ボルネオのイバンは「(元)首狩り族」としても広く認知されており、過去数百年の歴史の中で、数多くの少数民族を消滅させたり吸収したりしながら、移動と拡大を繰り返してきた。そんなわけで、非常にアグレッシブな移動性が強調されることが多いのだが、しかし、そうそう攻撃的な連中ばっかりだったわけではもちろんなく、いろいろなところでよくよく聞いてみると、「上流での戦争が怖くて白人の支配下にある下流域なら安全だと思ったから移動してきた」だとか、「以前の場所では村が大きくなりすぎてイノシシも魚も取れなくなったし、ワシなんか焼畑用の土地さえもらえなかったから、こちらに移ってきた。こちらでは、別の民族に土地を借りて焼畑している」だとか、「爺ちゃんの時代に白人行政官とケンカして、その地から追い払われたのでこちらに移動してきた」だとか、まあ、そんな話がけっこうあるわけなのだ。こりゃ、聞き取りと同時に、ガゼットなんかで歴史的な事実を丹念に拾い直せば、これまでとは違うイバンの移動史も書けそうだと思っていた。
んでもって、東南アジア大陸部で人の移動を研究している友人と、そんなこんなの話をしながら、「『逃げ』の文化史(民族誌)」「Culture of Escape」みたいな企画で一緒にやりましょうや、などと言いつつ、時は過ぎ、・・・気がつけばJames Scottの『The art of not being governed』などという大著が出て、似たような話というか、同じ話というか、いやいや、もっともっと壮大な話が書かれていて、そんでもって、その本の第6章なんかは、そのまんま「Culture and Agriculture of Escape」というタイトル(副題だけど)がついていて、いやあ、まったくやられたねえ、なんて話をせざるをえない。所詮、頭の弱いワシなどは、ちょっとしたケース・スタディくらいしかできないけど、こんな本が出てしまったら、それさえもやる意味がなくなってしまうような気がしているところ。 さて、そのJames Scottさんが京都に来たので、ひれ伏しながら会いに行きました。そしたら、どこから聞きつけたのか(カラクリは知っているのだけど表だって言えないのです)、昨年度の某シンポでワシが発表した河川の話(日本の河川改変史・河川行政史をネタに人間-環境関係の話をした)を知っていて、そちら方面のことも聞かれたので、ちょろりちょろりと話をしていたら、なんと、同じような川の話は最近の彼のテーマらしく、disturbance ecology的な話や河川をめぐるpoliticsの話なんかは、かぶりまくり。今まさに授業では河川の話をしているようで、そのシラバスまでくれちゃったわけなんだなあ。 そんなこんなでちょっとばかりinspireされはしたものの、一方で、どうせもっと面白くてでっかい話を先にされてしまうだろうし、そしたらそれを引用するばっかりの後追い作業をすることになりそうだし、などと意気消沈していたら、先の友人から「まあ、『逃げ』の話も川の話も、目の付けどころは悪くないってことっすよ」などと慰めにも似た励まし(いや、完全に慰めだな)を頂戴したのであった・・・。仕事の遅さをいまさら後悔しても始まりませんなあ。 しかし、文字のかたちにしても、愚痴というのは、ついつい長くなってしまう。 #
by sodaryoji
| 2011-01-19 13:17
| 祖田が日々思うこと
昔の写真などを整理していたら、懐かしいものがいくつか出てきました。
写真の犬は、私がボルネオで暮らしていたころに飼っていた子犬です(私がこの地を離れてから、車に轢かれて死んだそうです)。 この犬、ちょっとおバカさんでしたが、ドリアンが大好きで、庭にドリアンが落ちていると、ワンワン吠えて教えてくれました。同じころに飼っていた猫も、やっぱりドリアンが大好きで、庭にドリアンが落ちていると、ニャーニャー鳴いて教えてくれました。 犬の写真のついでに、猫の写真も載せておきます。猫ってネズミを捕まえると、誇らしげに見せに来てくれるんですね。それで、放しては捕まえて、また放しては捕まえて、ひとしきりもてあそんでから食べる。見ているとけっこく残酷です。 #
by sodaryoji
| 2010-09-29 21:22
| 祖田が日々思うこと
調査実習の授業の一環で、四国の某島に行ってきました。人口3000人ほどの小さな島ですが、大きなイベント期間中で、ものすごい観光客の数でした。どの店も満杯状態で、夕食の場所を探すのにも苦労するほど。食いっぱぐれるかと思ったくらいです。
まあ、それはともかく、今回の旅行は2年生の調査の練習といった要素を持っていて、各自の関心に沿って自分でテーマを設定し、調査をするというものでした。 事前の準備では、学生に対して「アポの取り方なんかも調査技術の一つだよ」なんて偉そうなことを言いつつ、最初の町役場だけは私が連絡しました。ところが、現在イベント期間中で、予想以上の来客があってテンテコマイ、おまけに町議会の会期中でもあるので、小さな役所としては対応できない、と無碍に断られてしまいました。役場に断られたのは初めてのことで、教員としての面目は丸つぶれ。 その一方、現地で学生達とたまたま入った食堂に、町議をやっている人が居合わせて、学生の関心事項を聞いた町議さんは「役場くらい私が口利きしてあげる」と、急展開。こりゃあラッキーと喜んで、翌日、学生を送り込んだら、なんと町長と2時間も話をしてきたというではないか。 先生のアポ取りがダメでも、学生はアポなしで町長と面会できた。 「調査ってのは、そういうもんだ」などと言いつつ、なんとなく納得できないところが、ワシ自身、大人げないところ。しかし、もう、えらそうなことは言うまいか・・・。 #
by sodaryoji
| 2010-09-21 21:49
| 祖田が日々思うこと
お久しぶりです。魚道の話を一つ。
世の中には、いろいろなマニアがいる。魚道マニアというのもいるらしい。日本全国、トンデモ魚道があちこちにあって、その筋の人に聞けば、いろいろな写真や情報を送ってくれる。それらの魚道も、1997年の河川法改正以降、「多自然(型)川づくり」が推進されるなかで増えてきたらしい。 んで、私は今のところ魚道マニアではないのだが、ちょっと前に、兵庫のダムに併設された日本初(唯一?)の「多自然型魚道」なるものを見てきた。魚道の中でも下流、中流、上流パートに分けられていて、蛇行があったり、ワンドがあったり、自然の川のミニチュアのような構造になっている。ちょっとやりすぎでは?というくらいの徹底ぶりだった。どうやら、想定されたほどの効果があがっているわけではないようだが、ある程度は魚が遡上しているそうである。そして、魚道の最後には、ダム湖へ入るためのプール/水門があって、水門は1日2回開くとのこと。お魚さんがそのプールに到達して門が開けば、晴れてダムよりも上に出ることができるのである。 ところが、この魚道、行き着いた先のダム湖は、関西でも有数のバス釣りのメッカであるらしい。がんばって上ってきた魚にとって、そこは地獄のブラックバス帝国なのだった。 ちなみに、このダムの管理者に聞くと、ブラックバスの学習能力は高く、1日2回の水門開放のとき、そこに集まってくるらしい。まあ、餌の時間ですな。そして、その水門近くには、釣竿を持った若い男性の姿もあった。釣り人の学習能力も高いんだ、きっと。 「多自然型」とは何か、笑っちゃいけないんだけど、考えさせられるというより、やっぱり苦笑せざるを得なかったのだ。案内してくれた担当の方々、ありがとうございました。そして、ごめんなさい。これが正直な感想です。 で、あまり良い写真が取れなかったので、興味ある人はダムのホームページを探してください。そちらには素敵な写真が載っています。 ちなみに、この魚道とは全く関係ないのですが、某所にあるトンデモ魚道を友人某氏が見つけて写真を送ってくれました。こちらは使ってもよいと了解を得ているので、載せておきます。ただ、写真を取った本人も、もちろん私も、その構造は理解できないので、解説はできません。悪しからず。 #
by sodaryoji
| 2010-09-21 21:43
| 祖田が日々思うこと
東芝製ならぬトーシマ?製の飲料水タンクです。マレーシアの田舎で見つけました。
最近はめっきり減りましたが、ちょっと前までは、SONNYとか、MITACHIとか、いろいろ楽しいメーカーがありました。ちなみにPensonicは健在です。PenangのSonicという意味のちゃんとした家電メーカーだそうです。 #
by sodaryoji
| 2009-12-26 17:38
| 祖田が日々思うこと
|
LINK
カテゴリ
以前の記事
2011年 01月 2010年 09月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 02月 2008年 12月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||