【訪問レポート】角川武蔵野ミュージアムのマンガ・ラノベ図書館に行ってみました(山中智省)

2020/11/10

2020年11月6日(金)にグランドオープンを迎えたところざわサクラタウン。その目玉施設の一つである角川武蔵野ミュージアムには、「KADOKAWAグループのほぼすべてのライトノベルが揃っている、日本で一番ラノベが読める図書館」(公式HPより)を謳ったマンガ・ラノベ図書館が併設されています。オープン前から話題になっていたこの図書館ですが、果たして、実際はどのようなものになっているのか……。どうしても内部が気になってしまい、いてもたってもいられず、11月9日(月)の午後、強引に時間を作って訪問してみました(笑)。以下、私が初訪問してみて個人的に気づいたことや感じたことを、備忘録として記したいと思います。

角川武蔵野ミュージアム

マンガ・ラノベ図書館は角川武蔵野ミュージアムの1階にあります。図書館への入館には事前か、あるいは当日にチケットを購入する必要がありますが、入館が可能なのは「マンガ・ラノベ図書館」(一般:600円/中高生:300円/小学生200円)と「KCM 1DAY パスポート」(一般:3000 or 4000円)の2種のみになります。チケットは券種が色々とあるので要注意です。

ちなみに「マンガ・ラノベ図書館」(一般:600円/中高生:300円/小学生200円)の場合、現時点では入館時間を含めて3時間まで滞在でき、3時間以内であれば再入場も可能とのこと。おそらくはここで、「え?3時間もいられるの!?」という方と、「え?たった3時間だけ!?」という方で、賛否が分かれそうですね。

さて、いざチケットを片手にマンガ・ラノベ図書館に入館すると、スタッフの方からまず、「棚から手に取った本はブックカートに返却してください」との案内がありました。館内の書棚に並ぶマンガやラノベは、各自が好きな本を自由に手に取り、好きな席やスペースで読むことができます。しかし返却時には、本を直接棚に戻さないよう注意が必要ですね。この措置は、一般や大学の図書館でも行方不明図書防止のため、やっているところがあったと思います。あとは、カウンターの後ろの方にある機械は本の除菌機?ですかね。だとすると、新型コロナの感染防止策の一環として、本の除菌処置も返却時に行っているのかもしれません。

マンガ・ラノベ図書館のエントランス付近のカウンター

館内は1階と2階のフロアに分かれており、1階のエントランス付近にはカウンターのほか、新刊コーナーや黒板アートが並んでいます。

新刊コーナー
黒板アート

さらに1階フロアには「連想検索コーナー」と題して、コンピュータと編集者の力を駆使して実現した選書の配架棚があります。様々なテーマにそって作品が並べられており、その分類状況も興味深いところですね。

連想検索コーナーに関する説明
連想検索コーナーの全景

このほかにも1階フロアには、意外にも、子ども向けの児童書や絵本のコーナーがありました。マンガ・ラノベ図書館という名前からは分かりませんでしたが、子どもやその親が一緒に楽しめる蔵書の用意と、専用コーナーの設置も行われていたのですね。マンガ・ラノベを前面に押し出してるぶん、この点のPRはあんまりされていなかったような……。

角川つばさ文庫
学習マンガ
電子絵本

続いて2階のフロアですが、角川歴彦「ライトノベル宣言」を横目に見つつ階段を上っていくと、著者名順に並んだラノベやマンガがずらり。私が見た限りおそらくはラノベの方が、蔵書数はマンガよりも圧倒的に多いのではないかと思います。

角川歴彦「ライトノベル宣言」
2階フロアに上がってすぐの書棚
1階フロアとの吹き抜け付近の書棚

館内全体のスペースこそあまり広くはないですが、「KADOKAWAグループのほぼすべてのライトノベルが揃っている、日本で一番ラノベが読める図書館」というだけあり、これだけの数のラノベが一堂に会する光景は実に壮観でしたね。うん、ずっとここにいたい(笑)。しかし先にも述べたように、「マンガ・ラノベ図書館」チケットでは最大3時間までしか滞在できません(1DAYパスなら大丈夫なのでしょうか……?)。ですので、シリーズをじっくり読破したい!!という方には、この制限時間が問題になってきそうですね。

そして、この図書館を訪れるメリットを自分なりに考えてみたのですが、少なくとも私のような研究&蒐集志向の人間ですと……、

① ラノベの蔵書の多くが(おそらくは)初版・帯付本のため、刊行当時、書店で実際に販売されていた状態のままの姿を、現物で直接確認できる。

② 絶版本も蔵書に含まれているため、中古価格高騰により入手が難しい、あるいは、他の図書館には蔵書がないものでも、現物を確認できる可能性が高い。

という感じでしょうか。

②については、今回の訪問ではどの程度、絶版本が館内蔵書に含まれているのかまでは確認できなかったので、ひとまず「可能性が高い」としておきました。公式が「KADOKAWAグループのほぼすべてのライトノベル」という言い方をしている以上、おそらくは、蔵書がないものもあるのだろうなと……。ちなみに、蔵書はビニール製のブックカバーで保護されているため、本体カバーや帯の破損・汚損はひとまず避けられそうでした。

となると、書影の撮影や複写・貸出の可否が気になるところなのですが、スタッフの方に直接うかがってみたところ、少なくとも書影の撮影は先のルールの範疇でOKとのことです。一方で、複写サービスは現在未定、貸出についてはおそらく行う予定がないとのことでした。個人的に、書影の撮影OKなのは大変ありがたいですね。ただ、今回は初訪問だったのでそこまではしませんでした。やり始めると完全に調査になるので(汗)。

角川武蔵野ミュージアムのエントランスに設置されたプレート

スタートを切ったばかりのマンガ・ラノベ図書館ですので、現時点では、その可能性は未知数な部分が多いかと思われます。とはいえ、このような施設が実際にでき、そこにこれだけの数のラノベが揃って配架・開架されているというのは、本当に興味深くワクワクしますね。ぜひともKADOKAWAには、今後の有効活用のすべを模索して頂きつつ、私もその使い方を色々と、考えられればと思います。とりあえずマンガ・ラノベ図書館については、取り急ぎ年間パスポートの創設を願いたいですね(笑)。

ご興味のある方はぜひ、現地に赴いてみてください。

<備考>
マンガ・ラノベ図書館を含む角川武蔵野ミュージアム館内の撮影は、「撮影禁止エリアを除いて可能です。動画での撮影は禁止です。 また、フラッシュ、自撮り棒、三脚のご使用はご遠慮ください。」(公式HP「よくある質問」の「撮影について」より)とのことです。また、撮影した写真の掲載については、「禁止エリア外で撮影された写真は、営利目的を除いた場合にのみ掲載可能です。 ご利用にあたっては利用者の責任においてご利用ください。 また、写真の利用に際し、当館では一切の責任を負いません。」(同前)とのこと。本ブログに掲載している写真はこのルールに則って撮影・掲載していますので、あらかじめご承知おきください。

【文責:山中】


【新刊】大橋崇行・山中智省編著『小説の生存戦略-ライトノベル・メディア・ジェンダー』青弓社

2020/05/21

2006年5月の設立以来、14年にわたりライトノベルを対象とした研究を続けてきた当研究会の「到達点」「集大成」となる新刊『小説の生存戦略-ライトノベル・メディア・ジェンダー』が、2020年4月28日に青弓社より発売されました。ご興味のある方はぜひ、お手に取ってご覧頂ければと思います。

https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787292551/

【紹介】

映画、マンガ、アニメ、ゲーム、テレビドラマ、ウェブサイト――活字で書かれた小説でなくても、現代文化では様々なメディアを通じて物語が発信され、受容されている。多様な表現ジャンルの価値がフラットになるいま、小説にはどのような可能性があるのか。

現代の小説の枠組みを確認するために、マンガやアニメ、ゲームなどのサブカルチャーを雑食的に取り入れて発展・成熟を遂げてきたライトノベルの方法や様式を検証する。そのうえで、ジャンル間を越境してコンテンツを接続するメディアミックスのあり方、図書館や教育での小説の位置、ジェンダーや2・5次元との関係性などを照らし出す。

小説が現代の多様な文化のなかで受容者を獲得し拡張する可能性、サバイブする戦略を、多角的な視点から解き明かす。

【目次】

はじめに 大橋崇行

第1部 拡張する現代小説

第1章 現代文芸とキャラクター――「内面」の信仰と呪縛 大橋崇行
 1 マンガを小説で表現する――恩田陸『蜜蜂と遠雷』
 2 直木賞における評価と作中人物の「内面」
 3 現代文芸におけるキャラクターの越境

第2章 キャラクター化される歴史的人物――「キャラ」としての天皇・皇族の分析から 茂木謙之介
 1 歴史と物語、現在における切断
 2 特異「キャラ」としての近代天皇
 3 平成末期、天皇キャラの乱舞

第3章 霊感少女の憂鬱――ライトノベルと怪異 一柳廣孝
 1 ラノベと怪異
 2 ラノベ独自の「怪異」表象とは何か
 3 「霊感」と「霊感少女」の起源
 4 ラノベのなかの「霊感少女」たち

第4章 「太宰治」の再創造と「文学少女」像が提示するもの――『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズ 大島丈志
 1 『ビブリア古書堂』シリーズと太宰治『晩年』
 2 「断崖の錯覚」の再創造
 3 太宰治「断崖の錯覚」から『ビブリア古書堂』シリーズへ
 4 『ビブリア古書堂』シリーズと「文学少女」が提示するもの

コラム ライト文芸 大橋崇行

コラム ウェブ小説からみる出版業界の新しい形 並木勇樹

コラム 中国のネット小説事情――「起点中文網」のファンタジーカテゴリー「玄幻」を中心に 朱沁雪

第2部 創作空間としてのメディア

第5章 遍在するメディアと広がる物語世界――メディア論的視座からのアプローチ 山中智省
 1 「読んでから見るか、見てから読むか」の現在
 2 多様で複雑なライトノベルをめぐるメディアミックス
 3 「アダプテーション」が発生するポイントはどこか

第6章 三つのメディアの跳び越えかた――丸戸史明『冴えない彼女の育てかた』を例に 山田愛美
 1 「会話劇」としての『冴えない彼女の育てかた』
 2 挿絵の活用
 3 アニメとの比較

第7章 学校図書館とライトノベルの交点――ライトノベルは学校図書館にどのような可能性をもたらすのか 江藤広一郎
 1 中学・高校図書館とライトノベル
 2 これまでの教育空間とライトノベル
 3 今後の学校図書館とライトノベル
 4 ICT教育とライトノベル

コラム 学校教育を取り込むライトノベル 佐野一将

コラム ライトノベルで卒業論文を書く人へ――「ぼっち」がメジャーになる瞬間 須藤宏明

コラム ラノベ編集者の仕事 松永寛和

コラム VRがもたらす体験 山口直彦

コラム ライトノベルとメディアミックス――特にアニメ化について 芦辺 拓

第3部 文化変容とジェンダー

第8章 ライトノベルは「性的消費」か――表現規制とライトノベルの言説をめぐって 樋口康一郎
 1 ライトノベルの表紙は「暴力」か
 2 オタク文化と表現規制
 3 表現規制の問題点
 4 表現規制問題を批評するライトノベル
 5 PC/SNS時代の「公共」

第9章 「聖地巡礼」発生の仕組みと行動 金木利憲
 1 聖地巡礼とはどのような現象か
 2 ビジュアル情報と聖地巡礼

第10章 少女小説の困難とBLの底力 久米依子
 1 少女小説の直面する困難
 2 現代日本と少女小説のルール
 3 新たなモード
 4 BLという可能性

第11章 繭墨あざかはなぜゴシックロリータを着るのか――衣装で読み解くライトノベルのジェンダー 橋迫瑞穂
 1 『ブギーポップ』シリーズにおけるマントと帽子
 2 「炎の魔女」とブギーポップ
 3 ゴシックロリータとジェンダー
 4 「子宮」とゴシックロリータ
 5 ジェンダーを攪乱する衣装

コラム 2・5次元舞台 須川亜紀子

コラム 魔法少女アニメとライトノベルの魔法 山内七音

座談会 ライトノベル研究のこれまでとこれから 一柳廣孝/久米依子/大橋崇行/山中智省
 1 ライトノベル研究会はなぜ始まったのか
 2 『ライトノベル研究序説』から『ライトノベル・スタディーズ』へ
 3 二〇一五年以降の動向
 4 研究のこれから

おわりに 山中智省

なお、同書をもって本研究会はその活動を閉じる予定となっております。こちらのブログについては今後とも存続予定ですので、引き続き、どうぞよろしくお願い致します。

【文責:山中】


新刊情報(研究会関連書籍)

2020/03/25

【3月24日発売】

『怪異の表象空間―メディア・オカルト・サブカルチャー』

一柳廣孝著/国書刊行会

https://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336065773/

[内容紹介]

日本の近現代は怪異とどう向き合ってきたのか。明治期の怪談の流行から1970年代のオカルトブーム、そして現代のポップカルチャーまで、21世紀になってもなおその領域を拡大し続ける「闇」の領域――怪異が紡いできた近現代日本の文化表象を多角的視座から探究した決定版。

第1部 怪異の近代
第1章 怪談の近代
第2章 心霊としての「幽霊」――近代日本における「霊」言説の変容をめぐって
第3章 怪談を束ねる――明治後期の新聞連載記事を中心に
第4章 心霊データベースとしての『遠野物語』
第5章 田中守平と渡辺藤交――大正期の霊術運動と「変態」
第6章 霊界からの声――音声メディアと怪異
第2部 オカルトの時代と怪異
第7章 心霊を教育する――つのだじろう「うしろの百太郎」の闘争
第8章 オカルト・エンターテインメントの登場――つのだじろう「恐怖新聞」
第9章 オカルトの時代と『ゴーストハント』シリーズ
第10章 カリフォルニアから吹く風――オカルトから「精神世界」へ
第11章 「学校の怪談」の近代と現代
第12章 幽霊はタクシーに乗る――青山墓地の怪談を中心に
第3部 ポップカルチャーのなかの怪異
第13章 薄明を歩む――熊倉隆敏『もっけ』
第14章 ご近所の異界――柴村仁『我が家のお稲荷さま。』
第15章 学校の異界/妖怪の学校――峰守ひろかず『ほうかご百物語』
第16章 キャラクターとしての都市伝説――聴猫芝居『あなたの街の都市伝鬼!』
第17章 境界者たちの行方――「もののけ姫」を読む

【4月28日発売】

『小説の生存戦略―ライトノベル・メディア・ジェンダー』

大橋崇行・山中智省編著/青弓社

https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787292551/

[内容紹介]

映画、マンガ、アニメ、ゲーム、テレビドラマ、ウェブサイト――活字で書かれた小説でなくても、現代文化では様々なメディアを通じて物語が発信され、受容されている。多様な表現ジャンルの価値がフラットになるいま、小説にはどのような可能性があるのか。

現代の小説の枠組みを確認するために、マンガやアニメ、ゲームなどのサブカルチャーを雑食的に取り入れて発展・成熟を遂げてきたライトノベルの方法や様式を検証する。そのうえで、ジャンル間を越境してコンテンツを接続するメディアミックスのあり方、図書館や教育での小説の位置、ジェンダーや2・5次元との関係性などを照らし出す。

小説が現代の多様な文化のなかで受容者を獲得し拡張する可能性、サバイブする戦略を、多角的な視点から解き明かす。


【12/14・15開催】コンテンツ文化史学会2019年度大会:史実のトキワ荘とコンテンツとしての「トキワ荘」~現在進行形の神話として(目白大学新宿キャンパス)

2019/11/24

【趣旨】

豊島区南長崎に存在したトキワ荘(1981年解体)は、手塚治虫をはじめとして、藤子不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫らが住んでいたことで知られる。彼らの作品や、その後のドラマ・アニメ・小説などで、マンガ家の聖地として取り上げられ、現在でもその跡地を訪れる人も多い。

トキワ荘を取り上げた作品の多くは、実際にトキワ荘に住んでいた/訪問した人による「ドキュメンタリー」として作られており、当時居合わせた人間にしか分からないようなリアリティのあるディティールが描写される。しかし、様々な作品で描写されるトキワ荘の姿は、決して同一のものではなく、作品中の要請に応じてディフォルメされている。

現在では、トキワ荘の復元施設として「(仮称)マンガの聖地としまミュージアム」の建設が進められており、文化施設であると同時に、マンガ研究、さらにはコンテンツ文化史研究にとっても重要な拠点となることが期待されている。なお、トキワ荘の復元には計画当初から、目白大学メディア学部メディア学科(前:社会学部メディア表現学科)がアカデミックな観点から連携しており、すでに産業振興・地域活性化・人材育成の方面で蓄積を重ねている。 本大会では以上を踏まえ、これまでコンテンツ文化史学会で議論されてきた場所・史実とコンテンツとの相関性について具体的・実際的に検討するため、目白大学メディア学部メディア学科と共同(共催)で、「史実のトキワ荘とコンテンツとしての「トキワ荘」~現在進行形の神話として」と題し、トキワ荘の聖地としてのイメージがどのように形成されてきたのかを多角的な視野から検討したい。

【開催要項】

日時:2019年12月14日(土)・15日(日)
場所:目白大学新宿キャンパス 研心館ホール
https://www.mejiro.ac.jp/univ/campuslife/shinjuku/life/campus_map/
会費:会員無料 非会員:500円(2日分)
共催:目白大学メディア学部メディア学科

参加登録はコチラ

【タイムテーブル】

1日目:12/14(土)13:00開場/13:30開会
大会シンポジウム「史実のトキワ荘とコンテンツとしての「トキワ荘」」

大会趣旨説明 山中智省(目白大学人間学部子ども学科)

テーマ報告1 鷲谷正史(目白大学メディア学部メディア学科)

テーマ報告2 小出幹雄(としま南長崎トキワ荘共働プロジェクト協議会)

テーマ報告3 橋本一郎氏(作家・マンガ原作者)

2日目:12/15(日)10:00開場/10:15開会
個別報告・セッション報告・エクスカッション

川崎瑞穂(東京電機大学)
「キャラソンの「誕生」―芸能史研究からみたコンテンツ文化―」

鈴木真奈(近畿大学)
「日本のマイコンブームの担い手は誰であったのか―個人をユーザーの単位とするコンピュータの黎明期を再考する―」

神谷和宏(北海道大学国際広報メディア・観光学院)
「「物語の稀薄化」の表象としての東京ディズニーランド」

セッション報告「#承認が生み出すコンテンツ文化」
―中村香住(慶應義塾大学大学院社会学研究科)
―関根麻里恵(学習院大学大学院人文科学研究科)
―山内萌(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科)

エクスカーション(トキワ荘跡地・マンガの聖地としまミュージアム・トキワ荘通りなど)

【文責:山中】


ライトノベルのアメリカ出版状況2019

2019/10/26

ライトノベルの海外翻訳調査からすっかり遠ざかっているのですが、courier japanのサイトにドンピシャな記事が載りました。有料サイトなので、登録しないと読めませんが、、、

日本のライトノベルがアメリカで注目されはじめた理由 | 椎名ゆかり「アメリカ“MANGA”人気のいま」 #21


2010年頃までの動向解説は、だいたいこの連載で説明した通りですが、私が調査をサボってから以降の話を書き出しておくと:

  • YenPressは2016年にKADOKAWAと資本提携した。
  • 以来、一年で100冊ペースで翻訳・出版が行われるようになった
  • きっかけはネット配信で日本アニメがさらに普及したこと。そして、アニメ原作のラノベが人気になった
  • J-Novel Clubという専用サイトがある
  • Light Novelというカテゴリーを設ける書店や図書館も増えているらしい
  • 日本と同様に異世界転生ものが流行っている

などです。

(報告:太田)


イベント記録・告知(ライトノベル関連)

2019/08/09

2019年6月24日(月)~8月2日(金)まで目白大学新宿図書館で開催された、特別企画展示・講演会「活字+αの世界―ライトノベル×児童文学×サブカルチャー―」。その関連ツイートをまとめましたので、実際にご覧になられた方もそうでない方も、展示・講演会の様子をふり返る機会にして頂けましたら幸いです。

2019年8月12日(月・祝)に新宿のLive Wire HIGH VOLTAGE CAFEにて、「ホラー・アカデミア#8 ライトノベル・ライト文芸のなかの「怪異」―怪談文芸の行方―」が開催されます。現在も参加受付中ですので、ご興味のある方はぜひご検討ください。

ライト文芸では、怪異は花盛りである。イケメンの妖(あやかし)たちが人間社会に入り込み、旅館や喫茶店、和菓子屋から不動産業、さらにはクリニックまで、ありとあらゆる業種で活躍し、女性読者を魅惑する。一方、ライトノベルでは、怪異怪談系は退潮気味であるものの、非日常世界を日常に変える異世界系の物語が大人気である。

そこで今回は、『ほうかご百物語』でライトノベル作家としてデビューしたのち、『絶対城先輩の妖怪学講座』シリーズで人気を博し、さらに近年は『妖怪解析官・神代宇路子の追跡』『新宿もののけ図書館利用案内』『STAiRs, be STAR! 怪談アイドルはじめます。』を立て続けに発表して波に乗る峰守ひろかずさん、そして近現代日本文学研究者にしてラノベ作家、さらにはライトノベル研究会を主導するという、もはや八面六臂の怪異にしか見えないご活躍の大橋崇行さんをお招きし、現今のライトノベル界、ライト文芸界における「怪異」について、ご自身のお仕事も含めて、縦横無尽にお話しいただく予定である。

【文責:山中】


【参加受付中】講演会「ライトノベルという出版メディア―活字+ビジュアルの力が読者を掴む!?―」7/20(土)14:00~15:30 @ 目白大学新宿図書館

2019/07/13

現在、目白大学新宿図書館で開催中の特別企画展示「活字+αの世界―ライトノベル×児童文学×サブカルチャー―」の関連講演会が、7月20日(土)の午後、同図書館にて行われます。ご興味のある方はぜひお越し頂けましたら幸いです。当日は『ライトノベル・フロントライン』(青弓社)や拙著『『ドラゴンマガジン』創刊物語』(勉誠出版)の特別価格による販売や、ギャラリートークもございます。

なお、学外の方は事前のお申し込みが必要になります。詳細につきましては、同図書館HPをご覧ください。

<関連講演会>
「ライトノベルという出版メディア―活字+ビジュアルの力が読者を掴む!?―」
講演者:山中智省(人間学部子ども学科専任講師)

日時:2019年7月20日(土)14:00~15:30
場所:目白大学新宿図書館 本館2階閲覧室
※学外の方は事前申込が必要です(電話・メール等)。
※詳細はコチラ

【文責:山中】


【告知】特別企画展示「活字+αの世界―ライトノベル×児童文学×サブカルチャー―」(目白大学新宿図書館・6/24~8/2)

2019/05/26

目白大学新宿図書館では来る6月24日(月)から8月2日(金)にかけて、特別企画展示「活字+αの世界―ライトノベル×児童文学×サブカルチャー―」を開催することとなりました。企画・監修は、同学人間学部子ども学科の山中が担当致します。

期間:2019年6月24日(月)~8月2日(金)
会場:目白大学新宿図書館 1階ブラウジングコーナー

※学外の方も見学可(図書館受付にて手続きあり)

<本展示のテーマと内容>

今年のテーマは「活字+α」です。たとえば小説の場合、作家が紡いだ物語は必ずしも、活字のみで出版されているとは限りません。実際に図書館や書店の棚に並ぶ本に目を向けたなら、挿絵や表紙イラストなど、何らかのビジュアル要素を伴って出版された作品が少なくないことに気づくでしょう。こうした活字+αがもたらす力は、物語を魅力的なものにすることはもちろん、数多くの読者を作品に惹きつける原動力となってきました。また、複数のメディアを横断するメディアミックス、SNSを介した作家/読者同士のコミュニケーションなどが活発に行われている昨今では、+αされる要素はもはや一冊の本の範疇にとどまらず、多様性を増していると言えます。そんな「活字+αの世界」に迫るため、本展示では若年層向けエンターテインメント小説として知られているライトノベル、児童文庫やアニメ絵本を中心とした児童文学、さらには両者と関りを持つサブカルチャーを取り上げ、お互いの接点にも着目していきます。

なお、展示物については上記の通り、ライトノベル、児童文庫やアニメ絵本などを中心に、作品の単行本や関連資料を展示予定です。また、今回はラノベ好きバーチャルYouTuberとして知られる本山らのさんにもご参加を頂き、本展示用の特別動画の放映も行います。

<関連講演>

「ライトノベルという出版メディア―活字+ビジュアルの力が読者を掴む!?―」
講演者:山中智省(人間学部子ども学科専任講師)

日時:2019年7月20日(土)14時~15時30分
場所:目白大学新宿図書館 本館2階閲覧室
※学外の方は事前申込が必要(電話・メール等)

アクセス情報
目白大学新宿キャンパス
目白大学新宿図書館

ご興味のある方はぜひ、ご来場頂けましたら幸いです!!

【文責:山中】


【12/25まで】企画展示「ナウシカ誕生とその時代展 ―アニメ雑誌『アニメージュ』の周辺から―」が開催中。今ではなかなか目にすることができない貴重な資料も多数展示しています。

2018/12/19

目白大学新宿図書館では現在、山中が担当する人間学部子ども学科専門教育科目「子ども文化論」と連動した企画展示「ナウシカ誕生とその時代展 ―アニメ雑誌『アニメージュ』の周辺から―」を開催中です。

12月14日(金)から始まった後期展示では、映画『風の谷のナウシカ』公開当時の『アニメージュ』雑誌付録やメディアミックス関連資料を中心に展示しています。学外の方でも見学可能ですので、ご興味のある方はぜひお越し下さい。

開催日:2018年12月3日(月)~12月25日(火)
時 間:[月~金] 21:00まで、[土] 17:00まで、[日] 休館
場 所:目白大学新宿図書館 本館1F PC室前スペース

詳細はコチラ(目白大学新宿図書館)まで。

【文責:山中】


森見登美彦はアメリカでライトノベル作家になる ーー最近のYenPress

2018/11/27

ライトノベルの海外翻訳関係の投稿が途絶えています。地方都市に引っ越してラノベとは無縁の結構忙しい仕事を始めてしまったせいで、調べ物をする時間も、海外に調査に行く時間もなくなったためです。

先日、『熱帯』を刊行した森見登美彦さんのインタビューを読んでいて「森見って海外翻訳されたんだろうか?」ということが気になりました。調べてみると、まだ翻訳は出ていませんが、YenPressが版権を買っていました!

http://yenpress.com/yen-on/
の情報によれば『ペンギン・ハイウェイ』Penguin Highwayが来春3月に出版予定であり、
https://www.animenewsnetwork.com/news/2018-07-08/yen-press-licenses-happy-sugar-life-kakegurui-twins-manga-penguin-highway-walk-on-girl-mirai-novels/.134009
の記事によれば、『夜は短し歩けよ乙女』(The Night is Short, Walk on Girl)もライセンスを取得している模様。

つまり、山本周五郎賞受賞作家である森見登美彦はアメリカでライトノベル作家として売り出されるということです。「ライトノベルとはテキスト自体によって規定されるのではなく出版事業の中で規定されて行く」という一例ではないでしょうか。

上述の記事には森見の他の著作として『四畳半神話体系』(The Tatami Galaxy)『有頂天家族』(The Eccentric Family)が紹介されているのですが、これらは全てアニメ化された作品です。やはり、この世界ではアニメ経由で翻訳されて行くのですね。それにしてもThe Tatami Galaxyという翻訳が素晴らしすぎる。

なお、アニメの『夜は短し歩けよ乙女』(The Night is Short, Walk on Girl)はこの夏にアメリカで一般劇場で公開されており、評価は高かったようです。映画評まとめサイトであるRottenTomatoでは批評家・一般観客双方で90%の評価を得ていました。(興行成績としては40万ドル。)

(報告:太田)