2011/03/22

    これが世界のスーパードクター14 TBS系 2011年3月22日(火)よる9:00から

これが世界のスーパードクター14
2011年3月22日(火)よる9:00から
http://www.tbs.co.jp/program/superdoctor_20110322.html
をごらんになった皆様へ

このエントリーは番組の放映前に作成し公開しています。取材段階から編集まで担当のディレクターの方と念入りにメールと電話のやり取りはしましたが、実際の映像は一度も見ておらず、私自身も最終的にどのような内容が放映されるのかは知りません。

多くの視聴者の方が今夜の番組を見て、このページにたどり着いたのではないかと思います。

なるべく、シンプルにメッセージをまとめておきたいと思います。言い訳のようなものですが。

私自身はスーパードクターだとは全く思っていません。自分よりも優れた家庭医は日本中にたくさんいます。家庭医だけでなくそのほかの分野の医師も含めたくさんの人が被災地で被災者のケアに取り組んでいます。また、被災地以外で多くの家庭医、プライマリ・ケア医と呼ばれる人たちが日本中の人の日常の健康を守っています。今回は僕自身がスーパードクターとして取り上げられた,というよりは、そういった日本中の家庭医の代表として、「たまたま」取り上げられることになったのだと思っています。
ただ,当然家庭医としての自分自身の仕事には誇りを持っており、ベストを尽くしています。他の医師よりも良い医療が提供できるよう日々努力しているつもりです。
今回取材の方は何日にもわたって長時間の映像を撮影くださいました。ただ,あくまで取材の承諾をして下さった患者さんの映像だけであり,しかも放映されたのはその中から抜き出した数分にしかすぎず、私の家庭医としての仕事のほんの一側面だけを表しているにすぎません。
そのこともご理解いただければと思います。

何でこの人がスーパードクターなの?という感想を持たれた方。 可能性は2つあります。ひとつは番組で取り上げられた他のスーパードクターたちは、その「すごさ」が比較的わかりやすいために、相対的に「わかりにくくなってしまった」「見劣りしてしまった」可能性。(後述)もうひとつ、「私のかかっている先生もこのぐらい出来る」と思った方、実はあなたはとてもラッキーです。意外とそのようなレベルの医療を提供できる医師は多くないようです。(これも後述 P.S.へ)

開業医と何が違うの?という感想,疑問をもたれた方。お願いがあります。家庭医と開業医を比較して論ずることはできません。別の分類方法である事を理解ください。家庭医はその専門分野を表現する言葉であり、その働き方として勤務医の場合もあれば開業医の場合もあります。一方開業医は、個人事業主という事業形態の表現にすぎず、眼だけをケアする眼科の開業医や、皮膚だけを診る開業医もいます。もちろん開業医をしている人たちの中に優秀な家庭医もたくさんいます。
開業というのは医療の専門分野の名称ではありません。開業医のなかに家庭医はいますが 開業医=家庭医ではありません。また家庭医には勤務医もいます。私も医療法人のサラリーマンです。
どうか「開業医は」とひとくくりで様々な医師集団をまとめて論じないで下さい。(経営方針的には開業医と勤務医で論じることはできるかもしれません)

この人すごい! という感想を持って下さった方、そのような評価を頂き感謝致します。あなたは素晴らしい感性の持ち主です。もしくはいろいろな事情でたくさんのドクターにかかる経験があって,医師の技術の微妙なレベルの違いがわかるようになったのでしょう。ただ,最初にも書いた通り、私よりも優れた家庭医,私の尊敬する家庭医はたくさんいます。家庭医療,プライマリ・ケアを専門とする医師集団は既に日本にあり、専門医制度も始まっています。

日本プライマリ・ケア連合学会
http://www.primary-care.or.jp/

そして,全国の同志が連携をとりながら、直接,間接的な形で被災地への支援を進めています。

日本プライマリ・ケア連合学会 東日本大震災支援プロジェクト PCAT
http://pcforall.primary-care.or.jp/

そのような医師が日本にもっと必要だと考えるかたは、行政へ、医師会へ、地域の基幹病院へ、ご意見の形で、また選挙の投票を通じて、家庭医を増やす要望を声としてあげて下さい。

もしかしたら、番組の中で脳腫瘍を見つけることになる患者さんの事例が取り上げられるかもしれません。初期診断は我々の重要な仕事ではありますが、どちらかというと,日常の仕事におけるその割合はそれほど大きくありません。(後述)診断の専門家は神様といわれるような人が日本中にいますし、同じTBS系で最近放映されたドラマ 踊れドクターGM http://www.tbs.co.jp/GM-odore/ の監修をされた千葉大学の生坂教授もその一人です。
あの脳腫瘍は、いずれは誰かが見つけるものだったのだと思います。たまたま私がそのタイミングだったのでしょう。患者さんにも助けられました。医療は患者さんとの共同作業ですから、私一人でやったのではありません。

私にかかりたい,私の診療を受けたいと思った方、ありがとうございます。とても光栄に思います。でも、私が診療をしている千葉南房総から遠い方は,無理しないで下さい。良質な家庭医療は、定期的に,長期間診せて頂き、医師ー患者関係以上、友人家族未満という(柳田邦男氏が1.5人称の医療,という表現をしましたが)人間的な関係を前提として成立します。そして、家庭医療,プライマリ・ケアの質は、医師の質もさることながら、距離的、時間的にかかりやすい事、ちょっと思い立ったらかかれる事(アクセスといいます)の質が大きく影響します。遠くの超名医より近くの良医を探すことを優先して下さい。そして今かかっている先生に大きな不満がないのであればその医師との関係を大切にして下さい。
繰り返しますが、私と同じレベルで良質の家庭医療、プライマリ・ケアを提供できる医師は全国にたくさんいます。

さらに分野に関わらず、全国には名もなきたくさんの医師たちが、また医師だけでなく多くの医療従事者(看護師、リハビリ,薬剤師、事務員など)の全てが、それぞれの立場でそれぞれの出来ることが何かを考え、目の前の患者さんにベストを尽くしています。(ごく稀に困ったさんはいますが,例外的です)
医療は人間同志の相互作用です、あなたからの働きかけにのやり方によっては、現在の先生から得られる医療の質がさらに良くできる可能性を秘めています.あなた次第であなたの主治医をスーパードクターにする事も可能なのです。(心付けとか袖の下、の話ではありません,念のため。 COMLの『新・医者にかかる10箇条』を紹介しておきます http://www.coml.gr.jp/10kajyo/index.html )

家庭医療,プライマリ・ケアをわかりやすく短時間の映像にするのはとても難しいことです。そして「医療の質」を判断するのもとても難しいことです。その理由は別エントリーで詳しく書きたいと思いますが、取材の松原さんも一生懸命,ともに悩んで下さいました。すこしだけ書いておくと、家庭医の力量は「何も起きない事」で示される。本当に優秀な仕事をする警察、消防のある地域は、大きな犯罪や事故、火災は起きない訳ですそして,力量の差は10年、20年後に現れるからです。これですこし、他の医師との「腕の見せ所」が違う事をご理解いただけますでしょうか。

私がこれまでに書いたものをすこしだけ紹介しておきます。私がどのようなことを考えて家庭医という仕事に取り組んでいるか,もう少しわかって頂けるのではないかと思います。

http://www.scribd.com/collections/2457718/MMJ-column

最後に、年末の仕事納めの後にも関わらず館山まで会いに来て下さり,その後もカメラなしの下取材から何度も何度も館山に足を運んで頂き、丁寧な取材を重ね、出来るだけわかりやすく家庭医療を映像として伝えられるよう尽力くださった担当の松原様にはこの場を借りてお礼申し上げます。
2、3日前、編集終了直後の松原さんからのメールの一部をここに転載しておきます。

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今回は、今まで一番多くのスーパードクターが紹介されているようです。という事で、沢山のSDが、紹介されており、尺(時間)も、非常に短くなってしまいました。私も、岡田先生パートの事しか、わからなかったのですが、昨日、一昨日の1本化の作業で、ようやく全体像を見た次第です。

ご想像通り、手術や「手術前、手術後」の変化があまりに大きい、ドラマティックなものは、どうしても大きな扱いになっており、岡田先生を取材させて頂いた私としては、個人的に非常に残念なのですが、如何せん、トータル的なバランスという点で、尺が短くなってしまったのだと思います。

ただ、多くの人に見ていただける番組ですので、まずは「家庭医とは」とか「家庭医って必要」という意味で、世の中に対しての第一弾のメーッセージとしては、よいチャンスだと思います。

松原 ◯子

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P.S. 取材の松原さんには繰り返し,様々な場面で「普通の医者はそこまで聞かない」「普通そんな事しない」と何度も言われました。その度に、「僕は普通と思ってやっています」「僕の知っている家庭医も普通にそうすると思います」と答えた訳ですが、自分がやっている事は自分がやるべき普通のことと思ってやっているので、それが他の医師と比べてどうなのかはわからないのです。ただそのあたりに、「家庭医」の専門性の秘密が隠されているのではないかと思っています。

2010/08/26

    亀田ファミリークリニック館山(KFCT)家庭医後期専門研修募集事前告知

亀田ファミリークリニック館山(KFCT)家庭医後期専門研修への来年度の応募をお考えの医師の皆様
面接日は
10/15(金)午後〜16(土)昼頃 (出来るだけこちらをお願い)
9/24(金) 午前〜25(土)昼頃
を予定しております
たくさんの面接官にあって頂くために日程が限定されてしまいますがなにとぞご理解のほどをお願い致します。
詳細は来週中に公式HPにて告知予定です。

2010/06/27

    IDEAL Study:透析早期導入に疑問符

本日発表のonline firstから
しかし、いつもこの方は早い。


IDEAL Study:透析早期導入に疑問符

背景は上記blogに端的にまとまっている

長期透析の増加が世界でも問題となっており、開始時期は尿毒症の兆候・症状の存在により開始することが世界的には一般的となっている。確かに、観察コホートや症例対照治験で、透析早期導入にて患者の生存率、QoL、労働能力、コンプライアンスなど改善したと報告がある。しかし、この研究の多くは、lead timeによるバイアス、患者選択、参照期間などのバイアスがあるが、析開始時期目標早期化が臨床ガイドラインに用いられている。

しかしながら、最近の観察研究にて、早期導入は有害ですらあるという報告がなされてきたため、ランダム化対照治験が求められていた。


Published at www.nejm.org June 27, 2010 (10.1056/NEJMoa1000552)
A Randomized, Controlled Trial of Early versus Late Initiation of Dialysis


批判的吟味

P 828名 eGFR 10-15 平均60歳、355人が糖尿 3.59年のフォロー ニュージーランド
E 透析導入 early start eGFR10-14で導入
C late start eGFR 5-7で導入 (恐らくこちらが標準的な診療)
O primay outcome 全ての理由による死亡


early start vs late start群の順で

primary outcome
death from any cause    37.6% vs 36.6% (hazard ratio 1.04; 95% CI, 0.83 to 1.30; P=0.75)

導入までの期間中央値    1.8ヶ月  vs   7.4ヶ月
実際の透析導入時eGFR 12 vs 9

その他のアウトカム
心血管イベント、感染症、透析合併症に有意差無し

鍵となるグラフは上記blogに


pitfall
late start群の75.9%が症状発現のために、eGFR<7まで待てずに透析導入
early start群の18.9%が実際はeGFR<10になってから導入
両方とも差を減らす方へのバイアス。sample数は予定通り確保できているが、結果としてのβエラーはあり得るか?

take home message
どちらにせよ透析導入から4年弱で36~37%の人が死亡 (日本の統計でもほぼ同じ 4年生存率0.68)
上記のデータが本当とすると透析導入まで約5ヶ月の差
figure 2-Aの表面積の差の分だけ医療の質を変えずに透析回数が節約できることになる
(単純計算で、国・患者さんにとって一人あたり150万円、通院12-13回・月x5ヶ月分の負担、時間として300時間ぐらいー>その分、仕事や他の生産的活動に従事できる。医療機関にとってはその分の収入損失)
日本での年間新規導入は36000人ぐらい (x150万円で540億円ですね〜)

疑問と課題

日本ではスコアを元に導入しているが、そのなかにクレアチニン値は用いられていても
eGFRの具体的な数値は提示されていない
K-DOQIでは eGFR<15+尿毒症症状で導入とされている

30.1 血液透析への導入基準
http://202.216.128.227/%93%A7%90%CD%95S%89%C8/30.01.htm

eGFRで診たときの日本の透析導入時期の実態はこの研究で言うどちらの群に近いのか?
この研究を元に、日本でも透析導入の決定にeGFRの数値を織り込むか
それとも、日本の基準で、変更可能な物があるか探すために新たにRCTを行うか

さて、この診療が本当なら自分の診療は変わるか?
透析導入の決定には直接関わらないという意味ではno
導入直前で症状のない患者さんで、導入を出来るだけ先送りにしたいという希望があれば、専門医にこのデータを元に相談を持って行ける。

総作業時間約30分

2010/06/23

    第1回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 (今週末)演題一覧

第1回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 (今週末)

いよいよ記念すべき第1回の連合学会が今週末に東京フォーラムにて開かれます
先日送られて来た第1回の雑誌も非常に読み応えのある物でしたね。

さて、僕は自分が主演者での発表の実績を積む余裕もないままサポーター/コーチの立場を取ることが多くなりましたが、今回も口演1件、ポスター3件、WS1件、プログラム紹介1件と盛りだくさんの内容です。

では順番に。

口演 26日(土) GS1-14 G602 6F 14:00頃

家庭医診療所における 適正な抗菌薬選択のための ローカルファクターのとしての 細菌培養検査の分析
中山 久仁子1、岡田 唯男2  1みなと医療生活協同組合 協立総合病院、2鉄蕉会 亀田 ファミリークリニック館山
【目的】 外来感染症に使用する抗菌薬選択には地域の耐性 菌状況であるローカルファクターを考慮することが望 ましい。今回我々は外来での細菌培養結果から抗菌 薬使用について検討したので報告する。
【対象・方法】 調査期間は2007年1月から2009年12月までの3 年間。対象は亀田ファミリークリニック館山の医科外 来受診または訪問診療において、細菌培養検査を 実施された全患者。細菌培養検査結果を横断分析 し、培養陽性率、尿路・女性生殖器・呼吸器感染症 の原因菌の種類と割合、それぞれの薬剤耐性菌の 割合について調査した。
【結果】 総検体数 2361 件。培養部位は尿(41%)婦人科分 泌物(20%)痰(11%)。起因菌が検出され感受性試 験を行ったのは 676 件(陽性率 28.6%)で、尿 (46.5%)婦人科分泌物(11.5%) 痰(25%)であった。 尿培養では Escherichia coli (58%)が最多、耐性菌 検出率は CEZ(3.1%)、LVFX(8.4%)、ST(5.4%)であ った。婦人科分泌物は GBS (56% )が多く PCG 耐性 菌はなかった。喀痰培養は Streptococcus pneumoniae ( 50% ) と Haemophilus influenzae(37%)が多く、S.pneumoniae の耐性菌 検出率は PCG(3.7%)、AMPC、CTX、LVFX(0%)、 H.influenzaeの そ れ はAMPC(25%) 、 CTX 、 LVFX(0%)であった。H. influenzae の 15%はラクタ マーゼ非産生アンピシリン耐性(BLNAR)であった。
【結論】各検体での主たる原因菌とその感受性,耐性菌率 が判明した。この結果に基づいてエンピリック治療に おける第一選択薬剤の推奨が可能となった。薬剤感 受性は変化するため、今後も定期的な調査が必要と 思われた。さらに BLNAR が 2 年連続検出され、Hib ワクチンも積極的に推進する必要がある。

http://www.primary-care.or.jp/primary2010/subj/gs1.pdf


昨年度1年限定で研修に来て下さった方との発表。ちょっとしたアイデアひとつで、大きな手間なく質の改善と発表が出来るという好例です。データは細菌検査室に出してもらえばよいので。もちろんデータからどのような意味を見いだしどのようなアクションを起こすか,というところに、能力が問われる訳です。



ポスターセッション(3件)

開催日時 26日(土)16:30~17:30
会場 ホールB5  5F

http://www.primary-care.or.jp/primary2010/subj/pt1.pdf

3件が、1番目,3番目、4番目にあたっていますので、時間通りで進むと16:30, 16:50, 17:00の予定です。慌ただしいですが、以下発表順に(発表の列が違うのでご注意)


PT1-071

3年間の後期研修における研修内容の分析 (数字で見る家庭医研修)

岡田 唯男1、吉田 賢史2  1鉄蕉会 亀田ファミリークリニック館山 家庭医診療科、2鉄蕉会 亀田総合病院 在宅医療部

【目的】日本家庭医療学会においてプログラム認定 が開始されたが、とくに外来研修の量については設 定されておらず、現状もあまり把握されていない。ま た、日本においてはマンパワーとしての後期研修医 への期待から業務と研修のバランスにも留意する必 要がある。1施設による家庭医療後期研修医の研修 実績を明らかにし、今後の後期研修プログラムの改 善につなげる
【対象・方法】鉄蕉会 亀田ファミリークリニック館山 家庭医療後期研修プログラムにおいて 2007 年4月 から 2010 年3月まで後期研修医として在籍した4名 の勤務スケジュールと外来診療データをもとに、外来 診療、訪問診療、他科ローテーションのそれぞれの 時間比率、外来診療数の実績と単位時間あたりの生 産性などについて測定,分析を実施した。半日を1単 位とし、時間比率については勤務スケジュールの手 カウント、外来診療数については法人の医療情報管 理室からのデータを利用した。
【結果】3年間の総時間数に占める各種診療の割合 は、家庭医療診療所における外来診療39%(予約2 3%、当日16%)、訪問診療21%、他科研修(ローテ ーション35%)であった。外来診療に関して、後期研 修医一人あたりの外来数は3年間で654単位 (4.4 回/週)、1単位あたりの診療患者数はのべ 16.8 人、 一人の患者あたりの平均診療時間は 12.6 分であっ た。
【結論】他施設のプログラムと比較してもおおむね外 来,訪問、他科研修の割合はそれほどかけ離れてい るものではない。外来診療コマ数や診療患者数につ いては今後他施設の報告などを待ち、研修上の適正 数、経営上の適正数などについて更なる議論が深ま ることを期待する。


今年春にうちの後期研修を修了した先生。卒業プロジェクトとしての取り組みが学会発表につながりました。なかなか個性的な人です。デザイン力に隠れた才能があり、このポスターも、そしてもうひとつの彼の作品であるプログラム紹介のポスターもよくできています。粘り強さと集中力があり、今回の調査にあたっても、3年間のシフト表を根気づよく手カウントしてくれました。



PT1-133

医学生は家庭医療コース参加の結果 どのように変わるのか?(第二報)

武者 幸樹子1、岡田 唯男2、喜瀬 守人3、 麦谷 歩4、亀谷 学1
1川崎市立多摩病院 総合診療科、2鉄蕉会 亀田ファミリー クリニック館山、3川崎医療生協 久地診療所、4医療法人相 生会 臨床薬理センター 墨田病院,大阪市立大学大学院医 学研究科 公衆衛生学 博士課程

【目的】2008 年,我々は家庭医療講義が「家庭医療」 のイメージを変化させ,具体的なイメージの獲得に寄 与すること,および受講後は家庭医療の診療範囲と 能力を正しく認識できるようになることを報告した.た だしこの調査は家庭医療のイメージの変化,診療範 囲の理解という面からのみ学びを評価している点,ま た対象者が9名と少ない点で,医学生の変化を具体 的に把握することが困難であった.今回の研究は, 「家庭医療」講義を受講することで医学生がどのよう に変化するのかをより詳細に明らかにする.
【対象・方法】聖マリアンナ医科大学で 2007~2009 年度に選択講義「家庭医療」を受講した医学生を対 象とした.研究デザインは,医学生の具体的な変化 を把握するため質的研究とした.半構造化されたフォ ーカスグループインタビューを講義終了後2~6か月 の間に実施した.グラウンデッドセオリーアプローチを 用いて複数の研究者が独立して分析した.
【結果】3~6人のフォーカスグループインタビューを5 回行った時点で,理論的飽和に達したと判断した. 参加者は 20 人.受講前の状態(知識,受講のきっか け),家庭医療の機能・特徴に関する理解(身近な主 治医,+αの機能,普及の必要性,アイデンティティ), 他科との比較(家庭医の長所,専門医の長所,家庭 医の意識),進路としての家庭医療(志望,不安,働 きやすさ),講義の評価(形式,要望)の5つのカテゴ リーが抽出された.
【結論】家庭医療講義による医学生の変化が明らか になった.講義は大変好評であった.講義前は家庭 医療を知らない医学生がほとんどであったが,受講 により家庭医療の機能・特徴を正しく理解した.新た に家庭医療という分野を知り、将来の進路選択肢に 加える学生が多かった.この結果を踏まえて,全国の 医学部において家庭医療講義を行うことは,家庭医 療普及に有用であると考えられる.


2008年に学会賞を頂いた研究のフォローアップ。

2008/06/02  日本家庭医療学会 学会賞 受賞!


学会賞は頂いたものの、当時の審査委員長の講評で「質的の部分のデータ量が少ない、ぜひフォローアップを」のご指摘をいただき、真摯に受け止めてようやくたどり着きました。もちろん今回の筆頭発表者の努力と根気があってこそ。
本格的に研究をするのはやはり長い時間がかかります。なので,それだけ長い時間かかってもやめたくならない(それだけずっと情熱の注げる)テーマ選び、というのがとにかく重要と思います。
この発表もすばらしい結果の提示が出来ると思います。質的研究のポスターはこんな風にやるのがいいですよ。というプロトタイプがお見せできると思います。

PT1-114
家庭医が行う産後ケア -産後ファミリー外来の実績調査

平 洋1、岡田 唯男2、上川 万里子2  1はるな生活協同組合 高崎中央病院、2医療法人鉄蕉会 亀 田ファミリークリニック館山

【背景】亀田ファミリークリニック館山(以下 KFCT)で は、従来から行われている妊婦健診に加え、産後ケ アの取り組みとして、2007 年 8 月より、出産後 2 週と 1 ヶ月の母子をセットにした健診(産後ファミリー外 来)を家庭医が助産師とともに行っている。
【目的】KFCT における家庭医が行う「産後ファミリー 外来」の実績調査を行い、母乳育児継続率などのア ウトカムへの影響を検討する。
【対象・方法】2007 年 8 月~2009 年 12 月の期間に、 KFCT の「産後ファミリー外来」を利用した方(のべ 109 人)を対象に、カルテレビュー及び郵送による無 記名アンケート調査を実施。
【結果】2 週と 1 ヶ月の両方の健診を利用された方は 全体の 34.8%であった。生後 1 ヶ月時点での完全母 乳栄養の割合は 46.8%で全国平均(2009 年厚労省 調査:48.3%)並みであった。KFCT で妊婦健診を受 けた方の 1 ヶ月時点での母乳栄養の割合は 40.0% であった。産後うつスクリーニング(エジンバラ産後う つ病質問票)陽性者は、1 ヶ月時で 1.8%で全国平均 (同調査:10.3%)と比し低率であった。風疹抗体価が 低い方の産後の予防接種実施率は 63.3%であった。 アンケート調査(回収率:51.4%)では、「診察時間」、 「不安の解消」、「医師と助産師の連携」の項目で概 ね良好な回答が得られた。回答者の 99%は、その後 も何らかの理由で KFCT に受診されていた。
【結論】家庭医と助産師の連携による新たな産後ケア を提供できた。妊産婦・小児とも継続的に関わること のできる家庭医の特徴を活かした取り組みと言える。 今後は、母乳育児継続率や風疹予防接種の実施率 などのアウトカムの向上のため、産後 2 週の健診利用 者の増加や妊娠中・出産直後の介入の強化などが 課題と考えられた。日本で普及させるためには、産後 ケアの教育システムの整備、産科・産院・小児科施設 との連携が重要である。



ライフワークであるマタニティケア周辺のテーマ。産後ファミリー外来については、以前にもすこし取り上げました。

2007/08/02  バースレビューの論文 review on birthreview


この春後期研修を修了して群馬へ戻った先生が卒業プロジェクトとして取り組んで下さいました。
まだまだ,改善課題の多い領域ですが、既に実践を続けている,という事実、その発表を行うという行為自体が価値のあることと信じて、引き続き取り組んでいきます。

ここで1日目終了。
プログラム紹介、懇親会,二次会を楽しみにしています

2日目。

WS-06詳細
テーマ プライマリ・ケア医が知っておきたい産婦人科診療
開催日時 27日(日)9:00~12:00
会場 G502(第8会場)


縁あって,この数年間毎年、このテーマで任せて頂いています。
全く自由な3時間なので,毎年試行錯誤ですが,今年は

45分x3コマのWSというよりはレクチャーが中心になるとは思いますが、2名の素晴らしい仲間に手伝ってもらって

1. 家庭医による避妊と性教育         手稲渓仁会          小嶋 一 先生
2. 在宅高齢者の婦人科的症状への関わり方   亀田ファミリークリニック館山 家 研也 先生
3. 妊娠とくすり、授乳とくすり        岡田

という、豪華ラインアップでお送りします。

上記以外の時間は仕事の打ち合わせをしたり、旧交を温めたりという感じです。
より多くのみなさまとポジティブなエネルギーのやり取りが出来ることを楽しみにしています。
見かけたら声をかけて下さい。

2010/06/15

    たまごクラブ 2010年7月号 大特集 梅雨&夏ニンプ の生活 やっていいこと・ダメなこと

以前ちらっとお話ししていたのですが、

14ページにも渡る特集の大半を,職場で大変頑張って下さっている助産師(かつ国際ラクテーションコンサルタント)のKさんとともに監修させて頂く機会を頂きました。本日発売です。

たまごクラブ 2010年7月号 大特集 梅雨&夏ニンプ の生活 やっていいこと・ダメなこと

ということで,本当に様々な質問に応えさせて頂きました。





経緯は,以前にほんとに小さなスペースで取り上げて頂いた際に(以下のリンク参照)「家庭医」のことをなんとなく覚えていて下さった編集長が、今回の企画担当者から相談を受けたときに、こまごました生活のことだから家庭医の方がいいんじゃないか、と思い出して薦めて下さったとのことです。この場を借りて改めてお礼申し上げます。

2009/09/16 たまごクラブ10月号 掲載(取材を受けました)

事前に大量の読者からの質問のリストを頂き、編集者の方と2時間ほどの取材で全部にお応えして、レイアウトや文面はさすがプロ、きれいに体裁を整えて下さいました。
それなりに事前に文献による確認も必要な質問もあり、大変勉強になりました。(ピレスロイド,って知ってますか?)

相談先をどう呼ぶか,という言葉の使い方は最後まで議論がまとまりませんでしたが、現時点での落とすべきところに落ちた,という感じです。

妊婦さんの一番の味方であるたまごクラブさんが、意図的に家庭医を指名して下さったこと、本当にうれしく思います。

著作権などのことで、もちろん全文の公開は出来ません。私やKさんがどのように応えているか,妊婦さんがどんなことを心配、疑問に思うかなどは、ぜひ本誌を購入し手にとってご覧ください。(月刊誌なので,なくなるのが早いです、急げ!)

たまごクラブ 2010年7月号 大特集 梅雨&夏ニンプ の生活 やっていいこと・ダメなこと たまごクラブ  2010 Jul

近隣の書店には以下のようなpop広告を置かせて頂きました



P.S. 発行数平均月17万部、とのことです。

2010/06/14

    現状報告

いつもつたないブログを読んで下さってありがとうございます。ブログの更新が長い間滞っています。まあ義務ではないのですが、ブランクが長いほどまた再開することへの敷居が上がる訳ですので,場つなぎ的にエントリーを。

え〜、twitterで言い訳はしないのが信条,と書いたのですが(こちら)、もしかしたらblogを楽しみにしている方や、心配をしている方もいると思いますので、一応いい訳ではなく現状説明,ということでさせて下さい。かつて医師のキャリア

を考える上でprofessional, academic, personalの3つの軸で考えましょう,という話をしていたことがありますが、まさにそのpersonalの軸でかなり大きなプロジェクトが動いていますので、そちらにかかりきりになっています。

たとえるなら一生に1回できるかできないか、という大きなプロジェクトで、やるかやらないかをずっと検討して、構想を何年も練って、ちょうど1年前の7月末から本格始動して,この1年間はそのプロジェクトに取られる時間がどんどん増えています。

て言っても、最近は、あまりに時間が取られるので、やるべきではなかったのでは?と考えることも時々ありますが、一区切りついたらきっとやってよかった,と思えると信じて取り組んでいます。

まあ、もったいぶらずに、何かって?ほら、僕ぐらいの年齢で一生に1回できるかできないかで1年がかり,というと、あれしかないでしょ。

すてきなことなのですが、全世界に向けて公表する類いのことではないので、気になる方は個人的に聞いて下さい。もうすぐ連合学会もあるし。このエントリーよく読めばわかるかもね。

2010/04/25

    メトホルミンの投与2250mgまで可能に

ちょっと?な感じですが

メルビン(metformin)を出している大日本製薬がフランスのmetformin(グルコファージ)を輸入して、別の商品名のmetformin製剤メトグルコ250mgとして開発、4月16日付で発売となっています。

こちらは従来のmetforminとの違いとして
最大2250mgまで投与可能 (1日9錠分3)
食直前でもよい(αGIなどと合わせられる)
従来のmetforminで禁忌であった軽度腎障害、軽度肝障害、高齢者に対して慎重投与と基準緩和

とかなり使いやすくなっています。

ただし、新薬のため1年間は14日処方限定

薬価は従来のmetforminと同じ9.9円

です。

従来のmetforminの投与量の変更申請よりも新しいクスリの方が申請の敷居が低かったのか、はたまた新薬として発売することでジェネリックのないクスリとしてより高い薬価をねらったのか(結果としてはそれは叶っていませんが)わかりませんが、海外の標準治療とのギャップを埋めるべく頑張ってくださった大日本製薬さんの努力には感謝です(薬価も変わらないのでそれほど利益も出ないはずです。ただし、ジェネリックが既に出ていますから、再度自社のシェアを取り戻すには格好の手段と思います)

基本的には新薬には飛びつかないスタンスですが、新薬と呼ぶには微妙ですし、ちょっと分かりにくいながらも良い知らせとして捉えたいと思います。

2010年4月26日 (月)
2型糖尿病治療薬「メトグルコ錠」を発売 大日本住友製薬
http://www.yakuji.co.jp/entry19021.html


メトグルコ、1年間は14日の処方制限つきに
http://blog.t-shimoyama.com/2010/04/114.html

2010/04/23

    (期間限定) 病歴と身体所見でここまでわかる! 総合医スキルアップセミナー 4月ケースカンファレンス 発熱を主訴に来院した30歳女性

病歴と身体所見でここまでわかる! 総合医スキルアップセミナー 4月ケースカンファレンス 発熱を主訴に来院した30歳女性

最近twitterでの活動にシフトでblogの発信がめっきり減っていますがそれはそれでよいと思っています。

5/6までの期間限定です
動画のページには下の方にスライドが全て開けっぴろげになっており、ネタばれになりますから、診断推論の妙味を楽しみたい方は要注意。(下までスクロールしないよう)

※2010年4月22日東京都内で収録
この映像は、医療の向上に役立てていただく目的で、
主催者の御厚意により、期間限定で配信しております。(5月6日まで)


病歴と身体所見でここまでわかる! 総合医スキルアップセミナー
ケースカンファレンス担当

http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/special/career/jamep/

実際の映像とスライドはこちらこちら

お手伝いをしてくれる聖路加の先生のメンバーが新年度で入れ替わり、若い先生とペアとなりました。

新しいメンバーと言うことでまた、レジデントの先生の症例ということで診療所の私にとってはある意味またawayでした。また発熱の症例でしたので主催者の方に聞いてみたらこのセミナーの過去のケースカンファレンス10数回中半分が不明熱の症例。。

まあそれだけある意味診断推論としては最も面白いのでしょう、ということで、できるだけ「家庭医らしい」切り口でのカンファレンスになるように心がけました。

診断推論に優れた先生なら、講師としても最終診断を聞かずにその場で、診断を当ててそのすごさで圧倒するということになるのでしょうが、1時間という短時間と、やはり教育に携わる物としては私のすごさを見てもらうより(まあ診断できなかったらどうしよう、というのはあるのですが)、参加者に最大限の学びを提供することを優先したい、ということで事前にスライドを送ってもらい、変更要請をして私がスライドを追加して、この症例から最も学べることに効果的に焦点が当たるようにしました。

ちなみに、この症例、とあるpathognomonic(疾病特徴的:そのキーワードが出たら、直ぐに病気が想定される)な所見が出るのですが、焦点は、その所見が出るまでにその疾患を鑑別に想定できるか、といことを議論の重点としました。

そのため当日の参加者の先生方に、pathognomonicな所見の出る直前に鑑別診断のリストを作って頂き、「もう変更しないでね」と横に置いておいて貰ったのですが、複数のドクターがその診断を鑑別に上げておられ、あれだけ、非特異的な症状しかないところで能力によっては診断にたどり着けることが可能であることが確認できると共に、では、その鑑別が上げられなかった人が、どうやったら上げられるようになるかということを私からの提案としました。最後の議論では更にいわゆるclinical pearlと呼ばれる知恵をフロアから提供頂き、「teaching is learning twice(教えることは2度学ぶことである)」の文字通り自分が勉強になった(勿論参加者の方も勉強になったと思います)セッションでした。

一旦ケースカンファレンスの担当はおろして頂き、11/28に3時間の予防についてのセッションを担当させて頂く予定です。


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