数字になるのではないかというふうに考えられます。ただ、この一万四千人の中には、大学の教官でありますとか医師でありますとかという職員も入っておりますので、この方たちは六十歳以上の定年になりますので、若干数字は減ると思います。
 それから、六十一年以後どういうことになるであろうかということなんですが、これも大変推計はむずかしいのですが、国家公務員給与の実態調査で出ております数字でいきますと、五十五年一月十五日現在で調べました国家公務員給与実態調査によりますと、大体毎年一万四千から五千人ぐらいが六十一年以降六十歳に達するというような、ごく大ざっぱでございますが、そんな感じでございます。

○神田委員 一方現在国家公務員には、民間の定年にかわるものとして勧奨退職制度があるわけですね。現在、各省庁の平均勧奨退職年齢は五十八・六歳であります。六十歳定年制が導入された場合、六十歳まで雇用の延長となるわけでありますが、これによって雇用の延長の対象となる公務員の数はどのくらいになるのでありましょうか。

○斧政府委員 これもなかなか確たる数字は出てまいりませんのですが、六十歳の定年になりますというと、現在五十九歳以下でもって勧奨基準年齢を設けております省庁の職員について在職期間が延びるという現象があらわれてくるのではないかと思いますが、これは課長補佐クラスで五十九歳以下の勧奨基準年齢を持っております省が十四機関、課長クラス以上で十七機関ございます。この人たちが今後どういう退職の過程を示すのかよくわかりませんが、大体いま任用状況調査に毎年あらわれております数字で言いますと、五十五歳から五十九歳までの間に退職する職員が四千名程度おります。いま御質問のどれくらいの人間が在職期間が延びるのであろうか。この四千名の人がいまは五十五歳から五十九歳まででやめておるわけですが、六十歳定年になりましたときに、もしそのまま居残るという想定をいたしますと、大体概数四千名程度であろうということでございます。

○神田委員 定年制の導入の理由の一つが財政上の問題だ、こういうことでありましたが、定年によって退職する者の数と逆に雇用の延長となる者の数とを比較考量した場合に、財政上のバランスというのはどういうふうになるのだろうか。いまお話を聞きますと、それぞれ概算で数字が出ておりますけれども、定年制を施行したことによって人件費はどのぐらい節約されるというふうに考えられているのか、その辺はいかがでありますか。

○山地政府委員 この定年制の実施が六十年から始まるわけでございますけれども、その間経過期間がございます。その間に私どもといたしましては、過渡的な処置ということを多角的にいろいろとやらなければいけないだろうと考えております。したがって、そういったことがどのように推移していくかということが一つ問題があろうかと思います。
 それから、いま人事院の方からお答えございましたように、本来ならば勧奨退職で退職された方が残るかもしれない。これはいまお答えいただいたようにかなり不明確なことでございます。そこで、そういったことがどういうふうに起こるかという予測が非常にむずかしいので、バランスシートの話になりますと非常に計算がしにくいわけでございますけれども、いずれにいたしましても、新しく私どもの方が六十年に定年制を施行したいということは、財政問題としてまずはとらえておりませんで、行政改革としてこれをやりたい。公務の能率を遂行するためには、定年制を施行することが適当であるという着眼点に立ってこれをやっているわけでございますが、しかし、それが財政上どのようなメリットがあるかというのは、片方でやはり考えておかなければいけないことだと思うわけでございます。
 そこで、六十年まであるいは六十年からしばらくたったところ、つまり短期的なところではどうなるかということは、かなり計算が予測の問題に絡んでくるので明確には出てこない。しかし、言えることは、長期的には退職が円滑に行われるということになりますと、長期在職している方というのは、新規採用の方に比べると三倍の給料をもらっているということになりますので、その差額というものは、まずは浮いてくる。ところが退職が進めば年金の支払いがふえるということで、年金部分というのが財政支出としてふえる、そういうところが出ようかと思います。しかし、長期的には、そういうことで考えれば財政的にメリットというものはあるというふうに考えております。

○神田委員 次に、三公社五現業の場合についてお尋ねしますが、まず五現業の職員につきましては、公労法によりまして労働条件について団体交渉権が認められているわけであります。しかし、今回の改正によって、法律で原則的な定年年齢六十歳を法定化していることは、第一番に五現業職員に認められている団体交渉権の侵害とならないのかどうか、さらにはこのことは公労法に抵触をしないのか、この点はどういう見解でございますか。

○山地政府委員 いまの先生の御指摘は、公労法八条で団体交渉の対象というところに勤務条件が入っておりまして、そこで休職、免職その他のことが団体交渉の対象になるということになっているわけでございますけれども、現行の公労法の四十条で公務員法の適用除外ということが書いてあるわけでございますが、その各条を見ますと、免職の規定あるいは公務員法の七十五条の身分保障の規定等は除外されていないわけでございます。七十七条というところは公労法で適用除外になっているわけでございますけれども、たとえば意に反する免職の規定というのが七十八条にあるわけでございまして、この規定はそのまま適用されているわけでございます。したがいまして、現在の公労法の精神というのを人事院規則で決めるということにつきましては、かなり広範囲に適用除外をしておるわけでございますが、こういった身分関係の変動、つまり分限にかかわる点につきましては、適用除外をしてないというのが公労法と国家公務員法の関係であるわけでございます。公労法の方で認めている団体交渉権の対象というのは、法律で身分保障をしている部分については適用になってない。つまり身分保障ということは、法律の規定で定められているというのが現状であるわけでございます。
 そこで、今度の定年制ということの導入をいたします場合には、やはり法律で決めていく必要がある。法律で定めたことの範囲内で団体交渉を行うということになるのが筋ではないか、これが私どもの考えでございまして、その考えに従いまして、五現業には団体協約権があるというたてまえを堅持いたしまして、本来ならば任命権者あるいは人事院規則で決めるというようなことを主務大臣に大幅に委任しております。たとえば六十歳定年でやめるという場合のいつやめたらいいのかというようなこと、あるいは勤務の延長をする場合にどういう方を延長したらいいかというようなこと、あるいは特例定年で六十歳から六十五歳までの間にどういう人が延長といいますか、特例定年を定めるかというようなことにつきましては、これは主務大臣と組合との間でいろいろ御協議いただいて決めていくということになっているわけでございます。

○神田委員 法定化事項については団体交渉の交渉事項としないということであるならば、この法定化すべき事項と団体交渉で決める事項について、その基準は一体どこにあるのか、現在ではどういうふうになっているのか。いままで団体交渉に任せられている事項であっても、これを法定化してしまえば、その対象から外されて、団体交渉の範囲がそれだけ狭められてしまうわけでありますから、労働者の労働基本権のあり方からすれば、団体交渉の範囲を拡大するよう努力をしていくというのがわれわれの立場でありますが、この定年の法定化は、こういうことから言いますと逆行しているような形になる。したがいまして、こういうことについてはどういうふうに御見解をお持ちになりましょうか。

○山地政府委員 ただいま申し上げましたとおり、国家公務員法身分保障がございまして、たとえば意に反する免職をするときの事由というのが国家公務員法の七十八条に書いてあるわけでございます。ところが公労法の八条で、団体協約の締結ができるようになっているところにも免職ということが書いてあるわけでございますが、これらの関係につきましては、免職の事由は国家公務員法で決めてあって、それの基準について八条の方で団体協約の締結がされるという関係になっているわけでございます。したがって、それではいままで団体交渉をしたときに免職のことについてどういう議論ができたかというと、いまの八条に書いてある基準についてはできたわけでございますけれども、その基準ということになりますと、たとえば勧奨退職のことを決めたということは、これは合意があってそのときに勧奨退職をするわけでございます。勧奨退職というのは法的な拘束力はないわけでございますから、国家公務員法の意に反してやめさせるという行為ではない、本人が合意をしてやめることでございます。そういったことは団体交渉で対象になっていたわけでございます。それでは、従来はそういった団体協約で定年制をしくことができたかというと、これは本人の意に反して免職できない、あるいは任命権者は法律に従ってしか免職することはできないという規定から考えて、そういったことの協定はできなかったわけでございます。
 そこで、今回定年制を導入するという場合に、身分保障について変動はございますけれども、従来の団体交渉権ということからはやってなかったことであるということになろうかと思います。したがって、この点につきましては、狭めるということではないと私どもは理解しております。

○神田委員 定年制の導入は、現業職員の基本的な労働条件の問題であるわけでありますが、これを法定化するに当たっては当然労使の十分な話し合いがなされなければならないと考えております。今回の改正に当たって、そのような交渉は持たれたのでありましょうか、その辺はどうでございますか。

○山地政府委員 いま申し上げましたとおり、団体交渉によって決めるべきことではないというのが定年制度の根本であるわけでございまして、これは法律で決めなければ定年制の導入ができない、そこで法律で決めるためにはどうやって決めるかという話になるわけでございます。もちろん政府としてそういったことを提案する場合に、職員団体の意向を十分聴取することが必要であることは言うまでもございませんが、そのために、私どもといたしましては、まず第一にそういった労働三権のために設けました人事院というところで意見を聴取し、そこで一年半の慎重な御検討を得た結果、この法案を作成したわけでございます。その過程においても職員団体の意見は聴取してきたわけでございまして、今後ともそういった職員団体への接触ということを十分にやっていきたい、かように考えております。

○神田委員 次に、指定職の適用の問題について御質問申し上げます。
 指定職の適用職員は現在千五百人弱いるわけでございますが、その中で現在定年が定められている者の数、割合はどういうふうになっておりましょうか。

○斧政府委員 指定職は先生おっしゃいますとおり約千五百名でございます。そのうち定年制の定められております職員は、国立大学と国立短期大学の教官でございます。大学の学長及び教授の中に指定職の方がいらっしゃるわけですが、約六百六十名ばかりいらっしゃいます。

○神田委員 指定職の高齢化比率が非常に高いわけでありますが、五十四年現在で六十歳以上の者の占める割合は約四〇・一%。定年制の導入は当然指定職にある職員にも適用されることになるのかどうか。たとえば一般職にありましては検事総長その他の検察官、さらには教育公務員におきましては国立大学九十三大学の教員の中から何名か出ているわけでありますが、これらについてはどういうふうにお考えになりますか。

○斧政府委員 検察官と大学教官につきましては、現在すでに定年が定められております。今回の法案では、別に法律で定められておる者を除き、こういうことになっておりますので、今回の定年制は適用されないことになっております。

○神田委員 次に、定年と勧奨退職との関係について御質問申し上げます。
 まず、定年制が導入されることになりますが、仮にそういうふうになった場合には、勧奨退職というのはなくなるのでありましょうか。

○斧政府委員 定年制が実施されますと、現在各省で勧奨基準年齢というものを定めまして、集団的に職員の退職管理を行っておるわけでありますが、こういう形の退職勧奨はなくなるということでございます。
 ただ、一般の職員の方と幹部の職員の方を分けて考えますと、一般の職員の方につきましては、定年制実施後早くに勧奨はなくなると思いますが、幹部の職員につきましては、組織の実態に応じまして、従来からの人事計画の引き続きということもございますので、なおしばらくは残るのではないかと思っております。

○神田委員 勧奨退職が大体そういうふうな形で残るというわけでありますが、通称エリート公務員の場合、五十二歳から三歳で退職する例が大変多いと聞いております。勧奨退職を残すとすれば、これらエリート公務員の早期退職制はそのまま継続して実行されていくのかどうか、この辺はいかがでありますか。

○山地政府委員 いま申し上げましたとおり、定年制というのは、集団的な退職勧奨制度のために設けられたわけでございますが、御承知のように、公務員組織というものを維持していくためには、ある種の秩序が必要であろうかと思うわけでございますが、特に組織の中核である幹部の職員につきまして、新陳代謝を早めて組織の能率的な運営を図ることは、今後とも必要でないかと思うわけでございまして、そのためには定年まで待つというよりも、その以前において、もちろん本人の承諾ということが必要であるわけでございますけれども、個別的な退職管理としての勧奨退職は今後とも続けていかざるを得ないのじゃないか、かように考えておるわけでございます。

○神田委員 この問題はいわゆる天下りの問題とも関連して、天下りの弊害を是正するという意味からも、まだどんどん働ける若い公務員を五十二、三歳で勧奨退職させてしまう、早期退職させてしまう、こういう方向はちょっと考えた方がいいと思うのでありますが、その辺はどうでありますか。

○藤井政府委員 いま御指摘の点は同感の面が非常に多いわけでございます。いまもお話しのありましたような、特に現在まで行われております勧奨退職の中で、非常に若い方でいろいろな事情が特殊的にあるわけですが、そういう方々もおられたわけでありますが、六十歳定年制ということになりますれば、一般職員は無論のことでございますが、そうでない、要するに幹部職員の方々でもそういう一般の風潮を背景にいたしまして、おのずからその分が延びていくという傾向は顕著に出てまいるのではないか。やはりそれは定年制の一つの効果でもあろうかと思うのであります。
 それと、特に幹部職員等については、いま御指摘になりましたような巷間いろいろ御批判をいただいております天下りの問題とも関連なしとは申せません。この点については、法律の規定もございますし、人事院といたしまして、内容について非常に精細に審査をいたしまして、弊害の出ないように十二分の努力はいたしておるのですが、各省庁の都合で幹部職員に後進に道を開いていただくという必要が生じました場合に、若い人であるだけに、そのまま、あとはおまえが勝手にやれと言うわけにはまいりますまい。そういうようなことから、いろいろな点で行く先をお世話するということが通例行われているわけでありまして、そういうことがいわゆる天下りの数をふやさせ、それをめぐっての問題点が指摘される契機にもなるという点があったことは事実だろうと思います。そういう点につきましては、この定年制が施行されるということになりますれば、そのケースが絶無というわけではありませんが、おのずから勧奨の年齢というものも延びていくというようなことと並行いたしまして、天下り関係等につきましても漸次落ちつきを見せてくるということは十分考えられるところではないかというふうに思います。